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幻想の現実≠東方空界霊  作者: 幻将 彼
第陸章「青年は、マチガイに殴りをつけた。」――×想異変.
50/62

第参拾質話 太陽と月~Queen of the Sunlight~

1日は過ぎて行く、その時その瞬間どのように暮らしていようと。

熱く、厚く、暑い夏の日に、彼女たちは何を見るのか―――。

幻想の現実≠東方空界霊、最終楽譜の第六章、開幕。

【退進】


「ハァ~……ァ~……」

 声は薄く、然し深い溜息が地面に広がる様に撒かれる。

 だが今は夏、どうしたって夏、春秋冬を除く、夏。

 こんな幸せが逃げるとか言いつつ実際は不幸なんだから溜め息を吐くんだよ、を息吹かせても、蒸し暑さで舞い上がり、只自分に戻って来る様だった。

 私は吸う息ですら不幸です。

 気体の収集方法で上方置換法とか有ったな……。

 学校は……はぁ―――行ってない、と考えつつ、内心で溜息を付く程嫌気を指している、連想の経過、あの忌々しい魔改造制服女を思い出す。



 幻想郷在住五日目の昼―――。

 『妖怪退治』兼『異変解決専門家』…博麗霊夢から、異変主犯容疑で追い掛け回され、ぶっ退治され掛ける事象から一日が経過した。

 ―――終止符と言えよう最終決戦の神社での間際、現れた、否、表れたのは本心が戦意喪失の博麗の巫女さんかと思いきや、改め、現れたのは別世界のくそッたれ巫女アマ。

 ……いや何か別に何かを期待した訳では無いですよ?

 本心戦意喪失で涙目の蕩顔、我慢に我慢を重ねた彼女は限界を超え俺に身体を寄せて預ける始末―――この状況、この状態は若しや…………なぁ~んてっ、成る理由ねぇでしょの問屋が卸しませんよ、と。

 まぁ事態の収束は、俺が全て悪いですよの禅問答で作麼生(そもさん)説破(せっぱ)

 説破と言うか喝破、拳に込めた打破に大破の破目。

 陽月さくらと言う男がどれだけ愚かでロクデナシかを全てあの巫女擬き畜生に語られ、博麗霊夢に誅伐を受けて、じゃみる。

 何がじゃみったのかは、まぁ異変首謀疑惑。

 扱いとしては退治されたって事で良いだろうけど、その後巫女共はすっかり意気投合、あの水色を家屋に泊める程、和気藹々だ。

 そんでもって如何でもインフォメーション、俺はと言うと―――。

「大丈夫かぁヒツキ、未だ腹痛いのか?」

 大丈夫と言う懸念事項は別の事、意味も別で腹は痛いと言って良いが、彼女の心配は霊夢の重圧に対してだろう。

 一日経っても程々の痛みだが、心配してくれる彼女に心底救われる。

「嗚呼、大丈夫だ」

「強がりだな」

 ばれてる様だ。

「なら赤子みたく甘えれば良いか?」

「冗談は顔だけにしてくれよ」

「今一番傷付いた」

「それは何よりで」

 前言撤回だ、救いは己のみだと……木漏れ日が射したり射さなかったりと、魔法の森ではない森、迷いの竹林ではない林、それなりの木々が生い茂った道を進む。


 ―――昨晩の俺はと言うと、魔理沙の家に泊めて貰った。

 瀕死の疲労困憊で寝床をナチュラルに、同じく疲弊していた即座に寝床に付いて居た魔理沙と同衾を計った処、一日目とは大違いで悲鳴を上げ拒絶され、どつかれる事は無く、その衝撃は魔理沙が受けてどっか吹き飛んで魔理沙宅てんやわんや。

 馬鹿だとか変質者だとか罵られたが、うん(認)。

 俺は一日目とは大違い、文字通り床を塒にした。

 花は根に、鳥は古巣に―――我乍ら良い諺を選んだ。

 結局は感情だろうが何だろうが、人が駄目ならこの底辺的原点回帰場所に戻され、そしてお似合いだよ。

 衣食住の利点は、昨晩と今朝の飯は魔理沙の茸尽くしの、ちゃんとした茸御飯も食えた理由で、まぁ話は今に戻り。


 長々と話したが、ヒツキ君はあのサイドテール夏女が来た事により、幻想郷生活に亀裂、そして現実を突き付けられ、メランコリィが訪れていると言う理由です。

 この人体変異事以外何でも願いが叶っちゃう本、乃至は文房具が武器化したヤバい物は、文房具だけに非ず、あらゆる道具が付喪神の集合体そして劣性遺伝子体共の怨恨と掻き混ぜられて、一括り。

 料理器具だとか、工具用品だとか、後は何だ……医療機器? まぁ色々。

 その禍々しい最早荒御魂としか言い様が無いそれらは、とある儀式と言う名目で、奪い合いの殺し合いを始める。

 全ての付喪神を手にした人生の勝者には、何デモ願イガ叶エラレルト。

 シカシィ、何デモ願イガ叶ッチャウ本ガ有レバァ、別ニ穀シ合ウ必要ナクナイ? と思ったそこのあなた、人生甘くは無いんだワ。

 前にも思った気がするこの外国人の似非日本語……。

 実の処、最初こそ混沌本で人体変異事は出来ては居たんだが、それは俺が封じました☆

 まぁこの付喪神は、殺し合いこそしなければ未来永劫使える理由でなく、一年後には期限が切れて所持者は死ぬ運命に在り、色々武器で行った事象も全て無かった事になるのです。

 例え誰かを生き返らせても、一年後には其奴も同じ土の下って訳よ。

 そう言ったタイムリミットが有るにも拘らず、此のロクデナシクソッタレ髪型トリプル金髪は、残りの人生を(……いや、異世界に逃げ込めばノーカンになるのでは?)と浅はかな思考を張り巡らせて、行動するに至ったのです。

 しょうもない伏線回収、主人公の主旨、実績解除です。

 だがそれなら使えへんやーん、お前も死ぬやーんってなる所、バリッバリ使えて居るから、関係無いんだよなぁ。

 三十三対四。

 こりゃあ襤褸負けですわ。ハァ~……。

「何か、こうやって二人で一緒に並ぶの、久しぶりだな」

 魔理沙が両手を後頭に付けて話す。

「んぁ~? 久しぶり? 一緒に並ぶとか……有ったっけ?」

「有っただろ。いや、大体誰か一人セットで居たか……」

「お互い寄る年波は超えられませんなぁ」

「そんなに老いてねぇよ」

 確かに見た目は若人だが、酒宴をする位なんだよな……。

「そっか、お前俺より年上ですか」

「そっかじゃねぇよ、マスパるぞ」

「サーセーン」

 既に頬に突き付けられているミニ八卦炉に、手を挙げる。

 守髪神も、攻撃と見做さなければ接触を許諾する。

「だが二人並ぶなら昨ばウ~……」

「それ以上言ったらマジ撃つからな」

 更に強く突きつけられても、守髪神は加護を発動しない。

 ちゃんと仕事して。

左遷しゃしぇん

 俺の事だ、仕事しろの命令発言ブーメラン案件も含めてですが、紅魔館にはしっかりとお勤めは果たしました。

 如何やら咲夜パイ先は本当に取り入ってくれたらしく、『尊敬出来る良い先輩に巡り合えました』、と【文々。新聞】の記事にて、書かれたい―――然しお嬢は別に解雇処分する気は無かった様で、解雇宣告したらどんなリアクションするかと言う悪巫山戯だったみたいです、心臓に悪いです、マジウゼェ上司、「おぜう」です。

 咲夜さん曰く、

「『死に欠けの蝉みたいに目を丸くしていました』って伝えたら大受けだったわよ」

 それ逆にどう言った目なの、そして「おぜう」の壺の小ささ、見た目通りか。

 「おぜう」が「おぜう」である極めつけは、昨日の出来事で瀕死状態だろうって事で出勤して来いと、流石は吸血鬼、鬼畜の権化と言うか本家と言うかの所業。

「おっ、紅魔館でのお務めクビになったのか? ザマァ無いな!」

 良く『左遷』と聞き取れたな。

 先程から妙に突っ掛かって来る魔理沙は大変不機嫌である。


 一応業務内容には『本に付くお邪魔虫駆除』と言ったパチュリー様御用達しの作業が有り、某時刻、何時もの様に「借りてく(だけ)」を中毒性暴食の限りで尽くした魔女が侵入し、懐に本をしまい去ろうとした所止めに入り、取った本を掴んだのだが、どうも掴み処が悪かったと言うかエプロンの中を掴みに掛かったのが運の月ヒノヅキ。

 魔理沙は途端に顔が痺れる様にして赤らめ、感情任せで盗った別の本を取り出して縦で投げ付けて、俺は『守髪神の加護』で何時も通りやり過ごせたかと思えば、別側面から箒が飛んで来て頬から殴り飛ばされ、飛ばされた身体は図書館棚をドミノ倒しの如く倒して行った。

 ―――昨晩の異変から、学びを得たらしい。

『……はぁ、夏に静寂は訪れないのかしら……』

『恰好が暑苦しいですもんねぇ……』

 相変わらず本に縋り付くお邪魔虫に悩まされる、「ザ・本の虫」事パチュリーは読む事は止めなかったが、虫みたいな新人の勤務遂行の出来底無さに呆れて居た。

 その後、咲夜先輩と小悪魔ちゃん先輩にこっ酷く可愛く叱られました。

 先輩方の後ろでは、私が正座で頭を下げる滑稽さに抑えきれず、スカーレット姉妹は嘲笑っていました。

 妹、そう、レミおぜうには妹が居るのだが、この邂逅に関しては又の機会に。

 然しロリキャラは姉妹として居る事が多いな。

 まぁさとりと言うロリ姉に対し、こいしと言う妹を見掛けて居ないので何とも……姉に反して寧ろお姉ちゃんじゃなしに、お姉さん体格だったみたいなパタンも有るかも知れないが……。

 おや、此処は―――。

 木陰道から放たれ、視界は陽射しで白く包まれる。



【花畑】


 向日葵。

 辺り一面、向日葵が無駄な隙間無く咲き誇った畑に出た。

「おっ、太陽の畑か。良い所に来たな!」

 夏の花と言えば、向日葵。

 然し、彼奴を連想してしまう。

 夏空と向日葵を融合した暑苦しい彼奴。

 此処は、幻想郷圏内に於いて博麗神社から真反対の場所と言う事で、魔理沙の家から西へ西へ天竺へ。

 玄奘三蔵法師のお師匠様がいらっしゃるが、扨て妖怪たる私は斉天大聖か、天蓬元帥か、捲簾大将か。

「とか言ってお前、妖怪呼ばわりされた事に傷付いてたじゃん―――」

 まぁ、汚名は天誅返上したと言う話なのだが。

「”風屑魔卿(ふうぜつまきょう)”ってのは如何だ?」

 説明不用……菩薩は何をして居るんだ。

 そんな四字熟称号が改心している訳無かろう。

 だが、其れを和尚が説くのも違うよな、何より普通にムカついた。

 金髪か、まぁ俺より地毛だろうけど、染めた奴の未来、そして修行の僧なら言うべき悪口はこうだな。

「うっせぇハゲ」

(きん)箍児(こじ)の呪罰ーッ!」

 猿の暴走を、法師が御経で止める輪っかの事。

 尚、魔理沙の場合は腹であり、そして教法ではない拳法である。

 拳法に続いて、魔法……彼女は守髪神の攻略法を学んだらしい。

 防御の風圧が出された所で腕を引き、力が戻る前に拳を鳩尾に叩き込み、すぐさまミニ八卦炉にてマスパをぶっぱ。

 ―――俺は又々吹き飛ばされた。

 短期め。

 何だその科学者戦法、実現出来る奴居たんか、法にも穴は有るんだな。

 大空を飛ぶ―――残念乍ら負傷の為、且つ、普段の防御力及び耐久力は人並み以下の為、意識不明。



【風見】


 ―――所、彼の落下位置とされる、太陽の畑、地道。

 地道で良かった……何故ならその花畑は、星熊勇儀に並ぶか、それ以上、最強と謳われる肩書が相応しい妖怪の中の妖怪の管理下なのだから―――。

 とは言う者の、案の定、フワッと一息尽き、地面に着地する。

 若し向日葵畑の真ん中に落ちても、地点は向日葵の高さで発動する位だ。

 花が揺れて、少し花弁は千切れるかも知れなく、又怒りも買われるかも……。


 急所さえ押さえなければ、死とは縁遠いのがこの男だ。

 そして逆に妙に少女と縁が在るのもこの男だ。

 丁度落下地点の、彼から見て左側、進行方向を遮られた少女の姿が一人―――傘を差し、陽を避けて歩む彼女の名は―――


”風見幽香”。


 花を愛で、花と共に過ごし、花を生命諸共操るフラワリングマスター。

 ―――彼女は、笑みを浮かべながらも、裏腹苛ついて居た。

 観賞花道の我が道を邪魔する愚か者が何処からともなく現れ、若しかしたら落ち所が悪ければ花にも被害が生じていたのだから……。

 然し苛立ちはすぐさま治まる。

 彼女は彼を知って居た―――確か、烏天狗の新聞の一面を飾って話題と成って居た、哀れで滑稽の男…………名前は、サクラ……。

 そう、花の名前だった。

 別に覚える価値もない辺鄙で平凡なごく普通の一般人間だったが、花の名前だからこそ憶えていた。

 何だかんだ暇潰し程度に読んでいた新聞だったが、記事は地獄の鬼と対峙したり、その前後一日中博麗の巫女と追い掛けっこしたり、別所の従者を仲間に引き入れたり、地獄の妖怪や永遠亭の連中とも共闘したり、そして結果、外界と言う第三者との痴情の縺れで、巫女から鉄拳制裁を喰らったんだっけ……。

 何とも台風の目の如く話題性が尽きないと言うか、まぁ一寸した流行の訪れみたいなモノか。

 然し微々たる凄味を感じさせると思ったら、一気に道化の所業へと落ちた者だ。

 少々暇潰し程度にしかならないだろうけど、この意識不明の坊や、拾ってあげましょうか、水でも掛けてあげましょうか。

 そんな思考で、彼女は一輪の花を掬ってやった……雑草では?

 因みに彼女の住む家の玄関隣に彼を置いて、柄杓に水を汲んで彼目掛けて掛けたが、無論、彼には掛からず、寧ろその場で勢い殺して落ちる筈の水は、幽香に全て返された…………何故?



【花屋】


 ―――目が覚める、同時に瞬時に身体を起こす。

 起きる寸前、何か甲高い音が聞こえた気がしたが―――……。


 状況を確認する。


 俺は……布団で寝て居た。

 木製の洋式ベッドで寝ていた。

 魔理沙にぶっ飛ばされた後、誰かが担いで介抱してくれたらしい。

「あら、起きたのね。こんにちは……それともお早うかしら、サクラくん?」

「止めてくれ、その名前は―――……」

 反射的に名前呼ばわりを忠告すると同時に、声のする方を見やれば、半裸の女性がその場で髪を拭きながら歩いて居た。

「あら嫌いなの? 素敵な名前なのに……」

 俺は女との会話で視線を下に向けない男俺は女との会話で視線を下に向けない男俺は女との会話で視線を下に向けない男……(後五回くらい復唱する)。

 同時思考―――

 髪は緑で短め、いや中くらい……? 女の髪具合なんて解らないな。

 若し妖夢や早苗さんが髪を数センチ切ったとして、気付いてあげる事は今後の課題とするべきだな。

 咲夜先輩もどうなんだろう。

 アプローチは当人が、買い立ての時計の時間合わせよりも遠回しにして来たけど、仕事中とは言え気付いてあげるべきなんだろうか……セクハラだとか、は、まぁアプローチぃ……「業務に集中しなさい」とかお叱り受けちゃうかなぁ。

 照れ隠しとかだったらやっぱ可愛いよな。

 ―――じゃなくてだな。

 じゃない事も無いんだが、何だこの裸っ来居助平(らっきーすけべ)

 この物語にそんな美味しい展開用意出来たんですか喧しいわ。

 いや、魔理沙が割とラフな格好で居たよな、roughの方ね「粗い」って意味、裸婦じゃないよ、美術家か。

「……いや、挨拶と感謝が第一声に必要だよな、失念で失言だったが……」

「気にしなくて良いわよ、私の気紛れだから」

 何だかそのフレーズが懐かしい。

 そう言う意味で顔を伏せて目元に手を掛ける理由ではならなんだぁ。

「自宅とは言え、他人を招き込んでる中、防御力が無さ過ぎだろ……」

 大丈夫です、下着は着て居ました、色は言いません、あ~視界が真っ黒。

「? ……ああ、遠回しに服を着ろって言ってるのね? 抑々貴方が水を掛けたから脱衣所に行かなきゃならなくなったのよ?」

「ゑ、そうなのヨ?」

「そうなのヨ。貴方が私の行く手に目ざワ……じゃむア……迷ワ……」

 通行止めしてたのは悪かったが、無視しても良かったのでは?

「兎に角、人が……いえ、妖怪が親切に水を掛けてさっさと起こして事情聴取したかったのが、裏目に出たのよ……」

 水を掛ける事での親切とは―――拾ってくれたのは冥利尽きるだが。

「……責任、取ってくれる?」

「洗濯なら得意です」

 で、出たー何か大人お姉さんの良く言うお誘い台詞~。

 少し屈み腰で胸を強調して言う人、基、妖怪居たんだぁ。

 コレがR-15要素だったんだね。

 妖怪と言えど人型だから変わりねぇよってのもあーだこーだ。

 ところで何故(なにゆえ)、妖怪に神様、モンスターってのはこう美的擬人化されて描かれるのでしょうね……オタクの理想図? 素晴らしいね。

 結局のところ欲求不満では?

 なんだァ? てめェ……

「あら、素肌間近の女を目の前にして恥を掻かせるの?」

 と、更に近付き、顎に指を突き付ける。

「倣うべきは法令を遵守した創作物だと思ってるんでね。十七じゃあアンタ、児童やっちゃった罪だぜ☆?」

 真の無情とはこうあるべきなんだ……凄いだろ妖夢、コレがお前の師匠だ。

(はい、流石は師匠です! ……ただ、見た感じ、とても、卑猥です……)

 有無、そうだな、心の妖夢、『魂魄』妖夢が言っている……。

(師匠最低です)

 言われたくなかった。

「……こんな状況で他の女の事、考えてるわね」

「お前俺の彼女か何か?」

「なって欲しいの?」

「逆になりたいの?」

 ―――瞬時、ドアが乱暴に開けられる。

「ヒツキーっ! この辺りにはヤバいヨウカイガス、ミ、ツ、イ、テ…………」

 魔理沙がお迎えに来てくれたようだ。

 良くやった、本当にお前は救世主だ、フラグをビッグバンの如く破壊するアルティメット彗星魔法使いだ。

「ぇ………ぁ…………ぁの………………」

 へぇ~、魔理沙も手が口元足元でオロオロのタジタジ乙女みたいなリアクションするんだ、カワイイ―――じゃなくてだな。

「おっ――――――」

 又もや爆発しそうな、今度は表情……目がグルグル身体がフルフル回っている。

「お邪魔理沙でした――――――っ!!!!!」

 自分で言うんだ。

「あらあら、貴方魔理沙の恋人さんだったの……残念」

 何でだよ。

 彼女は、未だベッドで半起きしている俺から離れ、漸く着替えに移る。

「残念がるな。そして恋人じゃねぇよ」

「詰まり、略奪恋愛、乃至はフリーだから構わないと―――?」

 はい言質頂きました、クソが。

「如何してそうなる。と言うかどうして拘る。カァーッ、俺の女難の相は遂にデイリーラブコメディにまで進化してしまったか……」

 自分で言ってて尚悲しい、自意識過剰みたいで。

「喜ばしい事じゃない。女に好かれ捲る事なんて」

「理屈が欲しいんだよ。只好かれるだけじゃあ俺も納得が行かなくて、何だ、その、特別な事だから~…とか抜きで、挨拶みたく安直過ぎたり簡単過ぎて、俺も如何対処したら良いか流石に解らねぇよ……」

 霊夢の時もそうだ。

 名前から呼んでで始まって―――告られて直振られて虐げられて倒れ込んで来て……。

 何なら好きだのの始まりは妖夢から始まった、続いて咲夜先輩、早苗さんに―――一応、鈴もそんな風に見えた、自意識過剰だと思いたい。

 他にも言ってしまえばそんな素振りな奴居たかもしれない、本当に自意識過剰だと思いたい。

「それが、幻想郷よ」

 エクスクラメーション、目が見開いちまったよ……。

「本当に恋愛ですら幻想ですってか……そこは人心至る理性とかで思い留まったりぶつけたりが有るドラマを繰り広げとけよ」

 衣裳を整え、髪を払い、風見幽香、椅子に座る。

「少なくとも、貴方の様な現在新聞で一面飾って幻想郷と言う世間を騒がせている男と伴侶になれる女なんて、人生の勝利者も叶ったものよ?」

 と、向かい机に置かれている、時既に花束の包みと成った新聞の、見える俺の写真の一面の一部と記事の一部を見せつける。

「だからアタックすると……つか伴侶て、恋人になる一個飛ばしてんじゃねーか」

 動物かよ。

 俺も飛ばし過ぎか。

「ソイツの性格や人格を知らずして記事一つで選ぶってのも勿体ないだろ」

「勿体無いの?」

「嗚呼、そいつのヒトが粕ならその女に申し訳が立たない」

「なら選ぶ理由は十分に有るわ……」

 彼女は片手で頬杖を突き、もう片方の花束を持った手を此方に向ける。

「今聞いた限り、貴方は根が優しいもの♥」


 俺はこうなるだろうから、この言葉を挙って使って居たのかも知れない……女との友情は嘘だと決めつけていたかのように、それを僻んで言ったんだ、嗚呼―――


「……また間違えた」

 出来る事なら、俺は女になりたいな……なれるな(気付)。


対義語サブタイで行けたらな、と思ってます。

内容に合うかは分かりませんが。

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