嘘ではない?
さっきまでグルグルとひたすらにロードを続けていたはずの画面が、今見ると
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只今よりそちらに送迎のものを向かわせます。
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真っ暗な画面に青白い文字が浮かんでいた。
いち早く気づいた林田は驚きのあまり、言葉を失い、ただそれを見続けることしかできなかったが、他のメンバー達がそれに気づいた瞬間、オフィスの空気は恐怖に染められた。
「おいおい!冗談ならやめろよ!気色悪い」
先ほどまで皆の意思を光へと導く素晴らしいほどの先導を行った中年の男性の顔は焦りを見せ始めた。
「さてはお前ら2人、明日の会議資料が間に合わなかった口実作ってるだけなんじゃねえのか???
あーあ。騙された騙された。お前らも騙されてる場合じゃないだろ。仕事続けるぞ」
自分のデスクへと振り向く中年の男性の顔は、どこか安心を感じさせる表情と希望を失った絶望を感じさせる表情で入り混じっていた。
それにつられ、ぞろぞろと周りの者達も自分デスクへと戻る中、菊名だけはただその画面を見続け、そっと呟く。
「やっぱり神様はいたんだ…私達みたいな不幸な人間にもチャンスをくれるんだ!!」
ほんの前の菊名の面影はとうにない。
きっと今まではずっと心の中にいた菊名自身が、今回の件がトリガーになって出てきたのだろう。
「菊名。神様なんて…」
「いますよ!!ぜったあい!!」
否定しようとする林田に胸ぐらを掴みながら被せるように自身の考えを肯定した。
その刹那。
なにか糸が切れたかのように、その場にバタリと菊名は倒れた。
「菊名?おい、菊名??大丈夫か??」
疲労が限界を超えたから倒れたのかが、わからない。
なにせこのオフィスではよくあることだからだ。
しかし、いつもと大きく違うのは、
同時に何人も意識を失い始めたところだ。
流石の林田もこれが異常であることに気づく。
「なにが起こってるんだ??」
次々と倒れていくなかまたちを見つつ、なにが原因かを必死に考えたが、
林田もしばらくして意識を失った。