17-3.ナルティーナとハーロック
エンサハイムの都市、バーホーン。ナルティーナはそこにたどりついていた。だがそこにもテルニア国を攻め落としたラバスナ国の兵軍が入ってきていた。
「やっとたどりついた。テルニア国の王女を探せとの命令だが、その前に腹ごしらえをしたい」
「ラバスナ国の貨幣が使えますか?」
「ばか。いちいち金を出すか。ここも俺たちが統治する」
「街から逃げ出す者がいます」
「男は殺してもかまわん。女は捕らえろ。ガハルスタウンに連れて行くんだ」
ラバスナの兵が逃げ出そうとする街の人々を追いかけはじめた。
だが現れた女が兵たちを倒していった。
「魔術師か。この街にも居るとは思わなかった」
女は街の人々を逃がした。
「女を捕まえろ。駄目なら殺してもかまわん。魔術師は厄介だからな」
街の人々を逃がした女はラバスナ兵たちに追い詰められた。
「もう逃げられないぞ」
女は向きを変えて毅然と
「私はテルニア国の王女、ナルティーナ。ラバスナ軍の所業は許さない」
と声を発した。
「おまえがテルニア国の王女か。探す手間が省けた。シャインドール国王のところに連れていく」
「出来るものならしてみなさい」
ナルティーナはラバスナ兵たちを倒していった。
「魔法攻撃だ。ひるむな」
多勢に無勢。ナルティーナは追い詰められた。
そこに男が現れた。
「エクスプローションバレット!」
男は光の玉を出すと、それを炸裂させてラバスナ兵たちにぶち当てて倒した。
「こっちへ」
男はナルティーナを連れて逃げた。
「あなたは」
「俺は空賊のハーロック。きみはナルティーナだろう? テルニア国の王女の」
「どうして知っているの?」
「噂では、おてんばだと聞いていたが、無茶をする」
「ほうっておけなかったの。・・空賊のあなたが、どうして私を助けたの?」
「王女は美人と聞いていたから」
「そんな理由で?」
「自分でも美人だと思っているのか?」
「からかわないで」
「さてと、これからどうするかは考えていない」
「ならナルビス国に連れていって」
「ルモーク国王が居る国か?」
「それも知っているの?」
「空賊だからな。飛行艇で街の近くまで飛んできたが、砕片の効力も限りがあるから途中で置いてきた。もうそろそろ尽きる。ナルビス国までたどり着けるか・・」
「歩いて行くよりはいいわ。途中まででも乗せていって」
「王女に命令される覚えはないが、この街に居座る価値はないからな」
◇
エンサハイムに向かっていた雅則たちは、バーホーンの街に入る前に大きな金属で出来たものを発見した。
「あれは・・」
「飛行艇のようです」
セーラがそれを見て言った。
「飛行艇って、空を飛ぶやつか?」
「誰かが魔光石を使って飛んできたか、魔石の砕片を使って飛んできたと思います」
「魔石の砕片って?」
「魔力の鉱山があって、そこから採れる魔石は魔力を増幅させる力を持ちます。その魔石の力を使ってフライという魔力を増幅させて自らと飛行艇を飛ばすことが出来ます。但し、その効力は長くは持ちません」
「ラバスナ軍が多数の飛行艇で飛んできたのは、その、魔石の砕片を用いたということか。この飛行艇は誰が・・」
雅則たちは飛行艇に乗り込んだ。
展望室のガラスの箱の中に石が置かれてあった。
「これが魔石の砕片? ただの石ころとは違うようだが」
「セーラ。この魔石の砕片で、この飛行艇を飛ばせるか?」
「はい」
セーラが呪文を唱えると、石が光り出した。
「じゃあこの飛行艇でバーホーンの街に向かおう」
「浮上します」
セーラが飛行艇を浮上させた。
街を出た空賊のハーロックが、飛行艇が浮上したのを発見した。
「誰が動かしているんだ」
飛行艇はバーホーンの街に向かって飛んでくる。
「空賊の飛行艇を乗っ取るなど見上げたやつがいるものだ」
ハーロックが空を見上げながら言うと
「のんきなことを言って」
とナルティーナはあきれるように言った。
「王女様、空を飛ぶのは平気ですか?」
「え?」
ハーロックはナルティーナを抱きかかえると
「フライ」
飛行艇に向かって飛んだ。
「何かが近づいてきます。下から」
リサが気づいて言った。
「下からって・・」
「あれは王女様です」
セーラが飛行艇のハッチを開けると、ハーロックとナルティーナが飛び込んできた。
「王女さま」
「セーラ。無事だったの? よかった」
ナルティーナとセーラは手を取り合って喜んだ。
「再会はめでたいだろうが、飛行艇をどうるすつもりだ」
ハーロックが雅則たちに言った。
「これはきみの飛行艇か?」
「いちおうな」
「拝借した。エンサハイムに居るだろうナルティーナ王女を探しに来たら、これがあったから」
「ナルティーナ王女なら俺が見つけた。二人が再会を喜んだということは、どうやら敵ではないようだな。自己紹介しておこう。俺は空賊のハーッロクだ」
「え? ほんと?」
雅則は男がハーロックを名乗ったので驚いた顔をした。
「ほんと、って?」
「俺もハーロックを名乗らせてもらっている。エランデル国のハーロック伯爵。ワリキュールでは魔王ハーロックを名乗っている」
雅則は男に自己紹介した。
「きみもハーロック? 迷惑だな」
「悪いわるい。しかし今はハーロックを気に入っているから」
「それに伯爵に魔王ってどういうことだ?」
「ああ・・説明するの、面倒くさいから省いていいか?」
雅則が面倒くさがると
「で、どういう関係なんだ?」
とハーロックは質問を変えた。すると
「セーラは私に仕えてくれるアリオン神国から来た女神なの。ラバスナ国がテルニア国に進攻してきたとき、魔光石を預けてラバスナ国に取られないようにしたの」
とナルティーナが話した。
「そういうことか」
「でも、折角預かった魔光石をラバスナ国の将軍に奪われてしまいました」
セーラがナルティーナとハーロックにすまなそうに言った。
「ラスク将軍か。シャインドールの片腕と言われる魔術師だ」
ハーロックが言うと
「シャインドール国王はクハノウ国の魔光石も手に入れたとか。これで3つの魔光石はシャインドールの手に渡ってしまったということね」
ナルティーナは愕然とした。が
「ラバスナ国が所有していた魔光石、ネイビーエメルダは俺が奪った。だからまだ3つは揃っていない」
とハーロックが言った。
「沢山の飛行艇が現れました」
リサが前方を見て言った。
「ラバスナ軍の飛行艇だ。見つかったようだな」
ハーロックが確認した。
「空賊の出番か?」
雅則がハーロックに期待すると
「いや、余裕をこいている場合じゃない。この飛行艇には武器は無いし、砕石の効力もあまり残ってないだろう」
とハーロックは状況が不利になっているように言った。
「ヤバいだろうそれ」
悠介が状況をハーロックに代わって口にした。
「彼らが魔法攻撃を仕掛けてきたら落とされる」
「だから余裕はないんだろう?」
雅則は余裕を持った口調で言った。決して問題がないわけではない。
「地上に降りた方が無難だ」
「顔は引きつっているようだな。仕方ない、彼らを撃墜しておくか」
雅則が言うと
「撃墜って・・まさか・・」
悠介は雅則が『流星雨』を使うと思った。
「セーラ。飛行艇をバーホーンの街から出来るだけ離してくれ」
「はい」
セーラが飛行艇をバーホーンからナルビス国側に移動すると、ラバスナ国の飛行艇たちも迫ってきた。
「空中で使ったことはないが・・召喚、流星雨!」
上空に雲が沸き立ち、渦の中から火の玉が落ちてきた。そしてラバスナ国の飛行艇を襲って落としていった。
「すごい!」
ナルティーナは雅則の上位魔法に感嘆した。ハーロックも
「俺も魔法は使えるが、あんな上級魔法は使えない」
と驚いていた。
「で、これからどうする?」
悠介が聞くと
「ひとまず、ナルティーナ王女とセーラをナルビス国のルモーク国王に預かってもらおう。それから魔光石を奪いに行く、伯爵たちがどうするかは任せるけど」
とハーロックが雅則と悠介に言った。
それを聞いたナルティーナが
「おじさまのところでじっとしてはいられません。私も一緒に行きます」
とハーロックに言った。
「ほんとうにじゃじゃ馬な王女だ」
「悪かったわね。でも・・もう少し私に力を貸して」
「俺たちはどうする?」
悠介に聞かれて雅則は
「俺はワリキュールに帰りたい。こっちの世界のことには関わりたくないし。ソアラとセーラも、もう心配ないだろう」
とこたえた。
「どうやって帰る?」
「歩いて帰るのも大変だな。・・しょうがない、協力して解決したら送ってもらおうか」
「そうしてもらえるとありがたいです。お願いします」
雅則はナルティーナに頼まれた。
「ナルティーナをハーロック、いや伯爵のほうに取られちゃうぞ」
悠介が空賊のハーロックに注意を促した。
「最初に助けたのは俺なんだけど」
「君も女は好きなようだな」
悠介はハーロックにニヤリとした。




