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幻想の現実≠東方空界霊  作者: 幻将 彼
第伍章「青年は起き上がり、住人の目の変わり様を察した。」――有無異変.
43/62

第参拾壱話 魔が差す力は活きる力に~Wonder Under .“H Glitching”

勇儀に続いて霊夢との継続戦闘……彼女のヒツキを狙う真の目的とは……。

【代理】


「其れは俺に間合いを取られる前に言いな」

 気付いた時には、霊夢の前にヒツキが居た。

 素早さが弾幕と大差無い。

「クッ……」

 霊夢は後退し、防御の姿勢を取る。

「愚霊・人・或手名刀~gray to Ultimate~」

 天高く振り翳す剣は、スペアの大幣を真っ二つにし、間髪入れず次の手を決める。

「愚霊・人・喰干支~gray to Quiet~」

 手を獣の爪の様に立て、裏返しで相手の胸中目掛けて撃つ。

 霊夢は高く吹っ飛ぶが、飛行能力で威力を制止させ、追尾する御札弾を放つ。

 ヒツキはカッターナイフ型の刀『一切刀』を取り出し、トリガーを引いて、刀が折り目からバラバラに成った処を鋏型の剣『合切剣』で前面三方向から襲い掛かる御札に向けて打ち込む。

「白桜(Silver Chill Petal)143」

 銀色の桜が飛び散るかの様に、御札を切り刻んでいく。

「桜命雪恰散~Erase~」

 何処行く鉄の桜に向けて、複数の消しゴムを飛ばす。

 当たると同時に花弁は粉々に消え、雪の如く辺りを煌めかせる。

「少々洒落臭過ぎたな」

 主催者との対立、宴会は無いだろうがね。

「アンタに飲ませる酒は無いわよ」

 ほらこの通り。

「どおも。じゃあお前は俺の技を喰らって寝なっ!」

 再び神速を働かせ、間合いに入る手前で一回転し、

「上弦三日月ノ輪~East rise Up Arc~!」

 容赦なく踵落とし、おまけに鎌囲太刀付き。

 霊夢は腕交差で防御するも、その勢いに耐えきれず、文字通り蹴落とされる。

 勢いは大地に迄届き、新たなクレーターを生む。

 煙が舞う中でも、目標を見失わず、ヒツキは止めの一撃を上空から放つ。

「愚霊・人・ベ〜gray to Be……」

 視界が二つにズレる。

 心臓が大きな鼓動を一つ、身体を揺さ振らせ、運動神経の全てを停止させる。

 此処に来て神器を運動能力に使用した際の副作用、デメリット、代償が来たか……。

 勇儀に本気を出して以降、何も施さなかったからな。

 増幅の重複使用はその後のデメリットを更に跳ね上げる。

 左腕が未来永劫ぶら下げているだけの御飾りに成り兼ねない。

 肉が剥がれる神速も髪神の加護在って未だ筋肉痛が何日か続くで済ませて居るが、使い続け過ぎて居たら車足生活だ。

 だから本気を出すって嫌なんだよ。

 此れだけ人値超越運動で働いても熟練度、腕は腕立て三十回を三セット分、脚は陸上競技場トラック四周半した程度の経験値しか貰えない。

 後先考えて使って居るんだよこの能力。

 其れを加減して於いて此れ?で本気出せだの何だのあの鬼はゴチャゴチャ煩いぞヒツキ。

 相手の猛攻が止み、其の隙に体勢を整えるべく神楽を舞う様に振袖を振り、煙を払い、片膝下げて座る霊夢は、脚に力を入れ、跳躍して飛行する。

「さっきは良くもやってくれたわね! お返しよ!!」

 左腕を抑える中、ヒツキは退避を試みるも、神経の反応が遅れて間合いを詰められる。

「神技『天覇風神脚』!!」

 空中月面宙返り蹴りを四回、そして五回目に吹き飛ばす勢いで強く蹴飛ばし、更に空高く跳ばされる。

「と、宝符『陰陽宝玉』!!!」

 霊夢の手から巨大な衝撃波が放たれ、神性無敵貫通特攻、防御無視、止まる事の無い復讐攻撃は、ロクデナシを地獄の天井迄吹き飛ばした。

 痛ぇっ、此れがダメージか……防御ダウンしてるから倍痛い。

「カハッ……」

 そして此れが血反吐で咽る感覚。

 其の儘、重力の儘、成されるが儘、何も出来ない儘、頭から地面に激突する。

 無論無傷で在るが、意識は眠りたい程薄れて居る。

 何なら皮膚が地面に当たり、地獄なのに涼しい。

 結局当初の約束は有耶無耶にされ、全く地底の奴らは宿題を出したがる。

 何だよ俺も知って居るって……、知って居るなら今頃遊ぶだけの日々で過ごして居るよ。

 忘れて居たけど今季節な―…だったな。

 巫女さんに命狙われるって条件付きどんな宿題。

 嗚呼もう怠いわ、今日の宿題は此処迄。

 寧ろ―休みが此処迄かもな。

 上から隼の鳴き声の様な、速い音が此方に近付く。

 それを硬い物が横断したのか、激突する音、そして遠い処で激突する音が聞こえた。

 近付く下駄の音がする。

「ヒツキ、もう限界か?」

 勇儀が腰を下ろして訪ねる。

 如何やら彼女の助力らしい。

「此れでも部活練習した方だよ……全力無酸素運動、人間の中でも群を抜いて張り詰めた結果だよ……」

 其れにしては良く喋るな。

「あぁ、確かに声はか細いな、老人みたいだ」

 死に欠けと言いたいのか?

「私に続いて巫女との戦闘……本当に頑張ったよ、お前さんは」

 急にお前さん呼ばわり頭を撫でる。

 どの立場よ、星熊さん…?

「後は任せて於きな。アンタの力には制限が有り、回復の時間が要る、間違いは無いな?」

「ああ」

「なら時間稼ぎに一肌脱いでやる。移動は友人に任せて於きな」

「脱いだら後は御自慢の裸体だけだが大丈夫か?」

「カッハッハ、中はお前さんの好きな晒だし」

 言ってねぇよ。

「冗談言える分余裕そうだが、相手の殺意から逃げようとする体力が残って無いのは一目瞭然だな」

 冗談は言った、御免な。

「ドーピングとして回復出来るが、後が爆発四散し兼ねないからな」

「そりゃあ一大事。ヤマメ、此奴を地上まで頼んだ」

 山女魚、魚か?

「解った。任せて」

 上から反転した茶色い奴がひょっこり現れた。

「こんにちは、私は黒谷ヤマメ。悪いけど移動の為に君を束縛するね」

 わ?

「それっ」

 と言う頃には、俺の体は蜘蛛の糸で縛られて居た。

「成程、絡新婦の餌と成る食人の気持ちがコレか……」

 何てほざいて居る頃には、担がれの餌。

「私は女郎蜘蛛じゃなくて土蜘蛛。今回は食さないから安心してね?」

 ヒエッ。

「気ぃ付けな。私等妖怪は何てこと無いが、其奴病原菌持ちだから、下手な事は言わない方が良いぜ?」

 と勇儀からの助言。

 其れは弱り目に祟り目だ事で。

「ワクチンって抗原菌薬は作れるのか?」

 ヤマメは、目元だけ、此方に向ける。

「別に患わせたりしないよ。薬は医者じゃないから解んない」

 と、揺さ振って荷物を持ち運び易い様に担ぎ直す。

「でも、うん、そうだね」

 何かを勝手に考えて納得する。

「それでは参りましょう。巫女に退けられる前に」

「頼む」

 移動しようとした途端、瓦礫の中から巫女が飛び出し、

「逃がすかぁー………ッ!」

 高速低空飛行で此方に近付く。

 良く見たら又大幣を持って居る様に見える。

 スペアのスペアか? ストックは補充出来たにしろ、折れる前提のどんだけ持ってんだよ。

 振り被った処を、勇儀が手枷で防ぐ。

「悪いな。アンタの相手は私がさせて貰うよ」

 足を鳴らせば、大地から噴石が飛び出す。

 霊夢はすぐさま届かない上空を目指し、回避する。

「アンタの相手をしている暇は無いのよ。其れに相手は其奴」

「誰にとってのだ? 幻想郷か、それとも―――」

「幻想郷よ。だから私が動いてるのよ。それ以外に何の理由が有るのよ?」

「ハァ……巫女も巫女で巫女も巫女。お前もお前だが、お前もお前で大変だなぁヒツキよぉ」

 と後ろを振り向く頃には、ヤマメ達は出発していた。

「理由解んない事ほざいてんじゃないわよっ!」

 陰陽玉が勇儀に向かって突撃する。

 其れを逆回し蹴りで防ぎ、次いで霊夢も蹴りに掛かる。

 霊夢は素早く後退し、同時に針を飛ばす。

 勇儀は避けたり手枷で防いだりで、そんな中話しかける。

「何時にも増してやる気が在り過ぎやしないかい、巫女さんよぉ。異変とは言えそんなに彼奴が気に食わないにしては、情入り過ぎなのが見え見えだよ?」

「別にあんなロクデナシ如何って事無いわよ。問題は彼奴の持つ物よ。不可視の魔法でも掛けているのか知らないけど、世界を書き換えるとんでもない物を持ってる事実は確かよ。私は其れを直に見たし、直に聞いたわ」

 賽銭を壊され、直され、其の証拠に修繕された様な筆跡綴られた用紙。

 己で視認し、己で裂いた。

「直に見たのなら、其の如何って事無い奴も見て居る理由だ。現に今ぶつかったろうに……彼奴は使ったか? 其の世界を書き換える物とやらを。其れなら体力尽きて倒れる行動はしなかった筈だ。何を恐れる、何がお前を駆り立てる?」

「其のとんでもない物は、彼奴が生まれた元でも有るのよ。取り上げて彼奴が又倒れちゃったら、其れこそ可哀想じゃない。だから追い出すのよ」

「理由になって無いなぁ。やっぱり情が入り組み過ぎて居るぜ、博麗の巫女」

「相手してる暇は無いって言ったわよね? 霊符『夢想封印』!!」

 種々色光弾の群れが勇儀に集まり、触れると同時に炸裂する。

 勿論鬼である勇儀に、おいそれと負傷する威力では無いが、目の自由を奪われ、視力が回復する頃には、霊夢は姿を消して居た。

「逃がしちまったか……ヒツキに申し訳が立たないね。然し―――」

 目を瞑り、少しふら付けば、勇儀は背中から倒れていた。

 口からは血が漏れている。

「ハァ、全く……彼奴本当に本気で殴って来るもんなぁ、煽ったのは私だが……。手加減してくれて居た分、しっかりと紳士だったよ、彼奴は……」

 瞳を閉じて、批評交じった独り言、然し表情は満足そうに微笑みで溢れていた。

「大江山の鬼四天王が何て様よ? 呆れるわね」

 皮肉を言い乍らやって来たのは、橋姫”水橋パルスィ”。

「清々しい様だ。お前が陸でも無い奴を紹介してくれたお陰だよ」

「私は只嫌味を言いたかっただけ。其れを誰の事だの挑みに行くだのと勝手に自爆してるんだから忙しないわよ」

「そうだな、ありがとよ。ヤマメやお燐達に彼奴の救護を頼んでくれて」

「勘違いしないでよね。別にあんな奴に可愛いって言われたから気に成って居たりとか、きっと勇儀が袋叩きの鼠にしてしまうのが心配であちこち駆け回って救急への助けを呼んだ理由じゃないんだからね……」

 何てテンプレートなツンデレだ事でしょう。

「へへっ、嗚呼!」

 叫べば彼女、ケホッと咳を込んでいた。



【搬送】


 地獄の出入り口である大穴に迄辿り着くヤマメ御一行。

 主人公格の陽月さくらは重症の為、安静応急処置状態且つ、彼女たちの運搬に身を委ね昏睡状態。

 まぁ委ねる他無い包帯グルグル巻き状態でも在る為、この状況は実質、物である故ヤマメを御一行の名義にするのも致し方無し。

 現状二人では有るが、近い後に彼は沢山の少女たちの力を借りる事に成るのだから―――。

「あ~…起きてる、風来坊くん?」

 静けさが嫌いなのか、ヤマメは話し掛けて来る。

「嗚呼起きた、お休み」

「眠たいのは充分承知だけどまぁ、一方通行で話すね」

 じゃあ俺は其れを子守歌として聴いて居ます……嗚呼こう言う思考も睡眠の妨げ。

「貴方って、この一件が済んだとして、見た感じ外界からの風来坊さんだから住処は在るのかなって想ったんだけど、差し支え無いのなら私が貴方のお家を造ろうかなって」

 そりゃあ有難い。

 事俺の雨風凌ぎは下宿か野宿。

 いやまぁ凌げるなら当然此れ位だし、野宿は特殊だし、誰かの家に毎回押し掛けるのも申し訳ないし、乃至迷惑甚だしいし。

 野宿も野宿で毎回結界張って空の上で眠るのも手間では無いが消費するのは勿体無い。

 又烏天狗にモーニングインタビューされても癪だし。

 扨て、此の思考だけで何秒分の睡眠時間を削られたのでしょう……。

 今回は状態が状態だけ在って、割と。

 一分は経ったかな。

「取り敢えず貴方を名医の居る『永遠亭』に連れて行くけど、その前に後ろの巫女御前を如何にか後退させなきゃねっ!」

 前か後か、貴人なのに貧乏なのかハッキリして欲しいね……巫女は鬼人だな、勇儀以上に。

 って、負傷者を手荒く投げ飛ばすな、重症者だぞ、ハッキリして欲しいね。

「ヴッ」

 何かが頭に当った様な気がした。

「ガッ」

 何かに背中からぶつかった様な気がした。

「あらあら、火を避けて水に陥るとはこの事だねぇ……大丈夫?」

 上は大火事、下は洪水ってか、逆だな、只々災害。

 それよか本当類義語回収で祟り目だろあの土蜘蛛。

「お燐ちゃん」

 頭は未だ不明、背中は火車、火焔猫燐の死体運用荷車だ。

「やぁヒツキ、アンタの場合は太陽を避けて月映る池陥るとも言えよう災難、珍客からの依頼でアンタの救護をしに来たよ」

 陽月だけども、俺は吸血鬼か。

「だがまぁ有難う」

 連携の取れた救急伝達だ。

「さぁて、今度は私が運ぶ番だね」

 おっと、急ぎでは彼女に申し訳ない。

 下を見やる。

 彼女の言う通り、ヤマメは完成された八角形の蜘蛛の巣を弾幕に、追い付いて居た霊夢に打ち込んで居た。

 文字通り多分足止めになるんだろうな。

「ヤマメ、ありがとう」

 声は熱血系じゃないから出せないし、出さないが、聞こえて居たのか。

 彼女は一寸だけ此方に首を傾け、素早く腕を後ろに親指を立てて、彼女との建設案件は後にした。

「そいじゃ、行くよ」

 浮かぶ火車は地上へ向かい浮上する。

 処で頭の件は、昇れば桶が紐で吊るされ、その中に緑髪ツインテの白い着流し幼じょ

「あらかわいい」

 驚いた彼女は、すぐさま桶の中に引っ込む、かわいい(かわいい)。

 そして又ゆっくり此方を赤面涙目乍らに覗き込む、かわいい(かわいい)。

「其奴はキスメ。釣瓶落としで普通に首を刈るし人喰うよ」

 アリガト、感謝が重ね重ね。

 本当は怖い幻想郷が垣間見れたよ……。

 可愛いの受動兎も角、アレは獲物への執着と言う事で、タゲ取られました。

 喰う奴幼女体型やめな~。



【蜘蛛】


 カメラ変わってヤマメ、対、霊夢。

 触れれば又もや地底に墜とされ振り出しになり兼ねない粘着性の在る蜘蛛の糸の弾幕を、霊夢は軽々とスピードを落とす事無く近付く。

「弾幕ごっこ的に悔しいけど、相手が霊夢じゃ仕方ないにしても、最早虫の息の彼を追い詰めて如何しようってんだい」

「どうするこうするをどいつもこいつもに話して居られないわよ」

 と、陰陽玉を一つ飛ばす。

 然しヤマメは余裕に回避する。

「落ち着きなって貰い手失くすよ?」

 と、冗談なのかガチなのか、スペルカードを出し乍ら言葉を返す。

「ピキッ、だぁかぁらぁ~……そう云うんじゃないって言ってるでしょうがっっっ!!!」

 大地を踏み締めて跳躍するかの様に思いっ切り足をバネ伸ばし、ヤマメのスペカ、”『罠符』スパイダーウェブ”を物ともせず高速飛行で接近し、大幣がヤマメの腹にクリーンヒット。

「ガッ……ハァッ!」

 スペカは一瞬にして砕け、梃子原理で、霊夢はヤマメを地底の方へと振り回し、出身地へと落し還す。

「ケホッケホッ……。あ~あ、時間稼ぎにもならない程、時間を潰しちゃった」

 落下最中、真っ直ぐ地上を目指す彼女を景色に、彼女は思う。

「何なら、霊夢の分も作って良いんだけどね」

 も、と誰に向けて言ったのかは、白を切る。

「ギャーッ!!!」

 何故か、トドメか、針と御札の弾幕ショットセットが負け犬を襲った。



【地上】


 カメラは戻り、火焔猫サイド。

 別にドラマか何かでは無いが、強いて言えば秒記。

 何て事は無い、光が見え、其れは次第に拡大して行き、光の向こうには空、そして取り囲むように生える木々、光源である太陽。

 火車は走るように穴から飛び出し、そして空目掛けて飛び立つ。

 最も飛び立っては居たが、上と下とは何とも面倒な関係でしょう。

 木の上を頂き、お燐の最速で永遠亭とやらを目指す。

 そして間も無く霊夢も地底の穴から飛び出す。

「もう逃げられないわよ、観念しなさい!」

「ま、拙い。もう追って来たのかニャ?!」

 急な猫語尾キャラ有難う。

 距離は目と鼻の先、何なら針と御札の射程範囲。

 出て間も無いのに、聞いた話だと人里近くだと言うじゃないか。

 飛行速度が何で在れ、あの距離を歩行三十分掛けた俺にとってはもう此の状況、神妙。

 おまけに永遠亭に辿り着くので有れば”迷いの竹林”とやらの何処かに建って居るとの事。

 樹海が竹で本当神妙、万事休す。

「秘術『グレイソーマタージ』!!!」

 星の型で並んだ弾幕が霊夢に撃たれ、当人は勢いに流される。

 火車と言う台形状の窪みの中、迸る痛みに耐えて、お燐遮る後ろを何とか見据える。

「あ、危ないじゃないか。スペカで躍り出るってどんな神経しているんだい!」

 いきなりスペーカでのご挨拶は非常識だと知識を得ました。

 まぁ常識なんて知るかは大いに同意。

「済みません。其方の殿方とは少々御縁が御座いまして、”東風谷早苗”不躾乍らにも助太刀に馳せ参じましたっ!」

 今を時めくキラキラ女子高生は、左足を上げ、左目ウインクに左手横ピースを決める。



【三昧】


「其れに現人神たる私の神経を問うならば、垣間見た奇跡!」

 何か割り箸の隙間に箸袋挟んだみたいな大幣を持ち乍らダブルピース。

 一寸何言ってるか解んない。

「…………」

 別に先の愚行に冷静沈着化した訳では無く、只只手を下げ足を降ろし、ゆっくりと此方に近付く。

「はい、好みのお顔です」

 ホント不躾だな此の風祝。

「では早速」

「e」

 東風谷の、両手を我が頬にて囲む。

「此れは如何云った早速で?」

 問う頃には目を瞑って此方に顔を近付けて居た。

「勿論、一目惚れと言う者でしたので、お気持ちをマウストゥマウスにと」

 巫女って種族は求愛成功したら繁殖する動物なの?

 いや片方は斬られたけど。

「俺は未だ段階を踏み締めて付き合いたいかな」

「心と心を寄り添った第一印象でしたよ?」

 其れ妖夢で間に合ってますタスケテおい火焔猫お前は何で目と口開かせて見てるだけなんだよ嗚呼逆にお手手が塞がっているそりゃあ仕方無い仕方無く有るか。

「安心せい峰打ちじゃあぁーっ!!!」

 括弧、現在進行形。

 火蜥蜴より、ずっとはやい鬼火の速度で居合を魅せて、魂魄妖夢、推参。

 打たれた早苗さんは浮かぶ火車で逆上せる。

「うわ重っ」

 女の子にやめたげて重いとか。

 直に重みを感じているの僕なんですよはいブーメラン。

「師匠を誑かす害虫が師匠ご無事でしたハ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ??!!!」

 妖夢、俺を見るや否や半霊の必要べき半霊分が飛び出そうな衝撃的リアクションと言うより情緒不安定過ぎない¥最初何て言ったよ?

「あの腋、全身複雑骨折に成る迄師匠を痛め付けたか絶対にゆるさない妖夢!」

 語呂に無理が有るわ。

 良くてゆる咲夜さんかぽまえが居合斬ったゆる早苗さんだよ。

「だがお前の加害妄想で心配してくれるトコ好きだぜ」

「みょん……///」

 何其の発音可愛い。

 そして体の部位でしか呼ばれなくなった博麗乙。

「戦歴でしょ、自業自得での。まぁ、絶対安静の応急処置に至る程、頑張ったのね」

「パイ先の信頼溢れる慧眼での労いもだいちゅき」

「ナイフぶっちゃちゃちゃぁ?(訳:ナイフぶっ刺すわよ?)」

 噛んだ。

「噛んだね」

「噛みましたね」

「神の思し召し」

 まさか竹輪大明神か。

「誰だ今の」

「良い加減にしやがれーっ!!!」

 霊夢の態勢が立ち直り、射程圏内到達早々”霊符『夢想封印』”を放つ。

 四人は、正確には負傷者二名を抱えた一名と二名が近付く光弾から、グレイズ、所謂「防御壁」を張り、破裂させて冷静に対処。

「全く聞いてりゃあ其のロクデナシに惚気る事ばかり言いやがって……お前等は愛に飢えた獣畜生か?」

 其れは俺も同意見ですわ。

 でも直に愛を言葉に添えて話す人も如何よ。

「あら、嫉妬? 権化は橋姫だけじゃ無かったのね」

「とは言え分家でしょう。本家に敵わなければ敵で討って来て居ますもんね」

 水橋パルスィが味方って事……?

「おっと、それ以上は野暮たいだよ、従者の方々。ヒツキは覚り妖怪を騒音で苦しめる程に言葉を思考するからね」

 九九を零秒八一で終わらせる男。

 だから何だよ。

「取り敢えず、精神的には問題無い以上だし、後は後に弊害の肉体を回復するだけね」

「何か悪いな。多勢で協力してくれているみたいで」

「ほら見ろ矢っ張り察して居るよ?」

 そうでもないよ?

「(妖夢)そうでもないっぽいです」

「(咲夜)そうでもないわよね」

「(早苗)そうでもないでしょうに」

 お前ら何なん。

「早く逃げなさいよ。文字通り時間稼ぎは出来ましょうから」

 時間能力者が言うと安心感が違うぜ。

「じゃあお言葉に甘えて」

 再び火車であるお燐の火車、発進。

「アンタ等、骨粉も残らないと思え」

 言葉に丁寧を忘れ、巫女が火葬の弔いを忘れ、怪退治ヤクザ”博麗霊夢”は、有りっ丈の御札を取り出し、弾幕ごっこの創始者、そして幻想郷の秩序と平穏、安寧、均衡を守る”博麗の巫女”として、最強無敵、完全必殺、ラストワードのスペルカードを叫ぶ。

「『夢想転生』ッッッッ!!!!」

 御札は余す事無く全方位を飛び交い、ロクデナシを囲う三人の少女たちを一網打尽にする。

 其の範囲は遥か彼岸の彼方へと逃げるお燐の背中に迄ぶつける程に。

 衝撃は彼女の浮遊バランス及び運動能力を殺し、然し病人であるヒツキだけでも意地でも竹林迄届けようと、弾幕の嵐に巻き込まれない様にと、お燐は前に火車を放り投げてしまった。

 四肢完全捕縛の最中、落下速度に併せて回転を利かせる。

 此の侭では、重さ的に俺が一早く落ちると思いきや、束縛元である蜘蛛の糸が緩んでおり、と言うか斬られて居り、糸の上から即座に火車の縁を、出来る限りの握力で掴み、火車から降りないようにする。

 気休めだが、着の身着のままで落ちるよりかはマシだ。

 いやぁ有難い、咲夜パイ先のナイフだろうか、彼女は気が利き捲りのリスペクトカワイイメイドパイ先。

 いや、案外キセキの代行者、早苗さんが斬れる風起こしで解いてくれたのかも知れない。

 いやいやいやいや、矢張り史上最高のお弟子、魂魄妖夢の飛ぶ斬撃で糸が切れたかもかもかもかも。

 誰かによっては本命を決めなきゃな、無念に落下死してしまう処を救ってくれた救世主と、病める時も、健やかなる時も……ってやるか度阿保っ。

 この時、混沌本を以て得た”陽月さくら”個人、唯一無二の能力『飛行』を何故使用しなかったのか、頭に無かったと言う度阿保っ。

 そして度阿保っの頭、ある奴へのメッセージが繰り広げられて居た。

(さとりんよ、此れが外来にある娯楽遊戯施設”遊園地”のアトラクション『ジェットコースター』だ)

 落下死しちまえ。



 奇しくもお燐の願いは届いたかのように、そしてヒツキの自虐は届かず、前方には竹が生え捲った林が聳え立ち、地面の衝突迄数秒。

 金属類である火車はどうしようもなく鈍い音を響かせると同時に崩壊し、その衝撃でヒツキは火車から放り出され、髪神の加護で更に風圧バウンド移動し、竹林の前に倒れ込む。

「お、おい大丈夫か?!」

「嗚呼、大丈b―――」

 駆け寄る足音はその場で座り込み、俯せから仰向けに回され、胴を抱えて心配する少j…………少女。

「―――大丈夫です。私は既に呪われて居た」

「本当に大丈夫か??!!」

 何かもうこの場で眠りたかった。

 そう言えばご飯食べていないなぁ……。


こうして弊チャンネルのゆっくり実況動画チームは結成としての原点が得られたと言う理由なんですね、知らんけど。

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