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第4話 近づいてくる恐怖

【謝罪】


一話から書かれていた紅城の結月に対する恋心とその描写を削除しました。

なお、結月から紅城に対する恋心は変わってしていません。


「なぁ親父、メリーさんの詳細について教えてくれ」


 俺は家に帰ってすぐさま親父に話を聞きに行った。


「そうか、もう現れたか」


 親父はそう告げる。もう、ってことは本当ならもう少し後だったってことか?


「それってどういう────」


「一つお前に伝えておくことがある」


 俺が問いかけようとすると、親父はこちらに顔を向けてそう言ってきた。


「お前が持っていた要石、それは大昔に神威(かむい)瑛司(えいじ)という千年に一度の天才が置いていったとされる、とても重要な石だ。それには彼が持っていたエネルギーが存分に込められている」


 俺があの時に感じた力の流れはそういうことだったのか。何のエネルギーなんだろうと気になっていたがようやく謎が解けた。


「俺はそれを吸収したってこと?」


「それもそうだが、お前自身の妖力も目覚めたはずだ」


「それって結構重要な情報じゃない?」


「まぁな」


 おいおい、そういうのは早く言ってくれよ。自分が妖力を持っていることは知ってたし、きっかけが多分それだとは思っていたけど、早めに教えてほしかった。


 いや、聞かなかった俺が悪いか。


「てか、俺がそんなの持ってていいの?」


 要石がとても重要な物だとは理解したが、それをただの高校生が持ってもいいものなんだろうか?元に戻せと言われたところで取り出すことはできないし、どうしようもないのだが。


「あれは動かせないし、吸収なんてできる代物じゃないはずなんだ。俺や他の陰陽師、そのまた上層部の方でも色々研究しようとした。だが、動かすことはおろか、調べることすらできなかった」


 何かしらの力が働いているのは間違いないのだが、なら尚更なぜ俺が要石を吸収できたのかという疑問が残る。そう言えば……。


「俺が来る前にあの要石は”白虎”とか言われてた奴が持ってたけど、やばい奴なの?」


「……さあ、な。」


 言葉を濁した親父。なにか知っているな?でも、俺には教えられない理由がありそうだ。


「言える時が来たら教えてくれよ?」


「すまん、もちろんだ」


 少しバツが悪そうな顔をした親父。


「ただしこれだけは言っておく。いいか、アイツ()とは絶対に戦うな。今のお前では手も足も出ないからな」


 また変な情報が入ってきたよ。それと、一つ気になったことがある。親父の話の中で、俺は”白虎”とは口にしたが、親父はアイツ()と言っていた。つまり白虎は組織の名前か?


「白虎は何かのグループなの?」


「……じき分かる」


 どうしても言えないらしい。


 親父はそれ以上何も言わないと思っていたが、また口を開いた。


「もう一度言うぞ。絶対に手を出すな」


「……分かったよ、親父」


 親父はいつにもまして真剣な表情だった。


「それと、アイツらの目的は不明だが、この要石を探しているのだけは分かっておる」


 これはまじでやばいやつだ。さっさとこの要石をなんとかしないと争いに巻き込まれる。正直手放せるなら手放したいが、それができないことは分かっている。


「そんな物を俺が?」


「お前がそれを手にした事自体に何かしらの意味があるはずだ。だから、無くすなよ?」


「無くさねぇよ」


 俺は決意を胸に親父にそう言った。

 

「さて本題に行こう。メリーさんについてだが、あれは別に強くない」


「えぇ?」


 口裂け女と同じ都市伝説なんだからてっきり化け物みたいな強さかと思っていたが、都市伝説の中でも強弱があるのは当然のことか。


「少し鍛えた今のお前なら苦戦はすれど、勝てるはずだ。今のお前はまだ妖力を多少扱えるだけだが、それでも十分通用する」


「なんだ。なら、気長に待つか」


 噂通りの怪異なら電話で場所を知らせてくれるんだし、まだ時間はありそうだ。


「ただ、そいつの持ってる天恵は、呪いの”(じゅ)”に移動の”()”で【呪移(じゅい)】」


「推測するに瞬間移動ってところかな?」


 俺は移動という単語から推測したことを言葉にする。


「相手に教えた場所に移動するって能力なんだが、近くになら()()()移動できる。連続して使えはしないが、それを頭に入れとけ」


 瞬時に後ろに回られでもしたら厄介そうだな。


「了解」


 俺が父にそう伝えた次の瞬間、スマートフォンが鳴った。確認するが、文字化けしていて誰からかかってきたのかが分からない。でも、この感じからして相手は十中八九、あいつだろう……。そう思いながら俺は電話に出た。


「────」


 耳に当てているがスピーカーからは何も聞こえない。


「──ン、──カ─、カンカンカンカン、」


 耳を凝らして聞いていると、何か音がしているのに気付いた。よく聞いてみると、それは踏切の音だった。


 間違い電話か?と思ったその時、スピーカーから女の声が聞こえた。

 

「私、メリーさん。今〇〇駅にいるの」


 近くの駅の名前だ。


 だが、これを聞いても前のような恐怖はない。色々訓練もしたし、自信がついたってことかな?


「来るよ、親父」


 俺のその言葉に、親父は一瞬だけ苦しい顔をしたあと、いつもの表情に戻った。


「……そうか。ならこいつを使え」


 親父はそう言って、俺に刀を投げ渡した。


 ***


 俺は唯一人、神社の開けたところに佇んでいた。俺の家は神社の敷地の真隣にあるため、ここまで来るのに時間は殆どかからなかった。


 俺はまだ陰陽師でいうところのひよこクラスらしい。魔法に近い神術?とやらや、スキルとかに近い天恵?がまだ発現していない様子。ある程度体に妖力が馴染むと、加護が目覚めてどうのこうの言っていた。


 うん、専門用語が難しくて覚えてない。まぁ、どうにかなるか。今の俺が使えるもの以外を考えたってしょうがないんだし。


 中々こないメリーさんにしびれを切らしていた俺はいろいろなことを考えていると、不意に電話がなった。


 一呼吸置いてから俺は電話を取った。


「私、メリーさん。今神社の前にいるの」


「なら早く来い。こっちはいつでもオッケーだ」


「そう。なら、私、メリーさん。今アナタの後ろにいるの」


 突如後ろからどす黒い気配が立ち込めた。来いとは言ったけど、まさかこんなに早く来るとは思ってなかった。いやはや、失敗失敗。


「んじゃ、やるとしますか」


 そう言って俺は鞘から刀を抜いた。剥き出しになった刀身は月の明かりに照らされて輝いている。神社に祀られていたこの刀は親父が陰陽師のときに長年使っていた相棒らしく、手入れも怠っていないため耐久性が高いとか親父は言っていた。


 前に口裂け女と戦ったときにも使っていたこれを今回は俺が使わせてもらう。

 

 準備が整った俺が振り返るとそこには小さな人形が立っていた。そして、その右手には背丈に合わない包丁を持っている。


「私、メリーさん」


 メリーさんはそう言いながら、ナイフを俺に突き刺そうとしてきた。距離が近すぎて刀は振れない。一直線で向かってきたメリーさんを横に避けた後、蹴り飛ばす。蹴った感覚はそこまで固くはない。刀が掠りでもすればすぐに倒せそうだ。


 そう思っていると、メリーさんが消えた。


 これは親父の言っていた瞬間移動!?


「後ろかッ!?」 


 天恵を使って移動したメリーさん、それに気付いた俺の背中に電撃のような感覚が走った。着ていた服に赤黒いシミが広がる。


「痛っっっっっって!?」


 親父から天恵について聞いていたお陰で避けることはできたが、わずかに掠ったところから今まで味わったことがないほどの激痛が体を襲う。それでも無理やり体を動かしてその場から距離を取った。何が簡単に倒せるんだよ親父!?あんなの知らなかったら対処できないわ!?


「私、メリーさん。アナタを迎えに来たの」


 声は後ろから、つまりメリーさんからだ。迎えに来ただと?そんなのは頼んでないし、いらない。


「一応どこに向かうのか聞いても?」


「地獄へ、私、と、いきましょう?」


 俺はまた振り返り、その姿を視界に捉える。そして、少しずつ後ずさりを始めた。


「そう。なら、力ずく」


 俺は断ったが、メリーさんはやる気らしい。さて、今の俺は致命的な傷は負ってない。体は自由に動きそうだ。


 ただ、あいつがまともにやり合ってくれそうなやつじゃないのは分かっている。


 だからこそ、天恵を聞いたときから()()は使えるのではないかと思っていることを試してみよう。


「着いてくるなよッ!!」


 俺はそう言って走り出した。向かった先は神社の林。


「私、から、逃げられると?」


 走っていた俺の後ろからメリーさんの声が聞こえた、がすぐさま遠ざかる。やはり、あいつの瞬間移動は動いているやつに有効じゃないみたいだな。


 走り出して数十秒、無事にメリーさんの瞬間移動から何度か逃れて森に入った。息を整えるために、()()()場所で足を止める。その後ろには大樹が佇んでいる。


「こうすればもう瞬間移動はできないはず」 


 俺は荒れた呼吸を落ち着かせるために刀を地面に差して一息ついた。


 俺はどこかで見たことがあるメリーさんの対処法を試してみた。メリーさんが後ろに移動したときに後ろが壁だと埋まってしまう説の検証。俺の予想だとめり込むことはなく、そもそも移動できないのではないか。そして、俺の作戦が正しいのならば……。


 ────その時、小さな西洋人形が紅城の前に現れた。


「私、好きなところに移動できるのよ?」


 メリーさんは包丁の先を紅城に向けてそう言った。木々の隙間から漏れる月明かりに照らされた包丁(それ)は、紅城に刺さる寸前で止まった。


「────だから、利用した」


 紅城の言葉とともに、メリーさんの顔に大きく亀裂が入る。


 メリーさんが現れるや否や、すぐさま刀を握り直してそれを上へと振るっていた紅城。メリーさんの顔に当たった刃先は脆い肌を断ち斬った。目は片方落ち、ぼろぼろになった人形が地面には落ちている。


 この間およそ一秒。


 林に逃げ込む前に考えていた作戦。それは、無知なフリをして林に逃げ込み、後ろに移動できないようにした後、前に現れるメリーさんを斬り祓うというもの。


 そして、その策は無事成功したのだった。


「隙を見せたら油断してくれると思ったよ」


 俺は下で倒れている人形に言った。


 これで全て解決した。そう思った次の瞬間、人形の口が開いた。


「私、メリーさん。今、結月の家の前にいるの」


 煙のように消えたように人形は、その言葉だけを残していった。

【要石について】

最強の陰陽師である神威瑛司が無くなる前に残した遺産であり、日本の怪異による被害を減らすために、自身の持つ力を限界まで注いだもの。怪異の発生を著しく減少させる効果を持つが、時の流れにより効果は弱まっているものの、未だにエネルギーは大量に保存されていた。それ自体触れることすら本来は不可能だが、紅城はなぜか触ることができた。

また、要石は複数存在するものの、紅城が見つけたもの以外の行方は分からなくなっている。


【IF:現陰との関連性】

世界線は一切共有していませんし、その人の人生もこの話とは全く違います。ですが、やりたいことや雰囲気は似ているので、時間がありましたら”七楽丸井”から飛んでそちらの方も読んでいただけると幸いです。


【紅城達の年齢】

高校二年生、多分(今のところ)

今度作中で言及します。


【報告】

ここ数週間かけて、キャラの背景を増す予定。がんばります。

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