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幻想の現実≠東方空界霊  作者: 幻将 彼
第肆章「青年は死を目の当たりにし、彷徨った。」――死生異変.
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第拾玖点玖話 大きな桜の木の下で~Yu[yuko] and M[ad]e.

ヒツキは妖夢に、妖夢はヒツキに。

入れ替わりのパターンを果たした妖夢ヒツキは、西行寺幽々子に招かれ、会話の末、とある場所に導かれる。

【西行】


 話を少し遡ろう。

 此れは未だ俺が妖夢だった頃のお話…………誰か広辞苑持って来て、壮大な誤解を招く。

 咳込み。

 冥界に在る屋敷“白玉楼”に続く階段にて、其処の庭師、剣豪“魂魄妖夢”と対峙の末、階段での転落事故未遂、お互い損傷は無かった者の、精神が入れ替わってしまった俺と魂魄妖夢。

 その後出て来た主人“西行寺幽々子”に招かれてお邪魔した直後の、お話。


「取り敢えず、裏庭にでも行きましょうか。色々混雑して居るでしょうし」

「彼、と言いますか彼女は、居間に通して布団に寝かせますか?」

「ううん、その子も裏庭に持って来て。枕係は私がやるわ!」

「は、はぁ」

 声は妖夢だが精神はヒツキ、だけども何となくこの無駄に気合を込めて腕を揮う主の発言には、妖夢も理解し切れない返事をしそうだ。

「処で貴方、お名前は?」

「魂魄妖夢です」

「持ち主の方じゃなく、今入って居る精神の方」

 あっれぇ~何で俺持ち主の方で紹介しちゃったの~? 恥ずっ。

「失礼しました。“陽月さくら”です」

「桜……」

 名前で呟いていたが、いや然しイントネーションが離弁花類のソレだ。

「良ければ、ちょっと付いて来てもらっても良いかしら? 貴方の肉体も一緒に」

「はい。仰せられずとも、私は付いて来て居ますよ?」

「そうだったわね。少し、見て貰いたい物が有るのよ。多分もう察しが付いて居るでしょうけど」

 十中八九……桜だろうが、“西行妖”……知る筈も無い桜の木のワードが、頭を過った。

 裏庭に辿り着き、大きな枯れ木を目の当たりにした。

「コレは……」

 根本付近まで近付き、彼女は語り出す。

「以前ね。私は異変を起こした事が有ってね。春を妖夢に取って来て貰って、この桜の木を満開にしようと思ったの」

 其れは何故か?

「花見に最適だったのですか?」

「それも有るでしょうけど、この桜の木の下、何か死体が封じられているの」

 今も? 其れはゾッとする話だ。

 然し妖夢自身も、主の好奇心か何かはさて置き、其の命に従って春とやらを掻き集め、“西行妖”を満開にする事で、その謎の死体の封印が解かれ、誰かが分かるって話だったが。

「でも結局は、博麗の巫女や白黒の魔法使い、後吸血鬼の屋敷のメイドさんにも足止めされて、諦めちゃったんだけどね」

 幻想郷に春が訪れない……冬の儘の空に自然、雪解けの知らない気温へと変貌した、後に「春節異変」と呼ばれる異変。

 無論、異変の解決に赴いたのは、あの二人……流石だよ。

 友人である俺も、鼻の高くなる、所詮は一日二日の付き合い身分であるが。

 先輩も異変に乗っかって居たんだな、流石先輩尊敬するぜパイ先。

「無粋で且つ付かぬ事をお聞きしますが、物理的に掘り起こすってのも、無理な話ですよね?」

 凛とした表情で、幽々子様は振り向く……何故に俺は彼女をさも従者の様に「様」付けする?

「難しいわね。何せ妖気の溜まった桜ですから」

「ですよね」

 妖気、ようき、と話されて、想い付く、いや想い出す事が有る、いや、在った。

 魂魄妖忌……魂魄妖夢の祖父であり剣術指南役、過去の白玉楼庭師に当たる人物だが、或る日を境に消息不明。

 だが何だ? 消息不明なのは解ったが、何故日々の、魂魄妖夢の祖父との稽古や思い出、其れをさも自分が見て来たかのように映るのだ?

「気になったりはしていないのですか?」

「勿論、今も凄く気になって居るわ。でも仕方ないわよね。此処の花を奪われては、皆黙って見過ごせる理由無いもん。私も顕界での花見は好きよ。料理も美味しくなるし」

 そう言って、彼女は、何気ない一日を過ごして行く。

 目的が失われた彼女は、扨て後は何が残るのだろう……未来永劫冥界の管理をするってのも、何だか奴隷の様で少し辛気臭くなる。

「若し、開放する力が別の方法で在ったら……貴女は頼りますか?」

 そう、妖力だろうと魔力だろうと霊力だろうと、力とくれば上げ下げ出来る力は、俺には有る。

 然し、伸るか反るか、彼女の意思。

「………いえ、遠慮しておくわ。有難う陽月さん、気を遣わせて」

 反る方を選ぶか、其れも良し。

 俺も別に良かったが、何となく、妖の桜、満ちて開けばパンドラの箱を開放しそうな、いや若しくは、今迄有ったモノを全て失くす様な。

 そんな気がしたから、若し、気になる事が有ったら、封印された死体だけでも、調べるとしよう。

「それじゃ、その子を縁側に置いたら、ゆっくりしていって」

「そうしたい処ですが、私は彼女の目的を、果たして来るとします」

「あらそう? 倒れる前に何か話して居たのね」

「えぇ、まぁ」

 と言うよりかは、元より知って居た、彼女自身が。

 俄には信じ難し、されど鮮明に、知らぬ人、知らぬ物、知らぬ事が彼女の身体に入れ替わってから知る事となったのだから、断言出来よう。

 恐らく俺は、彼女の記憶を所持して居るのだ。


 取り敢えず今この時間する事は、掃除だ。

 顕界の紅魔館でもそうだったが、如何も掃除が天業らしい。

 はぁ、実に下僕らしい雑用だ事……まぁ、掃除も見栄えに重要、大事だし、その程度の事を雑用と蔑んで出来ない出来損ないよりかは、点で益しだろうさ。


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