第弐拾玖話 心の底から~Hells Health. ”H Inpacting”
粗筋:霊夢との戦闘の末、ヒツキは二重の意味で落とされる。
妖怪と貶され、大穴に突き落とされた彼は、落着後「死にたい」と願望する。
そんな中現れたのは、死体収拾が趣味の火車、火焔猫燐。
生きる気力の無いヒツキは、彼女の住む地霊殿へと運ばれる。
【圧倒】
こんな事が、今の今迄有っただろうか。
『陽月さくらと言う・シーズン2~今更だけどお前誰やねん~』が、凹んで罅の入った壁を背に、正確には地に伏して居るが……そう、身体が思う様に動かない、瀕死の状態で居るなんて事が。
瀕死の理由として、戦闘。
戦闘に於いて、曖昧で勝利と敗北の両方みたいな結果で納得行かない腑に落ちない様な終戦を迎える二元論の究極体みたいな男が、今正に、白黒付こうとして居るなんて事態に陥り掛けていようとは。
「……さぁ、こんなモンじゃないだろ? 坊や。もっと全力で掛かって来なよっ!」
土埃舞う中、対戦相手の影は挑発を掛けて来る。
「……如何して……こうなった」
此の始まり方と言い、使い古されたアバウト台詞と言い、好きよね。
【霊殿】
「!」
丸で此れから俺が激闘を繰り広げ、屈強な相手に捻じ伏せられる様な予知夢を見て居たかの様だが……。
ウェンディーネが出来そうな分野だ、此れから先何が起こるかなんて知らん。
て言うか何の夢見てたっけ、何の妄想繰り広げていたっけ?
そんな事よりも、良くもまぁ一輪で輸送される火車で眠れたもんだと、俺の三半規管は異常に想えてしまうが、まぁ異常事態、異常状態は慣れっ子なモノさ。
其れより暑くないか? いや問題無いわ、気の所為だわ。
黒い長袖Tシャツにギザギザデザインの肩パッドが編み込まれた半袖Tシャツ(黒)を着込んで、事地獄級の熱吸収に於いて此の時期に於いて右に出る者は黒い車くらいだ。
俺は何か個人的に定評が欲しいよ。
「さぁ着いたよ、『地霊殿』だ」
何時の間にか白い布で包まれて居た俺は、布を払い身を起こす。
見上げれば紅魔館に負けず劣らずの屋敷が建って居た。
「如何も有難う。……嗚呼ぁ~…、オリンで良いんだっけ? 原子番号15番、コードネームP」
「違わないけど違うね。しっかし……」
赤髪の、左右にお下げ。
猫耳みたいなのが頭上でピョコピョコ動き、チャイナ服みたいな柄のゴスロリ服装のスカートから尻尾が二つ不自然に揺れ、見詰める瞳からも分かる通り正に猫の様な風貌。
「貴方からは霊夢と同じ匂いがするわね」
え、俺そんなに貧乏臭い、其れとも脇臭い、腋臭?
「何匂ってんのよ」
「いや、貧乏臭いのかと」
「匂えるのか……じゃなくて、言葉通り霊夢の匂いが貴方に付いて居るって事よ」
え、ヤダ。
人平妖絶の……女尊男卑的な、そう言った差別主義の巫女さんの匂いが付いて居るって、ヤダムリ、マジムリ。
こうやって拒絶して居る事も又、差別なのです。
「アンタの匂い、落ち着くよ」
俺のではなく、飽く迄も巫女さんのだろうが。
そんな事は御構い無く、火車で胡坐る俺の膝元で顔を擦り付ける火焔猫。
猫だな。
だが丁度良い事に俺は猫派だ。
二元論の塊だから犬派閥にも入って居るかと思えば非ず、第三勢力兎派でも無く、猫派だ。
至極至福では無い事は無い事で無い。
茸か筍なら漏れなく茸だ。
ポカリかアクエリかならポカリ、アヤナミかシキナミかならアヤナミだ。
マキナミは知らない。
何の話だよ。
チョコかバニラかならチョコミントを選ぼう。
第三勢力じゃねぇか、歯磨き粉を選ぶな。
林檎か蜜柑かなら桃。
だから第三勢力だと。
でも桃って林檎と同じバラ科らしいよ。
じゃあ林檎派では在るな、毎日味覚バリエーション豊富の、一例としてカレー味の林檎食べて居たし。
桃源郷行って見たいな。
知らんがな。
寝起きも妄想絶好調。
絶好調だから頭を撫でてあげよう。
「グルグル……グルグル……」
喉を鳴らして居る。
出来れば胡坐の脚枠の中で丸まって眠って欲しいのが猫への願望なんだがね。
「騒がしいわね。玄関で一体何処の殿方と話して居るのよ、お燐」
両開き扉の片方が開き、現れるは桃色髪の、赤い目玉の赤い紐に纏わり付かれた幼女。
「あ、さとり様!」
猫の如く、素早く起き上がり、反射で俺は其れを避ける……ボキャ貧。
彼女が話に聞いて居た此の霊殿の主か。
金持ちは皆、幼いのか?
じゃあルーミアは実は残念系おつむの財閥?
…………いや…………無い、か、なぁ~……(遠目)
嗚呼でも、おぜうはああ見えて五ひゃ…………。
何だろうな、想ってしまえば終いになる運命が見えた気がした。
俺も運命を操る程度の能力らしい。
扨て此の令嬢、豪邸にスリッパとは生活習慣駄々洩れじゃないか。
金持ちって暇を持て余してんだろうなぁ。
「? 何て言ったんですか、此方の殿方は?」
「え?」
「んぁ?」
沈黙が続く。
「……まぁ、良いでしょう。どうぞ上がってくださいヒツキさん、持て成します」
「お邪魔します」
……んぁ、俺名乗ったっけ、然も仇名で……?
其れにあの髪色………まぁ、いっか。
地霊殿の主、”古明地さとり”に書斎へと案内された俺は……扨て、如何しよう。
如何しようと言うのも、見るからに殺風景、愛本家パチュリー・ノーレッジと比べて当然少な過ぎる……いや、向こうが多過ぎる、本の数。
そして何よりも、来客向けの部屋で無い事、明確。
あ、お燐は仕事と言う名の趣味、即ち肢体探しに戻りました、再開しました。
恐らく中心に机と椅子一セット”古明地さとり”自分用の席で有るなら、他の座席迄は、会話に困るレベル。
談話室の様な横長机が長辺側に一人用一人用、向かいに長椅子ソファーに囲まれているみたいな位置では無いのだ。
と言うか、無いのだ。
長椅子ソファーは在れど、後ろに在る同幅の本棚、両開き扉、本棚本棚と来て、漸く主の席へと辿り着く。
「御免なさいね。持て成すと言った手前、客人用の部屋は設けて居なくて」
さも心を読んだかの様な謝罪だ。
「構わないですよ。匿って貰えるだけでも十分です」
って~怪しいかな? お尋ね者感有るよな。
「匿うとは、随分とヤンチャな生活を送って来たのですね」
ヤンチャなんて言える程可愛いもんでも無いが。
「……処で、私の事については、お燐から聞いて居るのですよね?」
んぁ?
「名前通りの妖怪とは聞きましたが如何言った妖怪か解らなくて、まぁ何だかんだ優しい妖怪~……でもないか今迄。取って喰われようが抜け出す自信が有ったりさようなら」
さとりは矢張り自席に座り、俺は今朝の透明布団を応用に、透明座布団をその場に敷いて座った。
「そうですね……私は所謂、心を読む妖怪です。精神を喰われる前に逃げるなら今の内ですよ?」
あ~、覚りってそう言う……。
(知り合いって言うか、昔どっかの馬鹿が惚れた女はそんな身の丈に合わない持て余した能力を持って居たな)
「順応速いですね……いや寧ろ今迄が異常と言うか……。覚妖怪に惚れた殿方ですか。其れは何とも、本気で心迄奪われたのでしょうね、その御仁」
おお、本当に読んで居やがる……彼女人間だったけどね。
(そうだな。呆気無く振られて闇落ちっつうか、死に至る闇落ちしたけどな)
「それは、勿体無い事をしましたねぇ。一時の勇気が絶命に到るとは、覚りとは何とも犯罪的なんでしょう……」
自虐か? だが。
「犯罪的、な。確かに、聞いた話では闇落ちの事に、さも被害者面って感じに、能力は有っても解決策が見当たらない無能さ、深層心理の心操の出来無さ出来底無さ、に悲観して悲嘆して居たな。闇落ち君、其っち退けで」
そして俺が生まれ、俺が其奴だと誤解を招かれ、色々有って幻想郷へ。
「ハァ……実に、実に其の妖怪は、心理の何たるかを理解出来て居ない低級覚だったのですね。同種で在る事が実に嘆かわしいです……」
(―――読めてなくない?)
「読めない、何がでしょう? 私は真の覚り妖怪で、相手の心を読み取る妖怪で相手の触れて欲しくない事を簡単に触れてしまい傷付けて嫌われて恐れられる嫌悪の象徴と在ろう者が読めないとはハッハッハ御ジョークが面白い」
寿限無寿限無五劫のすりきれ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝るところに住むところやぶらこうじのぶらこうじパイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長介(名前の自己紹介的な)。
雨ニモマケズ風ニモマケズ雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチ慾ハナク決シテ瞋ラズイツモシヅカニワラッテヰル一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲタベアラユルコトヲジブンヲカンジョウニ入レズニヨクミキキシワカリソシテワスレズ野原ノ松ノ林ノ蔭ノ小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ東ニ病気ノコドモアレバ行ッテ看病シテヤリ西ニツカレタ母アレバ行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ南ニ死ニサウナ人アレバ行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ北ニケンクヮヤソショウガアレバツマラナイカラヤメロトイヒヒドリノトキハナミダヲナガシサムサノナツハオロオロアルキミンナニデクノボートヨバレホメラレモセズクニモサレズサウイフモノニワタシハナリタイ(自己アピール的な)
仏説摩訶般若波羅蜜多心経観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無眼耳鼻舌身意、無色声香味触法無眼界乃至無意識界無無明亦無無明尽乃至無老死亦無老死尽無苦集滅道無智亦無得以無所得故菩提薩埵依般若波羅蜜多故心無罣礙無罣礙故無有恐怖遠離一切顛倒夢想究竟涅槃三世諸仏依般若波羅蜜多故得阿耨多羅三藐三菩提故知般若波羅蜜多是大神呪是大明呪是無上呪是無等等呪能除一切苦真実不虚故説般若波羅蜜多呪即説呪曰羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶般若心経(会話が付いて行けて無いみたいなので気持ちを落ち着かせる様宥めて居る的な)
春はあけぼのやうやう白くなりゆく山際少し明かりて紫だちたる雲の細くたなびきたる夏は夜月のころはさらなり闇もなほ蛍の多く飛びちがひたるまたただ一つ二つなどほのかにうち光て行くもをかし雨など降るもをかし秋は夕暮れ夕日の差して山の端いと近うなりたるに烏の寝所へ行くとて三つ四つ二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなりまいて雁などの連ねたるがいと小さく見ゆるはいとをかし日入り果てて風の音虫の音などはた言ふべきにあらず冬はつとめて雪の降りたるは言ふべきにもあらず霜のいと白きもまたさらでもいと寒きに火など急ぎおこして炭持て渡るもいとつきづきし昼になりてぬるくゆるびもていけば火桶の火も白き灰がちになりてわろし(世間話的な)
祗園精舎の鐘の声諸行無常の響きあり娑羅双樹の花の色盛者必衰の理をあらはすおごれる人も久しからず唯春の夜の夢のごとしたけき者も遂にはほろびぬ偏に風の前の塵に同じ(昨日の演劇は面白かったね的な)
秋の田のかりほの庵のとまをあらみわが衣手は露にぬれつつ春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山足引きの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかもねむ田子の浦に打出でてみれば白妙のふじの高嶺に雪は降りつつ奥山紅葉ふみ分けなく鹿の聲きく時ぞ秋は悲しきかさゝぎの渡せる橋におく霜のしろきを見れば夜ぞふけにける天の原ふりさけ見れば春日なるみかさの山に出でし月かもわが庵は都のたつみしかぞ住む世をうぢ山と人はいふなり花の色は移りにけりな徒に
我が身世にふるながめせしまに(演劇の詳細的な)
「もう御免なさい私は貴方の其の蚊の羽音に似たテレパスの速さには着いて行けませんでしたっ! お願いですから一寸黙って下さい!」
(見たかお前等。此れが俺の創造主が編み出した、悟り妖怪も泣かせる電子機器に相応しきモノ語りよ、一頁は軽く零点一秒分だと想えば良い。悟り妖怪の此の発言に寄り俺の思考回路の電流速度がいかに光速級で有る事が示されたな、QED。然し零点二秒とは言え、蚊の羽音っ言ーか、モスキート音みたいなのに着席机上で弱音を吐き頭を下げるとは)
「いえ本当に……お燐からは何とかヒツキと言う名前だけを読み取れましたが、貴方は一体何者なんですか?」
(さっき迄の思考時間は、君の朗読速度)
「俺は陽月さくら。設定云々は光速級の思考回路も行き渡らない程長くなるから省かせて、理由も解らない理由有りで博麗の巫女に絶賛妖怪退治対象として命を狙われて居る外界からの無法者だ」
( )
「無心にも成れるとは、命蓮寺の尼さんも驚愕の不動」
「嗚呼、お陰で剣術指南役のしがない師匠を任せられて居る」
「剣じゅ……あ~…冥界の庭師の方ですね」
(何か有名なのか無名なのか、情報が曖昧だよね、俺の出会う女性陣)
「彼女の知名度は、一異変解決者として。然し『夢』違いですが、あの博麗の巫女が理由も無く、然も未だうら若き少年を襲うとは妙ですね」
「(今の台詞その一部だけ取ると性的に危ないな……)いや、理由は、今起きて居る異変の主犯…容疑として、何故か追い回されて居た」
「ご、ゴホン……如何云った異変で?」
「其処なんだよなぁ。理由が解れば大人しくお縄にかかるのに。如何も不条理は性に合わない」
「だから逃げ出した、と?」
「おいおい人を腰抜けみたいに言うなよ。昨日迄仲良かった奴が急に敵になる、寝返る展開に、じゃあ闘う、打っ飛ばすとか出来るのかよ」
「ええ。『弾幕ごっこ』が有れば解決しますよ?」
(……ハァ、又『弾幕ごっこ』か……アレもアレで俺は向いてないんだよなぁ~……)
「別に体術込みでも構わないんですよ?」
(……確かに彼女は投擲武器で針や御札は出して来たが、近接戦闘では大幣を使って来たな……何なら拳も……………………)
「――――へぇ~……初めて会った時の拳を使われる前にその様な出来事がぁ~……中々面白い経験を積んで居るじゃないですかぁ、ヒツキさぁん?」
(この小五ロリ、気を遣って思考してやって居ればパッシブスキル全開で使うじゃねーか)
「とは言う者の、私でも外界の現代言語らしき呪文はサッパリですけどね。正午囲炉裏とは、パッシブスキルとは?」
「気にするな。見た目と人種が完全一致して整いましただけの言」
(わぁ、改めて見ると、小っちゃ、お人形さんみたい。と、俺は机下から見える振り子状態の両足を眺める)
「人型をして人では無いんですけどね。ですが貴方には如何もこの体型に対して些か執着的かと思わせる目付きを感じます……」
(喧しいわ。天性から頂いたこの目。そして俺が下すお人形にするなら採点十点中十一点だよ。と、謎の一点紅一点、追加)
「そして矢張り不可解ですね。貴方の発言そして悟り妖怪を前に思考中でも一人で物語る様な其の姿勢。丸で本に出て来る主人公みたいです」
(モノローグを語ると言う意味を込めて文字通りモノ語りだ。一人で話し込んで居ても誰にも話せない、誰とも話さない期間が長かったから、此れは此れで新鮮且つ心の底から何か有難う)
「感謝されても身に覚えが無いみたいな喜々としない感謝ですね。心底苦笑いです」
(あ、今のサブタイトル回収じゃないぞ?)
「其れって私に話してます、其れとも巫女ですら見えない何かですか?」
(悪いな、今は眠りたい。巫女さんから受けた攻撃の回復は、火車の上では仮眠にも成らなかった)
「そうですね、そうでしたね。貴方は時間と言う概念が無いみたいに話が尽きなくて愉しいので、ついつい話し続けたくなります。では又後程……」
ゆっくりお休みください、と優しく声を掛ける彼女は『巫女さんの攻撃』から連想する俺の思考を読み取ったのか、悟り妖怪は知れども、高が合縁奇縁の呪の塊魂持つ妖怪候補は、知る気は無かったので、眠りに着いた。
「……矢張り、超次元思考で語られる人は、文字通り目が痛いですね」
【妹探】
「で、サブタイトルとは誰に話されていらっしゃったんですか?」
(未だ言うか其れ)
「やはり気に成るじゃないですか、覚り妖怪的には。独り言と詰まらない発言をするも良し。聞こえも見えもしない何かに話し掛ける巫女の力を使うも良し」
「(男だよ、デフォルトは)巫女は神を降ろして悪霊を祓うけど一概に見えるモンだろ、神も霊も」
「確かに幽霊の完成形みたいな方はいらっしゃいますし、神様なら守矢神社に三体御座しますらしいですし」
(ゑ、早苗さんのが居る神社に神様って三体も祀って居るの。ゴージャス神社かよ、括弧本日のパワーワード)
「其の早苗と言う風祝の方も神の一人です。現人神らしいです」
(MAJIDEKA。俺、神と話して居たのか、恋バナして居たのか。其れで居ても後二体もの神が奥に潜んで居たのか、そーなのか)
「言う割に心が籠って居ませんね」
「此れでも神の血を引く若き青年と、神様を身体に宿す青年と話した事有るからな」
(何なら俺も神様を宿して居るし)
「そんな絵に描いた様な方が外界に……。でしたら、何故幻想郷に来ないんでしょう。其の非現実的能力や存在が外界に有るのなら、幻想郷に辿り着ける事は容易でしょうに……」
「向こうでの生活が恋しいんだろうて。現実的人間と上手く遣って行ける陽キャの塊だからな、彼奴らは」
「そうなのですか……陽キャは解りませんが、上手く遣って居るのなら其れも又人生でしょう」
(『人生』って言葉を最後に使うと何でも綺麗に格好良く雅に成るよな)
「ええ、解ります。ですが今は綺麗より博麗ですね。彼女の対策をすべく、私がヒツキさんに助力しましょう」
「え、何で?」
「貴方の適当な感謝は扨て置き、心を読む精神的侵略事に於いて右に出る者無しの悟り妖怪を圧倒するとは、天晴な限りです」
(何で上から目線なの。後、未だしてねぇよ感謝は)
「そして同時に私の第三の目が血の涙を流す勢いの被害も生じたので、此処は一つ、条件を付けて協力し合いましょう」
「其れは互いに利益の有る条件か、利害の一致する奴か? 平等でなければ断るぞ」
「ご心配無く、貴方には到底出来無い簡単な人探し、いえ、妖怪探しをして頂きたいのです」
(妖怪、同種でも取っ捕まえて幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死が二人を分かつ迄愛し、慈しみ、貞節を守る事を此処に誓いたいのかな??)
「いえ嫁ぎの為に見合いたいのでは無く、身内を見付けて欲しいのです。放蕩の身内を」
(嗚呼~そう言う……)
「名前は『こいし』、私の妹です。覚り妖怪ですが、目印である第三の目が閉じています」
「へぇ第参の目が。其れって心読めないんじゃないの?」
「えぇ、読めない上に、無意識を操る程度の能力を得て終いました」
(無意識……?)
「はい、無意識です。掻い摘んで申し上げると、彼女を探すに当たって意識して探しては行けないと言う事です」
「お、おぉ、任せとけ。無我の境地を超越せし幻想郷一の大剣豪“魂魄妖夢”に究極公認された師匠“陽月さくら”が浮浪の妹さんを探さないでやるよ」
「個人的な称号ですが、探してくれますよね?」
「此れは俺形の御呪いなんだよ。天邪鬼の言霊さね」
「……まぁ、期待はしないで置きます」
(しょぼ~ん)
「そんな真顔で凹むみたいな擬音語は止めてください。今この瞬間フラリと目の前に現れる事を想定考慮しての発言です」
(しゃきーん)
「今度は真顔で気を取り直す擬音語ですか……………………然し出ませんね。彼女も貴方に似た天邪鬼なのかも知れませんね」
【出発】
「其れでは、妹は追々と言う事で、博麗神社へ向かうとしましょう」
「さっきは空振ったが、妹自身が戻って来て居たら、矢っ張り利害は一致しないのでは?」
「確かにそうですね……では。神社迄負ぶってくれませんか? 其れで契約成立と致しましょう」
「よっしゃ解った。じゃあさっさと行くぞ~」
「!!??」
(何て事は無い。一々少女との接触を拒んで居たら何を言われるか。なら寧ろ即決断して女児体型に触れて行けば良いじゃない)
「さらっと謙虚を覆して変態思考を堂々行動に移さないで下さい。そして何故前から肩と脚を持たれて抱えられるのですかなのですか有難う御座います?!」
「(然し彼女も乙女なのだから、今日知った秤の男に未熟な肢体を背中で任せるのも気が引けるでしょう、と思いつつ――)――寧ろ接触面積がこっちの方が未だ狭いのだし、片腕で抱えられるお荷物運びより御姫様抱っこなのだから有難く思って頂きたく――(――と、私は地霊殿を走り去って行く)」
「率直な感想は、はい確かに本当に誠に有難う御座います。ですが此れでは誰かと接触した矢先手が出せないのでは。降ろさないで下さいよ」
「接触は此の幼女だけで充分なのに。何故戦闘が前提と想定する。じゃあ其の時は、肩車になる様乗っかって。嗚呼いや片方の肩だけで良いや。さとりちゃん軽いし」
「乙女としてはお褒めに預かり恐悦至極の限りですが、矢張り貴方の目は思考から邪に私を見て居ましたね、ガッカリです。そして其処でおんぶの選択肢は無いのですか無いんですね。戦闘に成った際に自由奔放に振り回らない様、考慮して下さっているんですね」
「軽いとは言え遠心力で首が締まりそうだ。第二の縮小接触を言っただけなのにコレだよ。此奴も官能小説読み捲って居るらしい」
「『も』って、他にも居るんですか。嗚呼嫌言わなくても思わなくても大体予想が付きました大丈夫です。兎に角今は神社に向かい、彼女が貴方に対しての戦意の根元を突き止めてやろうでは有りませんか」
(扉を開けて貰った矢先に、何かデッカイが居た)
「あ、さとり様だ。こんにちは~」
「こんにちはお空。悪いけど今は立て込んでいるから、地下何時も通り管理して貰って、お留守番をお願いね?」
「………………………」
「? 如何したの?」
「おいおい如何したのと、此の子何も考えて居ない第二の瞑想の思想kじゃなくてだな。瞑想の達人ですか?」
「いえいえ、何方かと言うとお頭が足りない鳥頭なのよ?」
「さとり様と慕っていたけどそう簡単にdisりますか。ていうか何だこの色々と忙しさが包み隠されない装備の数々は」
顔立ちは何時も通り美少女系可愛い面だけど、胸に赤いデッカイ目、序に胸もデッカイ。
右手に御神籤、右足にゴルゴーンの呪縛の靴、左足はバーロー小学生がベルトから出る蹴球を蹴飛ばす際のエフェクトみたいな仕様的なビリビリ出してやがる靴だぜ。
「止めてください其の一瞬にして読み取る心話」
「やっぱダメか? 済みませんね」
「男……」
「ハイ男です」
「え、お空?」
「さとり様が男を屋敷に連れ込んでいる………」
「ッ、違いますよお空。確かに連れ込みましたが決してその様な仲では……今から、其の、只、そう只、神社に行くだけですよ??!!」
「安産祈願ですか、其の後挙式ですか、ハネムーンですか、デートですか、ランデブーですか、再びアバンチュールですか?????」
(何でこんなに病みなの)
「恐らく男性を招いた事が初めてでしたから、動揺がフレア級なのでしょうね」
(御免な、俺で。煽り抜きでマジで)
「さとり様を奪うなアアアアアアアア…………!!!!!!!!」
「! 不味いです。あの右腕からは核エネルギーが放射されます、溶けますよ!!!」
(要は原子力だな多分。科学なんか知るか)
「一応、振り落とさず、そして撃たれない様にしてください」
(清々しい無茶を仰る。だが問題は無い)
「良い右手です。さぁ、技名を放てっ!」
(気ぃ歪むわ)
「『爆符』ギガフレアーッッッッ!!!!」
「『無力』リヴィングデッドツリー・電」
(力はエネルギーとも言われ、エネルギーの大半は気体・液体の如く、そして通電し易い不純物だらけ。例えば腕力を高めるに当たって脳から脊髄へ運動神経へと信号を伝達する其の段階が不純の領域。感情昂って居るなら猶更彼女の砲撃は勿論、彼女自身へも通達し全神経がストップする)
「無力は人間だが、故に、無限大だ」
「無力は人間だが、故に、無限大だ。カッコ良いですね。私も一度使ってみたくなる程度に。まぁ彼女は妖怪ですが」
おい人の台詞、現行且つで被せんなや。
「人の台詞を盗るなと言った処ですかね。彼女風に言わせて頂くなら、借りただけだぜ」
「借りるな。真似でも其れだけは魔理沙のだ」
「おや、彼女に対して嫌に反抗的ではないですか。何か特別な思い入れでも?」
「恩人だ。非は有っても馬鹿には出来ない」
「そうですか。私は案外、面白くて詰まらない舞台劇の特等席に居るのかも知れませんねぇ……」
「其れってどっちだよ……」
「詰まらないで想い出しましたが、有耶無耶にされたサブタイトルは、結局誰語りで?」
―――言ったろ。
「モノ語りだっての」
この辺りからサブタイトルの英語部分は韻を踏もうとなったんですね。
確か前話は後付けだったかと。




