第参拾肆話 永く、病~Red eyes bet wise. ”H unlocking”
粗筋:廃屋敷以降の、自身の境遇を知ったヒツキ。
現状に矢張り疑問を抱くが、今は、永遠亭にて休息を取る事にした。
【因幡】
―――昨晩、俺は『永遠亭』で厄介に成って居た。
正確には俺の死体が、魂と言う曖昧な謂れの精神が抜かれた死体が、元より空っぽで無理矢理詰め込まれたか詰め込まれて居ないのか明確さが皆無の死体が。
巫女さんや魔理沙、惹いては闇妖怪の小娘、飯事の立ち位置「娘」ルーミア等が、厄介者を背負って、此の迷う前提の竹林を難無く掻い潜り、草木も眠る丑三つ時かは知らぬが永遠亭に住まう者を文字通り、遠隔的だが叩き起こし、厄介事を引き連れて来たのだと、此のバニーJKジャンル新参ホイホイの”鈴仙・優曇華院・イナバ”は語る。
……って言うか二度も世話になって且つ二度も無償で診察されてちゃあ矢っ張り割に合わないだろ。
一帯、いや一体どれだけの内臓を提供しなければいけないんだ。
断腸の想い処じゃないよ。
「あの時の霊夢は本当怖かったよ。丸で別人だったもん」
と、我々学生服組はその頃丁度外に出て語らう。
「……何で貴方、早着替えでカッターシャツになってるの? 色々黒いし」
「乗りだ」
そう、乗り。
俺には学生時代と言う物が無く、生まれて十七の放浪者なのだから。
所詮は社会に出向く為の軟禁訓練みたいなモノなのだし、過ごしてみたいとは思わない。
なので「服装だけでも」と言ったコスプレ願望かな。
黒ズボンにカッターシャツ、夏だから夏服仕様に成る処、俺は敢えて上着を肩に着飾るフォームにしてみた。
中二病みたいだ、痛々しい。
「似合わないね」
「俺が良く解ってるよ」
「貴方の其の妖狐の尾みたいな髪型が無ければマシなのにね」
マシはマシでも、髪の毛増し益し、盛り盛り。
「でも其れが無ければ、貴方は生きて居ないんだよね」
「嗚呼、まぁ。合縁奇縁だが、一期一―――」
突然の景色一変即ち、落とし穴に嵌まったらしく、鈴の身長が急に高くなって、俺は放つ言葉を地獄に再び行きそうな勢いで落とし穴と共に落としてしまったが。
寧ろ落とされて良かったのかも知れない、濁されて良かったのかも知れない、此の土と共に。
忘れて居て、忘れたくて、出来れば使いたくない言葉だったから。
言葉の意味自体は良い物だし、其れを言った後「大事だよな」とか言う筈だったから。
良くも悪くも、オチが決まったよな、と言う理由で。
「だ、大丈夫ひー君!?」
多分俺には生前、一桁年代にお隣さんとして紫髪の幼馴染が居たんだよきっと。
然も女の子同士だよ。
「嗚呼、大事だよな」
大事の意味が、重要でなく大事態として一転した。
然し身体は一転したり、穴の途中を背と脚で引っ掛けてたりと言う理由でも無く、其の儘垂直落下で地は底に付き、底を良く見れば竹槍や包丁、針を超えて棘等の鋭利な物が俺の周りに、突き刺す様に植えられて居た。
「やーい引っ掛かった引っ掛かった! ざまぁみろ鈴s……」
と、落とし穴の仕掛け人らしき幼声が、遠からず聞こえて来た。
如何やら鈴仙を落とし穴に嵌めたかった―――いや、得物有る分殺したかったとも―――らしいが、糠喜びで出て来た犯人は当人が嵌まって居らぬ事態にあれあれと凝固し、憐れむ目で犯人を見詰める鈴仙が、扨て状況を話す。
「あの~アンタが嵌めた人間……昨日と先、お師匠様が診てた患者なんですけど……」
犯人、頭から血が引くのを感じ取る。
「だっ、大丈夫!? 人間さん!?」
急いで駆け付け、人間さんと、他人行儀処か、他種行儀で呼ぶ者は、見上げれば鈴仙と同じく、兎耳の者、おぉ土煙が落ちて来る。
但し垂れ耳なのか、何か御餅みたい。
「大丈夫。此処のお師匠様の腕の賜物で、俺は未だ健康だ」
「未だ」と。
何かしら副詞みたいなのが付く理由でも無かっただろうに、不覚たる状況の一変。
「―――が、人に害成した、陥れたと言う悪戯の落とし前は、きっちり払って貰わなければなぁ?」
落とし穴だけに。
もう一度地獄に落ちろ。
見開かせて脅す目は、兎を狩る狐、いや、神聖なる九尾狐の様だと、尾を踏み睨まれた当人は後程供述する。
ヒツキの昨晩事情を概ね知って居た垂耳兎は、流汗失笑で一目散に逃げ出す。
―――霊夢や魔理沙と共に、異変解決に趣き、そして虚しく死去。
然し彼岸側で死線を駆け巡り顕界に返り咲き、何故か再び精神有りし身で、此の地を訪れ、何だか知らないけど敵視された其の殺意に似た威圧は只者では無い事を肌で感じ取らせた。
何より兎、耳は良いから、彼の声が怒涛と怨嗟に達して居る事が大音量で伝わった。
其れが九尾の狐なのだから、最早天罰が下るだろう。
脚力増幅―――は、足への負担が掛かる。
折角治して貰ったんだ、新品同様自分の身体は大事にしないと。
そう言えば俺には最新設定で浮遊が出来るんだったな。
人間らしさを追究し過ぎて忘れ捲って居た。
此れなら何のデメリットも掛けずに奴を追いかけられる。
無動から上空へ高く、そして速く穴から飛び出し、兎の脚力恐れ入った者だと、既に永遠亭から脱出して竹林の遥か彼方、米粒に成りそうな兎を発見する。
そんな視力は『妄想』で上げられる。
見たくないモノ迄見そうで妄りに使いたく無いが……。
服の中とか、服の中の中とか、服の中の中の中とか。
言うな、っての。
言うを禁ずるなら、弾圧だ。
再び、だが今回は自力で指を銃構えに組み立て、目標に向ける。
「重力弾圧~河津桜(Float Bridge)-拡大(Homing)」
颯爽と、然し形相は必死で逃げる兎は、後ろを見るや否や謎の見えない錘が背中に圧し掛かり、笹の葉散らす地面に叩き付けられる。
「ふぎゃっ」
断末魔が聞こえたかと思ったら、飛んで居るが、跳んだかの時間で事を済ませ、其の儘自然落下で地面に着地。
勿論、負担は浮遊で回避。
「扨て、獲物確保」
「……エッ何、てゐを捕まえたの?! 凄ーい。私なんか撃っても撃っても避けられる秤なのに……」
先の落とし穴が鈴に向けて作られたのを考えると、相当苦労人らしいな。
「宜しければ、日頃の鬱憤にどうぞ」
と、標的を差し上げる手を翳す。
「ううん。今の奇声でスッキリした。行こう、ひー君」
と、丸で高校生迄ずっと幼馴染の親近感。
手を出して、手を繋いで行こうとする鈴。
矢っ張り俺には紫髪の幼馴染が居たんだ。
「一寸待ってな」
と、右手首にアクセサる数珠を外す。
「如何して外すの?」
「呪いを掛けて居るんだ。効果がな、凄いんだよ」
マジナいが。
ノロいでも良いかも知れない。
「へぇ、どんなの?」
「如何なる事にも恐れる勿れ」
「格好良いじゃん―――」
恰好だけならな。
「―――其れで勇敢に立ち向かえるんだから、ひー君は生粋のヒーローなんだね」
左目が疼く―――。
「言って居て恥ずかしくない?」
何時の間にか、彼女の目が赤く染まって居る事に、気付いた。
「……なぁんだ。うん、いや、でも、うん。流石は無我界の悪流仙人、この程度の狂気じゃあ調子には乗らないよね」
話の内容からだろうけど出るのは其の異名ですかい。
「勘違いしないでね。悪意を持って貴方を試した訳じゃ無いのよ? 只の興味本位。その証にホラ!」
と、繋いで居る手を挙げる。
「? 法螺話が本当って事でファイナルアンサー?」
「違う違う、私達仲良しってこと!」
接近速度が秒で月迄届く。
「そりゃあ、良い事だ」
此処で卑屈に成ったり疑問を投げ掛けるだろう以前の俺だが、最初から名前呼びなのだから、こんな幻想的な友情展開も、もう良いや、と成って来た。
仲良しなんだし、良いや。
「一寸てゐ、何て事してくれてんのよアンタは」
「てい」とやらの衿足を掴み、反省を促す鈴。
指一本に付き1,025hPaの圧力弾をぶつけたんだったかな?
で、其れを今回二本。
まぁ其れでも死なずに、いや、土が柔らかいのが運の月とも。
されど固形化した風の塊約2,000kgを背中から真面に喰らって逆上せているだけと言うのも、幻想郷少女は頑丈にできて居ると思い知らされる。
「……ハッ、此処は竹林、私はてゐ」
正常だな。
「あっ、人間さん……お願い食べないでぇ~…後生だからぁ~…」
指の隙間に指を挟め、西洋祈りの手と涙目で人生を悔む兎。
お前も人間さんみたいなのに食べる理由無いだろう。
「懇願するより先に、御免なさいでしょうが」
ビクつく兎、兎じゃん。
「ごっ、ごめんなさい」
「許す」
「えっ、良いの?」
余りの呆気無さに、兎、落胆。
「俺は話せば解る男だ。一々追及はしない。又やれば容赦しない」
何だか言葉数少ない男の仁義語りみたいだった。
「この謝罪が嘘で貫き通されれば如何するの?」
「害が無ければ良い。嘘のツケはあの世で閻魔に舌と共に払え」
其れは正に、死んだ奴が言えた迫真の台詞。
「昨日から思ったけど、流石は”無我界の亜流仙人”と呼ばれるだけは有るね、人間さん」
普通だよ。
て言うか其の異名の定着性強くない?
最底辺の裁定者~low ruler~の普及を求む。
「まぁ過ぎた事は引っ張っても仕方がねぇ。抑々あの場で謝れば良かったと言う話だっただけだ。仲良くしよう、ていとやら」
「うん、宜しく。改めて私は因幡てゐ、因幡の兎。ゐはわ行のゐって書くんだ」
旧仮名のわゐうゑを、か。
名前に入って居るは、選ばれて居るな、何かに、知らないけど。
「俺は陽月さくらだ、てゐ公。ヒツキと、鬱陶しいなと己に込めて呼んでくれ」
感情操作。
「願望が鬱陶しいね」
そうだね、握手。
「……それで、私に向けたとされる落とし穴については如何説明するのかしら?」
一難去って又一難と、事無き得た事案を鈴がてゐに掘り返し問い詰める。
「いやまぁ、結局は其方の殿方が身を挺して鈴ちゃんに掛かる火の粉を被って庇ってくれたと言う理由で」
そりゃア何とも道路寄りな話だ事で。
「そんな都合の良い茶番劇が有るもんですか」
それとちゃっかり会話を盗み聞きしてんじゃないわよ、と襟足から首根っこを掴み替え、握り締める。
「痛だだだだギブギブギブ逢引きだ逢引き……!」
懲りない。
鈴は奇声で気が済んだと言って居た気がしたが、然し尚締める握力は強まり、一方俺は静かにゆっくり何度も頷く。
仲が良い事は良い事だ。
【決戦】
休息の一服は大事だが、事は一刻を争い、其の一刻が一瞬で結末を迎え兼ねない状況だ。
巫女が目を覚ませば、覚醒処ではない。
力は破壊に、知識は無限に、速さは存在に。
大幣一振りで竹林が一斉伐採されるかも。
いや、遠心の平行射線が一刀両断と言う恐れも在る。
巫女とは言え神力其方退けで人を彼方へ打っ飛ばす怪力だ。
だが、彼女も只暴れ狂うだけの妖精ではない。
此処での妖精呼ばわりは馬鹿と言う事で。
睡眠からの解放に有り余り捲る其の全てに、其れ成りの制御が掛かる。
其れが人間。
何ならマイナスのマイナスはプラスで、プラスのプラスはマイナス。
星熊勇儀と対峙した己の全力が良い例だ。
知らない余力を出し切れば、又過負荷が掛かり寝込むパティーンだ。
だから此れは持久戦。
彼奴がもう飛ぶ事しか出来ない程度の能力に陥れば、俺の―――。
何か今、猛烈に優柔不断な靄が俺の頭を過った。
「勝ち」とは、俺の場合は何を以てして「勝ち」なのか。
俺は外来人で、弾幕ごっこのルールは適応せず、星熊勇儀師匠からは全力を出せ、本気をぶつけろ、なんて教わり、其れを巫女に向けろと言う。
いや、だが、巫女に向けての、汲み方は違った。
何かこう、迷える子羊を導け~みたいな、説得的方法。
巫女なのに迷走で子羊で宗教違いも甚だしいな。
だが此の侭だと、勝利の暁は、俺は彼女を再起不能にする結末しか見えない。
暁で結末―――其れは正しいのか、言語は間違っているとして。
再起不能にして、今後彼女の人生は、彼女の責務は、誰が全うするのか。
―――――――――。
馬鹿な考えが浮かび上がったが……無しだ、無し。
別に命の奪い合いじゃないんだ……当人はお構いなしだけど。
だけど、如何すれば勝てる、如何すれば認めて貰える。
博麗の巫女が人妖均衡の絶対主権で在るならば、俺の人権主張なんて念仏は馬耳東風が如し。
乃至は抑々俺に念仏は唱えられないし。
「ねぇ、この後如何するの。矢っ張り、霊夢と闘うの??」
「止むを得ないな。不毛だろうけど」
「私も手伝おっか?」
「幼馴染のお前を巻き込むなんて悪い冗談だ」
「おさ…な?」
「冗談だ」
ばーか。
「まぁいいや。貴方を試した事を含め、結構戦闘向きだよ、私」
そう言えば何をしたかは聞いてなかったな、興味無かったから。
悪意で無い事に悪意前提で催促して居るみたいだとも勘違いされてもお互いに不快だろうしね。
「何何、幻想郷の歴史に革命を起こすのヒツキ?」
「そんな正に歴史に名を刻む大それた悪行なる偉業を為そうとする理由では無いが……そうだな。参考迄に二人共、何程度の能力が使えるんだ?」
「幸福贈与」
「波長操作」
てゐが幸福、鈴が波長。
解っては居たが、飽く迄参考だったが、どれも役に立ちそうにはない。
何せ相手は巫女で神子。
無に等しき禍は、今や怒髪と共に天を衝く程、広大に満ちた幸福だ。
波長、ってのは、俺と同じタイプだろうか。
俺の場合、触れたモノの力量を増幅したりと減少したりだが。
彼女の場合は、何だ、見たモノの、其の、波長とやらを変える事が出来るのか。
だが、此れも所詮。
耐性みたいなので全て防いでしまうだろう。
味方になってくれるのは心許無くとも心強い。
だからこそ圧倒的強者に羽虫の如くはたかれる、払われるやも知れん無謀な戦法、戦場に、向かわせるのは心許無く心苦しい。
「矢張り駄目だ。お前等を危険な目に合わせられない」
「危険は承知よ。私、貴方の力に成りたいの」
くぅ~。
何か一度は言って見たい台詞ランキングに入りそうな発言が出来て、返答が言われたいランキングに入りそうな台詞だよ。
「相手はステータスが神域のとんでも超人だぞ。後悔しないか?」
「霊夢相手じゃあ抑々勝敗が十中八九で四苦八苦だもん。無謀な覚悟なんて兎で在る私達は良く自負してるよ」
何か、いたたまれない。
「結果が如何で在れ、不躾僭越にも毛並みに沿って頭を撫でても良いか?」
「其れが戦果なら―――……! ヒー君、屈んで!」
微笑んだかの様に見えた鈴の顔は瞬時に何かを感じ取り、そして座って居る俺の態勢を更に低くさせようと、手を伸ばす。
【絶対】
猛スピードで直進する車に横から轢かれるより、食べ歩きの食物を奪い取る鷲鷹より、耳を通じて飛び交う虻蜂の羽音より、疾走的で豪快だった。
アサルトライフルで射貫くには絶好の廃ビルからターゲットを射抜く様に静寂で迅速。
然し当たってからは遅れてやってくるのが当前の花火の破裂音又は大砲の発射音の如く膨大で強力な一撃。
地獄に落とされる大幣の突きなぞ全く比ではない大木と閃光の一振。
盛大に鳩尾を撃つだけに飽き足らず、この世の悪感情を全てぶつけるかの様な拳と脚の縦横無尽連打撃。
一発が百発撃たれて居る位に速くて、速くて、速い。
先手、移動、攻撃、速さが足り過ぎて訳が分からなかった。
だが『訳が分からない』で済んで良かったと。
髪神綱:守髪神の毛髪伸縮は神故に以ての外、腕や脚、又は腹に結う事で部位の防御効果を上昇させる。
次いでは[神珠]である『純頭・織姫』と『尾涅・彦星』の、『純頭』の方で魔力を増幅させ、『尾涅』の方で魔力を身体に循環させる。
勇儀に使った増幅効果の応用がこの方法。
左手を下に、右手を上にして逆向きの手合せ。
只の気持ち程度の構えである。
その最上位として“全力回路~蜃気楼(thousand mirage)~”が有る。
使えば……まぁ、文字から察して何日かは寝込み不可避。
話は戻して、数珠に寄るデメリットは守髪神に対して一切受けない為、お陰で防御は神級の結界が張られる、最良好的相性。
何だかんだ兎共との会話の最中に準備をして於いて良かった。
腕と脚でこの乱撃を防げて居る分、何が何だか分からないが、危うくの結末。
折角の完治療が御陀仏、通院二の舞だった。
いやもう三の舞になってしまうのか。
何なら巫女自身が殺しに掛かっているので舞うより俺自身がガチお陀仏言ってる場合じゃねぇ。
此の乱心狂人其の者である人間紛いの何かを如何にかしないと。
一文字考える毎に撃たれる拳に如何対処する。
! いやそんな事より此の打っ飛んだ先は永遠亭が在る場所じゃないか。
拙い、拙い処じゃ済まない。
断腸超えてもう骨抜きだわ。
「―――仕方が無いわね。今回限りよ」
美しい声が耳に伝わり、辺り一面、霊夢と共に静止して居た。
「でも、一目見た限りの貴方に手助けするって、何回かお会いして居るのかしら?」
襲い掛かる獣の構えの奴から自然落下で離れ、立ち上がり声のする方を見やれば、十二単では無いだろうが、何かそう言った感じの和装ドレスってやーつ、を着飾る黒髪美人が浮いて居た。
「かぐや姫―――」
そう、正にかぐや姫と言うに相応しき、絵にも描けない美しさかな。
「あら、名乗っては居ないのに。何処かで私の噂を耳にしてくれたのかしら……って、えっ、アレ、え、あ、え、え、え?」
お淑やかさは月に置いて行ったのかな、かぐや姫。
正体現したね。
「―――噂も何も、伝記で有名ですぞ。如何やら俺の噂は……いや、失礼」
「―――まぁ其れは嬉しくもこそばゆい話ですわ。私なんかよりも殿方、謙遜為さらなくても貴殿のご噂は兼ねがね、耳に挟んで居りますわ」
「此れは此れは。拙の噂なんぞ聞かれては耳が汚れるでしょうに。月の姫君に憶えて頂ける事光栄の限り」
「まぁ月の姫君だなんて……所詮は私欲の為地上に落ちた卑しき下人。その様な高貴地位の一族には不要の存在でしてよ?」
「されど見目麗しき可憐美貌は、月を超え、月光も目を眩まし見惚れる美しさ」
「まぁ、お上手です事」
「あはははは―――」
「おほほほほ―――」
この渇いた微笑みを後に、二人は思った。
(自分を着飾るって……辛い……)
社不を本能で感じ取った。
「ハァ、偶には姫様らしく……なんて誰かのご要望を真に受けてみても、根がお粗末じゃあ得る養分は乏しい物よね」
「まぁまぁ。言うか今回じゃなく今ルートでは出る予定無かったのに何で出たんだよ。サブタイも鈴と共闘を題とした話なのにもう彼是十九頁分話し込んじゃったよ。一話の制限二十頁±2なのに如何してくれる? ※彼は今頭が月に到達して居ます※」
「良いじゃない。本家では私、二回目周回で出るんだし、こんな塵芥譚に√1から登場しても差し支えないんじゃない? ※彼女等は月の都ならではの理解出来ない会話で弾んで居ます※」
「√1編も出来て無いのにもう作り始めてるのか。まぁそりゃ確かに突然自分語りをヒロインにし始めるとか引き狙いも良い処だよな ※話し終えたら忘れて居ます※」
「勢いって怖いわね。処で私たちは如何仲良くなるのかしら、月繋がり、其れとももっと過激に? ※彼女の能力は、永遠と須臾を操る程度の能力ですが、不覚且つ不可抗力にも、其の一瞬の隙に入り込んでしまった彼との会話は都合良く忘れます※」
「俺は今猛烈に鈴と共闘したい。宿敵もこんな間近だ。そうだな……√2の永遠亭編迄辿り着いたら想って於こう ※執拗い様で申し訳ないですが、此の物語はフィクションであり、時折物語に有るまじき創作事情的ややこしくさせる様な発言が出たりしますが、確りと物語です※」
「今すぐ決めなさい此れは姫の命令よ」
「正直童子向けの”かぐや姫”を読んで見て何が凄いのか=竹が光った位じゃない?」
「ちゃんと竹取物語で読みなさいよ」
「悪いが姫でもお嬢でも俺は不条理事勿れ主義でね」
「下に付ける様な性質じゃないって事よね」
「そう。飽く迄対等、だが、平等ではない」
其れがロクデナシの生き方だ。
「其れで、如何仲良くなるのかしら?」
「おい話を振り出させるな」
「貴方が不条理事勿れ主義でも、私は不条理量産主義でしてよ? さ、創作のネタを早よ早よ♪」
最近多いな、何か此のパターン……苛。
「―――別に皆お友達に成る必要性って無い訳ですしぃ? 初めからお友達に成れなかった実例御座いました訳ですしぃぃ? そうですね、陽月は月の表とするならば、貴女は幻想郷と言う名の月の裏面を眺められる者と言う理由でぇぇぇ? 相対する者さあ何時の陽か案内人さんとぶっ穀しに参ります故末永く」
「えっ、一っ、待っ―――」
そんな訳で、何か良い感じに浮遊してポーズとシーンを戻し、謎のお姫様の能力を右手で解除し、彼女の事はすっかりぽっかり頭の中から消え去って―――。
―――此の後、ヒツキは迫り来る博麗の神獣”ハクレイレイム”の猛攻そして、押し寄せて来る永遠亭損壊の運命、無事払い除け掻い潜る事が出来るのか?
今回の話は『第参拾参点五話 永く、病~soon noon the Moon. H “Unrealing”』でした。
次回こそ正真正銘のレッドアイズです、多分。
※※※小説進行ですら幻想入りしました※※※※
サブタイトル詐欺と言うか、最後僕にも良く解らないお話でした。次回も第参拾肆話です(?)。
多分幻想郷の賢者である彼女が出たら、こんな話がモリモリ出るんでしょうね。




