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異世界に行ったら最強になった  作者: 志良内達夫
第十四章 スラーレン御三家の陰謀
171/215

14-5.策略家

 美緒が発案し、悠介が設計・開発を手掛けた電気、SL、自動車は今のワリキュールの経済の発展に寄与するものになっている。

 電気は主に照明用に使われ、牧場主だったスミスが電力会社を立ち上げた。SLは製造は貴族側の工業団地で造られ、冒険者で御者だったラッセルがワリキュール鉄道の社長を務めている。

 ワリキュール街の外周を回る国内線と、ワリキュール王国とエランデル国を繋ぐ国際線があり、その中間あたりに新街・エドワールも出来た。

 自動車は街の板金屋のトーマスが自動車製造工場まで建設して手掛けている。そして悠介が『サンダース自動車販売』という会社を立ち上げ、営業所もつくった。

 その後、貴族たちも自動車に乗りたいと言い出し、工業団地内でも生産がはじまった。

 そしてエドワールも電気の明かりなどを活用したいとの申請があり、雅則がエドワールに火力発電所をつくるために奔走している。

 ◇

 雅則とスミスは宮殿の応接室に出向いた。そこで火力発電所に関する話し合いが行われた。

 エドワールに建設する火力発電所の基礎は出来つつあった。設計図は雅則が手がけ、そこに建設する建材や器材はワリキュールの工業団地で製造してエドワールに運ぶ計画だ。

 工業団地は製造を担っているだけだ。総合的に手掛けているのはスミス電力だ。


 最初は王宮側からの相談だった。

「もともと軍需産業だった工業団地はハーロック伯爵たちの力で官民複合の工業団地として生まれ変わっっていった。そして今はSLをはじめ、自動車の製造もはじめている。経営学も学び始め、企業として成り立つことが出来るようになった。そこで、いくつかの会社として経営する運びとなった。これからは必要なものを会社が受注して生産していく」

 工業団地経営の総括はハンスのままだが、貴族とか平民とかの垣根を外して従業員を雇い、ゴールドタウン地区には労働者の住居も増えていき、ワリキュールは急速に社会も変わりつつあった。

 ただハンスの悩みは自分たち貴族側に経営に優れた人材が居ないことだった。軍事大国だったワリキュールは貴族側の軍事力は高めていたが、自力で生産性を高めることはしてこなかった。貴族側から蚊帳の外扱いされてきた街の人々は自分たちで自治社会を形成し、生活に必要なものを生み出してきた。

 そんな社会を、雅則たちがやってきてからワリキュールは大きく変化を遂げるようになった。ハンスたちもスミスたちもまだまだ手探り状態だった。


 スミスからも相談があった。

「現在、ワリキュールの電気、電力はスミス電力が手掛けているが、段々手が回らなくなってきた。そのうえエドワールの電気関連も手掛けるとなると人材も不足の状態。そこでハーロック伯爵の提案で、系列会社を設立するか、別会社を立ち上げるか知恵を絞っているところだ」

「ワリキュールの街や貴族エリアの電力は従来通り、スミス電力が主体となり、エドワールは独立して電力会社を設立する。はじめはスミス第二電力会社として面倒を見る。これでどうだろう」

 雅則が提案を出す。それに対し今までも対抗案は期待しても出たことがない。相談の場を持っても、貴族側は今までの驕りとプライドがまだあり、庶民は無知・無能な者が多い。しかも扱うものは今までにない未知のものだ。今回も雅則の提案は採用された。


 会議の後、雅則はハンスから

「これからもハーロック伯爵たちには力を借りるようです」

と言われた。

「それはいいけど、俺が全面に出なくてもワリキュールが発展していくようになればいいと思っている」

 そう、雅則はずぼらなのだ。

「まさか元の世界に戻られるのか?」

「そのほうがいいんじゃないか? そうしたくても、いつ戻れるかはわからないけど」

「ワリキュールはリステル国王が亡くなって、軍事国家ではなくなり、生活環境はいい方向に変わったと思いますが、国の周りには魔族や魔獣がいたり、スラーレンのような他国が、ワリキュールの脅威になることが来るかもしれません。今はハーロック伯爵たちが来てくれてよかったと思っています」

「俺もワリキュールは気に入っているから」


 ◇


 それからまたしばらくして、イビルが夕方、館に戻ってきて

「スラーレンから使者が来たわよ」

と雅則に言った。

「国王からの依頼だって。何でもワリキュールに大使館を置かせてくれって」

「え? 国王ってヒュンケルだよな」

 スラーレンのマーラが親善大使としてワリキュールに来たときも驚いたが、今度はヒュンケルがワリキュールに大使館を置かせてくれ?

 雅則はイビルの話を疑いそうになった。今まで目立った行動を見せなかったヒュンケルが大使館まで考えている?

「今回は国王が使者に即答しないようにハンスが言ってあるみたいだけどぉ」

「どうするの?」

 美緒に言われて

「またスラーレンに行ってヒュンケルに話を聞いてくるか。でも俺は転移魔法は使えないから行くのも面倒なんだよなぁ」

と言うと

「ソアラなら転移魔法が使えるんじゃないの?」

と美緒がソアラに聞いた。

 ソアラは

「異世界転移とか、アリオン申告のような遠い場所は無理ですけど、近くなら可能です。でも・・行ったことのないところは無理です。それに転移魔法を使うと溜めたライフを減らすことになります」

とこたえた。

「それはヒュンケルの転移魔法と違うということか? ヒュンケルは異世界から転移してきて特化しているのか。・・しょうがない。また飛行船で行ってくるか。・・イビル、ハンスに飛行船の用意をしてくれるように、明日、頼んできてくれる?」

「わかった」


 翌日、イビルはまた宮殿に行ってハンスに会った。

「ハーロック様がスラーレンに行きたいから飛行船を準備してくれって」

「大使館の件について、伯爵は何か言っていたか?」

「それを確かめに行くんじゃないの? 大使館の件はハーロック様の返事待ちね」

 ハンスに飛行船の準備をさせると雅則は

「大使館についての返事はスラーレンに行ってきてから考える。今回はリサとコーネリアを連れていく。コーネリアはヒュンケルにも好かれているからな」

というと、コーネリアは嬉しそうだった。


 ◇


 翌朝、飛行船でスラーレンに向かった。

 スラーレンでは・・。

「ヒュンケル様、飛行船が飛んできます」

 シズがヒュンケルに伝えた。


 雅則は飛行船を以前と同じように宮殿内の広場に着地させた。

 そこにヒュンケルとシズが駆けつけるように出てきて出迎えた。

 雅則がリサとコーネリアを連れてタラップを降りていくとヒュンケルが

「コーネリアも来てきれたか」

と嬉しそうな顔をした。

「また突然で悪いけど」

 雅則が言うとヒュンケルは

「連絡の取りようがないから仕方ないだろう。私はそちらに転移出来るようになったがな」

「俺たちが留守をしているときに(館に)来てくれたんだって?」

「ああ、ちょっと会いたくなってな。コーネリアも居なかったのは残念だった」

 ヒュンケルは雅則たちを応接室に通し

「今回はゆっくりしていってもらえるのか?」

と雅則に聞いた。

「いや、ワリキュールは何かと忙しい。新しくつくった街に電気の明かりも灯さなければならない」

「電気事業も進めているのか。スラーレンはいまだ生活は魔法に頼っている」

「それは何処も同じだ。だから電気を作ろうと思って。友達もがんばっている」

「スラーレンもSLや自動車、電気などを取り入れれば、生活環境も変わる。のどかな暮らしも悪くはないがな」

「話は変わるが、こちらから親善大使がやってきたり大使館を建てたいと言ってきた」

「マーラのことだな。実はそれを含めてハーロックに相談しようと思っていたところだ」

「話を聞こう」

「もともとスラーレンは王族が法国として再建したが、そしてスラーレン御三家が居ることも話したが、大神官アスターの陰謀とマルケドーラ帝国の進攻で窮地に立たされたスラーレンはハーロックの力を借りて立て直すことが出来た。しかし魔王である俺が国王になったことで、人族である貴族は宮殿に寄り付かなくなった。だから貴族たちのことはほとんどわからないし、貴族たちは自分たちで何とかやっているようだ。

 しかし御三家のアレイン家の娘、マーラが成人して、俺に親善大使を務めさせてくれと言ってきた。むろん、拒否することではない。貴族たちが国のために働くのは願ってもないことだ。俺がスラーレンにSLを走らせたいと言う思いも聞いているようだ。なので親善大使としてワリキュールに行きたいと申し出てきたので使者を送るとき親書も渡した。

 そしてワリキュールから戻ったマーラが、今度はワリキュールに大使館を設けてワリキュールと密に関係を縮めたいと言ってきた。俺もそれはいいことだと思って承諾した次第だ。あとはワリキュールの返事待ちと言うことで」

「事情はわかった。少し相談しよう」


 シズが応接室に入ってきて

「マーラが目通りを願ってきました」

とヒュンケルに言った。

「来客中だから、あとにしてくれと伝えて」

「それが・・ハーロック伯爵が来られたなら挨拶をしたいと・・」

 それを聞いた雅則は

「飛行船が飛んできたので俺が来たと思ったのか。親善大使としてワリキュールに来て国王に謁見したときの話も聞いた。15歳にしては賢すぎる。ワリキュールについても調べているようだ。しかし俺のことはワリキュールでも秘密にしてあるはず。・・またランケルが口を滑らせたか。・・今日は国王に会いに来ただけだから面会は拒否すると伝えて」

とシズに言った。

「わかりました」

 雅則は思い出したように

「マーラに同行してきたソドルという男を知っているか?」

とヒュンケルに聞いた。

「いや、貴族側のことは何もわからない」

「大神官だったアスターはアリオン神国の者だった。ソドルも怪しい気がする」

「覚えておこう。で、大使館の件はどうしたらいい?」

「マーラが何を考えているのか掴めないが、・・国同士が親交を深めるのは賛成だ。ヒュンケルもスラーレンにSLを走らせたりしたいんだろう?」

「あれはいい。乗せてもらって楽しかった」

「大使館の件は、王宮にも許可を出すよう伝える」

「よろしく。スラーレンにもSLを走らせてみたい」

 ◇

 雅則はワリキュールに戻るとハンスに会い

「大使館の設置は許可を出していい。それと、俺のことはマーラにどう伝えているんだ?」

と聞いた。それにハンスが

「彼女がハーロック伯爵はヒュンケル国王と親しい仲だと言われたので、しかし会わせることは出来なかったので、ハーロック伯爵はエランデル国の貴族だと伝えました」

 そしてまた、雅則の機嫌を損ねたかと冷や汗をかいた。

「そうか。・・そう答えて正解だったかも。しかしマーラは手ごわいかも。要注意人物になるかもな」


 ◇


 その日、飛行船が飛んできたことはスラーレンの貴族たちも確認した。もちろんアレイン家のオルコックやマーラも。

「またワリキュールから誰か来たようだな」

 そう口にした父のオルコックに

「もしかしたらハーロック伯爵かも」

と、マーラは部屋を出て行こうとした。

「何処へ行く?」

「宮殿に。ハーロック伯爵に会えるかも知れないわ」

 マーラはワリキュール国王に謁見したとき、ハンスが

「ハーロック伯爵はエランデル国の伯爵です」

と言ったのを聞き逃さなかった。


 マーラは宮殿に向かった。そして宮廷内の広場に降り立った飛行船を見て

「こんな大きな空飛ぶ船で、他国を攻めたことがあるのね」

とつぶやいた。

 それから宮殿に入り国王との謁見を申し出ると、シズがやってきた。マーラはシズの正体をまだ知らないでいた。シズがメイド服なのも違和感があった。そしてシズに

「ハーロック伯爵が来たのなら、挨拶をしたいと思って」

と言うと、シズは

「聞いてきます」

と一旦下がり、戻ってくると

「ハーロック伯爵は、今日は国王に会いに来たので、他の者とは会わないそうです」

とマーラに伝えた。

 仕方ない顔をしてアレイン家に戻ると、ソドルが姿を現した。

「ハーロック伯爵に面会を断られたわ」

「どのような人物なのでしょう」

「わからないけど。・・もしかしたら策略家かも知れない。ワリキュール王国の姉妹国であるエランデル国の伯爵というのも気になるわ」

「既にワリキュール王国にハユナとマユナを潜入させていますが、エランデル国についても調べさせましょう」

 マーラはソドルに「まだ調べていないの?」とイラつく心を抑えて

「大使館はなんとしても設置しないと。そのほうが情報は得やすいから。エランデル国についても急いで」

とソドルに言った。







































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