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裸蟲  作者: たたまれた畳
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第八話 まっすぐに伸びるこの道を

 塵芥次郎は、学園の敷地内を歩いていた。何か特別な目的があったのではない。あの腕の正体を探ろうとしているわけでは、無論ない。というより、彼は腕の持ち主を探る必要がなかった。そんなことは、とっくの昔に知っていたからだ。それこそ、知りすぎているほどに。足は自然と生徒会棟の方へ向かっていた。ここは彼の古巣であり、かつての仲間たちがいる場所でもある。そう、彼はかつて、生徒会執行部の役員であったのだ。次郎はぼんやりと生徒会棟を眺めていた。そこに、在りし日の自分を見ているように。


 次郎の背後に、一人の女が立った。すらりとした長身で、タンクトップにパンツルック。その顔つきは、どことなく次郎に似ていた。

「霧ちゃんから聞いてはいたけれど、まさかここにきてるとはね。うじうじしちゃって、未練たらしい。」

さげすむように、冷たく言い放つ。

「ついに始めたんだな、あの人は。そしてあんたたちは、それに手を貸すんだな。姉貴。」

次郎が振り向く。普段からは考えられないような、さみしげな表情である。


 塵芥初と塵芥次郎は双子である。ともに生まれ、ともに育ってきたので、二人は互いの体のほくろの位置まで知っている。アバター能力に目覚める前、二人はいわゆる不良児であった。学園都市の子供たちは一人で育つ。友人はいても、家族はいない。心を許せる人間を持たないことがほとんどだ。だからこそ、毎日学園に来て帰るだけという、無味乾燥で意味の分からない生活に抵抗するだけの精神的土壌がない。孤独の中で知らず知らずに、ただ毎日を漫然と生きることで満足するようにと、自分に暗示をかけてしまう。しかし、二人は違った。生まれたときから、傍らに自分の分身がいた。たとえ切り離されても、心が通うと信じることのできる存在がいた。ゆえに、モノトーンな日常に対し、抗ってやろうという発想に至った。初は、柔軟性とバランス力に優れ、次郎は力が強かった。二人は幼いころから、警備隊といざこざを起こしたり、気に食わないやつらに喧嘩を吹っ掛けたりした。特に目的意識があったわけではない。ただ、有り余るエネルギーと退屈を何かにぶつけようとしただけだ。学園は、彼らに無関心だった。どれほど授業を妨害し、人を殴り、警備隊のロボットを壊しても、誰も彼らをとがめなかった。二人は、ただ叱られたかったのかもしれない。誰かに関心を向けてほしかっただけなのかもしれない。二人の悪ガキは、お互いだけを頼りに、むなしく拳をふるい続けた。


 そんなある日、二人はついに出会った。その男、桐野鮮は、わけのわからない力であっという間に二人をねじ伏せた。二人をいさめ、叱り、励ましてくれた。初めて、自分たちのことを見てくれた。そして、こういったのだ。

「退屈な日々が嫌なら、俺たちと一緒に来ないか?」

当時、鮮はまだ生徒会長ではなく、学園内のトラブルを解決する何でも屋のような活動をしていた。街の見回り、山のごみ拾い、温水プールの監視員。最初は、取るに足らない活動だった。それでも、こうして地道に築いた情報網は、次第に奇妙な事件の情報を彼らにもたらし始めた。アバターがらみの事件である。今より数は少なかったものの、昔からアバター持ちは存在した。そして彼らの中には、傍若無人に力をふるい、周りを傷つけるものもいたのだ。鮮の戦いを見ているうちに、二人もアバター能力を身に着けるに至った。そして、数々の戦闘を潜り抜ける中で、着実に成長していった。最初は鮮、その妹だという霧(なぜかタブレットの中に住んでおり、そこから出てこなかった)、初、次郎の四人だけのチームだったが、次第にメンバーが増えてきた。現場で事故にあい、痛覚を失った元救急隊員。音楽性の違いからバンドメンバーを半殺しにした軽音部員。彼らと戦い、分かりあい、仲間になる。次郎は、そんな刺激的な日々に満足していた。鮮の後ろ、初のとなり。それが、彼の唯一の居場所だった。


 しかし、そんな日々も長くは続かなかった。学園は、鮮の功績を認め、彼とそのチームを学園都市を管理する生徒会執行部に任命した。そのころから鮮は、ほかのメンバーから隠れて誰かと密会を重ねるようになった。次郎は知っていた。その相手が黒いコートを着た奇妙な人物であること。鮮がそいつから気味の悪い仮面を受け取っていること。彼らがこれまで戦ってきたアバター持ちの多くが似たようなものを所持していたこと。そしてそれを、鮮がひそかに、アバター持ちに無理やりかぶせていること。次郎は、桐野鮮という男が好きだった。決して愛想はよくないが、無駄な暴力を振るわず、チームのみなが納得できる選択をしてくれる男だった。画面の中にいる霧を、誰よりも大事にする男だった。次郎の目の前にいる桐野鮮と、彼の知っている桐野鮮がどんどんとかけ離れていった。鮮の後ろで、初のとなり。そこにはもう、次郎が落ち着ける場所はなかった。本来であれば、鮮に直接意見を述べるべきだった。さもなくば、ほかのメンバーがそうしたように鮮を信じてついていくのが本来であったろう。しかし、彼は逃げだした。かつて、次郎は自分のアバターを”漢の鎖”と呼んでいた。しかし、彼はこの時以降この名を捨てた。大事な人が変わってしまったというのに、それをいさめることも信じてついていくこともできなかった。なにが漢だ。なにが漢の鎖だ。次郎はひどい自己嫌悪に襲われた。その日から彼は自分の力を”自己満足の鎖”と呼ぶようになった。半年前のことである。


 自暴自棄になった彼は、かつてのように、この都市全体に八つ当たりをした。警備隊を半壊させ、アバター持ちと見るや無差別に攻撃した。そんな彼を止めたのは、金川密葉だった。

「君、元気いいね。そんなに誰かを殴りたいなら、私を殴ってみなよ。」

憎たらしい笑顔で、頬を差し出す。

次郎はむきになって、何発も密葉を殴りつけた。しかし密葉は顔色一つ変えない。ふと気づくと、彼の拳が透明になっていた。次郎のフラストレーションは、むなしく空を切るだけだった。何時間も無駄な苦労を続け、次郎がさすがに疲れて座り込んだとき、密葉は彼に手を差し伸べてこう言った。

「わかった?ここにあなたの思いを受け止められるものはなにもない。なにやさぐれてるのか知らないけど、良かったらうちに寄っていきなよ。お茶くらい出すからさ。」

以来、次郎は地下の基地の隅で押し黙ってダンベルを挙げている。密葉は何も聞かない。ただ、たまに話しかけてくるだけだ。次郎が初めて基地に行ったとき、そこには密葉、嬉野、東条の三人がすでにいた。その後、天童や望月が参加してきた。以前のチームほど気持ちが通っていたかといわれると、首肯しがたい。リーダー格の密葉がふらふらしているので、団結感は正直ない。天童と望月の一件があるまで、アバター関連の事件を積極的に解決しようという雰囲気すらなかったのだ。それでも、自分勝手な奴ばかりでおよそ統制の取れないチームでも・・・。

「次郎、この件、任せてもいい? お礼にシュークリーム買ってあげるから!」

「ねぇー、いつも何持ち上げてるの?楽しぃ?のーちゃんにも貸して?」

「えー、てかジロ君の筋肉やばーい!!超カチカチじゃん!!」

次郎はいつの間にか、なんとなくそこを気に入っていた。


 だからこそ、卓郎がやってきて、天童が奇妙な仮面を持っていたと話したとき、次郎は葛藤した。生徒会執行部は、鮮は、いまだにあの怪しい黒いコートのやつと組んで、アバター持ちを使嗾しているのだ。今の仲間たちを守るためには、彼の知りうる限りのことを伝え、できるだけ早く鮮たちを倒さなくてはならない。しかし、それはかつての仲間を売ることになる。おまけに生徒会と密葉らがぶつかることとなったなら・・・。次郎は、想像するだけで身震いした。だからこそ、次郎は口をつぐんだ。鮮がたとえ何をしようとしても、初が止めてくれるはずだ。離れていても、初と自分はつながっているはずだ。そう思い込むことで、次郎は現実から目を背けた・・・。


 生徒会棟近くの広場。何人かの学生たちがボールを蹴ったり、会話を楽しんだりして暇をつぶしている。そこにあるベンチの一つに初と次郎はこしかけた。二人がそれぞれベンチの両端に座ったので、不自然な距離ができる。

「そっか。一人一殺か。ずいぶんとまた物騒だね。」

「しかたないでしょ。あの人が言ったことよ。」

「しかたない、か。姉貴、いつからかそれが口癖になったよな。」

「そうだっけ?」

「そうさ。昔はあの人が何しても、そんなこと言わなかった。」

「私が変わったって言いたいの?変わったのはあんたでしょ。私たちは、あの人を信じると決めた。たとえどんなことになってもあの人についていく。それが私達全員の誓いだった。それを曲げたのはあんた。そこから逃げだしたのはあんた。」

「それは否定できない。でも・・・。」

「あの人を止めることが、あの人のためになるって?本気でそう思うなら、なんで今の仲間たちに私たちのことを伝えなかったの?」

「・・・。」

「怖かったんでしょ。私たちとあの人たち、その両方を失うのが。結果、仲間たちは死んで、あなたも双子の姉に殺される。皮肉なもんよね。」

二人は、正面を見たまま話している。双方とも、言葉にあまり感情がこもっていない。本当に無感情なのか、それとも心を押し殺しているのか。次郎本人にすらよくわからなかった。

「始めるよ。私はあんたを乗り越えて、あの人と先に進む。」

「待てよ、まだ準備ができてない。」

そういうと次郎は、すくと立ち上がり、足を踏み鳴らして大声で叫んだ。

「お前たちうるせぇぞ!殴り殺されたいのか!」

周りの学生たちは、怪訝そうな顔でそこから立ち去った。

「やさしいね、あんた。やっぱり変わらないかも。」

「違う。変わらないのはあんただよ、姉貴。」


 広場の中央。二人は背中合わせになると、一歩ずつ歩いていく。西部劇の決闘の様に。一歩、二歩、三歩・・・。五歩歩いたところで、二人が同時に振り返る。

「まっすぐに伸びるこの道を(ウォークザライン)!」

初の両手に、白い棒のようなビジョンが現れる。まるで二刀流の剣術の様に、初はそれをかざしながら次郎の方へ走ってくる。

「自己満足のサティスファクション。」

振り下ろされる白線を次郎は片手で受け止める。右腕には、何か文字が浮かんでいる。次郎はそれを一瞥すると、ふっと笑い、すかさず懐からテーピングを出して、腕に巻きつけた。これで初には、次郎の制約がなんであるかがわからない。

「さすがに止めるか。でもっ!」

初が白線をぐいと引く。次郎の重心がほんの少し前にずれた。瞬間、今度は白線が短くなる。急に力が抜け、次郎の体がふらつく。すかさず、繰り出された白線の突きが、次郎の腹部にめりこむ。しかし、次郎はそれをむんずとつかまえると、初の体ごと持ち上げる。初はくるりと体を回転させて、白線の上に立つと、そこから飛び上がり、次郎の脳天めがけてかかと落としを敢行する。次郎が、初の伸び切った膝に肘鉄を加えようとした瞬間、空中にさらに白線が一本現れる。初はそこで鉄棒選手のように一回転すると、次郎の顔面に膝をたたきこんだ。次郎の体がすこしのけぞる。しかし、彼も負けてはいない。離れ行く初の膝にかみつき、ひるんだ一瞬で、初の伸び切ったもう一本の足を取ろうとする。初は足の下に白線を出して着地。しかし次郎は、その着地ざまを捉え、ドラゴンスクリューでひねり上げる。バランスを崩した初だが、空中で立て直し、ふわりと地面に着地する。

「さすがに、技術は落ちてないね。」

「姉貴こそ。常に会議室に引きこもってる役員様とは思えない。」

昔から、二人はよくこうやってぶつかりげいこをしたものだった。しかし、今日は本番。本物の命の取り合いである。

「やっぱり真正面からだと勝ち目なさそうかな。」

そういうと、右手を高く掲げて、こうさけぶ。

「”ウォークザライン 懐かしき日々(リメンバーデイズ)”!」

すると、二人の足元から、一本の白線が現れた。白線は立体的な形で、下には脚が付いており、二人を地面から1メートルほど上へ持ち上げている。同時に、その周りの地面が赤く染まった。

「子供のころ、帰り道によくやったよね。道路の白線の上以外は火の海だから落ちちゃダメって遊び。懐かしいよねぇ。」

「あぁ、覚えてるよ。その遊びをして、俺が姉貴に勝ったことは一度もない。」


 白線は、平均台ほどの幅しかなく、少しでもバランスを崩すとすぐ落ちてしまう。落ち葉がひらりと地面に落ちると、とたんに燃え尽きた。周囲半径20メートルの地面は、火の海に変わっている!初は平均台の上を連続で側転しながら、勢いよく次郎の方へむかう。と、思うと、フィギュアスケート選手の様に空中でくるくると回る。ちょうど彼女の体と日の光が重なり、次郎の目がくらむ。初はそのすきに足を次郎の首に巻き付けると、ヘッドシザースの要領で投げ飛ばそうとする。しかし、次郎はギリギリのところで初の足をつかんでこれを阻止。二人はバランスを崩して、平均台の上に落下した。次郎の足が平均台からはみ出て、地面につきそうになる。みると両足のつま先が地面にあたって焼けきれ、消滅している。

「うぐっ!」

余りの激痛にうめき声をあげながらも、何とか体勢を立て直し、全身が落下することを防ぐ。

「おー、すごいすごい。よく立て直したねぇ。」

初は片手逆立ちで平均台の上に残っている。そのまま両手での逆立ちに切り替えると、背中を向け、後ろ蹴りを繰り出す。次郎は両手でガードする。初は空中に白線を出すと、そこに足をかけて回り、ガードのさらに奥、つむじのあたりにつま先で強烈な蹴りを入れる。次郎は、ふらつきながらもその足をつかみ、膝を関節と逆方向へ折り曲げる。初は苦悶の表情を浮かべつつも、もう片方の足で次郎の顔面を蹴ると、そのまま両足後ろ蹴りで次郎を吹き飛ばし、その勢いで間合いを取って着地する。次郎は平均台に腹をぶつける形で落下した。今度は指先が地面に近づいてしまい、指が数本焼き切れた。素早く背筋を使って起き上がる。

「足と手に負傷。これでパンチもキックも満足に出せない。どうした?汗が噴き出てるよ?お姉ちゃんが拭いてあげようか?」

「過保護なんだよ、うざったい。第一、俺たちは同い年だ。あんたに姉貴面されるいわれはない。」

強がってはいるが、もはや次郎は拳がまともに握れず、まっすぐに立つこともできない。

「そっかー。かわいくない弟だよ本当に!」

初が指を鳴らすと、平均台が浮き上がってきた。みると二人の立つ位置のちょうど中間に短い縦向きの白線が出て、二人の立つ部分を支えている。平均台は、シーソーに変化した!地平が斜めになり、次郎は落ちないようにと両手で平均台をつかむ。初は飛び上がると、渾身の力で自分の立っていた場所に垂直に蹴りを入れた。それにより、反対側に立っていた次郎は、空中高く吹き飛ばされる。あまりの速度に、次郎はバランスをとれない。運よく平均台の上に着地したものの、全身を強く打った。あばらが何本か折れ、体のあちこちに刺さったようだ。もはや逃げることすらできない!

「思い知った?これが誓いから逃げたあんたと、守り通した私の差!」

初が次郎の顔面を踏みつける。しかし、次郎は笑顔を浮かべたままだ。

「シーソーか。姉貴、好きだったよな。昔よく付き合わされた。反対側に何人乗ってても、あんたがそうやって飛び上がって重さをかけてくれるから、重さが釣り合ってな。楽しかったよ。」

「余裕かましてる場合じゃないよ!もう一発!」

「でも、俺は知ってたぜ。姉貴がシーソーでみんなの相手をした後、張り切りすぎてひざを痛めてたこと・・・。痛いのに、つらいのに、平気な顔で強がって・・・。」

初が再び次郎を吹き飛ばそうと飛び上がった瞬間、次郎が、右腕のテーピングを引っ張る。盤石だった初のバランスが崩れた!初が次郎を踏みつけたとき、次郎は初の足にテーピングを巻き付けていた!

「なんの、このくらい・・・。・・・ッ!」

「たしかに、いつもならこの程度じゃあ姉貴はバランスを崩さない。しかし、今、あんたの膝はボロボロだ!それに耐えるだけの力はないと見た!」

次郎の巨体を持ち上げるだけのパワーをシーソーに与えるには、膝に多大な負担がかかる。おまけに、これまで次郎は、膝への攻撃に執着してきた。膝への肘鉄、かみつき、ドラゴンスクリュー、膝関節攻め・・・。次郎は、初をよく知っている。ウォークザラインの強さが、初のバランス能力と不可分であること、そしてバランスの支えているのは彼女の膝関節だということ・・・。ゆえに、膝さえ壊してしまえば、勝機はある!初の体が空中でぐらつく。次郎はテーピングを強くひき、初の体を平均台の上にたたきつけた!

「・・・ッ!!!」

全身を強く打ち、悶絶する初。度重なるダメージで膝はいうことを聞かない。初はもう立ち上がれない!次郎が最後の力を振り絞り、初の前に立つ。このまま拳を叩き込めば次郎の勝利は間違いない!

「さぁ、決着だ。リメンバーデイズを解除しなよ。いくら俺が裏切り者でも、姉を殺したくはない。」

初は次郎をにらみつけたまましばらく黙っていたが、やがてさもおかしそうに笑い始めた。

「殺したくない?殺したくないだって!?そんなのあたしも同じさ、誰が血のつながった双子を殺したがるもんか!誰がかわいい弟を殺したがるもんか!」

初のほほを涙が伝う。泣いている。笑いながら、泣いている。

「けれど、あの人が言ったんだ。お前を殺せって、命に代えても殺せって。それなら、そうするしかないじゃないか!あの頃、生きていることの意味が分からずやさぐれていたあたしたちを拾ってくれたのは誰だ!居場所を与えてくれたのは誰だ!あの日、あの人に生涯ついていくと決めたあの日から、あたしの道は一本しかない。まっすぐに伸びる、この血塗られた道しかない!そこから逃げたお前が、勝手を抜かすなぁぁぁ!」

初はそう叫ぶと、テーピングを引っ張って次郎の体を引き寄せ、彼をがっちりとつかんで自分もろとも平均台から飛び降りた!

「命に代えても、使命を果たす!それがいかなる修羅の道でも!これが私の、私たちの道だぁぁぁ!!」

次郎はかろうじて平均台に足をかけ、落下を防ごうとする。しかし、足先が焼き切れ、まともに力が入らない。今の次郎では二人の体重を支え切れない!次郎は、深く息を吸うと、足に渾身の力を籠め、初を上へ放り投げた!

「なッ!なんで!」

「姉貴の言う通りさ、確かに俺は中途半端だよ。あの人に従いもせず、意見を言うこともせず逃げ出した。姉貴たちと今の仲間、どちらも守りたいなんてわがまま言って、最悪の事態が起きるのを看過した。最低だよ。だがな、だからと言ってあきらめないぜ。今の仲間も、昔の仲間も守れなかった。なら、せめて、自分の姉貴くらいは・・・大好きな姉くらいは守る。」

満足げにニヤリと笑って。

「これこそまさに自己満足・・・。」

初ははっきりと見た。次郎の右腕、自分を押し上げたその腕に刻まれていた文字を!

「姉を守れ」

次郎の体は地面に触れ、一瞬で燃え尽きた。



能力紹介

・アバター名:まっすぐと伸びるこの道を(ウォークザライン)

  能力  :好きな場所に白線を出せる。一度出した白線は数秒で消えてしまい、維持するにはかなりの集中を必要とする。白線は、決して折れない

 ※懐かしき日々(リメンバーデイズ):発動すると半径20メートルにいるすべての人間の足元に平均台が現れ、地面が灼熱になる。地面に近づいたり触れたりすると、体が燃え尽きる。平均台は、ほかの白線と違い、能力を解除するまで消えない。

 マスター :塵芥初



 

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