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幻想の現実≠東方空界霊  作者: 幻将 彼
第伍章「青年は起き上がり、住人の目の変わり様を察した。」――有無異変.
39/62

第弐拾捌話 施錠された傷心~Black Drag. “H Ending”

粗筋:神社に顔を出すや否や、霊夢に異変の主犯として退治宣告をされたヒツキ。

魔理沙を囮とした逃亡の末、撃たれる寸前に現れたのは、某所従者の二人、咲夜と妖夢だった。

【妖怪】


 守る……そう言ってくれた、メイドと庭師。

 そして俺は如何する、言わずもがな逃げる。

 悪いが俺は未だ答えを得て居ない、俺を敵視する巫女に対しての解決策。

 異変候補で在る事は思想家なんて連中を俺含め五人確認したのだからマチガい無く。

 だが此奴の心情が、言葉を薄っぺらく感じさせる程に、過去を夢や妄想と言って性悪を想わせる程に切り替わったのかは解らないから、平和的解決策が見当たらない。

 意地でも俺を異変対象として退治に掛かる。

 俺が幻想郷から出て行けば事は無事に済むが、如何成ったかは想像したくない秒殺の魔理沙の犠牲を考慮すれば、最早手遅れで無事に至らず、解決しろと諭された手前、此処で帰れば余りにも無責任だ。

 元より俺が出て行く気は無い。

 何の為の転移と転生。

 理由は些細で、結局は現状同様、逃げでしかないロクデナシの畜生所業。

 だからこそ俺は善人らしい偽善者を振舞って、今日迄、生きて死んで生き返って生きて過ごして来たんじゃないか。

 俺を友や師だと慕ってくれる者達は、俺も敬う所が多々有るが、

「なら俺は悪気を以て、俺の身勝手に他人の手を焼かせて貰う」

「何を水臭い、頭沸かせて汗でも掻いて居るんじゃないの? ほら手を引っ張って上げるから」

 手汗でか、メイドの手を汚すのは忍びない。

「又もや水臭い。過去でも従者の端くれでしょ? 汚れ仕事で汗なんか気にして居る暇は毛頭無いわ」

 膝を君主に向けて付き、獲物の血も浴びて居れば、血に勝る汚泥は無いって姿勢だよな。

 矢っ張嫌いじゃないわ、此の上司。

 一見真面目そうで何処か抜けて居て其処指摘すると照れて可愛いんだもん。

 俺は彼女の手を握り、走り去る。

「逃がすか、待て妖怪!」

 ! ……俺が………妖怪……?

「…ッ、師匠に対して何て言葉を……!」

 妖夢が横に斬り掛かる。

 霊夢は大幣で防ぐ。

「本に寄る生まれと妖術染みたアンタらの其の洗脳みたく彼奴を庇う言動の原理も、もう妖怪の類よ。容赦も慈悲も無いと思えっ、妖怪”陽月さくら”ッ!」

 今又、何かが沈む様な重みを感じた………。

 全く嫌悪する奴はトレースして嫌悪を抱く……彼奴の悪口はストレートに弱点を突く様で……凄い効いたよ。

「師匠、貴方は人間です、不安になる事は有りません……!」

 其の言葉は、十六夜咲夜と時間停止で移動したヒツキには聞こえる筈等無かった。



【咲夜】


 走る。

 とは言う者の、飛行のちょっと速いみたいな走行だ。

 加えて十六夜咲夜パイ先の時間停止能力。

 クールタイムを挟んで大体五秒分の距離を相手と延ばす事が出来る……が。

「今居る奴等より早々に老けない?」

「女性に対して年齢を気に掛けるな! ……でも、同じ時間を共有出来る人が居るんだから、若しそうだとしても構わないかもね……」

 ―――。

「遠回しに口説いてる、時間能力者だけに?」

「うっさい悪いかっ!」

 嗚呼いや、え、いや、あ、え、あ、お、え、え??????????

「いや、御免なさい……今のは忘れて良いわ」

 いやいやいや無理でしょ。

「パイ先って人間関係では遣らかすよね」

「貴方が言うか?! だから忘れなさいと……」

 ……………。

「……若し答える気が有るのなら、此のいざこざを収拾してから応えて」

「いや、普通に尊敬出来る可愛い先輩好きですよ?」

「ッ! ~…///」

 めっちゃ顔真っ赤にしてポカポカ叩いて来る可愛い。

「そう言う所な」

「そう言う所よ!」

 扨て、先を急ごう。

「先を急ぐっ言って、何処へ向かうのよ?」

 確かに、無鉄砲に無計画に無謀に逃げているだけじゃ如何仕様も無い。

 彼奴の体力を鑑みても頗る有り余って居るだろうし、片や此方は休息出来る場が欲しい処だ、主に俺が。

 飛行故に体力は問題無く、魔力的な保持は、此の地が幻想郷故に困る事は無し。

 だけど今俺が欲すると言う体力は、主に精神面での力、精神力……。

 左手で誤魔化しても、彼奴が俺に向けて放った「夢でも見て居たんじゃないの」と言う『虚言』や「妖怪」と言う言葉は、脳裏に迄焼き付いてエコーを掛けて反響しやがる。

 だからしんどい、疲弊を伴う。

 武器を以てしても、所詮は無機物のセラピー。

 安楽処方を伴った処で、その場凌ぎに過ぎない。

 結局曇天模様に伏した精神を回復させるに必要なのは、時間なのだ。

 欲しい、時間が、休みたい、休憩して、休息を取って、落ち着かせたい、考えたい。

 博麗霊夢と言う不可解で苦悩な存在の不意打ち針討ち的撃つ言葉は、思考せず案直球に捉えれば只悪口、只暴言……。

 人間を目指す者には、とても分厚く重々しく、痛い、傷付く。

 目的地を伝えるより、何か別の事で塞ぎ込んでしまって居るであろう後輩の状態に気付き、声を掛ける。

「……大丈夫?」

 胸でも弄る? ってか。

「リラクゼーションを兼ねても変動無く、そしてパイ先のは所詮ロスト・バスt」

「窒息させて上げよーかしら女に変わる前に亡き者に”い”い”い”い……」

 強調した胸と腕の協調の調教、俺の頭を挟んで握り潰してきます此のパイ先、タスケテ。

「……気にする事は無いわよ、貴方は貴方なんだから……」

 知ってる。

 以前魔理沙にもそう言った自己紹介をした事が有る。

 だが自分で言うのと他人から言われるのでは、卑屈と確信、相手は観察して其の発言に到るのだから、ホント言葉選べや糞餓鬼が傷付きの余り不登校問題児劣等生に成って引き籠ったら如何してくれんだコラまぁテメェはテメェで只勉学励むだけだから知ったこっちゃねぇってエリート気取りを噛ますだけ社会の勝者目指すだけ内申点二重丸内心道徳糞野郎ハァ~だから渡る世間は塵作りお得意様馬鹿ばかり。

 悪い、脱線且つ滑稽過ぎた。

「本で人間か、見た目で妖怪か……結局は自分が如何成りたいか、よ」

 解ってる、解って居る。

 だからこそ此の話には茶々を入れるなって話だ。

 誰も此の目標に土足で踏み入るな、妖夢は許す、目標の先達者だからな。

 だが彼奴は違う。

 彼奴は確かに、目的を示してくれたが、目的は目と鼻の先の事で、目標は廻る日と月の明日寄りも遠い、待って居ても来ない。

 だから歩く。

 目標に向かう為に。

 その筈なのに、何故走って居る、走らされて居る、迷わされて居る、惑わされて居る……所為だとか悪だとか邪魔だとか恨み辛みとかの括りはしたく無いのに、あの罵詈雑言。

 此れが苛立ちかもすれば、此れが悲しみか。

 嗚呼、ルーミアの時点で喰われて居れば良かった。

 生き地獄は阿鼻より叫喚だ。

「……一層地獄に落ちた方が楽なのかもな」

「確かに、ヒツキ君は如何しようも無い程、幻想郷で悪事を働いたわね」

 悟り呟く俺に笑顔で答えるパイ先、そろそろ離して?

「なら行きましょうか。丁度道も有って居るしね」

 圧死の道ですか、逝くんですか、又?

「違うわよ。此れはす…好きで遣って居るだけで、この先に『旧地獄』って言う地底界へ続く穴が有るのよ。其処の『旧都』って町で潜んで居れば、少しは憩えると想うのだけれど……」

 へぇ~旧地獄の旧都、匿うって言う宛が在る訳でなく、潜むと言う正に追われの身。

「一応在るには在るのだけれど、アポイントは取れて居ないもの、仕方が無いわ。辛いでしょうけど我慢してね」

 有無、パイ先が俺の為に(ホン)先パイ以上に気遣ってくれるし、何よりこうして助けてくれる。

 そろそろ旧地獄の『旧都』の流れで先輩抱擁で照れり子マジキュートとか言って良い?

「揶揄うなホント……行くわよ!」

 イエス、マイロード、括弧移動開始。

「言うならお嬢様にしておいて」

 解雇処分された身だけどお嬢はマジェスティです。

「なら良し。又従僕として働かせて貰う様掛け合ってみるわ」

 恩に着ます。

 まぁでも、其の宛と言い、お嬢様への再任用と言い、勝手にお邪魔するけどね。

「フフ、えぇ、貴方なら遣り兼ねないわね」

「見つけt……」




「……たわよ! ヒノd……」




「……づきさくら!」

 巫女に見つかったが、即座に時間停止させ、移動する。

 ヤバ、面白。

 台詞が途切れるし、距離伸ばす毎に声量がフェードアウトして行く。

 パイ先めっちゃ面白い事するじゃん。

「狙って居るのよ」

 最高。

「て言うか庭師さん。やられてしまったのね……」

 は? 其れは許せませんねぇ~…。

「パイ先、時間停止移動、一旦停止して貰って良いかね」

 時間は停止した状態で、走行停止する。

「……漸く決心したの、彼女と決戦迎える決断でも?」

 其の点は未だ解決に至らず。

 ケツケツ喧しい。

「いーや? 弟子の尻拭いに一発噛ますだけ――」

 やっぱケツケツ喧しい。

「――だっ!」



【対峙】


 時間停止は停止して、神速で此方に撲殺しに掛かる巫女。

 片や左腕力増幅の拳で対抗する野郎。

 神木で作られて居るであろう大幣は、拳にぶつかると同時に真っ二つに折れ、突風を起こす。

 己の拳も鉄が飛んで来ると言えよう。

 だが其れに即対応する様に、片眼開きで霊夢は二つ目の大幣を取り出し、素振る。

 スペアが有ったのかよ、貧乏巫女の癖して武器に賭ける財政何なんだよ、経費落ちんのか?

「此処に来て攻撃を仕掛けるって、逃げるのは諦めたのかしら」

「バーカ戦力削減させようの結果スペア有ったから今又逃げる為後退しているだけだよ」

「バカはアンタで居て矢っ張り情けないわね」

「情け無しはお前だよ差別主義が。心底迄圧し折られたくなければさっさと神社に帰ってお茶でも飲んで泣き寝入り氏ね」

 額に怒りを覚える巫女は続いて近接戦闘、大幣を「アンタがくたばれ」と叫んで居るかの様に二回振り回して後退させる。

 彼女の攻撃は巫女なだけに神様と近しい物だ。

 ()()()()()()()()、拳がぶつかった。

 本来なら、髪神の守を束ねた拳で相手の攻撃を弾き、態勢崩れて防御し切れない隙を真っ直ぐ狙い打つ卑怯さが俺の打撃なのだが、其れを貫通して大幣は殴打に激突して来た。

 神木素材の大幣である予測其の一だ、二は無い、正解で良いだろコレ。

 全く神絡みは相性が悪過ぎる。

 お嬢って何で吸血鬼で神槍を扱えるのよ。

 然し其れだけに限らず相手は霊力の塊だ。

 防御だけの守髪神には干渉は只攻撃を迎える。

 神木除く、仮説其の二だ。

 幻想之目もそう訴えている、目が引き攣ってコレやべぇぞって、知らんけど。

 そうこうして居る内に俺は振り回される大幣に避けては下がって居やがる。

「! ヒツキ君、後ろ!」

 咲夜パイ先の忠告通り後ろを見やると、地球の裏側迄通じてそうな大穴が半歩先で待ち構えていた。

 其れが隙を生み、霊夢は俺の鳩尾目掛けて大幣で突き飛ばす。


 ――空は飛べた。

 霊夢は知って居たけど、咲夜は知らない。

 夢だと抜かす昨晩の出来事は、空を飛んで別れたのだから。

 お嬢との遊戯の際傍らに居た咲夜に魅せた弾幕乗り継ぎはパフォーマンスで、飛行ではない。

 非行と言う名の不正では有るだろうけど。


 ――地底に辿り着いても守髪神で無事だろう。

 咲夜は知って居るが、霊夢は知らない。

 ナイフを弾いた事例で、その絡繰りを咲夜には話したから。

 確か霊夢にも話した事が有るだろうけど、廃館では虚しく効力発揮出来ず、この戦闘でも意味は成さず眉唾物だ。

 賽銭箱破壊も矢張り只の頭突きで破壊したに過ぎないのが彼女の見解だろう。

 頭の発光も、頭おかしいからで。

 落下してもしなくても、保険は幾らでも有ったが、腹部の急所直撃に対抗出来る程、俺の身体は強くないから守髪神なのだ。

 だが本気の突きを喰らい、本気の殺意を感じ、本気の発言を耳にして、落ち行く最中に見える彼女の表情は、一寸先闇の穴よりも本気の本当に本格的な暗くて黒くて残酷な目で満ちて居た。

 疑問でしかない。

 如何して真実を捻じ曲げて迄虚言を吐き、俺を討伐対象とし、他人の様に拉げた目で眺めるのか……。

 だが思考よりも現状事実な、彼女が俺に向けて言った「妖怪」と言う選別の餞別ワードが、落ち行く己のこの場で、最も大きく揺らめかせ、呑み込み、締め付けられ、我慢の積もりか唇を噛み締めたくて、だが対抗出来なければ、立ち直れず。

 次第に気持ちは、此の侭、楽になれば良いのにと、神力漂う己を恨む様に、又あの廃館の様な冷徹さを懇願したくなる様に。

 此れで何度目だろうか、いや、走馬灯が見える理由でも無い物理的な闇、霊夢と手を伸ばす動作だけを見せる咲夜パイ先を最後に落ちて行った。


「ヒツキ君!」

 即座に駆け付けようとするが、足が動かなかった。

 霊夢の護符だ。

「! 『封魔陣』……」

 結界に入った咲夜は、足に護符の鎖が絡み着き身動きが取れない。

 死ぬ理由では無くても、見殺しにするかの様な行為に、悔み切れなかった。

 その悔みを元凶である霊夢にぶつける。

「何故あの子を嗾ける、あの子の言動は異端でも異常では無いわ!」

 霊夢は無視して、その場を去ろうとする。

「師匠!」

 草叢から、衣類が破れ、土で汚れた妖夢が駆けつける。

 然し舞台は後の祭り。

 大きな穴、縛られて居る咲夜、立ち伏して居る霊夢、現場行方不明のヒツキ。

 其の状況から察して、妖夢も激怒する。

「己、博麗の巫女っ、貴女に人の心は無いのか!?」

 然し何も動じない霊夢。

 一触即発と言えよう暗い目の儘

 其の儘浮遊し、神社へと帰って行った。


 見えなくなる頃には、封魔陣は解かれ、咲夜は身動き取れる様に成る。

「如何しましょう。此の侭追いかけますか? 師匠が心配です」

 妖夢が咲夜の傍に立ち寄り、提案を持ち掛ける。

「えぇ、あの子を特別に思う同士、傍に居てあげたいけど……」

「ゑ」

 何故知ってるの、と、貴女もなのですか、と言う衝撃を受けた妖夢。

「そう変に驚かないでよ。さっき抜け駆けで想いは告げたけど」

 胸の下で、腕を組む咲夜。

「矢張り向かいましょう。師匠が気移りしたら嫌です」

 即座穴に行進する妖夢。

「私情を挟むな」

 と、妖夢の腕を掴み歩を止める咲夜。

「貴女こそ私情挟んで逢引きして居るじゃないですか」

 振り払う妖夢。

「私は告げただけで、本人は、只、其の……フフ♪」

 顎に手を持って行き、想い出しで嬉しそうだ、死ねば良いのに陽月さくら。

「脈有りですねこうしちゃ居れないさぁ行こう」

 行進を再開する妖夢。

「待って待ちなさいお待ちなさい」

 先程より歩く力量が打って変わった為、片腕を両手で掴んで、全身を使って止める咲夜。

「如何丁寧段階踏んでも私は行きますいざ参ろう」

「そうじゃなくて! ……あの子が落ちて、霊夢が消えた事で、今完全に霊夢にとってヒツキ君は死んだ事に成って居る。あの子には休息が必要でしょうし、私達ではあの子の助けにはならないわ」

「然し、妖怪と罵られ、心身共に落ち込んで居る師匠を、見放す事等……」

「どれだけ励ましの言葉を掛けても、結局答えを見つけ、立ち直るのはヒツキ君自

身よ。今は彼が苦悩の底から這い上がって来る事を、祈りましょう……」




【地底】


 ……ハァ、死にたい。

 死んで居たけど、死にたい。

 生き返ったけど、死にたい。

 今度死んだらマジで妖夢と籍入れようかな。

 いやそれは違うな。

 死んで結婚式じゃなくて御葬式だな。

 其れよりも何考えてんだ俺、死にたい。

 俺が結婚だとか好きだとか恋愛だとか、恋に恋する乙女の好む展開、在り得ねぇよ。

 他もそうだが、俺自身も余ッ程……確かに巫女の言う通り、此れは『異変』だ。

 異変が起こり過ぎて、恩義在る奴に異変として命狙われて居るんだな……。

 嗚呼、だから辛い、此れが辛い、This is TURAI。

 心目指す者の得る物は、神秘的で当然で……だからこそこうも想うのだ。

 結局はお前は人間だろう、だから恩義在るだとか綺麗事並べて、無心なのだから下積みで下心なんだろうなって。

 お目出度い事よ。

 でなければ俺を慕う妖夢を愛でたく想うなんて考えなく……何方だろう。

 どっちでも良いさね、嗚呼もう死ぬ様に眠る、俺は睡眠キャラで良い、スヤァ。

「おっ、不運は幸運。地上から死体となった人間が落ちて来たよ」

 んぁ、誰だ。

 死が真の幸せ思想を並べる独り言を喋る誰かは。

「じゃ運ぶとしますか!」

 よっこらしょと、俺、担がれて、何かに乗せられて、運ばれて居る。

「……いや軽いね。軽かったね。アンタ生きて居るね」

 意識の無い死体は重い。

 何故知って居るかはさて置き、死体と御付き合い長い様だこの娘。

 ハァ、もう慣れたけどハァ(女難の相回避不可避)。

「いーや、開幕一言で有ってるよ。人生的に死んだも同然だ俺ぁ」

 と、一向に目を開けず、恐らくこの容器の幅、猫車と予想して手足を大っ広げて狸寝入る狐。

「そうかい? なら御構い無く灼熱地獄の薪炭として火口に放り込むよ」

 タンマ、肉体的に死にたいとは言ってない。

「ヘイ、タクシー。アンタのお家が良いなぁ」

「何だいタクシーって。あたいは”火焔猫鱗”って言うんだ。長いから『お燐』で良いよ」

「そうかい俺は“陽月さくら”。ウザいから『ヒツキ』で良いよ」

「何が有ったんだ自分の名前と……」

 執着的失恋、いや逆か、失恋的執着。

「あたいの家に連れてって欲しいて言った? あたいのでは無く、主人のさとり様の家だけど、良いのかい?」

「お前ので有ろうと誰ので有ろうと、只停留場が欲しいからって理由で構わないけど」

 其れとも主がえげつないお嬢キャラしてるからって意味での心配なのか?

 生憎お嬢は一人攻略済みだ。

「なら、滅多な事は考えない方が良いよ? さとり様は、名の通りの妖怪だから」

 名の……悟り妖怪?

 って、何だっけ?

 今は巫女の事で手一杯だから知識を掘り出すのも、思考を張り巡らせるのも面倒臭い。

 面倒の匂いって一体何だろうな。

 ガタつく道の中、手押し車の縁が食み出た腕脚の肉に刺さるので、体を丸めて、胎児の型で寝過ごした。

時間停止能力持ちのメイドが「同じ時間を共有出来たら―――」は、確定だよね。

でもロマンチックで私は好きよ?

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