第肆拾話 その場その道~LIFE~
【使命】
―――然しまぁ、暑いな。
避暑地が在る事は良しとして、何かしら納涼機器、冷房機器が欲しい所という考えはハイテク機能に囲まれた現代児の思考だろうな。
扇風機位なら流れ着いてないかな、昭和後期とかの編み目の薄い奴、危なっかしいぜ。
―――日も良過ぎるところで、美鈴師範の修行は終わる。
激しい運動の後は、息切れと汗だくの最悪コンディションが付き物で、取っ払うべく紅魔館ご提供の、何かの妖怪の毛皮から出来たタオルで汗を拭い、透明なコップに注がれた”玄武の沢”で汲まれた、更に透明の天然水を飲み干し、水分を回復する。
注がれているのか視認出来ないくらいに清いと解る位に、同所の水で造った氷が、火照った身体を冷やす事で寄り引き立てる。
ところで、玄武の沢には河童らが住み着くとされるが、生憎「住所探し」の際にはお見えにならなかったな。
きっと人型×美少女+河童要素(備考:お皿乗っけた位)と言った次第だろうが……ふむ、いや、まぁ、天然違いだろうて、何にせよこの水は濾過と殺菌してるて。
間接吻以上の変態思考を働かせるな。
「おんやぁ~? 今何か今の気温みたくお暑い事を考えて居たかなぁ、パイチー?」
俺は顔色を変えず、一瞬震える事も無く、コップの中の水を飲み干して、喉に送り込む。
「如何してアンタはそう考える。俺は只、飲んで居ただけだぜ?」
「君は何かその様な考えに至ると少し、ほんの少し、須臾の少し、瞼を閉じる癖が見える。きっと厭らしい事を考えて冷静さを保とうとして居た心理動作だ」
此奴、’古明地さとり’より気持ち悪い洞察力を持ってやがる。
悟り妖怪は内側からなのに、外側から、この会話の距離から、頭皮膚に止まった蚊が吸血して腹を拵えてる所が観察出来るかのように、そしてたったそれだけの情報で今度は内側を読みやがる。
これもまた一つの力か、勉強になる。
取り扱えるかは解らないが……心理が本当に真理を突いて居るのか、そんなのは経験則も必要素だと思うね。
実際に彼奴が惚れた女、愚図の創造主が’一会’の実姉に惚れて告げた時の返しがとてもじゃないが酷かった。
読心能力を持って居た癖に、人との付き合いに於いてもカンニングしか出来なかったから。
今一瞬にして彼女の非を掌返したな。
だけど人間の内部構造、身体の仕組みを、解剖しなきゃ解らないのと同じような事だ。
喰った物がどこに辿り着き、どうやって排泄の結末へと辿り着くのか。
無論、杉田玄白の解体新書が死体を用いた事は確かだろうが、だけど丸で俺自身が此れから乃至は時既に、いやぁ事実死体で動いて居るのだから、何て言うかブラックジョークどころかブラックショック、談笑出来ない冗談、肝の冷やしが青褪めるとか気分を鬱蒼にさせる怪談話だ、妖怪ならではなのだろうけど、妖怪ならではなのだろうけどよ。
「物凄く嫌悪感丸出しだね。言い過ぎた」
「イヤ良インダヨ。客観的ニ考エテ何テ言カ他人ノ大変サヲ知ル事ガ出来タ。肉体ダケジャナク精神も強クナッタ気ガスルヨ。有難ウ紅先輩、ソレジャア、オ疲レ様デシタ」
と、辺りを吹き飛ばしそうな位の勢いで私は三分タイマー切れ掛けジュワッと行。
「お、オツカレサマー……」
後に彼女を『気をつかう程度の能力』だと知ったんだが、はて。
「余計な事を言ったら仕留めなさい」と、十六夜咲夜先輩直伝の『時間停止能力』のコツと言うか原理を聞いて出来ない事は無いのだが、折角修行に付き添ってくれたのに恩を仇で返すのは釈然しない奴だよね、ナイフは懐にしまう事にした。
パレットナイフというナチュラル凶器、ちゃんとした使い方をしましょう。
はい、チャプターEND。
【懸命】
―――俺は今、冥界の屋敷”白玉楼”に居た。
八月某日の昼、鍛錬其の二と言う事で、弟子で在る剣士、当屋敷の庭師’魂魄妖夢’に、主である西行寺幽々子も含め、剣術を鍛えて貰っていた。
尚、何かに付けて休み集り食べ集る堕落幽霊で在る、ふよふよ浮く幽霊なのに。
同時進行で、俺の幼馴染が前世で幼馴染なわけがない幼馴染、永遠亭の薬師、玉兎の’鈴仙・優曇華院・イナバ’にも鍛えて貰っている。
拳法を’紅’先輩に。
刀剣を’妖夢’に。
銃弾を’鈴’。
魔術を’魔理沙’にと、一応持ち得る限りの武器の全てを完璧とまで行かずとも、ブレスレットに頼らず扱えるようにしていると言う理由だ。
これを一日のスケジュールとしている。
仕事もしてプライベートは修行と、実に有意義だ。
ブレスレット使用に寄る運動熟知は、一般の筋肉利用と何ら変わり無いのだ。
その上無駄に疲れるのだから、骨折り損の草臥れ儲けも良い処。
「ですが師匠、日頃諸刃での稽古が、真剣へと型を造って居るかと存します。日進月歩です占めて凄いです!」
師匠褒めたくてならないこの弟子、魂魄妖夢は如何してこうも捻り出せるのや。
だが日進月歩の引き出しは気に入った、俺の苗字から相応しい言葉だ、頑張ろう。
「ヒー君はズル頼りでも、ちゃんとその分ツケを払って精錬されて行ってるもんね」
皮肉が利いてるぜ。
「ちゃんと体を労ってよね。はい、薬味おにぎり」
何だこの掌返し幼馴染。
「好きだぁ……」
「はフェッ?!」
選択肢、間違得た。
「隙だらけの眉間突き」
「アイタッ!」
良し、美鈴師範の修行の成果だな。
「ツツツツ……ちょっと、行き成り意味不明な労い無碍止めてよねっ!?」
「危うく聞き逃す処だったが、御握りの具材を何にしたって? ヤクミじゃなしに、クスリアジだと……漢字は合わせて何故感じは合わせない……」
梅干しで在れ。
「そうですよ、師匠は激しい運動の後ですから、多少なりとも、影響は出さない程度に、甘味の摂取が必要なのです」
そうだそうだ流石は最弟子え?
「はい師匠、菓子入り御握りです!」
御握りから離れろぉ~。
別件で菓子入れろぉ~、折れろぉ~。
「師匠の好物とされる”ちょこみんと”成る物は幻想郷には行き付いて居らず、それに近しい和菓子を具材に入れてみました……」
照れながら言う事かお前幽々子姉さんの腹満たし如何してんだよいや真面に作ってるけど何故で私の反れるかなぁ。
「じゃあヒー君!」
「では師匠!」
一斉に竹皮に包まれた御握り二個ずつを、俺の顔の前に差し出す二人。
何故で二人して究極の選択をさせるかなぁと言うかこのドストレメシマズくだりで女キャラに問いたいじゃなしに説いたい、味見しろや。
「因むと私の方を先に食べての奴だからね」
「私のからですよね?」
無駄に学園Comedyのあるある奴を出して来る。
此処って幻想郷ですよね?
えーと、慧音先生が学びの場として子供を集めている場所を寺子屋と言い、飽く迄現代ハイスクール的な何か広々した中庭だとかにシートを敷いて座ってお弁当箱では無しに竹皮拵えてくれて何とメニューは薬味おにぎりと菓子入りおにぎり在る理由ねぇだろこの野郎。
然もお昼休みにこの仕打ちって何だよ畜生。
まぁ丁度って言うか基本無一文の私ですし? お嬢様からのお給金お未定ですし? え? 気に入らないからお金も入らないですと? 零れて五百年の紅館ですわ。
「俺にそんな器用な事期待するな」
と、言いつつ、包みに入ってる三つずつのおにぎりを掴んでは、投げ、掴んでは、投げ、ジャグリングである。
高速ジャグリングである。
「食べ物で遊ぶな!」
「師匠、私は悲しいです……初めてのあいさムグッ――」
口を閉じろ、俺が閉ざす。
「ああうん初めての挨拶は『初めまして』だ次に会ったら『久しぶり』それ以上は喋るな」
天狗が聞けば記事が躍る、スキャンダルは阻止せねば。
右手で口を抑え、左手にはお握りを押さえる。
押さえた沢山のお握りは、塔を作る。
その握り飯を海外アニメの如く、一気に平らげる。
そして味わう、ふむ―――……。
「梅干しに………此れは。八目鰻か」
ミスティア・ローレライの居酒屋台で食したあの摘みか。
ツナマヨの様に、既知の具材じゃないが、白米と一緒に食すと、悪くない味わいだ。
寧ろ良い、和食の主食が魚なのが頷ける。
しっかし、だ。
「ちゃんと作ってるなら初めから言えや」
修行一環一切無関で逆プラシーボ効果なんか本当に無意味だろ。
偽物の逆なんだから寧ろ良好なのでは?
可能性毒が強調されているんだからそれはないよ。
少女、してやったりと優曇華はウインクの開き目瞼に人差し指、妖夢は少しお茶目な悪戯っ子の微笑で、二人は舌を出す。
何だ此奴らその舌引っ張ってやりたい程可愛いな。
いや、引っ張るだなんてそんな地獄の所業故に鬼畜。
だから空雛に諭されるんだ……考える度に想うんだが、フィロノエマーのメンバー達、寝床食い扶持どこで繋げているんだろうか、繋げれて居るんだろうか。
リーダーのお陰で誤解は晴れた感じ、リーダーも責任の重圧で不安定だから心配する傾向にはシフトする。
まぁ俺なんかより立派にサバイバル若しくは何かしらの―――………向こうの世界均衡保守義務の彼女たちだが、此処の郷的には人妖均衡、俺も含め、後一会に予め女、天秤的に人サイドに寄り過ぎだから、妖怪食われてけ門前払い案件なのでは……?
それと外界人はルール適応されない田舎あるあるで尚酷い?
行かん、ならば俺が生きている意味が益々解らなくなる。
幸運と言えば聞こえは良いが、それが五日続きはもう何かしら………いや。
一度俺が会って来た奴らを整理してみよう。
女ばかりだが、着眼点はそこじゃなく―――そう、幸運以上の何かを言うなら難―――しかし違う。
職業だとか何をしている奴らだとか、如何言う立場の奴らだとか、以前も女含めて考えた事も有ったか、ならば今回は略そう。
結論に至るまで十分略せて居ないけど。
凄い位置にいる奴らばっかだ。
市販コスプレが出来る職業や生き物ばかりだ。
収入とか生活が裕福だ。
兎耳に制服がダントツで意味解らんが……憂鬱のJKか、いやアレはどちらかの単体だな。
さて、そんなこんな思考が纏まった所で俺が言いたい事は一つ。
―――村人Aに会ってない。
だから生きている理屈は屈折し過ぎ、特殊や特別な奴らに会えたからと言って、俺一方で命のやり取りはしてきた訳だし、矢張り運が良かったと言えたり、なるべくしてなった運以上に運命だったり、俺も死にたくない一心、生にしがみつき、意地張った結果だったと言う理由で。
まぁ兎も角、俺の奇想天外生存報告はさておき、思想家衆はサバイバルでも、村人Bの所での居候でも、何とかやっていけるでしょう。
「今他の女の子の事考えて居たでしょ?」
「考えて居ましたね、誑師匠」
この郷、覚り妖怪多過ぎませんかねぇ、人妖均衡云々とは言われていますが。
ジト目で睨む半人半霊と玉兎を無視する。
「ご馳走様でした。旨かったぞ」
合掌し、感想を述べる。
実話の実は、紅魔館門前から白玉楼へ移動する際に、思想家衆’嫁夢の王子’「ウェンディーネ」と遭遇したんだが―――。
【知命】
「アンタそんな事思ってたの? 妄想の拍車は神速のペガサスユニコーンだけどさぁ―――」
どんな夢見たんだよ。
「『王子』という点が会心の傷付いた……」
「元あべこべ人間だろ、王子で嫁とか打って付けじゃあないか?」
「あべこべじゃなしに矛盾だろ最早。いやさ、女子の世界にも男を嫁に見立てる業界は有るけどさ、総合的に相互的に皮肉ってるって言うか、本当俺の事嫌いだよね」
「今はそうでもない。皮肉も言える仲だと〈思ってる〉から皮肉ってる」
「結構、友情亀裂賭博だよね。まぁ仲で有るなら構わないけどさ」
「結婚はヤだよ」
「うるせぇなぁ皆まで言うなよ! ちゃんと男女の友情を夢見せてやんよ畜生!」
何か一周回って生々しいなぁ。
起きたら同じベッドで寝てたやつ、真っ裸で。
巻咥えてんだぁディーネが。
事後っってのか、矢っ張ヤだなぁ。
「何故追い打ち掛けに露骨に嫌な顔するんだよ。何もしねぇってのに妄想抑えろ思春期が」
「―――で、何の用だ」
「いや何用もアンタがヨメユメノオウジとかバカげた異名出して来て今に至る会話だかんね?」
「そうだ。仲と蟠って修行をサボりたい訳じゃない。だが移動中とは言え雑談して息抜きも大事だとな」
「で、雑談出来た感想は?」
「夢見心地デスネー」
「せめて演じろや」
「社交辞令とか正直者の社不には無理だし」
正直者を社不部類にするロクデナシ。
「分んなくもないよ、フィロノエマーってそう言う奴ばっかだし」
わぁ入りたくなって来た。
入りたくない精神に寄り一層入りたくなって来た。
どんな地獄だよ、女ばかりの社会補正社不社会会社って。
「まぁ道化の巫山戯にもなるさ。黒くても下卑てても、一笑いは起きるって」
普通にフォロー上手いやん。
だから女にモテるんだよ知らんけど。
フォロー上手いかモテる理屈か何にも知らんけど。
「……ところでよぉ、感想の思想家って居るのか? 何なら連想や回想も」
妄想の内容は、点で忘れてしまうのが道理。
能力の一環として生み出した、具現化したモノも有れば、その日は二度と使えぬ、若しくは、能力のアドバンテージが高過ぎて、記憶から抹消される噂。
してそんな環境下、私が何時だか、ふと考えて日にちが経ち、思い出したかのように覚えていたのかは、思想の逆説を突いたと言った感じで。
妄想の妄想、無限ループに等しい行いだが、まぁ所詮妄想なので、一周回った事にして記憶保持出来るようにしましたよ~と。
何方にせよ、知恵熱のような脳処理で頭が痛い、痛くなる。
ちゃんと自分は思想家衆と同じ原子力を宿してんだなって。
「居るよ。この郷には来れて無いみたいだけど」
「ほう」
来れて無い……十二席有るフィロノエマーのメンバーの内、二名、俺を説き勧める脅威が除外されたと言う理由だ。
だとしても残り五人も相手は面倒だな、一つは空席なんだっけか。
敵に成る理由でも無いし、フランソワズがリーダーを尻ペンするみたいな話が有ったから、何処かで連絡を取り合って、そこで今後の方針とか処置は確立しているだろうよ。
「と言うか来れてるの、リーダー、フラン姉、ネイちゃんと俺くらいだし」
良し全員攻略済みだな、脅威の可能性は去った。
何れウェア対策もするとしよう。
「因むと連想はお姉さん、感想は十四歳以下の少女だよ」
「心底如何でも良い性癖勧誘だな」
性癖で動くなら、ヘアーアクセサリーが似合う女で、だな。
思っても言わないが―――。
「回想は?」
「戦国時代から現代へ引っ張られた、初代”フィロノエマー”リーダーのご先祖。砕いて言えば、ロリババア」
「矢っ張入る道理は無ぇな」
【帰命】
女目当てで入れさせようとする彼女たち思想家集は、初めから言えた事だが本当スカウトが下手だ、仲間の情報を売る姿勢、情報で売る姿勢、男の見方、色々と安過ぎる。
初代頭領の「東」という人が凄いよ。
向こうの世界が混沌として居なければ、アイドルユニット出来ただろうに。
だがま、連想感想回想と、思想家は存在するのかと言う客観的如何でも良くて、されど陽炎の向こうに見える誰かを思い出せない儘、歳を重ねた今、過去の幻像を朧気に思い描いて居たみたいな疑問が漸く晴れた理由で―――ん?
「やっぱりほかの女の事考えて居ますね」
「この期に及んで不特定多数考えて居るよね」
何だ此奴ら。
【天命】
何だこの例え。
陽炎の向こうに見える誰かって誰だよ、ポエマーか、乙女か、オトメンか。
それに俺の出生マジ十七だし、歳を重ねたとか精々二、三年だから。
いや痛い意味とかじゃなくて、高二病で語らんだろ、だからと言って中二病でも無いし、乃至幻想バトル交えた物語ヤァ。
俺はそう思っている、主人公枠、って訳でもないだろうけど、何か非日常みたいな日常、この頃は修行も兼ねて楽しいとは思っている。
何よりも誰よりも楽しい奴と、今修行している。
修行と言うより、実験だろうか、何か朝昼暴れて夜は静かにお勉強みたいな。
課題研究みたいで良いな、夏休みらしい。
「恋人といる時の夏って特別な気分に浸れて僕は好きですって事なのかな……」
ゴンッ。
「アイタ」
「バカ言ってないで魔法に集中しろ」
「アイ」
守髪神等無かったかの様に普通に反動を回避し、普通に頭を叩く魔理沙。
手練れである。
彼女とは主従を交わした仲だが………―――いや、まぁ、その方法に別に気にしてないなら俺は一向に構わない、流石は魔法使いだと言う事で。
列記とした歴史ある古き良き英知の結晶たる魔法使いの力の一角を体験出来た、貴重だな。
力を操る事に於いて右に出る者は星熊勇儀、所詮二番手の私ですが。
ポテンシャルを高めるべく、水を氷に、氷を霧に、霧を水に変え、逆も又然り。
凝縮、凝固、昇華をすれば昇華をして、融解、気化のエンドレスを繰り返している。
彗星の友は全能だったが、最初は霧から始まり、水属性を会得していったらしい。
能力の始まりは皆、四つん這いの赤子だった事って。
だけどまぁ俺の此れは、本当に意味が有るのかと言う。
まぁ魔法なんてフィクションの中で想像された曖昧な学術だし。
その曖昧の中で俺は何か適当にやってる感じだ、強いて言えば気化が難しい。
やり過ぎると空気に散漫し兼ねないから、収集しておく分、気体だけど固体だ、嗚呼難しい。
……何となく、何となくだが、俺は在る奴を想像する。
「なぁ魔理サ……」
その何となくがドンピシャなのか尋ねてみるが、そっぽ向かれた。
図星か星の魔法使い。
「……ハァ。まぁお前なりの……いや、ご主人なりのお気遣いと言う理由で、気が付かせて頂き有難いですけどよぉ」
「私は何も言ってないぞ。修行を続けろよ、マジックアイテム無しに魔法を修得出来ているんだからよ」
没収されて居るブレスレットを指で回される。
詰まり魔法適正が有るんですね私、やった~。
「まぁ、人付き合い上手い理由でも無い私から言わせれば、人の生き方其々だから、他人の彼是口出しする気は無いけどさ。理屈は如何有れ思想家共と同原理で幻想郷に来たけど、迎えに来てくれた訳だし、仲直り位はした方が良いんじゃね?」
それからの事はゆっくり話せば良いし、と。
「……解ってる。解ってるけど如何もな、くだらんプライドみたいなのが自尊心を焚き付けるんだよ。お前は間違ってない、お前の人生だから勝手で結構なんだよ、って」
それに彼奴も彼奴呼ばわりした奴の一人だ。
その時点で一会の発言大体が肯定出来ない。
「そっか。話変わるけど私、自尊心だとか間違ってないとか、お前が少し成長したみたいで嬉しいと思うよ。最初のお前って自分も含めて暗い事しか見ていない感じの奴だったから」
事実であるのを自覚しているから、他人から言われるとむず痒いものだ。
でも掌返しで、魔法による可能性を見込みつつ有る所とか、他人の事で喜んでくれる事、またむず痒い。
実際に揉み上げ部分を掻いている、指五本使って、だ。
だけど、やっぱり目を合わせてくれない。
俺は暗い事しか見ていなかったけど、此奴は俺を見てくれない。
仲直りしたほうが良いとか、お前の成長がとか、良い事尽くしを助言してくれる割には、聊か。
魔法事の試しだ、液体を操作したれ。
「だからこそヒツキ。ちょっとは成長したその姿勢でさ、謝ったら許してくれるんじゃないか。お前水から霧に変える時、抵抗してただろ。やっぱりあいつを連想して~……―――」
水は鏡にもなり、反射する。
そこから表情を伺う、又、神経の反射で此方を振り向くと言う企ても有ったが、出たのは後者、然して直見た表情は―――………。
「「………………」」
昨日の昼の様に熱かった、もう夜なのに。
その夜が永遠の如く覚めない様に、俺は魔理沙を、魔理沙は俺を、ず~っと長く見詰めていた。
俺の場合は、魔理沙が俺を見なかった事を瞬時に理解して、俺も多分、俺を見てしまった魔理沙と同じ状態に陥ったと考えるのが妥当だが、考えに至った途端、思考は停止した。
早い話、主従契約のアレ、魔理沙もめっちゃ意識してたと言う事だ。
そりゃそうだ、見た目から年端も行かぬ乙女っぽいもん。
宴会だとかで酒飲むんだろうの分、実際幾つか知らないし、知る気もないが。
と言うか魔理沙って本当に可愛いな、前にも思ったけど今回本気で可愛いって思えてしまったな。
「「―――…ハッ!」」
然し正気を保たねばとお互い目を反らす。
夜と魔法は相性抜群だなこりゃ、ムード作りにってか。
「取り敢えず、明日神社に行けよ。何を言って如何するかはお前が決めろ」
彼女の声は甲高かったが、お陰で我に返る。
そうだ、俺は学んだんだ、己の真の愚かさを、そして他人の優しさを。
感情が何で在れ、優しさから出た想い有る言葉。
でなければ姿も現すものか、あのお人好し。
魔理沙はきっと着替えて寝床につく。
脱衣する音が聞こえるが、まぁ覗く趣味は―――風呂から無い。
寧ろ初日に風呂上り堂々薄着だった事、警戒心が無さすぎると言うか無頓着だったと言うか、人畜無害と捉えてくれた事で野宿せずには済んだ者の……。
取り敢えず今現状の魔理沙を覗けばミニ八卦炉を直に投げてバリアで跳ね返ると同時に箒を突いて炉を当てて来るだろう。
そんなに俺を傷付けたいか。
まぁ選択肢足る運命行動の因果応報自業自得なのだが。
俺は黙ってその場で寝込む。
明日は起きれば背中でも痛むご心配は、髪神様がご加護為さって下さるお陰で。
言語に崩壊が生じている様だ、脳内含め、休息するとしよう……。
「何そんな地べたで寝っ転がってんだ。ベッドは一つなんだから、一緒に寝るぞ」
ちゃんと寝間着だったが、休息、取れそうに無いや。




