16-8.オーク高原の戦い
雅則たちはダマリンの先導でシームア領のオーク高原に向かった。ケルトン族がそこからシームア領に進攻してくる情報を得たからだ。
その雅則たちがケルトン族と聞いている人族の集団がオーク高原に近づいていた。
クハノウ領から逃れてきた避難民だ。率いるのは領主の一人でもあったホッセルだ。
ホッセルもオーク高原に魔族たちが守りに着いたのを確認していた。
ホッセルたち避難民は、オーク高原の麓にテントを張って旅の疲れを癒した。
集団は数にして約5000名。そのうち兵士として働けるのは2000名もいない。あとは女、子供など家族連れだ。そこに他のルートで移動してくる領民も加わることになっている。
だがホッセルは、彼らを待つつもりはなかった。放浪の旅をしてきてシームア領に定住する居住地を見出していた。
ホッセルは家族に
「シームア領に行けば水も食べ物もあるらしい。そこを居住地にしよう」
と笑みを浮かべながら言った。
「もうすぐ、他の領民の方々も到着すると聞いてますけど、それを待ってからでも」
「いや、ここまで来て目的地を目の前にして待っていられるか。アリオン神国にケルトン国を落とされ、領地を追われてここまで長い旅をしてきた。お前たちにも苦労をかけた。部下の調べだとシームア領には水も食べ物もあるらしい。私は早くおまえたちにも水と緑豊かな地で過ごしてほしいと思っている」
「でも、そこには今まで以上に魔族や魔物が居ると言ってましたけど」
「なに、そんなやつらはみんな退治してやるさ。我々の中にも上位魔術師も多く居る。邪魔な生き物はみんな殺し、これからはシームア領に新しい住居を、村を、街を、そして新たなケルトン国をつくるんだ」
「みんな殺すんですか?」
「人族に逆らうやつらを生かしておいてどうする。余計な心配はしなくていい。今から行って退治してくる」
◇
ホッセルは1000人を超える兵を率いてオーク高原に上がっていった。
迎えるダマリンたち魔族を中心とする一団は、その半分にも満たない。
「ダマリン、結界とか防御魔法を使えるものは居るか?」
雅則がダマリンに聞いた。
「居ることはいるが、それで戦えるのか?」
「ダマリンたちの被害を少なくするだけでいい。攻撃は俺たちがする」
「3人で? ワリキュール軍を全滅したことは認めるが、ケルトン族は魔術師も居ると聞く」
「大丈夫だ。極大魔法でなければ美緒ちゃんのゴジラは倒せない」
「任せて」
美緒もやる気満々だ。
高原の対面にケルトン族が現れた。
「かなりの数が居るわよ。ゴジラでも全員踏み潰すには時間がかかるわ」
とやる気十分の美緒に
「もう、その気になっている」
と悠介も思った。
ホッセルも対面する魔族を確認した。
「あれだけで我々に対抗しようとは、ばかにされたものだ。一気に潰せ!」
ケルトン兵が攻め込んで来た。
「反撃!」
ダマリンたちも魔法攻撃を放った。
「やつらに魔法を浴びせてやれ」
「防御魔法だ」
「本当に戦場になっちゃったよ。サイコパワーシュート」
悠介が迫るケルトン兵をサイコ攻撃で倒していった。
「ねえ、雅則くんは何もしないの?」
まだ動こうとしない雅則に美緒が聞いた。
「いや、ケルトン族の力を測っているところだ」
ケルトン兵の召喚魔術師が魔獣を召喚した。
「召喚獣を出せる者も居るようだね」
「私もゴジラを召喚するわよ。ゴジラ~!」
美緒も待ってましたとばかりゴジラを呼ぶと、雲が湧き出てゴジラが空から降りてきた。
「召喚獣を出せる魔族も居るのか」
これにはホッセルも驚いた。
「召喚獣をもっと出して倒してしまえ」
ケルトン兵たちは何体かの召喚獣を出した。
だがゴジラは襲ってきた数体の召喚獣をシッポを振って跳ね飛ばした。
「さすがゴジラだな。召喚獣が何体出てきてもゴジラの敵ではないと思うけど。土星魔法でケルトン族を足止めさせるか」
雅則は天を仰いで
「クラックグラウンド!」
と叫んだ。
すると地面が揺れ始め、ケルトン兵の前に地割れが発生した。
「極大上位魔法? やつらを見くびっていたか。一旦ひけ!」
ケルトン兵は引きさがっていった。
「今、高原の下でテントを張っている一団の他に、向かって来る一団もあるわ」
イビルが調査していた。
「シームア領に向けて集まってくるのか。まとめて叩いたほうが世話が無いけど、先行軍を片付けておくか」
雅則はケルトン族に向かって歩き出した。
◇
「ひとり、向かってきます」
兵がホッセルに報告した。
「どんな魔族だ」
ホッセルは恐る恐る出て行った。
「見た目は人族のようですが・・」
兵が報告した。
雅則は相手が聞こえる距離まで近づいていって
「大将と話がしたい」
と言った。
兵が
「魔術師ということもあります」
とホッセルに言った。
「いきなり攻撃はしてこないだろう」
ホッセルは前に出て行って
「私が団長の長、ホッセルだ」
と雅則に言った。
「俺はハーロック。話し合いに来た」
「人族のようだが、変異しているのか」
「俺は人族だ」
ホッセルは雅則が魔族ではないと知って安心した。
「話を聞こう」
「シームア領には多くの生き物が生息している。立ち入らず引き返してほしい」
「我々はクハノウ領から流れてきた領民だ。我々も安住の地を求めている。シームア領に住みたいと思っている」
「それは許可しない。他の地を探してもらいたい」
「君も人族なら、我々も住んでもかまわないだろう」
「シームア領の人族は他の生き物を妨げたりしていない。おまえたちが魔族や他の生き物と共存すると言うなら許可しないでもない」
「ばかなことを。魔族と一緒に住めるか」
「じゃあ引き返せ」
「人族を何だと思っている」
「他の魔族や生物と同じ生き物だ」
「変わった人族だな。頭がおかしいのか? 人族を他の生き物と同等に出来るか」
「人族でなくても魔族にも他の生き物にも家族もいるし生活もある。同じ生き物だ」
「それがどうした。そんなこといちいち考えられるか」
「やはりそういう考えか。ではお前にも今までお前が殺してきた生き物の怒り、悲しみを教えてやろう」
「なんだと」
雅則は天を仰ぐと
「召喚、流星雨!」
と叫んだ。すると空に黒い雲が渦を巻いて現れた。
「な、なんだ!」
「高原の下にお前たちのテントがあったな」
「ま、まさか」
雲の中から巨大な火の玉が落ちてきた。火の玉は、そのテントを襲った。
「俺たちの民が・・家族が・・」
ホッセルは自分たちのテントが潰れていくのを悟った。
「全滅だな」
「何をしてくれている!」
「お前が今までしてきたことをしたまでだ。ケルトン族がシームア領に入ってきて生き物を虐げていることは知っている」
「ふざけるな!」
「ふざけているのはおまえのほうだろう! 自分が何をしてきたか反省しろ!」
ホッセルは膝を落とすと
「こんなこと・・ありえない」
と呟いた」
「現実だ。お前のためにみんな迷惑を被っている」
ホッセルは雅則に何を言われても聞く耳を持たなかった。そして
「お前は人じゃない!」
と雅則に叫んだ。すると、雅則も
「おまえもゴミだろう。人族とは認めない。おまえたちもゴジラで踏みつぶしてやろうか」
と反論した。
「ま、まて・・話しあおう」
「その気は失せた」
「命だけは・・」
自分の命が危ないと悟ると、ホッセルは雅則に助けを求めた。
「条件がある。後から来る一団があるな。彼らの命と引き換えに助けてやらないでもない。いやならお前たちを始末するだけだ」
「おれたちに他の避難民を殺せと?・・」
「お前たちは人の命もどうでもいいと思っているんだろう? 自分の命が惜しかったら実行しろ。結果で答えを示せ。従わないときは命はないと思え」
雅則はそう言って戻った。
ダマリンが
「どうなるんだ」
と雅則に聞いた。
「さあ、やつらの行動次第だ。自分たちで殺し合いをするか、徒党を組んで入ってくるか。そのときは全滅させるだけだ」
◇
ホッセルは唖然としていた。
「これは夢だ」
しかし家族が待っているはずのテントも焼き尽くされていた。
部下が
「もうすぐ別の旅団が到着します。シームア領に攻め入りましょう」
とホッセルに言った。ホッセルは
「向かってくる彼らを襲う」
と部下に言った。
「嘘でしょう?」
「死にたいのか。シームア領の召喚獣に踏み潰されたいのか!」
◇
雅則たちはダマリンたちにケルトン族の監視を頼んで、ネネの飯店に戻って休んだ。
するとイビルがやってきて
「後からやってきた一団は、ホッセルたちに倒されたわ。ハーロックってすごい」
と歓喜していた。
「人族の習性を利用しただけだ。自分可愛さに他を犠牲にすることをいとわない。ホッセルたちの監視はダマリンに任せるか」
雅則たちはテルザでエランデル国に行くと、ニドルの温泉でくつろいでワリキュールに戻った。




