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異世界に行ったら最強になった  作者: 志良内達夫
第十五章 マリアント国と温泉の危機
182/215

15-2.オルコック・アレイン・スラーレン

 オルコックはドルインたち貴族が宮殿を襲うことを知らなかった。そして貴族街は極大魔法『流星雨』によって壊滅的打撃を受けた。

 しかしオルコックの住むアレイン家は、リンメイが雅則に助けてくれるように懇願して被害を免れた。もちろん、オルコックは知らないことだった。

 そして戻ってきたマーラは自室に籠ってしまった。


 しばらくして、また飛行船が飛んできた。

 飛行船は宮殿の広場に着陸した。そしてタラップを降りてきたのはワリキュール王国の衛兵隊王宮警備隊の10名だった。

「隊長、スラーレン側に襲われることはないですよね」

と同行してきた隊員が隊長のトニールに聞いた。

「貴族街は壊滅し、軍もないらしいから心配ないだろう」

 トニールたちは貴族街で被害を免れたアレイン家の館に向かった。


 オルコックは

「だんなさま、ワリキュール王国の衛兵が来ました」

と執事から言われた。

 オルコックは不安を抱いた。自分の身に危険を感じたからだ。

 しかしオルコックは覚悟を決めてワリキュール王国の衛兵を館に招き入れた。

「私がオルコック・アレイン・スラーレンです」

 挨拶をすると

「私はワリキュール王国衛兵隊王宮警備隊隊長のトニールと申します。今日はオルコック公爵にワリキュール王国への招待状を持ってきました」

とトニールが挨拶した。

「招待状?」

「一度、ワリキュール王国を見てもらいたいことと、我が国のハンス侯爵がお会いしたいとのことです」

「それだけですか?」

「はい。5日ほど後に、飛行船で迎えに来ます。以上」

 ワリキュール王国の衛兵たちは戻っていった。

「首を洗って待っていろということか。・・覚悟を決めるようだな」


 オルコックは自室に籠るマーラの部屋のドアをノックした。

「マーラ。私はワリキュール王国に呼ばれることになった。生きて帰れるかわからない。それだけ言っておく」

 ドアが開いてマーラが顔を見せた。

「お父様。私のせいでこんなことに・・」

「お前を責めるつもりはない。全て私の不徳のいたらなさからだ」

 オルコックは、ワリキュールから迎えが来るのを覚悟して待っていた。


 ◇


 そして飛行船が飛んできた。

 オルコックは以前にスラーレンに飛行船が飛んできたとき、遠くからは見ているが、飛行船に乗るのははじめてだ。空から地上を眺めるのもはじめてだ。その地上に幌がる景色を見て感動する者も居るだろう。しかしオルコックの心境はそれどころではない。なぜ自分はワリキュールに呼ばれるのか。詳細は聞かされていない。

 思い当たるのは、娘のマーラの件だ。マーラは父親であるオルコックに内緒で、とんでもない計画を遂行しようとしていた。

 それは、ワリキュールの国王に嫁いで、ワリキュールをスラーレンの王族で固めること。または魔王ヒュンケルをスラーレンの宮殿から追い出して、スラーレン王家を復活させることだった。

 しかしいずれも計画は失敗し、魔王ハーロックの怒りに触れてスラーレンの貴族街を壊滅させられた。

 マーラがそのような計画を思い立ったのは、心当たりがある。スラーレン法国がプロティナ女王から魔王ヒュンケルに玉座に座る者が替わるとき、王室会議が開かれ、そこに出席したオルコックは、それが魔王ハーロックの働きによるものだったことを知った。

 そして今回、オルコックはワリキュールに招かれるにあたり、その理由や詳しいことは何も教えてもらっていない。


 オルコックは宮殿の広場に足を運んだ。

 飛行船が広場に到着し、タラップが下ろされた。

 そして降りてきたのはリンメイだった。

「リンメイ・・」

「お迎えにあがりました」

「どうしてリンメイが・・」

「私が迎えに行ったほうが、オルコック様も安心するだろうとの配慮です」

 オルコックはリンメイが添乗してきたのに驚き、ちょっと安堵するものがあった。

「リンメイが迎えに来てくれるとは思わなかった」

「私はオルコック様を迎えに行くように言われてきただけです」


 リンメイとオルコックが飛行船に乗り込むと、飛行船は空高く飛び上がった。

 飛行船は焼け野原になった貴族街を眼下に、ワリキュール王国に向かって飛んだ。

「リンメイはワリキュールに住んでいるのか」

「はい。今はハーロック様の館に一緒に・・」

「魔王と?・・まさかリンメイは魔王側についているのか?」

「詳しいことはワリキュールに行って確かめてください」

 リンメイは詳しい話をしてくれない。

 ワリキュールの宮殿行ったら、叱責されるのか、いや、リンメイが一緒ということは、そう悪い話ではないだろうとも思う。ほんとうにただの招待なのだろうか。

 ◇

 数時間ほどでワリキューの街が見えてきた。

 スラーレン法国の街並みも負けてはいなかったが、今は貴族街のエリアはほとんどが壊滅し、見る影もない。

 飛行船が降下していくと、煙を出しながら動いているものが見えた。

 オルコックは

「あれは何?」

とリンメイに聞いた。

「SLというものです。線路の上を走り、多くの人を乗せて移動することが出来ます」

「ワリキュールでは、そんなものもあるんだ」

「ワリキュールの街を一周するものと、エランデル国と繋げたものもあります」

 オルコックはワリキュール王国が想像以上に文化が進んでいる印象を受けた。そして

「ハーロック様たちがつくったらしいです」

とリンメイに言われて

「魔王が?」

とオルコックは驚いた。


 広い空き地のような場所が見えてきた。

「これが空港?・・」

 飛行船も何機かあった。かつては軍隊を持ち、飛行船も戦争用に開発されたものだったと聞いている。それが今は他国との往来に利用している。

 ワリキュール王国にも今は軍隊はない。平和な街らしい。


 飛行船が空港に着陸し、タラップを降りて行くと、空港から宮殿まで向かうのに何かが向かってくる。馬車ではない。

「自動車という乗り物です」

 リンメイが教えてくれる。

 オルコックは言葉がなかった。スラーレンは今でも乗り物と言えば馬車だ。

 聞き慣れないエンジンの音を聞きながら自動車に乗せられて宮殿に向かった。

 そして宮殿に入ると、不思議な明かりが・・。

「あれは魔法の灯りか?」

 オルコックは思わずリンメイに聞いた。

「いえ、電気の灯りだそうです」

「電気?・・魔法ではないのか」

「はい。詳しいことは私にもわかりません。ハーロック様たちが作りました。先ほどの自動車もハーロック様たちが」

「魔王が?・・」

 それにリンメイは何とこたえていいかわからず黙った。


 オルコックは玉座には通されず、控え室に通された。控え室と言っても幾つもあり、オルコックが通された部屋は100畳もある部屋だった。

 そこにイビルがメイドの恰好をして待っていて

「まずはここで一休みください。飲み物も用意してお待ちしていました」

とオルコックに言った。

「リンメイ、どうなっている」

 オルコックはずっと戸惑っていた。

「オルコック様、心配は要りません。私もついています」

「・・わかった」


 しばらく待っていると男が入ってきた。

「オルコック殿。公爵と聞いていますが、間違いありませんか?」

「そうだが・・」

「私はワリキュール国王に仕える侯爵のハンスです」

 そう挨拶されて、オルコックは思い出した。確かにハンス侯爵が会いたいと言っていると、来館したワリキュールの衛兵が言っていた。

「はじめまして・・招待をいただいて、何というか・・」

 オルコックはハンス侯爵と聞いて立ち上がり、直立不動になった。

「突然の招待で驚かれたでしょうか。気楽に願います」

「はい」

 オルコックは肩の力を抜いた。

「今回、国王に面会させる予定はありません」

「え?・・」

「会っていただきたいのはハーロック伯爵です」

「ハーロック伯爵?・・私はハーロックは魔王と聞いているが・・」

 オルコックはまだ理解出来ず、とまどいを隠せなった。

「ハーロック伯爵は、魔王なんかではありません。そしてここワリキュールの貴族ではなく、姉妹国であるエランデル国の伯爵なのです」

「・・・」

「理解には時間がかかると思いますが、今のワリキュールはハーロック伯爵たちによって目覚ましい進化を遂げているのです」

「空から見たSLとかいう乗り物や電気という明かりなどですか?・・」

「その通りです。オルコック殿が聞いている魔王ハーロックというのは仮の名。魔王のような力を持っているということです」

「スラーレンの貴族街を焼け野原にしたのは魔王ハーロックではないのですか? そのハーロック伯爵が魔王のような力を持つ魔術師ということですか?」

「その通りです。それだけ途轍もない力を持っているのです」

「・・ワリキュールから軍隊が無くなったのも、そのハーロック・・伯爵の力で?」

「その通りです。かつての国王は、意に沿わない貴族を粛清し、姉妹国でもあるイミナス国やエランデル国にも進攻した将軍でした。それをハーロック伯爵たちが倒し、ワリキュールを救ってくれたんです」

「聞けば聞くほど、想像していた魔王よりも強い力を持った者・・という印象を受けます」

「その通りなのです」

「ハーロック・・伯爵についてはわかってきました。・・それで、どうして私がここに呼ばれたのでしょう」

「ハーロック伯爵は、スラーレン法国を憂いています。何とかしたいと思っています。そのためにオルコック公爵に相談したいそうです」

「わたしに?・・貴族街を粉々にしたハーロック・・伯爵がスラーレンを憂いている?」

「はい」

「それを信じろと・・」

「それはリンメイも同じ気持ち。ハーロック伯爵は、スラーレン法国をマルケドーラ帝国のように潰したくないのです。スラーレンを救うのに、リンメイがオルコック公爵を押してくれています」

「リンメイが・・」

「オルコック様は、私の父の恩人でもあります。なのでオルコック様のアレイン家は見逃してくれと、ハーロック伯爵に頼みました」

 リンメイはオルコックに憂いの目で言った。

「そういうことだったのか。・・私が至らなかったばかりに、リンメイの父、ブライアンを内政の巻き沿いにしてしまった。リンメイにはすなまいと思っている」

 オルコックからリンメイへの謝罪は、その一言だけだった。


 ◇


 時間を戻す。

 スラーレン法国で、貴族たちが反旗を翻し宮殿を襲ってきた時、ヒュンケルから救援を求められた雅則は、襲ってきた貴族たちと、貴族街を『流星雨』で壊滅させた。

 館に戻ったあとリンメイは部屋に閉じこもってしまった。雅則がスラーレンの貴族街を壊滅させたことがショックだった。

 雅則は美緒からも言われたが、悠介からも心配された。

「リンメイをどうするつもりだ? 前は身体に傷を負ったが、今度は心に傷を負ったようだな」

「いい方法があったら教えてくれ」

「あれば教えている」


 数日してヒュンケルがやってきた。

「相談を聞いてくれるか?」

 雅則に相談に来た。

「俺に? 難しいことは答えられないぞ」

「国王の座を下りたいと思う」

「スラーレン法国のか?」

「俺は国の統治者としての資格がないと思っていたんだ。結局何も出来なかった」

「それはヒュンケルの自由だし、スラーレン法国がどうなろうと知ったことではないが・・」

「俺は元の世界では、平凡な青年だった。夢は夢で終わりにするしかなかった。そんなとき、この世界に転移してきた。そして人を超越した力を持つ魔王としてロワール城に住みついた。

 だが、人は力より器量のほうが重要だと気づくようになった。この世界にはハーロックがわかったようにいろんな種族が居る。腕力や魔法力は、人族より魔族たちのほうがあるかも知れない。しかし人族は他の生き物より知恵がある。だから多少、力が劣っても自分たちの国を作ることが出来て来た。・・しかし俺には、その器量が欠けているのだと思う」

「俺も自分をそう思う。俺自身も国の統治とか世界の支配とか、そんなことは出来ないと思っているし、そうしたいとも思っていない。みんなが平等で、種族を超えて仲良く暮らしてきければ、それでいいと思っている」

「だが、スラーレン法国をこのまま放っておいていいのか、相談に来た」

「俺にも時間をくれ。俺もスラーレン法国には関わってしまったからな」


 ◇


 雅則はリンメイの心に傷をつくってしまったことを悩んでいた。しかし一方で、エドワールの火力発電所も建設を進めなければならない。エドワールとの行き来をしながら、いろいろ考えていた。

 そして雅則はリンメイに

「聞いて欲しいことがある」

と話しかけた。

「スラーレンのことだが、ヒュンケルが国王の座を下りたいらしい」

 それは雅則とヒュンケルの相談事を聴力魔法イヤーアビリティで盗聴していたので、リンメイも知っている。

「スラーレンはこのまま放っておいても俺はかまわないんだが、リンメイの故郷だからな」

「・・・」

「そこで考えたんだが、オルコックに国王になってもらうのはどうかと思って」

「オルコック様に?」

 リンメイはそれを聞いて、どうして?・・と思った。

「スラーレン御三家で残っているのは僅か。そして王位の順はもともとオルコックが二番目だったんだろう? そして性格は温厚・・他に適任者はいるかな?」

「本気でそう考えているんですか?」

「他にいい案があれば聞くけど」

 リンメイは即答出来るほど整理がついていない。しばらく考えたリンメイは雅則に

「オルコック様には何か伝えたんですか?」

と確認した。

「いや・・まだ何もこっちからアクションはとっていない」

「私は・・私も適任者はオルコック様以外は心当たりがありません。もしオルコック様が国王になるなら・・継承の順位でもあるので」

「じゃあ、それで進めていいかな? そのときは手伝って欲しいことがある」


 ◇


 雅則はリンメイを宮殿に連れていった。侯爵のハンスと対面させるためだ。

 ハンスとの対面は、雅則がイビルを通してハンスに伝えておいた。

「ハンス、また迷惑をかける」

「なんの、忙しくはありませんから。イビルからスラーレン法国について私に相談があると聞いていますが」

「うん。力になってほしい」

 リンメイは戸惑っていた。雅則はハーロック伯爵と聞いている。そして目の前に居るのはハンス侯爵。爵位からしてハンスのほうが上だ。しかしハンスが雅則に頭を下げている。

「先に紹介しておく。リンメイ。スラーレン出身の魔術師だ」

 そう聞いてハンスは驚いた顔をした。

「スラーレン騒動では、彼女の力を借りた。今は一緒に住んでもらっている」

「そうですか。了解しました」

 雅則はリンメイを大切な協力者と紹介した。

「相談というのは、スラーレン法国の次期国王を誰にするかといった内容だ」

「え?」

 ハンスは驚いた顔をした。

「スラーレン法国の次期国王をですか? 私が関わっていいのでしょうか?」

「国も違うしね。俺が魔王を国王にしたことで反乱が起きた。そして俺はスラーレンの貴族街を壊滅させてしまった。が、魔王が国王の座を下りたいという。俺もスラーレン法国などどうでもいいと思ったが、リンメイや何人かが仲間になった国でもある。それに隣国。マーラのように今後も誰かがワリキュールに関わってくるかわからない。だが俺はまつりごとには疎いし口下手だ。ハンスの意見が聞ければと思って」

「相談内容はわかりました。そしてスラーレン法国の御三家やプロティナの話もあらかじめ聞いていましたが。・・やはりここは御三家をないがしろには出来ないでしょう」

「そうか。それで次の国王の予定だったアレイン家のオルコックがリンメイが世話になっていた男でもあるようで、見逃してやってはいる」

「ならば、そのアレイン家のオルコックでいいと思います」

「それでいくか。・・でも一度会って、どんな男か確認してからでも遅くはないとも思う。どんな国になるのか関心がないわけではない」


 そして雅則は

「オルコックを飛行船で迎えに行き、ワリキュール宮殿に招待する。そのとき飛行船でオルコックを迎えに行ってきてくれないか」

とリンメイに頼んだ。

「オルコックも不安だろう。リンメイが行けば安心して来てもらえると思う」

「そこまで考えて、私を宮殿に?」

「ハンス侯爵とも顔見知りになってほしかった。宮殿での対応もリンメイに頼みたい。裏方にイビルについてもらう」

「わかりました」


 そしてイビルにも

「宮殿内でメイド服を着てもらえないか?」

と頼んだ。

「どういうこと?」

「スラーレンのシズを思い出して考えたんだけど、オルコックを迎えるとき、イビルも魔術師として表に出ていた方がいいと思って。名案だろう?」

「私にメイド服を着させたいだけなんじゃないの?」

「俺は悠介とは違う。でも・・イビルも美人なんだから似合うんじゃないか?」

「私がおだてにのると思っているの? いいわよ」

「のるのかよ」

 雅則は思わず突っ込んだ。




































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