第参拾玖話 その日その季(とき)~impermanence.
【日常】
八月某日の朝。
俺は、木組みの家に居た。
家、と言うには少々……社、と言うべきか。
まあどちらも同じだろうか。
―――現代まで引っ張り凧の超歴家系、徳川のご令嬢はそんな名前だったか。
彼女も某社に林檎を配膳してくれる御人好しさんのお友達繋がり且つ、神社お勤め仲って事で話す事は有ったな、稀有な事に。
其奴から’一会’は巫術を学んで居たな、習得出来た理由では無いけど―――。
何時も通り、今日は早起きの俺の頭は余計な思考で絶好調だ。
スマホを見ると、ふむ、三文は徳の行った時間だ。
充電は俺の左手で事足りとる。
扨て、家の話に入ろう。
今の処、屋内は布団と敷き物が一枚ずつくらいだ。
水道製品の必需も有る為、不便はない。
雫が飛び散って腐食する心配とかも無い、漆が塗られて居たりとかで大丈夫だし、其れ様のマットも敷いて居る。
何なら飛び散りにくい作りにもなっているさ。
水源は宝玉で補っている。
細かい事は気にするな。
そんな感じの質素なお家の建設場所も提示して於こう。
此処は幻想郷の名所と言える場所の一つ’無縁塚’。
その無縁塚にて、俺は旧都に住む土蜘蛛妖怪‘黒谷ヤマメ’のご配慮に寄り、雨風凌げるマイホームを手にした。
無縁塚とはどういった場所かを簡単に説明すると、「外来人絡みの墓地」である。
幻想郷に迷い込み、不運にも妖怪に襲われ喰われ、将又名所の環境に寄って不慮の事故に見舞われる者達が乱雑に弔われて居て、冥界や三途川に近かったりする幻想郷一危険な場所とされている。
と、建築家のヤマメ本人から教わったが、別に恐れている感じは無く、悠長に話す点、人間範疇で一危険とされているのだと解った。
「いや本当危ないんだよ~。死屍累々の勢いで生還した君だろうと、いや本当アレの仲間入りしてた位だし、私には大した事ないけどねアハハ」
妖怪的にも大した事有りそうな事が解った。
「そうか、肝に銘じて置くよ」
「そうだよ~。この時期だからと言って肝試しとか洒落にならないんだから」
実際の肝試し事で洒落にならず凋落して剥落して崩落した者がココに居ますが?
―――そんな物騒な場所に住処を建てた、基、建てて、貰って建てた理由は、静かだからだ。
大半は近付かず、また誰かに知らせても居ない。
建物自体は旧都直通の大穴前でヤマメに頂き、後は念動力で移動させた感じだ。
念の為、目立たない様に量子圧縮も施した。
そして気配遮断も。
その際に発生する副作用や反動についてだが、量子圧縮の反動は次元的崩壊。
家が見る見る芸術的形状になって、結末はローン六十年残しで壊れる。
ローン無いけど。
気配遮断の反動は存在拡張。
あの辺りヤバい雰囲気がプンプンするぜで異変調査で博麗の巫女や、幻想郷理論みたく、妖怪共が集合し兼ねない。
妖怪の集合は博麗神社だけで良い。
ので、段階を重ねて、シャンパンのコルク栓を抜く様にゆっくりと、トランプタワーを建てる様にじっくりと、量子圧縮の解除を解いたり、普通に建って居るけどバレませんよ具合に気配遮断を解いたりしてみた。
して、割と奥側に、動物の森で家具や観賞魚を飾るが如く、家を其の地に建てる。
事は夕方だったが、寝て起きる迄、藪蚊も蝿も入って居ない様で、如何やら誰にもバレはしなかったみたいだ。
努力や能力が成長した報告はさて置き、名所の有る程度は基本静かだが、昨日の幻想郷散策及び建設環境視察の為に各地回って厳選した甲斐、俺は断然’無縁塚’が最適だと確信していた。
おまけに見知った物も落ちている……外界の品だ。
年代は古いが、古いからこそのジェネレーションヒストリーを楽しめる雑誌や、剣玉、独楽、達磨落としと言った玩具、割と利用出来て暇を持て余さねぇ。
……こう言った玩具を何と総称したか、俺と同じ『文房器』と同種の武器を持った奴が居たな。
彼奴等との始まりは、其奴を蘇生した事が始まりだった―――。
「―――全く、何故こうも人生の墓場を決意したかの様に自堕落を決められるのですか……」
と、人が静寂な環境下、思い出感傷に浸って居る所、まさか楽園の閻魔様、喧s、説教くs、うるs、徳の在るお話をされる四季映姫・ヤマザナドゥがまさかの来訪とは。
「よう妹よ。朝早くに兄の家にモーニングコールとはブラコン精神様様だこって」
「誰が妹で兄関係ですか! 私はお地蔵の出ですが、貴方の様な不愛想で邪行を茶飯事に済ませる血縁者は私に居ません」
邪行を茶飯事に済ますとなッハッハッハ……不っ味っ。
「お地蔵様だったのか。地道から閻魔とは出世だな、自慢の妹よ」
「妹じゃないです。幻想郷に初めて来た身とは言え、外出して活動的なのは宜しいですが、そう、貴方は少し悪目立ちが過ぎますよ」
と、俺が購読している『文々。新聞』を、持参しており、突き出す。
「ゴシップと言う飯の種を光年と永年で探す烏天狗が書く雑物を高貴な閻魔がお読みになられるとは」
最初はバレ、今回はバレなかったが、定期購読契約しといて場所教えて無いんじゃあ契約も何も無いな。
まぁ無縁塚だしな!
「その烏天狗が如何に誤報や虚報を記載して世間を困惑させて居ないかという確認でも有ります」
ご律儀だこって。
「で、兄が掲載されて居たから態々本人にご報告と……」
そうなるよね。
「だから兄では在りません」
そうなるよね。
然し何故住所がバレたのかと思ったが―――いや、浄玻璃の鏡には俺は映らなかったらしいが。
何せ俺の行く所で確かノイズが走って居たとか何とか……映るようになったのか?
如何言う心境だ、浄玻璃。
いや、一周回って映らない所に兄が在り、と言う逆転発想か。
煩いから黙って居よ。
「生真面目な妹よ。ところで閻魔の偉業は如何した、上司も上司なら部下も部下なのか?」
「小町は何故か常習怠慢の駄目死神なだけです。後、妹じゃないです。今はお盆休みですので、少しばかり閻魔業も休暇を取っているだけです」
それ以外は勤務の毎日ですと……ブラック企業だな、だから亡者に黒判定しか出来ないのかな、八つ当たりジャン。
「毎日死者を裁いて裁いて根詰めている感じ有るよなぁ、お疲れさん。兄のお膝元で休んでお行き」
「はい、お言葉に甘えます……ってだから何故ナチュラルに兄宣言して膝枕をしようとするんですか?!」
「とは言うモノの甘えると口にした閻妹である」
閻魔の帽子まで態々脱帽して。
「なんですかエンマイって! ……はぁ、何故貴方にはこうも向きになり、私の能力が効かないのでしょう……・」
彼女の能力「白黒はっきりとつける程度の能力」とは、閻魔専用の概念能力みたいなものだ。
天国なら天国、地獄と言われれば地獄行き、その結果は覆す事の出来ない正に最後の審判なのだが……如何云う訳か、俺には効かない。
完全主義である彼女の宣言が、揺るぐ筈はないのにね。
腕輪は増幅と消失、吸収と放出の白と黒を連想させる能力だが、無論この武器だけで話が纏まらないわな。
時空停止干渉に至ってもそうだ。
右目を閉じただけでは説明が付かない。
のに自由気儘に時間停止空間を動く事が出来る。
腕輪には時間まで止める力は無いのに。
まぁ、細かい事は良いだろう。
何時だって主点公にはそう言った補正的な俺TUEEE的な運命論とか有るんだろうて、知らんし自惚れて無いけど。
取り敢えず、寝転がってた躰を俺は起こす。
「おや、漸く起きましたか、堕落さん」
身体は起こして居たのに、起き上がったのに、立ち上がったのに落ちているとはもう如何すればいいんでしょうね。
「死ねば良いでしょう。その方がジゴロの被害が生じなくて済む」
俺は此の妹が、何故新聞を持って浄玻璃の鑑で詮索して自足でやって来たのかを考える。
「…………兄が取られる事へのヤキモチ?」
「何もかも違いますよっ!」
声が木霊して響いた。
嗚呼、住処が誰かにバレそうだ。
【支度】
左頬を除いて、顔を洗う。
映姫は未だ、顕在中だ。
悪行は俺に勝らずとも、小町ちゃん情報、他に説教すべき住民達への説教巡回が多忙だろうに。
「良いのです。他の方は確りとその場に留まるのですから、異変級に大いなる問題点は先に片付けて於かないと」
その大いなる問題点とは私ですかそうですか。
「他に誰が居るのです。少なくともこの無縁塚を居住地にしようとする輩は貴方位なものでしょう」
光栄だ。
「辺りは曇天の域ですし、仮拠点にしている妖怪も居ますけどね」
タオルで顔を拭き、台に置く。
「んぁ、何だって?」
妖怪が、居ると? 無縁塚に????
「お気になさらず。然し、貴方にも予定は有るのですね。ちゃんとした目的とも言うのでしょうか」
「その点は解ってくれてるのな」
「当然です、閻魔ですから。何れ死者と成り裁かれる方々の事は何でも知って置かないと」
「うわぁ~、冗談抜きの笑えないマジのやつ~」
「……冒涜ですか?」
「滅相も無い。俺は閻魔業を医者や公務員より最上位の仕事だと思うよ。この無縁塚に散らばって有る物品は、故意で有ろうと捨てた事に変わり無い物ばかりだ。感覚は違うだろうけどそこに裁いてやりたい程の俺は怒りや悲しみを覚えるよ」
「静寂の地を望んだ貴方自身は穏やかでは無い様で……人の感情は早々コントロール出来たモノでは無いですが、暴発しない様、程々に」
おぉ、今迄で一、徳の有る説教だった。
「詰まり今迄のは全て徳にならなかったと?」
「まぁそうなりますわね」
「正直なところは長所ですが、そう、貴方は少し―――いえ、私の不充分と言ったところですね」
「おや、珍しくセンチじゃないですか」
「私も、貴方と言う規格外が現れたのだから、何かしら短所、欠点、不確定要素が有ると考えざるを得ないでしょう。悟る迄は私は、何時までも熟考して精進有るのみです」
憧れるポジティブシンキングだな。
「そして貴方も、精進して行くのでしょう」
「嗚呼、この気持ちは揺らがないよ」
初めてだよ、誰かの為に頑張りたいと動くのは。
「苦難では有る。ですがその先には貴方の望む未来が待っている。疑わずに進めば上手く行き、善行に繋がります」
「そうだな。そうだろうな、閻魔が言うんだ、間違いない……。じゃあ、行って来ます」
「ええ、行ってらっしゃい」
薄暗い墓地に潜む社の中から、俺は晴れ晴れとした心で外出する。
……然し、いや、うっかりと言う理由でも無いが、此れは流石に忘れてはいけない忘れものと言うか、違和と言うか。
「いつまで家に居んだよ……」
危うく見過ごす処だった。
妹と言えど独り暮らしのプライバシーを侵害させるところだった。
「お掃除をしておきます。何なら模様替えも。そう、貴方は少し生活感が質素過ぎる」
良く出来た妹を持つと、兄は大変だ。
「……妹では無いです」
他のポジションも考えたが、俺は言わない事にした。
だって妹で在って欲しい。
彼女にはそう思えてならなかった。
【肉弾】
移動中事省略―――俺は紅魔館に居た。
と言うのも簡単な話……鍛える為だ。
いやまぁアルバイトが有るので其れも其れなのだが―――先日、風見幽香に宣告した俺は、取り敢えず紅魔館の門番‘紅美鈴’に鍛えて貰うべく、修行を付けて貰って居る。
だから正確な場所は紅魔館門前という訳だ。
因むと勤務は完了済み、相変わらず広大な屋敷の清掃の毎日だ。
毎日と言っても三十分で業務は済むのだけどね。
仕事が片付いた後には、有意義性を齎すべく、また門番をサボらせない為の効率性としても、手合わせの元、ある程度の戦闘におけるいろはを学んでいる。
美鈴さんに怠慢を働かせない条件が揃えれば、レミリアお嬢や咲夜パイ先は、快く俺のタイマン張らせてくれる相手を許してくれた。
「やっぱ強いなぁ、紅先輩。アンタに習って良かった」
別に素人同然で使えないという訳でもなく、ブレスレットでの武器の使用は、肉体に対しての反動こそ大きかれど、経験値や熟練度は微々たる容量で得ては要るのだ。
中古で買ったゲームのデータが最強で埋め尽くされているけど、其処までの過程や方法をどうやったら出来るかなんて、個人次第だ。
勝利して支配する吸血鬼なら如何でも良いと言いそうだがな。
「パイチーも、中々如何して筋が良い。取っ組み合いには飽きない運動神経ネ」
基礎は抑えて有ると思えて頂ければ。
勿論基礎だけなので、極めている奴らにとっては、赤子の手を小指で捻るより簡単な事だろうけど。
「俺って相変わらずパイチーなのね」
因みにパイチーとは鱶鰭を指す。
白鶏も指すだろうが、まぁ白を切る馬鹿だとか、尾鰭が付く複雑な奴とか、そう言った意味合いだろう。
……え、パじゃなくてバだった? 初期設定だ、気にするな。
とまぁ、愚考を働かせつつも、素人の鍛錬は続く。
「でもアンタっテ! 根暗と言うか! イマイチ勤めに!覇気が無いというか、率先する! タイプでは無いと! 思ってたけどね」
「ま、ぁ、そうっ、スかね」
「そうっスよ。頼まれて別に構いやしなかったけど、何か目的が出来たのかい? ‘振
袖の昼蛍’君?」
「そん、な所で……」
うっわ、又新たな異名が……何、ふりそでのひるほたる?
「振袖」はきっと巫女さん事、博麗霊夢、蛍は此の髪型からだろう。
して蛍は光る者で、光る理由は求愛行動。
だが結果は振られた、振り飛ばされただけなのに、虫を嫌う女が必死に振り払う様に、振られた、と言う文屋の解釈の下、そう言う異名が新聞にて晒されたのだろう。
「若しかして、咲夜さんを守りたいとか?」
「は―――」
拳を下ろし、思考が止まった瞬間―――右頬にハイキックがめり込む。
ザ・ワールドと違い、世界がゆっくりと動く。
キングクリムゾンのエピタフで未来視している訳でも無ければ、ゴールドエクスペリエンスで精神だけが先走ってる理由でも無い。
何が凄いって、彼女は誰かさんの情報から脚を一旦引いてから間合い無く再び蹴りを入れに来てるって事だ。
本当に誰かさんが誰かは知らない皆目見当。
髪神の守も所詮は江戸時代までの代物だったと言う理由だ。
明治以降は断髪還神令で撤去された理由だしな。
まぁ俺を事例に現代にも残って居たのは、至る大御所神社に寄付された結果、渡る時代は馬鹿ばかりと。
盗みもすれば、密か持ち込み出すお偉方の考えよな。
そして私は地面に這いつくばっていた、何よりブザマ。
「あ、ゴメン。隙だらけだったから……」
頼んだのは私だけど容赦無いな。
「そりゃあそうだ、敵さんに対して待った無しだよな、油断した俺が悪かった、嗚呼~落ち度落ち度~」
と、悪びれが一切感じられない言葉をクチデマ並べて、ズボンのポケットから手加減の為封印していたブレスレットを取り出し、両手首に装着する。
「ちょ、ちょっとあの~、何で強化される腕輪を取り出すかn」
「フンッ!」
駿足で間合いに近付き、気を放つ手の形で、美鈴を討つ。
「ガッホォ……!!」
今回の強化及び、伴う副作用は、脚力と腕力と視力、攻撃力に防御力。
ブレスレットの使用解除後には、激しい筋肉痛と共に睡魔に襲われるでしょう。
痛覚が激しく信号を発して居るのに、安眠とは言わずとも熟睡出来るなんて卑怯ですね。
それはそれとして、どうも俺は負けず嫌いらしい。
例え相手が女だろうと、受けた物理的屈辱は容赦なく、己が繰り出せるありとあらゆるカードを切って、晴らす。
その後自分にどんな災厄が振り掛かろうとも。
だがまぁこの憂さ晴らしには、流石にお天道様も許してくれるだろう、何故なら。
「―――修行とは言え、その発言は反則だろ」
「いやイマ……、敵に対してマッタナシダッテ……」
「そうだな。実戦だと思っての手合わせは大事だし、話術で間引くのも立派な戦法ですが。何故だ。何故咲夜パイ先を守るが為の修行だと見据えますか、美鈴パイ先」
俯せ美鈴は起き上がり、服に着いた砂埃を取っ払う。
「だってここ最近の咲夜さん、とっても幸せそうでしたよ。いや、偶に落ち込んで居たか。兎に角感情豊かで微笑ましいのなんの。取り敢えず試しにパイチー話題で鎌掛けてみたら矢鱈食い付くよね」
◇
『~♪』
『咲夜さん最近如何されたんです? パイチーにレミリアお嬢様の言伝を届けて以来、鼻唄で作業だなんてご機嫌ですね』
『別に、何でも無いわよ……』
『あ、パイチーだ』
『えっ!』
(とても明るい)
◇レミおぜうの場合◇
『嗚呼そう言えば、今日はアニの復職だったわね』
『は、ははははは、はいそうですね……』
『咲夜、ティーカップが震えているわよ』
◇パチュリーの場合◇
『彼、未だ来ないわね』
『はい…………』
(何か凹んでる)
俺は口元を片手で隠した。
あのメイド長、如何してそんな解り易くてチョロいんだよ可愛いな。
「まぁ、ヒロイン力がとても溢れたメイドだとしても、時間の理念を司る最強のメイドさんだよ。守る要素と言うか自分の身、乃至は身内を守れるだろうよ」
「解ってないねぇ~パイチー。だからパイチーなんだよ」
苔にしやがって。
「そこはそれ、乙女心って奴じゃない。男に守られたいと思う女が居ないとお思いで?」
「少なくとも俺は幻想郷に於いての女は屈強と度胸で出来てると思うぞ」
弾幕ごっこと言う公平な賭け事だろうと度胸無くして異変は解決出来ないだろうて。
「あんな精密なごっこ遊び、男じゃあ出来ないでしょうよ。男は派手や膨大を求むから、アレら事は不得手だろうよ」
「確かに……狙うよな」
他人事みたいに言ってますが、男で在り、今まで対峙して来た相手への攻撃は派手で膨大でした。
何なら現在進行形で美鈴に派手と膨大を司って攻撃しました。
「だがそれは『力』有ってこそ。力有る男に惹かれないなんて訳無いじゃないか。って、事だよ」
全く以て私はその正反対なんですがね。
「修行付けられて居る意味だよな」
「それはアンタの都合。まぁ力無くとも、アンタには母性本能擽られる所も有ったりなのかも知れない。精密と言ったら、料理とか在るでしょ? 家庭面で言えば咲夜さんは最高だよ」
嫁にやってくれないかと堂々勧誘している。
紅魔館でも十二分に必要の人なのに。
「まぁ仮に若し咲夜パイ先がそうだったとしても、俺はパイ先だけに留まらねぇよ……」
俺はブレスレットを再び外し、ズボンの前ポケットにしまう。
「多妻?」
「シャアツィ、メイリン。入籍話題は摘み出せ」
そして再び、拳を構える。
「アンタらを守る。それで良いだろ?」
その後、美鈴は高く笑った。
別に馬鹿にしている訳でなく、だがまぁ現実現状不可能では有る為、そうとも言い切れず、だけど激励を身体で示す様に、特訓を再開してくれた。




