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幻想の現実≠東方空界霊  作者: 幻将 彼
最終章
60/62

第肆拾漆話 ナガメせし間に いたずらに 我が身ヨにふる

【紅宴】


「やっと来たわね。運命通り遅かったわよ? 我が下僕」

 レミリア・スカーレット、運命を操る程度の能力を持つ吸血鬼。

 正確には突如選択肢系でふとして選ぶみたいなものらしい。

「おまけに、妙にお連れの多い事ね。見た感じ保護者か何か?」

 氷の最強妖精チルノ、名もないしがない大妖精、嫁兼娘兼マスコットのルーミア。



 ―――事の顛末を話すとしよう。長くはなるぞ。

 白玉楼コンビから別れた後、ヤツメウナギを齧り付き乍らブラブラと歩いて居れば、探したぞと言わん秤の大声がする方を見やれば、俺に指差して探されていたのは俺だった事を俺は自覚する。

「アタイの朋友、ヒザマクラ・サレタじゃないか! こんな所に居た!」

 前述話した通りの人物の内の一人、チルノが俺に用が有ったらしい。

 事実と、地味な母音合わせと文字選びが赤点ギリギリ回避の名前、そして堂々朋友呼ばわれに私、一周回って反論出来ない。後、鰻を口に頬張ってるのも一つで。

 朋友と呼ばれる様になった話は、新居の地域探索の時の話です。

 事の顛末の中の事の顛末をざっくり話すと、紅魔館より帰属した点で、配下から朋友にグレードアップしました。この子が朋友と言う言語を取り扱えるなんて感涙に咽ぶ。オーイオイオイオイ。

「チ、チルノちゃん…また名前が変わってない?」

 隣には、サイドテールで髪を結った、見た感じ妖精の類の少女がオロオロと慌てて訂正を促す。彼女は大妖精の大ちゃん。彼女も又配下部類だったが、ちゃんとチルノの友達として、何時でも一緒に居るような姉妹的存在だ。どっちだろうな。

 鰻を食べ尽くし、串はパイロキネシスで灰にして。

「よぉ最強、無事だったか」

「無事? フフン、アタイにとって無事なんて言葉は不要だと言って良い程、今回の異変は楽勝だったわ」

 事妖精の集まる”霧の湖”は火の海に、周囲の森も、赤く燃え盛って居たと、其処で大活躍したのが彼女だ。

 氷の妖精は能力の最大限を駆使して、火の海を氷の盤上へ変貌させ、燃える森も消火し、事態を収縮した。

「そぉーか。お手柄だったな、最強」

「然し称賛されるべき私より、お前の方で宴が盛り上がっているのは何なんだ? 英雄ヒツキに乾杯とみんな口を揃えて呑んでるんだ……」

 ご機嫌斜めな氷精さん、名前言えたね。おめでとう。

「あ、あのヒツキさん……今回の異変騒動で幻想郷を救ってくださり、有難う御座いました」

 礼儀正しさの塊である大妖精、お辞儀をして謝辞を述べる。

「俺は何にもしてねーよ。今晩は、大ちゃん」

 まぁ知らぬ人の客観はそう思えるだろうが、俺は謙虚とか謙遜抜きで英雄呼ばわりされるような事をしたとは小石の斑点程、想っちゃ居ないからね。

「は、はい! こ、こんばんわです…」

 この子は少し俺が苦手と言う怖いイメージを抱いているみたいで。ぎこちなくも溶けるような良い笑顔の挨拶です。

「何―っ?! お前幻想郷を救ったのか?! 何月何日何曜日何時何分何秒何々月が何周したとこで?!」

 否定したいのかガチなのかその一世代前の典型的小学生構文・幻想郷版。

「チルノちゃんが大活躍した時だよ。幻想郷全体を燃やす異変の犯人をやっつけたんだって!」

 やっつけたって言う容姿相応の語彙力に一寸微笑ましく思う吾輩。

「そーなのかー。ヒツキ様はやっぱりそーなのかー」

 語彙がまた一層下がった声が後ろから抱き付かれて、いや、肩車形式で掛けられる。

「よぉルーミア暫く振りだな」

「久しぶりだぞヒツキ様。夜に喰っても良い人類になる算段は付いたかー?」

「付かねーよ、そぐわない事を言うんじゃありません。お前と言う癒しで何時までも過ごしタイこら指を甘噛むなぁ~…」

 頭撫でれば次は口だもんなぁ。


―――チュッ、チュッ、チュパッ、ジュル、チュー…ッ、ペロ、ペロ。


「急に年齢層上がらせる指のテクニカル甘噛み止めて貰えません」

 一応15歳以上指定です。

「何か魚の味がしてるのだ」

 あ~……ヤツメウナギの迹ね。タレが絶妙に効いてんだ。ゴメン汚い手で撫でて。

 とは言えこの絵面やばいでしょうね。実際大ちゃんが顔を赤らめてチルノの目を防いで居る位だから、この事によって大ちゃんがソッチ系の知識に通な事が知らしめ晒された。

「大ちゃん、此れは何だ?」

「見えなくても見えるって能力のやつだよ…!」

 焦燥の余り語彙力のやつ。

「心眼だな」

「ソウデスソレデス新賀上手!」

 大ちゃん落ち着いて。

「心眼か。ところで其奴って、心眼を極めた私でも倒せるか?」

 チルノの話は異変の首謀者の所で止まって居た。更には心眼を既に会得した状態で。

「俺も心眼は低レベルで使えるが、極めても彼奴の速さは一筋縄ではいかない……難しいかもな」

「難しいのか。……あ、そうだ!」

 何かを思い付いたらしい。

「……あ~いや、矢っ張駄目だな。止めとこう」

「んぁ、如何した。その言い方はかえって気になるやつだぜ?」

「でもだって、お前を倒せば―――って考えたんだけど、友達は傷付けられないよな!」

 こんな気持ち良い事を真っ直ぐ言える。

 俺も純粋にこう願いたくなるし、だからこそ俺は此奴をこう呼ぶんだよな。

「それでこそ、最強だ」

 今も尚ルーミアが吟味してる分、チルノの目が隠れて格好付かないで居るんだけどな。



 まぁそんなこんなで「友達同士一緒に回ろう」と、漸っとルーミアが満喫し、その後手を拭いて、大妖精は「長くやりすぎると失明しちゃうから」と言う理由で手を離し、事実は一切知らずの「まぁ私は無限に問題ないけどな」と右手にチルノ、と想いきや気を使ってかの大妖精が右手に、緊張しつつも、ヒツキの手を掴む。

「ヒツキさんの右手は色々消えちゃうって噂だから、チルノちゃんが最強で無くなっちゃうかも!」

 成程…と、チルノは、左手側に回る。

 大妖精は口が上手いなぁ。

 そんな大ちゃんの気持ちを無碍にするようで、然し最強のチルノ様を置いて俺が真ん中とは些かと進言した。

 事、友達だが、右腕とか左腕には頼れる相棒を据え置くモノだぞと、右翼と左翼って言い方も有るとも言えば、

「まぁ今回はお前のえむぶいぴーだからな。寛大なあたいは今回特別に真ん中を譲ってやろう」

 と、歩く。





 ―――して、レミリアの前に現れるこの構図が生まれたと言う理由で。

「レミちゃんどこ行ってたの~。先生探したんだから~」

 更には幻想幼稚園の陽月先生、爆誕。

「バカにしてる事は解ったわ打っ飛ばすわよ?」

「んま、先生をぶっ飛ばすだなんてそんな乱暴な事言っちゃいけません!」

「本当咲夜も居ないし如何してくれようかしらこのゴミクズ……」

 手に力が入るレミリア。

「まぁまぁレミぃ。無礼講なんだし、貴方の命令もきちんと遂行したんだから、お巫山戯は大目に見て、褒美を優先してこその主なんじゃない?」

 と、本を読み乍ら友人を諭す友人。

「……ハァ、解ったわ。先ずは良くやってくれたわね。私の言い付けを守った貴方には、支給金に加えたボーナスと、私直々のプレゼントを与えるわ」

 勤務日時がぼやける程少なかったが、更にお嬢から何か貰えるのか。

 ルーミアを肩から下ろし、三人には一寸待っててくれなと一声掛けて、主の下、膝を付いて贈呈品を待つ。

「此れよ」

 と、何やら包み紙に入った柔らかい物だ。

「……開けても?」

「良いわよ」

 何とか綺麗に開放すれば、中から衣類、広げれば真っ黒のパーカーが姿を現した。

「行き付けの骨董屋で見つけた服よ。聞くとアンタお尋ね者らしいじゃない。その目立つ頭を隠すのに、そのフードとやらは最適でしょう」

 中古品の様な褪せた色で、着込めば袖は穴が開き、親指を通す為のデザインだ。

 そして暑い、冬の防寒にも打って付けだな。

 何より「格好良い」

「そうでしょう。磨きの足りない貴方に私のファッションセンスで少し秤男前さが伸長されたと言う理由ね」

 痛み入りますと、胸に抱える。

「それと……此れはレミリア・スカーレット個人として……貴方に特別なお礼よ……」

「あ、キッスは一寸お子さんの前では過激なので」

「何故でネタ晴らしするのよっ!」

「ハハハハ、馬鹿正直に答えなければ馬鹿を見たのは私だったのに、このおぜう様マジ可愛いですわー」

「その上に鎌を掛けたのね~……もう良いわよっ!」

「それで良いよ。俺にファーストやるなんざぁ、高貴な吸血鬼のお口が汚レ―――」

 逸らした顔向きが強引にもレミリアの方に再び向けられ………




 彼女の柔らかい唇が、額に掛かる。


「―――?!」

「………」

 チルノ以外の幼怪三人と、読書してる魔法使いが、わぁ~…と凝視の顔を赤らめて、チルノは何だと首を傾げて。

 レミリアは、想定外の事に、混乱を隠し切れない。

 油断した所を狙った筈の口が、何時の間にかと言うか、不自然な瞬間挙動を発して、滑る様におでこに向かったのだ。

『誠僭越不躾乍ら申し訳ございません、吸血鬼の御令嬢。このロクデナシたるヌシ様の汚唇は先約済みで御座いまして……』

 と、謎とヌシに対してちゃんと無礼の気を回した内のメイドみたいな出来る神様。

「……フン。吸血鬼に吸われなかった事、何れ後悔するわよ!」

 と、腕組み首を向こうに振って、不貞腐れ気味で元位置に座り込む。

 ……初めて会った時に言った事だが、本当に俺を吸血鬼の眷属にでもしようとしたのだろうかね。


「あらラら、レミィ拗ねちゃった……私からも渡したい物が有るの」

 と、物は小悪魔事こぁちゃんに渡され、小悪魔から俺に渡る。

 物は見て分かる通り、本だ。

「偏見だけど、貴方の好きな冒険譚をあげるわ。二巻丸々ね」

 その二巻は西遊記の上巻と下巻。

 以前、ヒツキが紅魔館に初めて来館した際、パチュリーの図書館で読み耽って居た作品。

「おぉ、ありがとう。暇の時にでも読むよ」

「それが本だからね」

「だな……んぁ?」

 見えない鞄に小口側からしまい込もうとすれば、何かが地面に摺り落ちた。

「何だコレ?」

「! 今其れは読んじゃ駄ムキュッ…!」

 左手を突き出し、圧力壁で迫るパチュリーを抑え込む。

 何だコレと傾げる頃には物は理解出来て居た。漫画だ。然も原画で、纏められて何らかの魔法で本になった、読み切りと言う同人界隈の薄いタイプだ。タイトルは―――

「“東方空界霊とうほうくうかいれい”……」

 作:Patchouli Knowledge


 ―――事、日の本の国の東側に位置しているとされる秘境が”幻想郷”。

 其処に突如として現れた謎の転生転移男が主人公。

 彼には心が無ければ生きる目的が無く死に場所を探して居たが、紅と白が特徴の巫女や白と黒が特徴の魔女と出会う事で活路を見出し、偶然にも現れた異変を起こす悪者が、幻想郷を崩壊させようと強硬策に出る。其処で主人公が不覚にも傷付けられた巫女と魔女を見て、傷付けられた友人の為、悪者に立ち向かい、苦戦しつつも、勝利を収め、無事に幻想郷の平和を保たれる。

 そして最後に、主人公は巫女と魔女に感謝の印に―――。

「……めっちゃ面白いじゃん!」

 この主人公は気に喰わないけど、とは言わず。率直な感想を大声で告げる。

「何、パチェがコレ描いたの? 絵がとても綺麗ね」

 と、右肩に乗っかってる様で蝙蝠の翼でフワフワ飛びながら一緒に見てるレミリア御嬢様もご好評のレビュー。

『下名、物凄くこの主人公好きです。救いようが無い所とか』

 逆に此奴は主人公推しらしい。まぁ男でか女でか見るからって奴かな。

「続きは、続きは無いんですか?! と言うかもっと仔細的に描いて欲しいですこの作品!」

 読み切り作品です左肩に居る大ちゃんさん。

「此処のバトルのトコロ凄いよな、勢いが! 動いてるみたいだ!」

 少年誌を読んでるやつの感想を述べる頭上左側のチルノ。バトルジャンルがお好みなようで。

「この物語は誇張や想像など作り手に寄る客観的視点で描かれ、然し乍らmodelまたはoriginalである人物のRealityに準じて居るnonfiction部分も多々有りその絶妙なBalanceが見事この短編storyにて縮図表現され、ベタ乍らも最後はしっかりとした感動の結末。星五つの中で評価を授ける形で上げるならばそれは、『星は五萬と在るのだから付けるにも付け難し。でも無限に広がるmedia或いは娯楽と言う夜の闇の中、この作品と言うnew starを見つけれて良かった』と感想も加えて言い程文句無しの星五つでしょう」

 物凄く緻密に繊細に饒舌に長々と最大究極銀河系到達高評価を述べた頭上右側に居るルーミアさん……ルーミアさん?!

 漫画を読んだ者達が、余りの知的振りを魅せたルーミアを一斉に凝視する。

「わは~…」

 夜だから幻覚見るわなって感じの(なんだ、何時ものルーミアか……)で漫画に視線を戻す。

 パチュリーは最早動けそうになく、小悪魔の膝元で額に冷えたタオルを乗せて寝込んで居る。

「……ハァ、作者本人の手前、口では簡単にポジティブ感想が言えるでしょうけど、杜撰な所が有るわよね……」

「なーに言ってんだよ図書委員いや、ノーレッジ先生」

「そうですよ。作画ミスってモノがプロでも無い理由ないですよ、生物ですもの」

 幻想郷流の名言。ってか、知ってるな、大妖精。

「そうだな。だから食物連鎖は出来上がる。弱肉は知恵で逃れるか運で強食かだからな」

 チルノさんらしくない、どうでも発言だ。

「そんな細かい所なんて一々見てられないわよ。大スケールで見過ごして凄いって思えるわよ、私は。揚げ足取りは暇な奴がやればいいのよ」

 と、友達にフォローの言葉を掛ける友達。

「不評が欲しけりゃ言ってやるよ。俺はこの主人公が嫌いだよ。言わずもがな」

 同族嫌悪。と言うより同一嫌悪。

「キャラクター一部を覗けば全て完璧だよ。何時から作ってたかによっては製作時間からも凄さを読み取れるぞ」

 少し顔を離すように傾けて、呟く。

「……貴方が倒れた三日の内によ」

「週刊より速いじゃん二、三話投稿できるわ」

 因むと頁は30。

 西遊記の栞として挟まれて居ても解らなかったが、開けば大量の頁数だ、魔法って凄ぇし、彼女が挟んで居ても落ちないように魔法を掛けなかったのは、其処には創作者として矢張り読んで欲しい本音が有ったんだろうね。

「それって凄いの?」

「人間が出来る速さじゃない」

 ガチで。

「兎に角、この世で唯、一冊の超大作だ。有難く重宝にするぜ、先生」

 そして再び、この聖典と呼ぶに相応しき書物を、見えない鞄に仕舞い―――


『パチン!』


 込める事は無く急に漫画は燃えて、反射的に……正確には神の加護の反射で弾かれ、漫画は跡形も無く、灰になった。

「………残念だな」

 パチュリーの火の魔法。指弾きで仕掛けて置いたのだろう。何とも自傷的な作家だろう。

「えぇ、私の作品が、ね。やっぱり私自身が認めない限りはどれも駄作よ」

「そうか……」

 俺含め、皆して残念そうに燃え粕を眺める。

「……何時か最高傑作を出して見せるから。気長に待ってて」

 皆は笑顔を取り戻す。

 俺もそれを聞けて安心だが、彼女は魔法使い、言うに百は越えた超人だ。

「俺が生きている間に出してくれよな」

 さて、これが何時迄と言う規模になる事やら……。



「ああそうだ。おぜう、明日紅魔館組の全員、予定空いてますか?」

「大体暇か仕事してるけど、如何したの?」

 どっちなんだろう。

「まぁ、業務が終え次第、あの子も連れて皆でピクニックと言うか行きたい場所が有りましてね……」

 あの子……レミリアおぜう様の妹君。

「……連れてく必要が有るの?」

「安心してください。彼女が飛びっきり楽しめる場所ですよ。その証拠に―――」

 レミリアの耳元で何かを話す。

「……悪くないわね」

「でしょ?」

「解ったわ。日傘はちゃんと二人分、準備させなきゃね」

「有難うおぜう。行動は出せないが、愛してるぜ☆」

「アンタ寝てる時には気を付けなさいよ」

 吸血鬼が寝込みを襲う。

 まぁ髪神様の前では無意味でしょうがね。グングニルさえ飛ばなければ。



 知人との挨拶で、後残されたグループは”思想家衆”と今回の主犯。

 彼らからは色々と報告を受けなければいけないな……。



【想宴】


 幻想郷中の九割妖怪一割人間たちが神社で飲んで食べてと騒ぐ中、警戒怠る勿れの雰囲気で険しい表情を崩さない思想家集の”Filo-noema(フィロノエマー)”、リーダー、空想家’空雛からひな’、副リーダー、幻想家’風蘭想和不(フランソワズ)’、他二名、理想家’ねい’、夢想家’何時-DINE(ウェンディーネ)’…役職なんか知らん。が各々木を背に凭れ掛かったり舞ったり座ったり、その場に立って居る。

 ……そして、此度、此処”幻想郷”にて、北東西南通して情報源たる『文々。新聞』でも取り上げられた【カソウ異変】…先ず、事”幻想郷”で起こす又は起きる事象を[異変]と括り、今事例としては”幻想郷”の地域、人、自然を火の海に包み、全焼させる事を目的とした事件、その張本人、元凶、首謀者、主犯―――……

 通称”歴史殺し”の異名で各時代を彷徨う稀代の殺人鬼。儘、名を’罰荒無邪童子(ばちあらむじゃどうじ)’。空間を操り、その内部に居る者を必中で仮倒し、条件で攻撃と断定する能力の使い手であり、運動神経が神懸った程に使える身体能力の持ち主…………だった。

 今の彼は、縄で手首足首縛られても、解く事が容易ではない程に、一般人の筋力に等しい弱体で座っている。

 纏めれば空想世界”魔法露場まほろば”出身の者達、明るい宴会とは真逆に、暗いお通夜状態だ。

「楽し―――いえ、皆元気だったでしょ、ヒノヅキくん」

 木に凭れて腕を組み佇み、嫌味さ発言疑惑で炎上回避の言葉を選ぶ空雛。

「空雛、カワイナちゃんに改名しない?」

 体が擦れる。

「グッ―――言われるからには申し分ないけど自分で名乗り上げるのは多方面から見て聞いて腹立つし、不意過ぎの会話支離滅裂過ぎよ。……えっと、ありがとう」

 揉み上げを指で回して照れてる本当に可愛い。

 アイもザネームアグリーメント! とフランソワズ。

 ソワ姉さんクワイエット! とカワヒナ。

「……取り敢えず話を戻して、奇跡的な話よ。今回の大炎上騒動、死人が一人も居なかったそうよ」

 死人……人が集うなら里、あの場が人口の殆どを占めて、炎の海で誰も溺れなかったと言うのは確かに、奇跡だが、都合が良すぎるし、奇妙だ。

「まぁ今回の主犯‘バチアラムジャドウジ’、本名’清澄或日きよすみあるひ’。此奴の仮想能力は壮大で膨大で莫大だけど、大袈裟。仮定なんてタスクで完全犯罪を決めるべく『全員が燃やされる事』を想定に<仮想現実>を展開していたみたいだけど、其れが仇となったわね。対象に『幻想郷の住民全員』って仮定が無理過ぎる話よ。此処は彼岸や冥界が有れば、天空にも住民は居るのにね」

 でも彼、その場所迄手は付けていたみたいよ。と萌が話す。

 え、そうなの? ……じゃあ、そう言う事か。と空雛は納得。

 仇と言う敵の本名を知っても如何でも良く。と内心の俺。

「此処の地理に偉く詳しいな」

 ああでも、思想家ってのは、そう言う現地把握とか出来るのかね。

「そりゃそうよ。私は所謂オタクなんだから、この場所がゲームが元だって、今も不思議体験気分だもん」

「……何だって?」

「ゲームの世界。同人界隈から成り上がって今では独立イベントが一つや二つで飽き足らず出来上がる程に超大手のSTGの世界観が此処よ」

 そのゲーム事がちゃんと地域規模で具現化してるなら、私も消そうなんて考えには至らなかったわよ。と、嘗ての初登場時の心境と事情を話す。

「待て待て待て。じゃあ何だ? 二次元が三次元として確立された世界を俺は異世界転生移行しちまったって事なのか?」

「何なら行動が四次元よね。貴方がその気になれば至る漫画に小説、アニメと言った作品の世界を具現化させれそうよね。羨ましいわ。っと、脱線したわね。兎に角その四次元行動に於ける転異空間のシミュレートが偶然にも私達思想家を集結させるプロセスにも繋がった理由よ」

 其れが何故今回”幻想郷”だったのかと言うのも簡単な話、双方が似て非なる場所だからだろう。俺はこの言葉をシミレーションとして選んだが、その選択は飽く迄心の内に秘めると言う意味で、モノ語を開く意味で。実際の台詞は次に来る。

「思想家……未だ本人の安否確認出来て無いけど、一会もそうなのか?」

「恐らく、とでも言いたいけど、貴方と同棲して居るなら、不確定な空間の穴が何処かしらで開きっ放しだった。なーんて考えも浮かぶけどね」

 もう数日前の事だ。”転生転移輪廻次元(End is Start Point)”のオプションは、使い切りだったから忘れた。忘れる程適当だったんだろう。

「あー後、彼女なら無事よ。”命蓮寺”の人たちと一緒に居たわね」

 まーた知らん勢力の名前が出て来た。寺か。まぁ悪いようにはされないだろうし、無事で何よりだ。

「ま、何にせよ此奴の完璧主義の性格か、少しばかり残って居た他人への温情か、総合して皮肉にも未だ生き残って居た住民に完敗した事で平和は保たれたって事ね」

「ま、仮想だしな」

「貴方の事よ」

「んぁ?」

「戦いの時点で貴方を幻想郷の住民として認められて居たって事よ。此処に居る妖怪や自機組の人たちがね」

 その言葉に、俺は視線を変えて頬を掻く事しか無かった。

 照れ隠しの凌ぎにだが、言葉の最後に疑問を抱く……ジキ? 何だそれは。

「―――所で何か俺たち秤で話してねーか?」

「「だって仲悪いし」」

「だってmarryってくれないんですもの」

 ネイ、ウェンディーネ、フランソワズが同時に話したが何て言ったか解らなかったな。

 嗚呼~仲違い仲違い。

「まあいいや」

「良いのね……」

「それでジキってのは何だ。そんな春夏秋冬で包められる奴らが居るのか?」

「居るけどその『時季』じゃないし、貴方それ地雷じゃないの?」

「だったら今すぐ怒髪天になってるよ、大丈夫だ」

「それなら良いんだけど……ん? 何について話してましたか?」

 お前をカワヒナにする方法。

「ジキ組について」

「嗚呼其れよね。ざっくり言えば、今回貴方の復活喚起に即馳せ参じた歓喜な人達、プラス膝枕してた二人の事よ」

 本当にざっくりだな。

「え? 今何か面白い事言った?」

 寒気が……。

「其処は突かないでよファンタジー世界で『中二病』を発言する程ギルティよ」

 同罪類:午後ティーを午前に飲むくらい。

「ごめんやん」

「―――まぁ言っちゃえばメインヒロイン部類に入りそうな人達ばかりよね。特に霊夢と魔理沙は主人公なんだから、貴方この短期間で良くあんなに好感度上げたわね。二次創作御用達ギャルゲの主人公?」

 日本語でも何言ってるか解らない。

「霊夢なんか一番難しい気がするのに、今や新聞でも取り上げられて居るわよ」

「……何をだ?」

「『博麗の巫女、引退? 英雄との熱愛の可能性?』ですって」

「ふぅ~…ん」

「……嬉しそうね」

「顔に出てたの?」

「ずっとポーカーフェイスね。まぁ貴方の場合、鎌を掛けても物理的に弾かれるわよね」

 だから俺は当たりを引かせない。絶対お前にジョーカー渡す。二対一とか知りません。

「話の前提として空雛、お前初めて会ったやろうを下の名で呼べる?」

 此処の者たちは名乗れば「さくら」と呼ぶ距離感の詰め。

 そうは尋ねるが然して、彼方の彼女だろうと周りは『名前』と略した『本名の建前』で名乗る者達秤、姓と名で分れた奴なんて誰も居ない。

「解らないわね。私は貴方に教えた通りの人だし。でも『東さん』って呼び方だったから確かに最初から呼ぶのは抵抗有るのかもね」

 ‘東月(あずまつき)’、フィロノエマーの創始者にして初代リーダー、男性。

 その人が年上なら恋人でも無ければまぁ敬称付きで苗字で呼ぶが普通か。

「確かに」

 ネイ。

「そうだな」

 ウェンディーネ。

「アイは’ライト’と呼んでましたヨ?」

 フランソワズ。彼女は在日外国人。ニックネーム付けて呼ぶの好きだなとは思うけど、その呼び方は面倒だよ止めて。

「何にせよ参考にならないな」

「霊夢や魔理沙たちに呼ばれたの?」

「まぁ、名乗れば早速……」

「貴方……俺TUEEE系のラブコメ主人公じゃないの? って位、最初から好感度高いじゃないの」

「距離バグだな」

「君と言う男なら下手に手を出しそうな精神ものを良く耐えた精神ものだね」

「オゥシス、事情知る由も無いお方に普通当たる事は無いでしょう失礼ですよ?」

「えっ、ごめんなさいヒノヅキ君」

「バーカ」

 右肘を横に、右手を顎下に構えてサムズダウン。

「ヒドッ…!」

 ネイちゃんじゃなくて姉ちゃんでオルダーシスター略してオウシス。

 そんなOlsisを突如日本語を流暢に話せて咎めるフランソワズだが、何か庇ってくれてありがとう。

 まぁでも怒髪天になるとは情報開示したからな。何なら此奴を撃ったな。まぁでも異変解決赴きに人里向かって隣に居るあの時あの段階では怪しかったし、ブラフに決まっているでしょうそんなキャラを私に理想付けないでくださいフランソワズ。

「本当に仲良くないのね。まぁ其の事はさて置いて、「置かないでネイちゃん悲しむ」如何なの、好きなの?」

「誰を?」

「誰をでもよ。折角幻想郷の住民と個々皆して良好関係なのに、其の儘さよならは勿体無いわよ」

 彼女はさらっと告白しろと促して来た。

 確かに、俺はこの白髪野郎を倒す際にハッキリと想った。

 然し、言葉にするなら、声に出すなら、音に乗せるなら、変化の覚悟がいる。

 上下関係を超えて、主従関係を超えて、師弟関係を超えて、縦の関……全部同義語だな。

 まぁ抽象的に友達関係を超えて、幼馴染関係を超えて、とかも有る。

 誰かだと当て嵌めての思考、無駄な時間だ。取り敢えずこの宴会を見て回って再認識は出来た、何なら増えたかも知れない。曖昧だ、そう言う概念なのかも。

 曖昧と言えば、言っちまうが早苗さんと自分とは如何言う関係なのだろうか。

 何だかんだ話し合って彼女は一方的に寄り添ってくれる感じで、守屋にも行った事は無ければ、かの二柱神様にもこの博麗神社で出会しては居ない。別社が居ても問題は無いのだろう、早苗さんが居る位だ。

 そうだ、博麗神社だ此処は。全く同じ不明関係性で博麗神社の主たる博麗霊夢もそうだ。

 事有る毎に助けられたり闘ったり、一緒に寝たり―――……想い出すんじゃなかった。

 友達と言うには何か違う……親友だとか、超えて恋人を出せば「だった」と一秒で破綻した過去で、想い出したくなかった。此処に通う信仰者と其処の巫女さん、って関係も、何だか冴えない。

 まぁでも、此れは俺の気持ちなのだから。

 そして、彼女が此れでさよならとは言ったが……―――





「別に、帰れば二度と―――なんて寂しい終わりはしねぇよ」


 そうだ、特殊な結界と境界で張り巡らされた”幻想郷”を、たった一度の旅行でもう来ないなんて其れこそ。

 何時だって来てやる、会いに行ってやる。気が向いたら。

 そして向こうの世界に「帰れば」と宣告したから、残りの余生を此処で過ごすんじゃなく、俺の此のパンドラ事を、向こうの世界で蠢くパンドラを集めて終わらせれば、確実に叶うんだ。


「そう。闘うのね。きっと此奴を倒すより大変な事よ?」

 罰荒無邪童子……第二シーズンを終える手前の相手としては不足無い敵だった。

「大変や苦労なんてのは個々の人生にて付き物だよ」

「当然を語るわね」

「まぁでも若し、負けたとなったらの保険に、二名には告げて置くよ」

「へぇ~…ストイックじゃない。最高ね」

 空雛は誰かを察したらしい。

「解るもんだな。あっそうだ、明日…もだが、今も此奴借りてくぜ」

 と、アルヒとか言う男を指す。

「紅魔館組との約束ね。然し何するのよ……」

「其れは秘密だ。ヒントをやるなら『同じで対になって居るが由来』だな」

「なら大丈夫そうね。少なくとも野に離す事はしないわね」

 凄いな、本当に想像力の塊だよ。

「…で、今もってのは?」

 順序良く話してくれる。

「ちょいと此奴と話がしたくてな。寝てた間は知らねぇが、一般人が生活出来るくらいには力を残してる筈だから」

 即席奥義『愚霊・人・存~gray to ZONE~』は、完全絶対必殺奥義『愚霊・人・終日~gray to Ziich~』を少し緩和した技で、魔力とかの外付けアザーパワーを完全無力化し、何なら粗抹消迄に至る、何にせよ必殺奥義だ。

 まぁ、そんな脳内での解説は如何でも良いとして。

「別に構わないわよ。此奴が口を開くなら、ね」

「ああ、大丈夫だ」

「妙な自信ね」

「取り敢えず先ず、お前等此処から離れて貰ってくれねぇか?」

「本当に大丈夫? 若しも後で其奴を逃がしたりしたら、マジでフィロノエマー全員で貴方を消しに行くからね」

 四人は移動しつつ、リーダーが釘を刺す。

「俺への勧誘はもう良いのか」

「カワヒナちゃん。パンパンテュテュくらいにしておきましょう? バイエブリワン」

 あっ、嫌だ。

「其れ位肝に銘じて置けって事よ。……最後に聞かして欲しいんだけど、彼女の事を、貴方は如何想ってる?」

 別れ間際に無粋な事を聞いてくる。

 流行と言うか、年頃と言うか、まぁ俺も同年代ですけど。

「お前に伝える事じゃないよ。方向は変えるけど、俺は幻想郷の奴等なら大体等しく大好きだぜ……」

 と、鬼人の隣に胡坐を掻いて、頬杖をして座り込む。

「フフ、欲張りで浮気者」

「あと空雛、お前もな」

 指をさす。

「ナっ…!」

 彼女は流石の言葉にずっと掴んで肩に掛け乍ら運んでいたお気に入りのハルバードを離してしまった。

 近くにウェンディーネが居たので、少しよろけて「おぉ…」と感心しながらで掴み取ったから良かったものを。

「お前らも、幻想郷宴会を楽しんで来な~…」

 フランソワズは笑顔で手を振り、すぐさま空雛に椎茸の目で問いかける。

「カワヒナちゃん。ソルナと仲良くなる方法って有りますか?」

 空雛は手で顔を隠して答える。

「~ッ。オタクの私に理想を押し付けないでよ……」

「……甘酸っぱいねぇ~…」

 扨てさて彼女たちはどのグループと共に過ごすのか……彼女達なら楽しくやってくれるだろう。空雛は、この世界をメタに知ってる分、解んないけど。

 ま、取り敢えず俺は俺で、此奴と話すとしますか。


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