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異世界に行ったら最強になった  作者: 志良内達夫
第十七章 新たな冒険
203/215

17-1.飛行船とセーラ

 館には今、10人が住んでいる。

 いつのまにか館の主のような存在になった美緒は、総合商社・スミスコーポレーションの副会長を担っている。ソリアは冒険者協会に毎日、自動車で通勤している。ソアラはスミス醸造で働き、白ワインをつくった。ジルはスミス電力で電柱をつくる木材を伐採する山で、現れる魔物たちを退治する仕事に携わっていた。

 カリナは館でいろんな設計図製作や新製品の開発をしている、雅則から引き継いだ無線機の開発にも携わっている。スピードを恐れないカリナは、スポーツカーの製作からはじまり、空を飛ぶ自動車の開発を夢見ている。

 コーネリアは館に居るときは家事をこなしているが、牧場に行ってチーズなど乳製品の開発にも取り組んでいる。

 イビルは昼間は宮殿や街を巡回し、夜はジルやスレーンとスナック通いをしている。

 雅則とリサはエドワールの大飯店に滞在しながら、火力発電所の建設に携わっていた。

 月に一回はワリキュールに戻ってくる。その楽しみの1つが大きなお風呂に入ることだ。エドワールでは大飯店でも大浴場はない。

 悠介は自動車販売の営業所の所長もしているが、『なんでも屋』のナディを訪ねたり、衣料品店も営む仕立て屋のニナにも顔を出していた。

 ニナは悠介が発案したジーンズを手掛けるようになってから売り上げを伸ばし、衣料品店の2号店も出店した。


 ◇


 ワリキュールに向かって空から何かが飛んできた。

 ワリキュール空港の監視官から報告を受けた機場長のボイドもそれを確認し、ハンス侯爵に報告した。

「飛行船のようですが、我々のものではありません」

「他国の飛行船か」

 イビルもそれを知って自動車販売店の悠介のところに来て

「飛行船のようなものが飛んでくるわ」

と教えた。

「この時間なら、飛ばしていないはずだろう?」

「違うわよ。他から飛んでくるのよ」

 その巨大な物体は、確かにワリキュールに向かってゆっくり飛んできた。

「え? 落ちるんじゃないか? 街に落ちたら大変だぞ」

 物体は少しづつ降下していた。

「緊急事態発令。上空に巨大物体出現!」

 緊急事態を告げるアナウンスが街のスピーカーから流れた。

「飛行船のようだが、見たことの無い形だな。どこかの国でも飛行船を作っているのか?」

 悠介もハンスと同じように思った。


 物体は街を外れて荒れ地に落下した。

「何で動かしているかわからないが、爆発しないだろうな」

 悠介とイビルは落下した飛行船に自動車で駆けつけた。

 衛兵や冒険者たちも駆けつけてきた。

「爆発するかも知れないから近づかないほうがいい」

 悠介が物体に近づいていくと、衛兵の一人も近づいてきた。

「ユースケ様」

 以前にも見かけたことのある衛兵隊員だ。炭鉱に行ったとき、ソマルに同行してきた男でもある。

 彼は悠介を知っているようだが、悠介はまだ彼の名前を知らなかった。

「どうやら他国の飛行船のようだな」

 そう思いながら、エランデル国もスラーレン法国も飛行船は持っていない。どこから飛んできたんだ? と悠介は不思議に緊張した。

「他国でも飛行船を持っているとは・・どこの国でしょう」

「さあな」


 ソマルもやってきた。

「ソマル男爵」

「トニール、ご苦労。彼は衛兵隊王宮警備隊の隊長をしてもらっています」

 ソマルが悠介にトニールを紹介した。

「よろしくね」

 トニールは、スラーレン法国のオルコックをワリキュールに呼んだときも任をこなしたが、悠介はそれには関わらなかったので、久々の対面だった。


 悠介とイビル、それにソマルとトニールは飛行船の中に入っていった。

「誰もいませんね」

「無人で飛んできて落下したのか?」

 ソマルは動力源が気になって機関室に下りて行った。そして

「何で飛んできたんだ?」

と声をあげた。

「バーナーもなければ、水素のような何かも期待を使っているようでもないです」

 ソマルが悠介に言った。

「俺も理解出来ないけど・・まさか魔法で飛んできたとか?」

 イビルが

「人族を発見」

と叫んだ。床に女が一人、うずくまっていた。

 悠介が駆け寄り抱き上げると

「意識はないが、まだ生きている」

と確認した。

「悠介さん好み?」

 イビルに言われて

「若そうだし、悪くはないが今はニヤついている暇はない。教会に連れて行ってナターシャに診てもらおう」

 飛行船はソマルたちに任せて、悠介は自動車で女を教会へ連れていった。


 ナターシャは運ばれて来た女を診て

「外傷も内蔵損傷もないようですけど、精気が薄いです」

と診断した。

「どういうこと?」

「何かでライフを消耗したようです」

「精気を与えれば回復するということか」

「はい。そう思います」

「よし、館に連れていって面倒をみよう」

 悠介は、また女を自動車に乗せて館に戻った。そしてコーネリアに自分の精気を女に移してもらおうと思ったが

「コーネリアは今日は牧場か」

 コーネリアは今日も美緒と牧場のほうに行っていた。


 夕方になって美緒がコーネリア、ジル、ソアラを連れて戻ってきた。

 悠介が美緒たちに事情を話すと、女を見たソアラが

「セーラ!」

と声を発した。

「ソアラの知っている女か?」

「ベナ神殿で修行した後輩です」

「ベナ神殿って、アリオン神国の?」

「はい」

「どうして、そんな彼女が飛行船で・・」

 悠介はコーネリアに

「俺の精気を彼女に移してくれないか」

と頼んだ。

 コーネリアが悠介の精気をセーラに送ると、セーラに血色が戻り、息を吹き返すように目を覚ました。

「セーラ」

「・・ソアラ先輩?」

「そうよ」

「会えてよかったぁ」

「どうしたの?」

「姫が、国が危ないんです」

「え?」

「私はベナ神殿で女神と認められたあと、テルニア国の王女、ナルティーナの元に出されたの。テルニア国は国内で内乱が起こり、国王と妃は反逆者の手によって亡くなり、ナルティーナが国王に代わって執政を・・でも、ラバスナ国の国王、シャインドールがナルティーナを妃に向けたいと言い出て・・その目的はテルニア国の秘宝、魔光石・パールエルメダを手に入れるためだと知り、ナルティーナ王女は拒んだんです。するとシャインドールはテルニア国に進攻してきて王女に迫ったんですが、王女は叔父のルモーク国王を頼ってナルビス国に向かっています。私は王女から魔光石・パールエルメダを預かり、ソアラ先輩を探して飛行船で飛んできたんです」

「・・・」

「わかったような、わからないいうな。・・もう少し、詳しく話してくれる?」

 悠介はセーラを無碍にする気はなかったが

「今日は休ませたら。その王女もまだ無事なんでしょう?」

と美緒が気遣った。

「雅にも連絡を入れておこう。また大きな騒動に巻き込まれそうだ。イビル、オウムで雅に連絡頼む」

「わかった」


 ◇


 エドワールの大飯店。

「ハーロック様、イビルから連絡です」

「え? 風呂に入ったばかりなのに」

「お風呂でも話せます」

「裸なんだけど」

「オウムでは姿は見られませんから」

 リサも裸になってオウムを連れて風呂に入ってきた。

「二人が裸のところは見られたくないな」

「イビルにも悠介さんにも見られることはありませんから」

 オウムの口から

「ハーロック様、また緊急事態らしいわよ」

 元気なイビルの声が発せられた。

「どんな?」

「わかんないけど。またユースケさんが女を館に連れてきて、どこかの国が危ないとか・・」

「何人、女を連れ込む気だ? まだ部屋に余裕はあるからいいか」

「ユースケさんに代わる?」

「いや、今入浴中だから。話は明日の列車で戻ってから聞く」

「リサも一緒に入っているの?」

「イビルも一緒に入りたいって?」

「私はお酒があれば満足だから」


 ◇


 翌朝、悠介はジルとソアラ、セーラ、それにイビルを連れて落下した飛行船に行った。

 衛兵隊が落下した飛行船の警備に当たっていた。

「ユースケさま」

「トニール、ごくろう。中に入って確かめたいことがある。誰も中に入れないでほしい」

「はい」

 悠介は、連れてきたセーラたちと飛行船の中に入ると

「その魔光石は飛行船の中にあるのか?」

とセーラに聞いた。

「魔光石が動力源? どこかで聞いたことがあるような・・」

 悠介は自分が遊んできたゲーム(RPG)を思い出していた。


 魔光石は展望室にあった。

「これでどうやって飛行船を動かす?」

「私の魔力と融合させて飛行船を宙に浮かせます。そのあと、ソアラ先輩の気を感じながらここまで飛んできました。そして体力が尽きてしまいました」

「魔法の力か」

「私がナルティーナ王女に仕えるように指示されたのは、この魔光石を手に入れるためだったようです。王女は魔光石をラバスナ国に渡さないために私に託しました」

「少しづつ理解してきた。この魔光石はそれほど大切なんだ」

「魔光石はもともとアリオン神国で採掘、生成したものらしいです。それを分家したラバスナ国、テルニア国、クハノウ国に与えたらしいです」

「クハノウ国って、ケルトン族が住んでいた国だったような。それをラバスナ国が全部欲しがっているということか」

「そのようです」

「アリオン神国と繋がっているとは・・これからのことは雅が戻って来てから相談だな」


 後からやってきたソマルが飛行船の中に入って来て

「ユースケさん」

と声をかけてきた。

「彼女は昨日倒れていた・・」

「話は宮殿に行ってハンスにも報告する。ジル、ソアラとセーラを館に戻してくれ。二人は頼んだよ」

 悠介はソマルとイビルを連れて宮殿に行った。

 宮殿ではハンスも待っていた。

「飛行船は異国から飛んできたらしい。乗っていた彼女については、まだ詳しいことは話せない。しかし安全な人物なのは俺が保証する」

「わかりました」

「ハーロックがエドワールから戻ったら、これからどうするかを話し合う。多分、異国に行ってくることになると思う」

「出かけるのですか」

「アリオン神国が絡んでいそうだから」

「アリオン神国とは?」

「スラーレン法国に来て権威を手にしようとした大神官が出てきた国だ。詳しいことは俺はわからないけど」

「そうですか」

 悠介はハンスとソマルに報告を済ませると館に戻った。


 ◇


 雅則とリサがエドワールから戻ってくると、早速、会議が行われた。

「セーラの話だと、ケルトン族騒動のとき、彼らが仕えていたクハノウ領は、アリオン神国の分家ということか。するとクハノウ国が持っていたと思われる魔光石はラバスナ国に渡った可能性があるな」

 雅則が推理した。

「そして最後の一つを手に入れようとして失敗しているわけか。まさかここにあるとはラバスナ国も知らないだろう」

「最後の魔光石を手に入れるため、ナルティーナ王女が狙われる可能性があります」

 セーラが心配そうに言った。

「ここは助けに行くべきか」

 悠介も迷っていた。

「ナルビス国を頼ったなら助かっているかも。ただ、ダマリンからイニルに入った連絡だと、ケルトン族以外にシームア領を狙っている人族が居るらしい。アリオン神国が絡んでいるかも」

「となると、対岸の火事では済ませるわけにはいかないかも。それにナルティーナ王女の安否も確認しないと、セーラは安らげないな」

「魔光石と飛行船を使ってナルビス国にナルティーナ王女の安否を確認に行こうか。でも悠介はナディと新婚中だからな」

「まだ婚約も交わしていない。ナディと居られるのはいいが俺も協力する」

「明日の朝、飛行船を動かすのにセーラとソアラ、そして俺と悠介・・リサも行ってくれるか?」

 雅則がリサに聞くとリサは

「はい」

と二つ返事でこたえた。

「美緒ちゃんとジル、イビルは留守を頼む」


 イビルに決まったことをハンスに伝えに行ってもらうと、トニールが館にやってきた。

「ハンス侯爵から、呼び出して悪いが宮殿に来て欲しいとのことです」

 雅則がハンスに会いに行くと

「私の方から出向くところですが、立場が立場なのでお許しを」

 ハンスは雅則に頭を下げた。

「わかっている。ハンスにも今回の飛行船のことは知っておいてもらったほうがいいだろう」

 雅則は悠介から聞いた飛行船や他国のことをハンスに話した。

「そのアリオン神国がワリキュールに進攻してくることは無いと思うが、絶対にないとは言えない」

「軍を無くした我が国は、他国に攻めてこられたら裸同然。衛兵隊の強化をしなければ・・」

「そうしたのは俺だからな。責任は感じている」

「今のワリキュールがあるのはハーロック伯爵のおかげだと思っています。しかし多少の防衛力は持っていたほうがいいかと」

「わかった、あとで相談しよう。飛んできた飛行船で出かけてくる。あとを頼む」


 ◇


 一方、悠介は『なんでも屋』に戻ってナディに話した。

「そういうわけで、出かけてくる」

 するとナディは心配そうな顔をした。悠介は

「こんな事態になったけど必ず戻ってくるから。不安なときは館を頼って。美緒ちゃんも居るし、みんな力になってくれるから」

とナディを安心させるように言った。




















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