16-5.戻ってきた雅則たち
簡易転移魔法の効力が消えて、雅則たちはジルの世界のマリアント国からエランデル国のルセールの家に戻ってきた。
「お帰り、無事戻れたようだね」
ルセールが、雅則たちがそろそろ戻って来る頃と思い、待っていた。
「向こうではいろいろあったけどね」
悠介が戻って来てほっとした顔を見せた。
「悠介を追いかけてきた女はいなかったな」
雅則が言うと
「それが雅のマリアント国の感想か? ガールハントに行ってきたわけじゃない。それもあったほうがよかったけど」
「相変わらず楽しい男だ」
ルセールはみんなが無事に戻ってきたことを喜んだ。そして
「薬草もいっぱい採ってきたね」
と雅則たちが両手に抱えるように手にしている薬草を見てナターシャに言った。
「はい。これでポーションをつくります」
ナターシャは嬉しそうに言った。
リンスが現れた。
「そろそろ戻る頃かと待機していました」
「いつもありがとう」
「今日は『ハナ』に泊まります か?」
「泊まれるかな」
「確認してきます。それと・・リンメイが温泉に居ます」
リンスがリンメイの所在を雅則に報告した。雅則は
「そう・・今はそうっとしておこう。まだ会いたくないだろうから」
とリンスに言った。
「わかりました。それと他にも報告したいことが・・」
「大事なこと?」
「それは・・私には分かりかねますが、事後報告にはなりますが・・」
「じゃあ、宿が決まったら部屋で聞こう。それでいい?」
「はい」
「それと飛行船の予約をとってきてくれる? なるべく早い日で」
「はい」
リンスが去ると
「すぐワリキュールに戻ってしまうのか?」
とルセールが雅則に聞いた。
「ナターシャのポーションつくり以外にも戻ってすることがあるから、あとでまたゆっくり遊びに来るよ」
雅則がそう言うと
「私も一度はポーションの作り方を学んだが忘れてしまった。もう一度勉強してみるか」
とルセールは言ったが、ルセールもずぼらな性格だ。
ルセールの家で休みながら、マリアント国のことをルセールに話した。
「向こうでも活躍してきたのか。退屈しないで過ごせたんだ」
「そんな楽しい気分じゃなかったけど」
悠介もルセールに言い返した。
リンスが戻って来て
「『ハナ』には泊まれます。それと飛行船の予約もとってきました」
と報告した。
「ありがとう、リンス」
◇
飯店『ハナ』に移った。
「いらっしゃい」
ユリが笑顔で迎えてくれた。
部屋は4部屋しか空いていなかったので、雅則と悠介、リサとイビル、それにジルとナターシャにそれぞれ分かれた。
「じゃんけんでもしてナターシャと相部屋になったほうがよかったんじゃないか?」
と雅則が悠介に言うと
「自慢じゃないが、俺はじゃんけんには強くない。それにリサやイビルと相部屋にならないとも限らない」
と悠介は分析していた。
夕食はナルーシャも呼んで歓談した。ナルーシャは雅則たちのマリアント国の話を楽しみにしていたかと思ったが
「温泉が大変だったようですよ」
と温泉騒動の口火を切った。
雅則たちがマリアント国に転移している間に、温泉がケルトン族という人族に襲われた話をナルーシャがした。
「そんなことがあったんだ」
「ニドルさんからはハンターの要請もあったけど、衛兵隊も出て行ってケルトン族を追い払ったようなの」
「温泉は守られたんだ」
ナルーシャが帰り、部屋に入ると
「訪問客が来る予定だ。男じゃないぞ」
と雅則が悠介に言った。
「マッサージでもしてもらうのか? マリアント国の薬草狩りも、意外に疲れたからな」
「この世界にも部屋にマッサージ師を呼べるのか?」
「俺が知るわけがない」
「来たようだな」
雅則が窓を開けると風のように女が入ってきた。
「なんだリンスか」
「え?」
「リンス、気にするな。リンスが来ることを悠介に言ってなかったから。それで報告したいこととは?」
「はい。温泉が人族に襲われたことです」
「ナルーシャが話していたことか。詳しく聞かせてくれる?」
「はい」
リンスが温泉での騒動を、雅則と悠介に話してくれた。
「美緒様も来てくれて騒動は解決しました。エルフはダマリン様に預けてきました」
「じゃあ、美緒ちゃんからも武勇伝を聞かされそうだな。リンス、いろいろありがとう」
「失礼します」




