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幕間・宮條の目覚め、そして新たな風

 音楽番組の生放送が終わった翌日。俺は病室で、目を覚ました。

「……ここは」

 窓から差す光が眩しく、俺は起き上がってすぐ、額の前に手をかざした。そして、私服姿の羽瀬達三人が、こちらを見てすたすたと寄ってきた。新井がレジ袋を持っている。どうやら俺のお見舞いの品を買いに行って、丁度帰ってきたらしい。

「宮條! 目、覚ましたのか!」

「良かったにゃああああ……!!」

「朝からうるさいな。お見舞いの品がスーパーの食料品なのはまだしも、何故エコバッグじゃない? 地球的に宜しくないな」

「あー、やっぱいつも通りの宮條だわー」

 腰にぎゅ~っと顔を押し付けながら抱き付く猫田を無視し、俺に対して皮肉を言う新井。不機嫌そうに頬を膨らましていた。

「宮條くん。……起きて早々なんだけど、大事なお知らせがあって」

「? 何だ」

 すると羽瀬のその言葉に、他の二人の顔色も、次第に暗くなっていく。

 その時点で、嫌な予感はしていたのかもしれない。少し黙り込んだ後、羽瀬はこう言った。


「宮條くんの妹――昨日の夜に亡くなったって」


「…………」

 彼は少し経って目を見開き、その意味を理解した。

 長い沈黙が続く。何も言えないメンバーは、彼が何かを発するまで、じっと待つことにした。

「……何で知った」

「宮條くんが倒れたすぐ後、楽屋に置いてあった宮條くんのスマホから着信があって。代わりに僕が出た時……その時に知って」

「……そうか」

 俺はそれを聞き、頭の中が空っぽになった。猫田が心配そうに、こちらを覗き込んでくる。

「……フッ」

 急に口角が上がったと思えば、俺は不意に――落涙していた。

 いくつもの涙で布団は濡れ、悲しみで歪んだ顔は、誰も見た事が無い一面だったのだろう。

 その様子を間近で見た猫田も、思わず涙を溢し、ぎゅっと彼を抱く。

「――容体が急変する前まで、テレビを見てたらしくて。『あのアイドルは、私の自慢のお兄ちゃんです』って。最後に看護師さんに笑って自慢してた、って聞きました」

 羽瀬がその事を言うと、俺は泣きながら、

「っ……迷惑な、妹だ……」

 と、頬を緩める。彼が泣き止むその時まで、猫田は慰めようとして、ずっと抱き続けていた。



「ねーねー。今マジでタピオカ食べたい」

「あー分かる! どうする、るりり?」

「え? えっと、僕は……っ」

 若者女子3人組。都会を歩きながら、真ん中の淡いイエローのロングヘアをした子に、黒髪の子が訊ねる。

 正直、真ん中の彼女は目立っていて、少し緊張しているように見えた。そんな時。

「――あ。あれ見てイケメン! えーと、名前何だったけ?」

 電気屋の横を歩いている途中、見本商品のテレビに、ニュース特集でとある4人組男性アイドルの姿が映っていた。

「え、忘れたの!?『ばーちゃLimit!』だよー! 今すっごい流行ってるんだよ? オリジナルグッズも秒で売れたし。あ、私はにゃーた推しね?」

「はあ? ちょっと変わってるね? あたしは断然、トモくん推し! だって爽やか系イケメンだもん!」

 2人が軽く議論している横で、さっきの内気な女の子は、画面に映る彼らを見ていた。――特に、センターの羽瀬。自分と同じ匂いがして、瞳を輝かせて、こう呟く。

「……僕も、踊りたいなぁ」

 それと同時に、「行くよ~!」と他の女子に手招きされ、彼女……いや、「彼」はその場を立ち去っていった。

 ……そして、入れ違いのように、真っ黒なフードに包まれた男が現れ、笑顔を浮かべていた彼らを、テレビ越しに睨んで呟いていた。

「ふざけるな――三流のアイドルは、スキャンダルで地獄に落ちろ」


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