16-6.戻ってきた雅則たち その2
雅則たちは飛行船でワリキュールに戻った。
館に戻るとコーネリアが駆け寄ってきた。
「お帰りなさい」
「ただいま」
雅則もコーネリアに笑顔を返した。
「なんだ、抱きつくかと思ったのに」
と悠介がコーネリアに言った。
「薬草も採ってこられたようね」
美緒がナターシャに言うと
「はい。教会に戻ってポーションを作ります。私を待っている患者も増えているかも知れないけど」
と嬉しそうにこたえた。
ルナも後から出てきた。
「教会は閉めて、館で過ごさせてもらいました」
「毎日、お風呂を楽しんでいたか?」
「朝から晩まで入っていたら茹蛸になるぞ」
「そんなに入っていませんから。館の掃除も手伝っていました」
「今夜はゆっくり休んで。カリナ、明日ナターシャとルナを教会まで送ってあげて」
「はい」
「そうだ、みんなでお風呂に入ろう。温泉にも入ってこなかったし」
と雅則が言うと
「冗談だけにしておいて」
と美緒に言われた。
「はい・・コーネリアだけでも入ってくれるか?」
「はい」
「俺はまた自動車のほうがどうなっているか確認しなければならないが、雅もエドワールに行くんだろう?」
悠介に言われて
「うん。火力発電所が出来たら変電所もつくらないと。しばらくエドワールで過ごすか。大飯店も何軒か出来たようだし」
と雅則も気を引き締めた。
その夜、雅則と悠介は美緒からエランデル国の温泉騒動を聞いた。
「そんなことがあったのか。ご苦労様でした。リンメイも居たって?」
「そうなの。見掛けたときは驚いたけど、そこで警備の仕事をしているらしいわ」
「元気なのがわかって安心した」
◇
ジルのマリアント国の騒動も、エランデル国の温泉騒動もひとまず落ち着き、平穏な日常を取り戻せたようだった。
しかし雅則たちは休んでいる暇はなかった。
美緒はスミスコーポレーションの副会長をしていて、経営はほぼ美緒に任されている。
悠介も自動車の販売会社も設けて営業も手掛けている。雅則はエドワールに建設中の火力発電所を立ち上げなければならない。
館で一日休んだ雅則はリサに
「しばらくエドワールで過ごすつもりだが、一緒に行ってくれるか?」
と聞いた。
「はい」
リサは嬉しそうにこたえた。
「コーネリアは館に居てくれるか? 美緒ちゃんにみてもらうから」
「はい。ヒュンケルさんが時々遊びに来てくれると言ってました」
「そうか。SLに一緒に乗ってやったら? ヒュンケルはSLが気に入っているようだから」
「はい」
雅則とリサはエドワールに行くと大飯店に宿をとり、領事館を訪問した。カジュアルな服装だが、ちょっと貴族らしい服装にした。
ライアンとユリカが出迎えてくれた。
「リサのドレスも指摘だわ。板についてきたわね」
リサはユリカに言われてはにかんだ。
「しばらくこっちで過ごそうと思う。火力発電所の次は変電所もつくらないと」
雅則がライアンに言うと
「傍に居てもらえると心強いです」
とライアンに喜ばれた。
◇
リサが雅則と一緒にエドワールに行っているので、イビルは夕方には館に戻ることにしていた。そして時々ジルやスレーンに声をかけて夜にスナックに出かけるという生活をしていた。
「今週はジルがつきあってくれるのよね」
「スナックか? 毎週でもいいぞ」
「スレーンも誘わないと悪いから」
スナックはたいていアリスたちが経営する店を利用している。
「リンメイはどうしているかな」
ジルがワインのハイボールを飲みながらつぶやいた。
「電力会社で一緒に働いていた頃がなつかしい。わりと素直な娘だったな」
「彼女はいろいろあったみたいだから」
「エドワールでハーロックと一緒に居るのか? リンメイはエドワールで冒険者をはじめた話を聞いたことがある」
「リンメイはエランデルに居るみたいよ。それにハーロックの相手はリサだから」
「でも、ハーロックはリンメイを大切にしていた」
「単に好きとか嫌いとかの感情じゃないと思う。私も人族と慣れ親しんでいるうちに感情を抱くようになっちゃって。まあ、人族をからかうほうが面白いけど」
「イビルが魔族であることを忘れることもある、イビルは面白いし」
「それ、ほめてる?」
「どうしてハーロックたちと暮らしている? ちゃんと聞いたことがなかったと思って」
「最初は成り行きから。私はワリキュールの人族の行動を監視するために人族と接していたの。人族は自分たちの国をつくるために、他の生き物を除外してきたから」
「そうなんだ」
「でも、ハーロックたちが来てから変わっていった。ハーロックは人族や魔族、その他多くの生き物が共存して生きていくのがいいという考えのようだし」
「正直、俺もハーロックは変わった人間だと思っている」
「ジルの世界でも人族を人間って言うんだ」
「そうだけど・・おかしい?」
「この世界では人族は魔族などと区別するために人族という言い方をしているようよ」
「なるほど。でも、種族がちがってもこうして話が出来るのはいいと思う」
「それは私が言語翻訳魔法を使っているから」
「そうか。まだまだわからないことがあるな」
「マリアント国に帰りたい?」
「そりゃ、生まれ育った国というか世界だし・・いつ帰れるかな」
「マスカット姫にも会いたいんでしょう?」
「一度戻れるチャンスがあったからマスカット姫と逢えたけど、身分も違うし・・俺もいつ戻れるかわからないから、姫が幸せならそれでいいかなと思うようになった。イビルには家族とか好きな人とかは?」
「私たち魔族はそれなりの社会があるけど、生まれたときから親とは離れて生きていくから、好きとか嫌いとかの感情はあまりないわ」
「そうなんだ。・・いちど聞こうと思っていたんだけど、こうして飲みに誘ってもらえるには俺も嬉しい。俺とスレーンとどっちが好みかな、と思って」
「そんなこと考えたことなんかないわ。どっちもいっしょに飲んでいて楽しいし、ただスレーンは悠介さんのようにチャラいところがあるから、ジルの方がいいかも」




