15-3.面談
「話は苦手なんだけど」
雅則は貴族らしい正装をして、ひとつ深呼吸した。今から雅則の苦手なことをするためだ。それはオルコックとの面談だ。
雅則はスラーレンの貴族たちが宮殿を襲ってきたとき、ヒュンケルたちを救った。
だがそのあと、ヒュンケルから「国王をやめたい」と言われた。
雅則にすれば、スラーレン法国がどうなろうと知ったことではなかったが、リンメイの生まれ故郷でもある。リンメイから話を聞いた雅則は、国王にオルコックはどうかと考えた。
そしてハンスにも相談した。
「スラーレン法国の次の国王をですか? 私が関わっていいのでしょうか?」
「国も違うしね。俺もスラーレン法国などどうでもいいが、リンメイや何人か仲間になった国でもある。それに今は隣国。マーラのように今後も誰がワリキュールに関わってくるかわからない。だが俺は政には疎いし、口下手だ。ハンスの意見が聞ければと思って」
「スラーレン御三家の話を聞いて私なりに考えていましたが、やはりここは御三家をないがしろに出来ないでしょう。ならば、そのアレイン家のオルコックでいいと思いますが」
「それでいくか」
雅則とハンスは飛行船でオルコックを招待し、面談をして国王に推薦出来るか見極めることにした。
そしてオルコックとの面談の日になった。
◇
普段、宮殿の監視を頼んでいるイビルにもメイド服を着せて対応させているが
「馬子にも衣裳って言うんじゃなかった? 人族は」
と雅則はイビルに言われてしまった。
「イビルも人族の言葉には興味があるようだな。しかし、ワリキュールの人族はそういうこと言うか?」
「ハーロックが教えてくれたんじゃない。いつだったか忘れたけど」
「そうか。・・俺も覚えてないけど」
「話がこじれたらどうするの?」
「その時はその時だ。ヒュンケルと相談しよう」
ずぼらな性格でもある雅則は対面で話をするのも苦手だ。しかし今日は今後のスラーレンにとって重要な面談を行わなければならない。
雅則はオルコックが待つ応接室に向かった。いつもなら好き勝手な行動をとっている雅則も、緊張が解けず、足も重く感じる。
◇
応接室に入っていくと、オルコックとリンメイ、それにハンスが居た。
「ハーロック伯爵だ」
雅則が挨拶すると、オルコックは「え?」という顔をした。
「あなたがハーロック伯爵?」
璃々しさは全く感じなく、そこいらの若造が貴族の服を着せ替え人形のように着ているような印象だった。
「ただのハーロックでいいよ。話は苦手だし」
雅則は、もう疲れたような顔をして椅子に座った。
「ほんとうにあなたが貴族街を潰したんですか」
オルコックは信じられない顔で雅則に聞いた。
貴族街を極大魔法でオルコックの館周辺のみ残して焼野原にした。相当の上位魔術師だと思っていた。雅則の登場は、そんなオルコックの意表を突いた。
「そうだ。・・マルケドーラ帝国も俺が潰した。そういう力が俺に備わったようだ。やっぱり怒っているかな?」
「それは・・貴族街には宮殿を襲った兵以外に何の罪もない女、子供も居たんです」
「そうだよね。それに関しては何も言い訳は出来ないよね」
「あなたには人の心があるんですか」
想定していなかったオルコックの言葉。即座には反論出来ない。
「・・ない・・と言っておこう。どんなに言い訳しても多くの人を犠牲にしたのは間違いない」
雅則にそう言われると、オルコックは何も言えなかった。
「しかし、ことの発端はお前の娘のマーラがお前にも秘密に2つの計画を実行したことだ」
今度は雅則が言い返した。
「それはそうだが・・宮殿を襲ったのは、そこには魔王や魔族しか居なかったから・・」
オルコックの言葉は、雅則に「やっぱり」と思わせるに十分だった。
「魔王や魔族なら殺しても構わないと? 人族でなければ殺してもいいということか」
雅則は単刀直入にオルコックに聞いた。
「人族は魔王や魔族とは違う」
オルコックは、はっきり言い切った。
「だから、俺は貴族街を潰した」
「え?・・」
「この世界は人族以外にいろんな生き物が居る。魔族しかり、魔物しかり、俺はそれらの生き物が共存して生きることがいいと思っている。だが、人族は他の生き物を殺したり山に追いやったりして居住範囲を広げて来た。スラーレンも周りに魔族や魔物が居るだろう。それらの命を奪って国を築いてきたんじゃないのか?」
「・・そう・・だと思う」
「自分たちの為に人族じゃないからと殺生するのが人の心なのか?」
雅則は、ちょっと質問がおかしかったか? とも思ったが、言いたいことは同じだ。
「・・・」
オルコックは反論するかと思ったが、言葉が出ないようだった。
「俺は、そういうものは、人族でも許せない」
「・・・」
「俺はワリキュールの兵軍が、姉妹国でもあるイミナスやエレンデル国に進攻してきた時も、容赦なく極大魔法で殲滅した。縁戚でもあるエランデルに進攻してきたイミナスを潰し、魔族に国を治めてもらった。それは人族が身勝手に他国を奪おうとしたからだ。そしてスラーレンの国王を魔王にしたのは、マルケドーラ帝国からスラーレン法国を守るためだった。そのスラーレンの王族も身内で蹴落としあっているそうじゃないか。マーガレットがプロティナを玉座から降ろそうとしたり、お前の娘のマーラとブランド家のドルインが反旗を翻した」
そこまで言われるとオルコックは、さらに何も言えなかった。
「おまえは人族以外を虫けらのように思っているのか?・・もしそうなら・・俺はお前も人としては認めない」
「・・・」
オるコックは反論出来なかった。雅則のいうように人族以外を虫けらと思っていると答えれば人として認めてもらえないだろう。またそうでなければ、他の生き物と共存出来るのか・・オルコックは今まで、そんなことは考えたこともなかった。
「リンメイには悪いが、俺はオルコックを国王に推挙することは出来ない」
雅則は席を立つとハンスに
「オルコックをスラーレンに戻せ。スラーレンを助ける気はない」
と言って応接室を出た。
今後、スラーレン法国がどうなるか、雅則はオルコックとの面談で、どうでもいいと思ってしまった。
リンメイも
「私は・・オルコック様もそういう考えだとは知りませんでした」
とオルコックに言って応接室を出た。




