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第三話

 新しい学院に行く朝になりました。


 カリカリとパンを口に入れてお水で柔らかくして飲み込みます。


「今日は酸っぱくはありませんね、いつもよりも柔らかいです、学院に行く前にテラスへは行けるでしょうか、七日ほどリスさんにお会い出来ていませんから、心配ですわ」


 私は、いつもよりも大きめに残したパンをハンカチに包み、制服のスカートのポケットに忍ばせます。


 今日は、居間(モーニングルーム)から行かずに、外を回ってテラスに向かいます。


 裏の使用人用のドアから外に出ようと少し開けたところ、外には父が使用人に穴を掘らせていました。


「よし、その紙の束をそこに埋めておけ、この事は他言無用だ、さっさとしないか!」


「ひ、ひぃ、わ、分かりました」


 使用人は足元にあった沢山の紙の束を穴に入れ、土を被せています。


「よし、付いてこい!」


「は、はい」


 父と使用人は、離れの建物に入って行きました。


「これは、もしかして悪い事をやった証拠を······この好機(チャンス)、掘り返さないといけませんわ、掘る道具もそのまま置いてありますから、行きますわよ私!」


 テラスに行くつもりだった事はすっかり忘れてしまいましたが、埋めてすぐでしたので土は柔らかくすぐに掘り返せました。紙束を出し土を戻して、階段下の部屋に紙束を抱えて戻り、ベッドの木箱に入れて隠しておきます。


 木箱を元に戻しシーツを掛けて気が付きました、制服が泥だらけに······でも大丈夫です、予備がもう一枚ありますので急いで着替えましょう。馬車で待つクロノさんの所に足取りも軽く向かいました。


「クロノさん、おはようございます、学院にお願いいたします」


「かしこまりました、レアーお嬢様、少し失礼しますね」


「きゃ」


「お顔に土が付いていましたが、何か為さっていたのですか?」


 真っ白なハンカチで、お顔に土が付いていたそうですが、拭いて頂きました。


「うふふ、もしかしたらでございますが、悪い事の証拠を見つけたかも知れません、私のベッドの木箱に隠して来ました」


「本当でございますか! では昼間に私が精査しておきましょう」


 うふふ、クロノさんたら驚いたお顔も素敵です。


 今日一日を過ごす活力が漲ってきますわ。


「よろしくお願いいたしますね、では参りましょうか」


「はい」


 馬車に揺られ、やはり王都内のもう一つの学院の様です。


 小窓から見た学院は、パラパラとですが大きな木があり、その高い場所に鳥の巣があります。


「うふふ、どんな鳥さんが居るのかしら、とても大きな巣ですこと、私なら簡単に入れますわね、さぞ大きな鳥さんでしょう、背中に乗せて飛んで頂きたいですわね、うふふ」


「あの巣にはエンペラーイーグルが居るそうですが、居ませんね」


「まあまあ、あのドラゴンより飛ぶのが速いといわれるエンペラーイーグルさんですのね、お会いしてみたかったです」


「あははは、レアーお嬢様、パクリと(かじ)られてしまいますよ、おっと、お話はまた帰り道にでも、到着しました」


「ありがとうございます、行って参ります」


「お気を付けて、お昼前にまたここにおいで下さいませ」


「はい」


 まずは、職員棟で先生様のところでしたわね。


 良かったですわ、クロノさんに取り寄せて貰った学院内の地図のお蔭で迷わず来ることが出来ました。


「失礼します。レアーと申します。本日よりお世話になりますのでどうか、よろしくお願いいたします」


 ここで軽く会釈を、練習通り上手く挨拶は出来ました。


 先生方が、小さな声で私を見ながら何かを言っておりますが、駄目だったのでしょうか?


・・(おい)・・・・(あの娘が)・・・・(王子様の)


・・・・・(お可哀想に)


「私が担任の、ローグガオナーだ」


 た、担任の先生です。


「ローグガオナー様ですね、レアーと申します。よろしくお願いいたします」


 はぁぁ、こ、怖い顔をしていらっしゃいますわ、そうでした、こ、今度は深くでしたわね。


「よし、付いてくるがよい」


「はい」


 教室まで案内をして頂ける様ですが、何故でしょうか、私、とても怖いですわ。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「おい、あのローグガオナーって王子様が無理やりねじ込んできた奴だよな」


「そうですね、公爵令嬢様に対する姿勢では無いですし、大丈夫でしょうか」


「学院長もこの夏からいきなり代わられたからどの様な人事をなさったのか」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「ここが教室だ、貴様の席はあの窓際の一番後ろだ、さっさと行け!」


「は、はい、分かりました、ありがとうございます」


 ど、どうしましょう! 私、この先生の元でやっていけるのでしょうか、初日から多難でございます。


 まずは私の席に着いてから考えましょう。


 窓際の一番後ろですわね、ありました、あっ、ここからならあの大きな鳥の巣が見えますわ、エンペラーイーグルさんが帰ってきた時には、見ることは出来そうです。


 あら、椅子が少しカタカタしますが、壊れる様な事は無さそうですわね。


 それに、王子様は教室の真ん中の席の様ですわね、あの頑丈そうな椅子は間違い無さそうです。


 少しでも離れておけるなら幸いです。


 鳥の巣を眺めていると、王子様が乗った馬車が見えました、来てしまった様です、クロノさん、私に力を。


 目を閉じ、目蓋の裏にクロノさんの笑顔を映し出す。


 勇気と力が湧いてきます。


 頑張れ私!


 暫くして、王子が教室に入って来た。


 私は、今まで通り床に跪き頭を垂れます。


「なぜ跪き頭を垂れておらん! 貴様ら不敬罪にして欲しいのか!」


 ああ、皆さんは、知らなかったのですね、は、早く跪き頭を垂れ無いと本当に不敬罪に処されます。


 私は、心の中で祈ることしか出来ませんでした。


 ガタガタガタ


 椅子や机が鳴る音を聞き、皆さんも動けたと認識したのですが。


「切れ!」


「はっ!」


 え? 今の声はローグガオナー先生様の声でしたわ!


「ぎゃぁぁぁ!」


「棄ててこい目障りだ!」


「はっ!」


「おら立て! グズグズするな! 殺すぞ!」


「ひぃ! ぐがぁぉ」


 声が遠ざかって行きます。


「くそがぁぁぁ!」


 大きな叫び声が廊下から聞こえました。


 程無くして、ローグガオナー先生様がお戻りになりました。


「ローグガオナー、こんな血汚れた所にはおれん、相応(ふさわ)しき部屋に案内せい」


「はっ! 学院長室を王子殿下のために空けてあります、こちらです」


「うむ」


 このまま出ていって下さい! 足音が遠ざかって行きます······聞こえなくなりましたわ。


 はぁぁ、無事に······では無いですが、朝の時間はこれで終わりでしょう。


「なんだよあれ! 先生がなんであいつを切るんだよ! 俺見てくる!」


 走り出し掛けて止まりましたわね、どうしたのでしょうか


「そうだ、回復魔法使える奴はいないか! いたら一緒に来て欲しい!」


「私使えるわ! 急ぎましょう!」


 二人の方が教室を飛び出していった。


 そうですわ、クロノさんに持っておくように言われた、ポーションがあります、私も駆け付けましょう。


 鞄からポーションを取り出し、走り去った二人を追い掛け教室を出てすぐに二人を見付けました。


 今までで一番速く走れたと思います。


「ポーションです! お使い下さい!」


 そう言って、切られた男の人に声を掛けていた人にポーションを差し出す。


「ありがとう! おい! しっかりしろ! ポーションだ、全部飲むんだ!」


 でも切られた男の人は飲み込む力が無いのでしょうか、喉を通らない様です。


「くそ! こうなったら」


 声を掛けていた男の人はポーションを自分の口にふくみ、切られた男の人に口づけをしたのです。


 男の人同士で口づけを······なぜかドキドキして目を離せませんわ······。


 回復魔法を掛けている女の人も、顔を赤くして、その様子をじっと見つめています。


 何度も口にふくみ、口づけを繰り返しています。


「ガホッゲホッ」


「吐き出すな!」


 そしてまた深い口づけを。


「す、スゴいわね、こんな世界があるとは書物で知ってはいたんだけど、実際見ると」


「そ、そうですわね、男の人同士で、お幸せにですわね」


「う、うん、応援するわ、ところで、このポーション高いわよね」


「売れば大金貨と聞いております、貰い物ですのでお気になさらず」


「だ、大金貨! 嘘でしょ! 貰い物!」


「いえ、嘘ではないですよ、確か世界樹の葉が使われているそうです、まだ持ってきてますから一本くらいならお分けしても今日は、半日ですので四本残ってますから足りると思います」


「へ? まだ四本もあるの······」


「おい、金はいつか必ず返すありがとうな」


「げふっ、ああ、助かったぜ、しかしあのやろう何者だ?」


「ゲルド・コション・ピンイン王子様です」


「嘘っ!」


「マジかよ!」


「くそっ! 泣き寝入りしなきゃいけねえのか······」


「あんなのが次期王だなんて」


「よくて衰退だな、はぁぁ、学院辞めようかなぁ、もう一つの学院は貴族しか入れないし、やってられないよな」


 三人の話を聞きながら、それでもここで計画を話す事が出来ない事が心苦しいですわ。


 まだしばらく掛かりますがお待ちしていて下さいませ。


 読んでくれて本当にありがとうございます。


これからも読んでもらえるように頑張ります。









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『頑張って下さい』

『面白いです!』

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