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異世界に行ったら最強になった  作者: 志良内達夫
第十五章 マリアント国と温泉の危機
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15-4.スラーレン法国の今後

 オルコックがスラーレン法国に戻され、館に戻るとマーラが

「無事戻ってこられて安心したわ」

と出迎えた。

 だがオルコックは暗かった。

「ハーロック伯爵に会ってきた」

「え?・・」

「私もスラーレン法国もハーロック伯爵に見捨てられた。・・今後、スラーレン法国はどうなっていくのか・・」

「お父さま・・」

 今度はオルコックが部屋に閉じこもってしまった。

「こういうときこそお父さまが旗を上げないと・・だから頼りなく思っていたのよ・・このままではスラーレンの御三家すら無くなってしまうわ」


*****


 ヒュンケルが館に転移してきた。雅則のほうから会いに行くのは面倒なので、ヒュンケルに数日後に来るように言っておいた。

 コーネリアがショートニングケーキを運んできて、笑顔を見せながらヒュンケルの前に出した。

「ヒュンケルが来ると聞いて、食べてほしいとコーネリアが考案した手作りのケーキだ」

 雅則が言うと

「私のために? ありがとうコーネリア。美味しそうだ」

とヒュンケルも嬉しそうな顔をした。

 ヒュンケルはこの世界に魔王として転移してきたが、顔、姿は人の姿とほとんど変わらない。しいて言えば、身長があり、ちょっと大柄で、顔もちょっと怖そうな顔をしている。

 しかし強そうに見えるヒュンケルのような男を好む女も居る。元は普通の男だったらしく、性格は温厚だ。コーネリアもヒュンケルに怖いイメージは持っていない。見た目と違ってやさしいおじさんだった。


 ヒュンケルが館に来たのは、ただ遊びに来たわけではない。雅則がスラーレンのオルコックと面談した結果を聞きにきたのだ。

「結果報告はかんばしくない。思ったより期待出来なかった」

「そうか」

「プロティナも温厚で争いを好まない性格だったが、オルコックも同じだ。ただ彼は人族をどの生き物より尊いと崇めている傾向がある。魔族や魔獣たちとの共存は、彼では望めない」

「それは残念な結果だった。・・」

「ヒュンケル。魔王を辞めて改めて国王にならないか?」

「どういうことだ」

「この世界の人族の中にも魔術を使える者は多く存在する。ヒュンケルも上位魔術師として生きていけば・・魔王として生きていくのは可能だと思う」

「可能かも知れない。魔王として生きなければならない理由はない。たまたまこの世界に転移してきたとき、魔王を名乗ることになっただけだ。上位魔術師として通せないこともないだろう。・・しかし俺は、政には向かないことがあたらめてわかった。政策が浮かんでこないのだ」

「人にはそれぞれ得意、不得意があるのはわかる。俺も宮殿の暮らしは向かないので伯爵の爵位をもらったが、市井の中で暮らすほうを選んでいる」

「これを機にロワール城に戻っていろんな生き物とのどかに暮らしたいという気持ちが強くなった」

「だからスラーレン御三家で残っているオルコックに国王になってもらおうかと考えたのだが・・リンメイからもオルコックを勧められたからな。リンメイはオルコックに恩義があるらしい」

「スラーレン法国は、王家国家から離脱し、国民にあらたな国づくりをしてもらうのは?」

「それもいいと思うが、この先、誰が国王になるかで、またヒュンケルたちが人族に排除されるようになるかも知れない」

「その時はまたハーロックの力を借りるさ」

「貸さないでもないが、俺もいつまでここに、この世界に居るかわからないから」

「そうか。元の世界に戻るのか」

「それはわからない。今でも戻れないでいる。・・プロティナに任せるか」

「え?・・」

「あと考えられるのは、他にいない。プロティナなら、女王として国政を司ってきた実績がある」

「プロティナはハーロックを恨んでいるんだろう?」

「俺が玉座から無理やり下ろしたからな」

「そのプロティナをまた女王に?」

「承知してくれるかはわからないが」


 ◇


 プロティナは、雅則ハーロックがスラーレンの貴族街を破壊し、ヒュンケルもロワール城に戻ってからも宮殿の第3の塔に残っていた。

 プロティナのエクレール家も今は焼け跡しか残っていない。両親は死に、妹や弟も亡くなって、天涯孤独のような身になっている。

 玉座に座る者は、今はいない。ヒュンケルもロワール城に戻ってスラーレン法国に戻って来る気はない。


 ヒュンケルと宮殿に転移してきた雅則は、第3の塔に行き、プロティナと対面した。

 プロティナの目は、怒りに満ちているようだった。

「今度は貴族街を壊滅させるなんて・・ハーロックは鬼だわ」

 プロティナは雅則に怒りの目を向けた。

「どうしてそうなったか、理由は聞いているんだろう?」

 雅則は落ち着いた口調でプロティナに言った。

「でも、そこまでしなくても・・」

「どこまですれば良かったんだ?」

「・・・」

「ヒュンケルは国王を辞めると言っている」

「え?・・」

「今回の騒動は、アレイン家のマーラとブランド家のドルインが仕組んだものだ」

「・・・」

「スラーレン御三家のアレイン家のオルコックを国王に、と思ったが彼は人族以外を下等生物扱いする性格だとわかった。この世界は人族以外に様々な生き物が存在している。俺は種別を問わず共存することが、この世界には適して居ると思っている」

「それで・・」

「スラーレン国はプロティナの父親と大神官アスターが法国として築き上げた。それは王家国家を存続させるためだったが、異国から渡ってきたアスターが自分の地位を確立するために、プロティナの父親を利用して築きあげた法国だった。王家国家から国民主体の国家になったら、とも考えたが、将来を考えるとプロティナが女王に復帰するほうがいいかなと考えた」

「え?・・」

「これからのスラーレン法国のため、女王に復帰してみないか?」

「本気で、そう思っているの?」

「本気だ」

 プロティナは信じられなかった。

「私は玉座から下ろされてから、ずっとハーロックを恨んでいたのよ」

「そうらしいね」

「その私に、また女王に復帰しろと?・・」

「あの時点では、プロティナでは他国からの侵略を防げないと考えた。プロティナは国政を司るには心が優しすぎるんだ。だからヒュンケルに任せることにした」

「・・・」

「しかしこれからのスラーレンにはプロティナが必要だ。争いごとが嫌いなプロティナのような指導者が」

「ハーロックって何者?」

「異世界からの転移者だ」

「・・・」

「俺もヒュンケルも今後スラーレンがどうなろうと関知するつもりはない」

 雅則はプロティナにそう言って第3の塔を出た。そして

「ヒュンケルはまたロワール城で暮らしていくのか?」

と聞いた。

「この世界に転移してきて魔王を名乗るようになったが、野望はない。近隣の生き物たちと過ごしていくつもりだ」

「そういう生き方もいいかも。元の世界に戻ることは?」

「戻り方はわからない。戻れない以上、ここで暮らすしかない。ハーロックは戻れるのか?」

「どうかな。・・でも今のところ、この世界での暮らしに不満はない。館にはコーネリアも居るし、SLにも乗りたくなったら、館を訪ねてきて。待っているから」

「そのときはよろしくな」


 ◇


 雅則が館に戻ると悠介から

「リンメイが置手紙を置いて出て行った」

と言われた。

「スラーレンの貴族街を潰したり、オルコックを国王に出来なかったことで心の傷を深めてしまったようだな」

「どうする?」

「去る者は追わず。・・大丈夫。きっと立ち直ってくれるよ。そう祈ろう」

 雅則にもいい方法は考えられなかった。































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