表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想の現実≠東方空界霊  作者: 幻将 彼
第肆章「青年は死を目の当たりにし、彷徨った。」――死生異変.
33/62

第弐拾参話 ヨウカイ三千世界(メートル)~words to give~

互いが互い、勝利を収めたヒツキと妖夢。

思想家衆の動きを物理的に封じ、そしてヒツキは顕界へ戻るべく、その場を立ち去る。

【暇乞】


 説教が済み、妖夢には文房器で作成した、妄想で結びが取れる・切れる・斬れる・伐れる、千切れる、解ける・溶ける・融ける・燃える・腐る縄を渡し、縛って来いと命じた。

 少なくとも俺が縛る事に於いてあんな淫らな服装に成って居る彼女らを縛るのは

引け目と言うか寧ろ首輪を付けて四つん這いで引っ張r何言ってんだ。

 取り敢えず妖夢の用事が済むまで、縁側で休憩する事にしよう。

「お疲れ様。激しい戦闘だったわね」

 そう言えば完全に蚊帳の外と成って居た白玉楼の主、“西行寺幽々子”お姉さん。

「色ンナ笑イ有リ涙有リノ感動的現代劇で楽ヒハッタワァ~……」

 …………妊婦?

 いやいやいや違う違う違う、幽々子姉さんは独身、だけど其れで良い高嶺の花。

 観戦用にと台所の引き出しから有りっ丈の菓子物を摘んで居たらしい。

 此れ後で妖夢に怒られるぞぉ~…?

「まぁ何にせよ、丸く治まったと言う訳で!」

 アンタの腹が、か?

「終わり良ければ総て良しだろうが幽々子お姉さん。御仁の屋敷をこうも戦場に……何なら向こうの塀に剣を刺しちまって申し訳が立たねぇよ」

 後頭を掻き、ヘコへコ謝る俺。

「良いの良いの! この屋敷と言うか冥界でも宴会以外の騒ぎが見れて、久し振りに盛り上がったわぁ~」

 春節異変の幽々子姉さん、盛り上がってたんだ。

「それに、貴方妖夢を娶ってくれるみたいだし!」

 …………。

「そうね。私の立場は相変わらず妖夢の主で、貴方も妖夢の主人と成る訳だけど、私と貴方はダブル主人って事に成るのかしらね!」

「ちょ、ちょい待ってくれよ幽々子姉。そう妄想で語って先の事進めるのは良くないぜ?」

 其れに妄想云々は俺の醍醐味なんで。

「あらあら先走っちゃったわね、御免なさい。でも三人で暮らした方が楽しいと想うのよ。私と妖夢も、貴方も」

 続けて幽々子御姉さんは、妄想を語る。

「貴方と妖夢が結婚して、仲睦まじい夫婦になって。で、私は妖夢のご主人様兼お母さんみたいな感じ……御姉さんでも良い?」

 いやそれは何方でも。

「だけど偶~に貴方に色事でちょっかい掛けて、妖夢が怒って、ヒツキさんが宥めて、何だかんだ一緒にご飯を食べる……そう言った何気ない楽しい毎日を送りたいの。如何かしらヒツキさん?」

 其れはウェンディーネも大納得で大満足の夢在る話だ。

 まぁ此奴は幽々子さん的には泥棒猫的な愛人みたいなポジションになりそうだが。

「とても素敵な提案だよ、幽々子姉さん。家族になるってのは生物学上……ってのは堅苦しいな。人間……もアレか。兎に角生きて行く内で、アンタの描く其の風景はきっと最高の幸福なんだろうな」

 形状・事情はパスして。

「だが悪い。アンタのその夢に、俺は加担出来ない」

 と、一礼の謝罪。

「俺は心の無い化物だ、理性の無い妖怪以上に空っぽの存在だ。若しそんな中で俺と妖夢が結ばれても、きっと何処か偽った部分が出て来るかも知れない。其れが本当に最高の幸せとは、俺は到底想えない。だから済まない」

 無感情の謝罪、其れで何が済まないだろうか。

 反省も何もない分際で……そう想ったからなのだろうか?

「そう……残念ね。貴方が今は未だ霊体だから無理ですよって言うなら未だしも……込み入った所要が有れば、仕方無いわね」

 仕方ない、と、許してしまう。

 出来れば此処で絶縁に成るだろうこの運命、何故見えないのだろう……皆が皆、優し過ぎる気がするよ。

「けど、許しては居ません。どんな人であれ人の心を弄んだ様なモノです。妖夢にも、きちんとケジメを付けて、振って来なさい!」

 握り拳を腰に当て、指で俺の額を突く幽々子御姉さん。

 マジ厳しさも御姉さん。

「有難う。やっぱ御姉さんだよ、アンタ」

「えぇ、困った弟みたいだと思って居るわ……えそれとも姑さん?!」

「話聞いてた?」

「いやね冗談よ。若し何か悩みみたいな事が出来たら、私の処に寄りなさい。力に成るし、貴方が心の底から楽しめる様に、歓迎するわ」

 弟ね、又姉が増えたと言う理由だ。

「さっきの家族構成もそう言った感じで良いかもね」

 付け足さんで良いよ其の絵空事……でも、


「若し不可思議に一、俺に心が芽生えたとして、其の感情の一つに妖夢への愛が有ったのなら、その提案、乗ってやっても良いぜ」

 後ろを向いて、右手を振って挨拶をする。

 ご健勝を、と。

「神様も呆れる確率ね。でも、私は万に一で期待して待って居るわ」






「師匠、彼奴等の拘束終わりました……あれ、師匠は何方に?」

「出て行ったわ。さっき妖夢と話してと言ったばかりなのに……薄情と言うか、本当に無情のロクデナシさんなのね」

 ロクデナシ、そう、ロクデナシ、何度その言葉をあの人に対し罵られ、聞かされたのだろう……ロクデナシ。

「幽々子様でもその侮蔑は許しません。そして師匠も……」

 コレで何度怒れば気が済むのか、妖夢は駆け出し、白玉楼での業務を後にする。

「一応、野性的でカッコいいの意味合いを込めて褒めて居たんだけどね。妖夢もヒツキさんも本当に、者好きよね。眩しい師弟関係だわ」





 白玉楼の階段、降り絶った道の先に、扉が見えた。

 あれが冥界の門、現世へ続く道。

 漸く、霊夢に魔理沙、彼奴らへの義理を果たす可能性が開ける。

 一応、ルーミアも、かな?

 取り敢えず俺の肉体が何処に有るかは――

『博麗神社に貴方の肉体が有るわ。でも顕界に戻ったら霊魂だけになってちょっと視野が狭まるかもね』

 俺の黄金の精神は何処へ?

 あの世限定ってならじゃあいいです。

 扨て、歩を進める。


「師匠!」


 その声で、何度呼んでくれたのだろう……恐らく妖夢が後ろに立って居る。

「妖夢か。冥界では『還り道振り向いたら魂は二度と地上に戻れない』なんて言い伝えを聞いた事が有るんだが」

「それは……黄泉平坂での話です」

 へぇ~、幻想郷に在んのな、黄泉の国。

「師匠の馬鹿っ、ロクデナシっ! 何で勝手に居なくなるんですか、顕界に戻ろうとするんですか、返事を先延ばしにするんですか!?」

 馬鹿と罵られようと、遂には弟子にもロクデナシと事実をぶつけられようと、振り向かない。

「お前なら追い掛けてくれると想って居たからだ。ほら、実際に来てくれた」

「茶化さないでください! 返事に反対が有るなら、屋敷で申してくれたら良いじゃないですか! 私では頼りないと、務まらないと……寧ろ罵ってくれたら……良かったじゃ、ナいですカ……」

 怒鳴る声が鎮まって行き、覇気が無くなる。

「わたシ……初めてだッタんですヨ? ……殿方に……好意を、よゼルなんデ……。ソれガ……こんナ、うやムやに、ニゲルみダいに……ひっグ…あんマりじゃ…ないでず、ガ……」

 泣き崩れる妖夢を、背中越しに読み取る。

 それでも俺は、罪悪を感じないし、此処迄一途に思ってくれる彼女に愛情を注げるとは想えない。

「ドうジテ……言ってくレないん…でズが……。ブじょうでも……答えデぐれる、やざジい御方デしょう……じじょおわ……」

 妖夢、俺は師匠でも、若しかしたらお前の想う奴でも――

「答えデぐだサいよっ! ヒノヅキ スユキさんっ!!!」

 彼女は叫んだ。

 彼の本名―――’陽月春雪’と。

 彼女は彼を、彼の全てを、彼の過去、忌まわしき他人事か私事か解らぬ過去を知って尚、その名前を口にした。

 その言葉に嘘や誤魔化し、気遣いや憐憫は無く、堂々と、清廉潔白に叫んで居た。

 彼女の想いはたった一人の目の前の青年に向けられ、曇り無く、冥界ながらに青空広がる大草原でそよ風が吹くような……何と言うか、澄み渡って居て、綺麗で、お天道様の下、暖気に包まれた真っ白な布団の様。

 そんな例え方は、正反対の思考だった彼の中では耐え難いモノで、本名で呼ばれた瞬間考えはグチャグチャになり、視界は揺れ、呼吸は止まり、気付けば彼は彼女を―――……


「―――ッ!」


 ―――抱き締めて居た。

「お前を、傷付けたく無かった……!」

「…!」

「俺だって初めてだったさ! 俺と言う存在に、俺の事を一部始終知っても、個人として見てくれて、真っ直ぐ、真剣に、無情にだって抗えない程、馬鹿の一つ覚えみたいに、馬鹿みたいに、いや馬鹿に、馬鹿だ、馬鹿だよお前は。好きだと言ってくれる奴なんか……!」

 魂だけの存在なのに、冷たい霊魂の筈なのに、その体有る亡霊の抱擁は、時季等御構い無しに、とても暖かく――

「きっと此れが『嬉しい』なんだろう、きっと此れが『愛おしい』って奴なんだろう、だが、『だろう』で如何やって御前の真剣に答えてやれる!? 俺には無理だ、出来ない! 御前が百万回向き合って励ましてくれても、俺は一回とて真剣で振り向く事は出来ない! 俺はそう言う[設定]で生まれて来たんだ……」

 其れを妖夢は知って居る、男は岩を詰め込まれるかの様に覚えて居る。

「……なら、何故貴方は、私に振り向いて、抱き締めてくれたんですか……?」

「俺には解らない、俺には解らない、其れが無情だ……無情人間の設定だ。残された理性で己の人生や他人との在り方に正しさだけを導くだけのロボットだ。如何しようも無く吐き気のする、人間の欲望が作り出した、悍ましい人間紛いの欠陥品だ、それしかない」

「無情で理性の強い方は、そんな叫んだり致しませんよ?」

「なら、俺は……」

 ――一体、どこに。

「師匠? ……私が無我の境地に憧れ、無情の、無心の精神を目指すのと同じ様に、貴方にも感情を得ようとする何かが有るんじゃないですか? そうで無ければ無情であれ何であれ、人間と位置付けられるのは可笑しいんじゃないんですか?」

「妖夢……其れでも……」

「師匠……過去となった親の柵に縋りつくのは止めて―――」



 ―――普通の人間を目指しては如何ですか。



「……そんな事、可能なのかよ……俺に」

「ええ、師匠は何でも出来る凄い師匠です……!」

「能力が丸で己に付いて居る、擬きだぞ?」

「能力多様で人外を気に為されて居るのなら、手首を見てください……貴方は少なくとも、手に運命を増減させる化物じゃない」

 妖夢が手首を掴み傍見の視界まで上げて、袖を捲り手首を見やると、白い数珠十八が左腕に、黒い数珠十八が右腕に。

 そうだ、想い出した……此れは守髪神との宿りで貰える神器……『純頭・織姫』と『尾涅・彦星』。

 星天川姫譚の「神珠」……ははっ、なぁ~んだ、案外人間味有るじゃねーか、俺。

 然し、こんなブレスレットに感触失う程付けているってどんな神経よ。

 だけどそれだけでも人間は遠い。

「俺は、本によって生まれた人形だ」

「本が人形を生むなら、人間も可能の筈です。今ので可能性は出ました。そう言えば貴方はその鞄で何やら厄介事を抱えて居るみたいですが、貴方は其れを使って勝ち登ろうとしないのですか?」

「自信が無いよ、文字通り。支えが無いんだから」

「私が居ます、微力ながらですが、其れに外界の出来事ですし、応援程度の助力ですが……他にも貴方を支えてくれる方はいらっしゃるのでしょう?」

「もう別れちまったよ。此処で過ごすしかない」

「大丈夫です、何とかなります。そうやって生き返る手前までやって来たじゃないですか」

「生き返っても、何をすれば良いのか」

「貴方のしたい事をすれば良い。問題はゆっくりと解決して行けば良い。貴方でも、私でも、誰でも、人の生とは短い様で長いんですから……」

 此の短期間で、とても徳の有る話を聞いて来た気がする。

 それはとても必要過ぎて、俺には勿体無い位……だけど誰でも持って居て、其れが所謂『普通』って奴なんだろうて。


「……ははっ、情けねぇな。情動なのか何なのか、慰める積もりが慰められる立場に逆転しちまってるしよ」

「師匠に漸く一本取ったりですね!」

「嗚呼、目標地点には未だ未だだが、剣は俺より強い。俺は相変わらずお前にとっての師匠なのか、妖夢?」

「ええ勿論、無我の境地の仙人と見込んだのは、紛れも無い、人間紛いでも無い人間“陽月春雪”師匠其の人です」

「其の名、あんまし口外しないでくれると助かるんだがなぁ~…」

「そうでしたね。良い様に操られるんですよね、向こうの世界では」

 お互いが抱き締め合った儘、そして沈黙が続いた。

「……師匠」

「何だ?」

「大好きです」

「ハッ、お前が何かのキャラクターでコレが何かクロスオーバー的な誰かのディリュージョン的なサクセス物語だったら、其の主人公はご都合に幸せモテモテハーレムアバンチュールラノベ主人公過ぎて、他者から反吐が出そうと気持ち悪がられて反感買うこりゃまたシンプルなご愛拶痛み入る」

「途中から何を言って居るのか解らない分、流石は師匠、使用する言葉が聡明です」

「解らない事が聡明なのかよ」

 再び沈黙して、暫くしてから噴き出して笑い合う二人、笑い合えた二人。

 きっと、陽月さくらと言う存在が、人間に成れる日は、案外そう遠くないのかも知れない。

「良し、人間に成る第一目標として先ず、妖夢お前に惚れてみるから始めよう」

「最初から難関ですね」

「師匠だからな。それ位、茨の道で無いと務まんねぇだろ」

「流石師匠です。恐れ多くも、でも先ずは、生き返るのが先決かと」

「そうだな、無情ジョークでは恐れ感じずだが――……、離せよ」

「師匠が私に惚れる迄離しません」

 何だこの小動物。

 いや弟子、難関と言うに当たって此奴も中々に鍛えてくれるじゃない。

「じゃあ嫌いになる」

「なら猶更離しません」

 はぁ、更に強く抱き締めて来るよ……俺の身体にピタリと付ける横顔は、偽物の様で本物みたく幸せな顔をして居るんだろうな。

「嗚呼可愛っ、俺の弟子マジで愛弟子だ可愛っ。白髪の御河童いとエモし、カチューシャ付けてマジ卍、其れを差し引いてもこんなに俺に一途なヒロイン他に居ねぇわぁ~、幸せだわぁ~」

「その意気です。自信と、愛情持って、頑張ってください、師匠!」

 やっと離してくれた、此処迄応援してくれるもんな、俺の様な建前野郎とは大違いな分、応えて、頑張らなきゃな。

「……グスン、い”い”ばダじだだぁ~……」

「うン、ベディヤきヅゲだがら”バイディチゆベでビドゥヨ、1920×1080、Full HDィ~」

 古HDだわ、時代は8K UHDTVの7680 × 4320じゃ。

 ……え? 御宅のPCだとクオリティ高過ぎて音ズレする? ならfull HDで良し。

 じゃなくてだな。

 妖夢が捕縛した筈のウェンディーネとフランソワズが何故か縛られて何故か此処で感賞しとる。

「で、第二話の予定は?」

「喧しい見せモンちゃうぞ」

「いいえ師匠。あの泥棒猫には我々の共愛を魅せ付けて諦念を得させるべきです」

 この子マジに言ってんの?

 ちょっと恥ずかしいし、可愛い。

「いやいやズズズ」

 汚っ。

「こんな胸キュンハンカチ不可避の正統ヒロイン相手に少女漫画の男の奪取には参戦出来ねぇよ。抑々俺男に見間違われるし」

 悲しい程自分のキャストを弁えて居る。

「だが負け惜しむよ本当、コレが失恋か……枕を濡らさざるを得ないね…………末永く爆発しろぉー!! うええぇへええぇへええぇん……!!」

 ウェンディーネは、涙流す顔を片腕で隠して走り去った。

 変な泣き方。

「JapaneseはObedientじゃnothing……。Best wishes, both of them. Good bye」

 ベストウィッシーズでカーテシーを決め、グッドバイで御淑やかに手を振りながら笑顔で歩き去る。


「では師匠。今度は生きて稽古を付けてください!」

「嗚呼そうだな、処で博麗神社で宴会を開いてくれるらしいが、ご存知?」

「いいえ、初耳です」

「じゃあ又、宴会席で」

「はいっ!」

 俺は光の向こうへと足を運び、そして顕界へ―――




【妖山】


 うわっ、本当だ。

 自分の体格は何となくイメージ付くけど此の侭だと個の霊魂姿が自分だと認識して終いそうな程、霊魂、そして視野が狭い、と言うかぼやけている、と言うか夕方やん。

 眼鏡の人の気持ちが解る様な、解らない様な……。

 でも眼鏡だけで世界を見るってのもアレだぜ、ちょっと、怠慢だぜ、見えないを理由に見えてない事見栄張っちゃ駄目だぜ?

 大変なのだろうけど、大変なのだろうけど。

 然し幻想郷って、田舎っぽい割には物凄く広い面積だよな……、今俺が何処の空を渡って居るかなんて当然解らん。

「見てよルナサ姉にリリカ、亡霊らしき霊魂が冥界の門から出て来たよ」

 誰かの声が響く。

「……本当だ~、冥界から逃げ出したのかな~リリカ~?」

 誰かが俺を囲んで居るらしい。

「実際に話し掛けて見たら良いと思う。意思疎通は何とか出来るだろうし」

 底な霊魂と、如何やら三姉妹らしき飛行物体共は意思疎通を諮る様だ。

「そうね! 何か球っぽい処で首振っているみたいな行動が出来るでしょうね!」

 そんな曖昧な知識から信頼を語られましても……声を飛ばそうとしても当然耳には聞こえず、彼女たちには届いて居る様子は見られず、と言うか姿がぼやけて見えず。

 取り敢えず黒い黄色いのと薄い白いのと赤い赤いのが俺に話し掛けている事は解った。

 黒い黄色いのが問い掛ける。

「ねぇ貴方。冥界から逃げ出したの?」

 こう言う時、無駄に速く多く首を振ったら嘘っぽく見えるだろう。

 まぁ此奴等が冥界関係者だってのならすぐさま連れ戻して居るだろうし、単なる好奇心から出た質問なら嘘も付く必要も無く正直に冷静に対処すれば良い。

「凄くゆっくり首を横に振った様なアクションしたね~。本当みたいだし、ちょっと可愛い~」

 何でじゃ薄い白いの、此れはアレか?

 で、でたー、女の子が何か良く解らん処に時めく奴~……また女だよ。

「確かに持って帰りたい気はするけど、冥界から出る程何か目的が有るんじゃないこの子」

 オフコース赤い赤いの、お前には持って帰られても満更でもない喧しいわ。

「今度は首を縦に振ったね。霊者同士、助けようよ。でも夕方に差し掛かるこの時間に、何処に行こうとして居るの?」

 黒い黄色いのが話し掛ける。

 尻文字クイズみたいに動く質問だよね。

 霊者同士って言ったが、いや今は良い、何方にせよ視界濁って見えないんだし。

 取り敢えず、神社を平仮名でなぞってみる。

「し……あ待って濁点付けた、じ……ん…………じ……や、神社、神社に行きたいんだ!」

 良かった伝わった、黒い黄色いのナイスです。

 黄だけは色を付けないと形容詞に出来ないのが何とも難点。

 如何でも良いわ文系妄想野郎が。

「でもどっちのだろう……二つ在るけどどっちが目的地?」

 逆にどっちって選択肢、されどどっちって選択肢?

「博麗神社か~守矢神社かだろうけど~……ねぇ、貴方が行きたいのは……博麗神社?」

 ―――――――――――――――――――――――――――守矢神社です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ