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幻想の現実≠東方空界霊  作者: 幻将 彼
第肆章「青年は死を目の当たりにし、彷徨った。」――死生異変.
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第拾玖話 半霊なんてないさ~black white~

幻想郷の閻魔、四季映姫・ヤマザナドゥとの無意味な論争の末、矢張り勝敗付かずの結果を作ったヒツキは、今は只説教に打ち付けられるのだった。


【義妹】



 其れからどれくらい話されたのだろう。

 朝食が彼女等には必要なのか、取らずに仕事に挑む派か、兎に角昼食が欲しい程には、“四季映姫・ヤマザナドゥ”様の徳の有る有難い読経・説法・説教は、続いたと想う。

 折角の休日の半日、説教に巻き込んでしまった死神“小野塚小町”には、説教終わる五分前位には申し訳ないと心から想った。

 うん、そう、心から。

「―――で、在るからして、今後も善行を積むように励みなさい。解りましたね?」

「はい、四季様」

「イエス、シスター」

 漸く解放されそうザナドゥが間近なそんな時に、未だお説教足りずに巫山戯る愚か者の姿が、其処には居た。

 因みに隣は唖然と悲哀、絶望の表情。

「シスター……とは、西洋の修道女を指して俗名付けて居るのでしょうか? ヒノヅキさん?」

 再び機嫌が損なわれ掛ける閻魔の表情に、正座で説教を受け続けた男はコレ顔色変える事無く、身振り手振り込めて流暢に話す。

「兄妹と言う意味でのシスターですよ、映姫ちゃん」

 男は勝手に立ち上がり、帽子の上から映姫ちゃんを撫でる、と言うよりポンポンと優しく、チビッ子を窘める様に叩くが良。

「子供扱いしないでください!」

 と、見た目相応に両手を拳握って振り上げる子供。

「子供じゃなくて妹な。おまけに義理って言う趣有る設定だ」

 そう、何となく、何となく、さっきの論争で得る者が有った気がする。

 抑も色んな奴らに会った事で、俺は欠けた物を段々と拾えて居る気がする。

 そうでなければ、きっと生き返って彼奴等に会って、進んで恩を返そうなんて想わないだろって、自分を解り切った様に悟り語りを始めてみました。

「説教は喧しいが、しっかりした自慢の義妹って感じで、文字通り親近感が湧いた。此れからは落ち零れ過ぎて死に目に会った駄目な義理の兄として宜しくな、映姫ちゃん」

 今にも怒り兼ねない上目遣いは、震えを止めさせ、腕を組む。

「貴方とは因果応報に基づいても、疑似的な血縁関係にはなりません。それに此れからと、さも死に急ぐか、説教を受けに来るかなんて、幾多の幻想郷の住民を諭しても貴方だけは願い下げです」

 おや、嫌われた者です。

「然し、生きる事に於きましては、妖怪による奇襲や疫病、あらゆる自然による災害・災難が有るかも知れません。一日一日を大切に、気を付けて健康に生きてください、兄さん」

「んぁ」

「あら?」

「……ッ?!」

 こう言う不意打つ事を何度巡って来た事か。

 俺って心理操作もお手のモンじゃね類のTUEEEを疑惑したね。

 もし説が立案されても、下手な真似は打ちませんように。

「四季様って、何だかんだ俗的な思考に興じるタイプなんですね」

 上司舐め部下の初期段階みたいな悟り諭し。

「ちっ、違います! 今のは身長の見た目に準じて……いえ、そう、年少ですが子供でもない男性って意味の、二人呼称です、ええ!」

 ほわほわ~…

「二人してほわほわしないッ!」



 そして、閻魔殿を後にする。

 無論、後に来ては困られるのだが。

「いやぁお前さん、凄かったよ。正か四季様とあんなに言い争うなんて、普通亡者は閻魔の、と言うより四季様の判決には口出し出来ないのが、其の『白黒はっきりつける程度の能力』なんだけどね」

 白黒、其処に似た者を感じたんだと想う。

 俺の手も、増幅と減少、言わばブラックホールとホワイトホールみたいなモノだと。

「同質能力のぶつかり合いで、互いに関与出来なかったのかもな」

 若しくは、一方通行からの自己防衛なのかも。

「本当に、質疑が何処行く風とは話して居たけど、アタイに取っちゃ嵐の論争だったよ。どれだけ安全地帯に避難したかった事か」

 お宅の心情お察しします。

「同時に解らない事も有る。結局お前さん、四季様を靡かす訳でも無く、煽るとか唆すには、行動通りだが……義理の妹って位置付けるのは、釈然としねぇなぁ」

 抑々義理で妹ってのが、良く解んねぇ、と。

「外界の、一部の野郎共に寄る願望みたいなモンでな。一例としては、夫婦何方か寡となった二つの家族が再婚して、母側の息子、父側の娘、何方でも良いが其の息子娘は必然的に兄妹に成る訳だ。だが然し元を辿れば赤の他人の為、男女恋仲関係でも有りか無しか、道徳的か背徳的か。様々なジレンマ渦巻く関係性ってのが、義理の兄妹っつー男の欲望ジャンルの一つよ」

 口や眉が皺寄り乍らもゆっくりと何度も頷く死神は納得した様で。

「詰まり行く行くは伴侶として迎えるって事かい?」

「結果を急ぐな、いや結果には至らせないが……。只の好奇心だよ。身勝手にも義理の兄妹と結び付けて如何云うモノなのかって言う心理実験みたいな」

「ふ~…ん。外界って、変な事考えるんだなぁ~」

 幻想郷出身且つ死神に変とは言われたくない。


 扨て舞台は舟上、冥界へと向かうべく、川を進む。

「あの人は何時だって正しいけどさ、堅物な分、もう少し気楽に生きてくれないかなぁ~ってアタイは考えるんだよね」

「ほう、如何したいきなり」

 手を後頭部に、後、鎌を船に立て、支柱にして話す。

「いやさ、オメェさんに四季様を乙女として紹介するのは、あの人が籍を入れて家族を持てば、少しは丸くなるんじゃないかなってね。まぁ訳も分からぬ形で収拾付いたみたいになっちまったけどさぁ~……」

「…………」

「あの人は毎日亡者を裁いて、愚者を叱っては、疎まれ嫌われる事も有るけど、だからこそアタイはあの人にとって幸せって何だろうとか、単純に幸せになって欲しいとか、しがない部下だけどさ、偶にそう考えるんだよねぇ」

 怠け癖は兎も角、徳の有る上司想いの良い部下を持っているな、映姫ちゃん。

「説教も緩く短めに、何ならサボって居ても一言注意してくれるだけになるかもしんないからね」

 怠け癖が強い分、ハイ、徳は川の底に沈んで亡者に踏みつけられて終いましたとさ。

『パチン』

 と指パッチン。

『バキッ』

「わぁあああ……!!!」

『ザバアァァ………ン』

 鎌のバランスを崩させて、小野塚小町を其の儘真っ逆さまに川へと落とした。

「ちょっと一旦頭冷やしてこい」

 掌返しは、俺の中で来るもの有ったので。

 葬頭河ってのは、落ちると浮力ねぇから其の儘沈むと想ったが、やれやれ距離を掴める死神、五秒も経たずに三秒で戻って来やがった、三途のだけに。

「プハッ……アタイは落とさずに置いといたのに!」

「徳を積み直せ戯け。中立は残酷な程に、不徳者に試練を与えようぞ」

「アンタも似た様なモンだい!」

「そうとも、だからこっからは俺の足で冥界へと辿り着くとするよ」

 そうして立ち上がっては屈伸して、未だ死神が乗船していないにも拘らず、舟と川を馬鹿揺らす程度の脚力で、その場を飛び立った。

「じゃあな死神、三年位経ったら一緒に酒でも飲もうぜ」

 捨て台詞に、男は彼方へ消え行くのだった。

「……はぁ、最後まで謎のやっこだったね。面白くは在るけど、疫病神の素質も有るかもね、ヒツキ屋」

 障らぬ神に祟りなし、桑原、桑原……と、死神が新たな神を、創り上げたのだった。



【半人】



 適当に飛んだのかと言われると、俺が何も考え無しに文字通り打っ飛んだ事すると想うか?

 こんなにも思考の中で会話を繰り広げて居る奴が考えて居ないのかなんてそうであったら面白かったよね、残念乍ら私は真面目なキャラクターですどうも。

 扨て、何処だろう。

 掌返しは来るもの有るとは言った者の、まぁ己は語らずの身なので許せ。

 まぁ冗談はさて置き、よっこらしょ。

 大ジャンプで辿り着いた先は、階段だ。

 物凄く広い、階段。

 どんな百鬼夜行が見れるんだ……と、恐らく此処が冥界。

 階段端には、上に上にと均等に灯籠が置かれて、丸で神社だ。

 そして一帯見渡せば、浄化された霊魂がうようよとふヨふヨ。

 おっと、階段の一番上にも一回りデカい奴がふヨふヨ。

 隣に白髪の少女がぷヨぷヨ。

 刀持っててつヨつヨ。

 俺は今にも倒れそうでフラフラ。

 うぅ~…、長時間の正座が今になって効いて来たらしい。

 何せ正座だ、血管の通りが悪過ぎて脚が欠陥物って何だこの親父ギャグ。

 これでも脚力の保持とか、血の巡りとか色々補った筈だが、寧ろ逆効果だったらしい。

 体の構造なんて名前以外、働きとか知ったこっちゃない。

 うぅ~…、何か前置きが“おぜう”に似て来た。

 しっかりしろ俺、麻痺の緩和と、感覚とか神経の措置……指何本分だ? 右手左手で事足りるか?

 生き返るんだ、俺は、冥界のお偉いさんに会って、魂こんな下らない足の痺れ如きで何洒落臭ぇ、思考巡らせて居るんだ、巡らせるのは生きる為の血流だけで良い。

「止まってください御仁。それ以上近付けば、斬ります」

 端的に忠告痛み入る。

 だが痛みより痺れがマジでやばいんだこっちは、処で俺死人で魂の塊だよな、今更だけど何で痺れてんのよ、此れも幻想郷だから受け入れろってか。

 あぁでも地獄での拷問とかって物理的だよな、其れと同じ……って受け入れられるか。

 完全に自発的獲得じゃないか納得出来ねぇ。

「良いでしょう……では、此方から寄って斬ります!」

 握るのを待って居た柄を掴みなんだこのギャグじゃねぇよ気にしてねぇよ、鞘から刀を取り出し、構える。

「妖怪鍛えしこの剣、斬れぬものなど点でない! きぇえええいっ!」

 奇妙なな決まり文句から奇抜な掛け声と同時に、刀娘は階段から飛び出し、真っ直ぐ此方に降って斬り掛かる。

 ならば此方は真剣白刃取りだ。

『ヒュン』

『フッ』

 刃が近付き、その速さとタイミングに合わせて俺は手を挙げる。

『パシッ』

 成功だ。

「むっ、敵乍ら天晴です」

 成功だと心から言いたかったし、素直に敵の称賛を受け取りたかったし、正確に刀を取りたかった。

 彼女の刃は俺が手を挙げるより早く蟀谷に到達していた。

 が、当然“守髪神”が加護を発動させ反射。

 その返しで俺は受け止めてだけだ、よてーちょーわだ、ハァ。

「でも、着地の瞬間手の皮膚を斬り落として、其の首を討ち取ります!」

「女の子が物騒な事言いなさんな。処で」

 刀を手放し、その瞬間を見透かさず、彼女は地に到達する程度斬り込むが、既に姿は見えず、気配は取れず。

 探す猶予さえ与えずに、少女は立ち上がった瞬間背中に寒気を感じた。

「此の幽霊お前に付いて来て居るが、何だ?」

 多分其の幽霊の頭部らしき上部に触れる男。

「ひゃっ……! 私の半身に触れるなっ!」

 一端驚き、すぐさま攻撃に掛かる女。

 その攻撃を後退と言うか、寧ろ上昇して階段を登る俺。

「半身? 霊体みたいなモンか? おっ……」

 質問に答える義理無く斬り掛かる殺し屋、そろそろ自己紹介してくんねぇかな? 大体此処位に皆マイネームイズするんだけどな、其れも義理無しか。

「答える義務は有りません。大人しく斬られてください!」

「近付いて斬られる結果で大人に認定されたくない」

 寧ろ餓鬼です抵抗しますんば命しがみ付く。

「くっ、私の斬撃に手を出さずに避ける余裕さ。仕草少し腹立ちますがお見事です」

 有難う、こうでもしないと足が持たないのでね、余裕はぶっ扱いて居ない寧ろ真剣です相手武器が真剣だけにワハハハハ。

「私は“魂魄妖夢”。この白玉楼に住まわれる冥界の管理者“西行寺幽々子”様の世話役兼、庭師、兼、剣術指南役です」

 御免、後半ケンケン多過ぎて頭の中が犬種だとかに溢れて喧々諤々。

「俺は“陽月さくら”だ。西行寺幽々子と言う人物が其方にいらっしゃるならば会わせて頂きたい」

 閻魔曰くは、彼女の許可に寄り、生還が可能らしいからな。

 その話は薄ぼんやり聞いていた。

「残念乍ら、得体の知れない程度に霊気を放つ他所の御仁を易々迎え入れる理由には行きません」

 多分彼女は、俺の魂が黄金に輝いている其の気迫に恐れてこう立封じして居るらしい。

 すげぇ、生涯に「俺の魂が黄金に輝いている」とか使えるって何だこの人生、やり直して本物の生涯で言い放ちたいね。

「で斬りかかると」

「矢張り危ないので」

 其の言葉、精神病質者に使われてもお前には使われとうない社会病質発言。

 いや彼女の身に何が有ったかは知らんけど。

「安心しろ。俺は気になるモノは人値を超越して探りに掛かるが、それっきりだ。然し半身が霊体ってのは何の類かは見当付かんな」

「教える義理は無いとお聞かせしました。そして」

 魂魄妖夢は高く飛び上がり、俺を超えて階段の頂へと配置を戻す。

 有無、ドロワーか、好きだな幻想郷。

「通す気も無い、と」

「だが俺は通りたいと進む。剣士恥じる事にお前の斬撃は当たらない。如何する半人前、此処で闇雲敵に斬りかかってもヒラヒラ落ち行く花びらは斬撃の勢いで躱されるばかりだぞ?」

「御仁は、男乍ら花と自称為されるのですか?」

 いや、『さくら』って名前を物の例えに出してみただけなんだが……んぁ、コレは前にも有った何か戦闘最中の煽りみたいなモンか。

「じゃあ紙で良いよ」

「なら斬り易いです。だからこそ此処に戻りましたので」

 おや、何か算段が御座いの様で。

「御仁は初手の落下正面斬りを手で受け止めましたので、もう一度試させて頂きます」

 方法、括弧口癖的な括弧閉じ。

 もう一度真剣白刃取りをさせるって魂胆か、言っちゃ避けるだろ。

「今度はすぺるかーど込みです」

 ゑ。

「断命剣「冥想斬」!」

 刀が青くっつーか、青信号は実際緑じゃね? って、在れ位に光り出し、更には刀身が伸びるっつー、マジライト光のオブ剣セイバー。

 そして再び階段から飛び降り、光に包まれた刀を此方に振り翳す。

 いや白刃取り出来るモンじゃないって、光だよ? 光源だよ? 白刃って光なのね、如何でも良いが速い。

 そして何より俺は魂の塊、技名聞く限りは触れたら浄化されそう成仏しそうって或る意味ナイスチョイスのスペルカード、敵乍ら天晴とre:。

 って関心浸透じゃなしに今想い付く力の増幅は……ありとあらゆる不確定要素の増強そして消失、霊力・妖力・魔力・気力、後は……

『フォン!』

 腕力っ。

 指一本分だが、握力なら小石が砕ける程に、イコールサイコキネシスが出来るのだから……念力も有りだったな、だから漢字の念力って意識しないんだよな。

 だが然し、この冥想斬何某、白刃取って抑え込めている。

 手と刀の狭間で波動と火花が飛び散り、熾烈を極める戦いよ。

 魂魄は空中で姿勢を変えずに、斬り詰める事だけに必死、圧し斬る事に真剣だ。

 その上からの圧力を軽減させる態勢で追い詰められている俺。

 抑えたとは言った者の、コレが横に逸らせたり、避けたり出来る状況ではない。

 下手に避けたり離したりすれば、此の妖力の塊と言った刃は辛くも“髪神の守”を以てしても防げない事は、神の鎧越しで肌に伝わった。

 正直斬られる、正直御陀仏、あ死んで居たか、もういっかこのネタ。

 あ、腕に力入れるのは宜しかったけど、脚がもうヤバいな。

 あ、此れもう駄目だ、脚に力入んね。

 あ、何か脚滑らせた、下階段だってのに此の侭じゃあ真っ逆さま。

「えっ……」

「グっ……」




 脚を浮かせて正面斬り、脚を開いて白刃取り、切羽詰まらせた攻防を繰り広げた二人は、守り側の不意と不覚の脚力不肖、平衡崩落に寄って。

 又、腕に力を込め過ぎた計りに、だとしても刀を置き去る剣士は居た者か、さりとて姿は間抜けらしく、其れ物毎体を持って行かれ。

 何とか刀で真っ二つの運命は避けた者の、己の危機察知にやっと刀は手放した者の、階段と言う転落に最悪の環境、重傷を負わざるを得ない。

 幸いな事は、斬り殺しに掛かっていた魂魄妖夢との距離が間近だった為、階段の衝撃を和らげるべく、何とか彼女を抱えて転覆出来た事だ。


 酷い音が二人の転落の最中に響く。


 階段中腹の広間迄落ちた二人。

 ヒツキは、守髪神と言う奇跡が有ろうと、守りの風圧が戻るまでの僅かなクールタイムが彼の身体にダメージを与え、その末矢張り意識を失う。

「んぁ、何とか大事無く転げたらしい…………」

 見知らぬ御仁に助けられた妖夢は、妙な喋り方を発して、ヒツキの身体から起き上がり、己の声に、腕剥き出しの半袖衣裳に、スカートに、違和感を覚える。

 そして隣で伸びて居る闖入者を見て、其の光景につい口を零した。


「…………ドッペルゲンガー?」

 如何やら、精神が入れ替わった展開に陥ったらしい、うわ、アバウト。


「如何したの妖夢~、少しにしては長い外出だけど?」

 嫋やかな口調で喋る女声は、階段の上、即ち開かれた門の前から放たれる。

 桃色の髪と、水色と白が映る御淑やかなゴスロリっぽい和装は、全ての生物を静ませる、そんな雰囲気。

 極めつけは帽子に付く三角の天冠、そして周りに飛び交う無数の霊魂、幽霊大将此処に現れりって感じだ。

 あ、女性だから女将か、幽霊女将、有無、強い、語彙力。

 この方が冥界の首領、西行寺幽々子様だ。

「その子は何方様? 妖夢の恋人?」

 如何してその場突っ伏して居るこの莫迦をボーイフレンドに仕立て上げられるか。

「……え~っと、事情は斯々然々」

 荒々旨々、其れで伝わったらコミュニケーション社会は苦労しない。

「押し倒しの意味を履き違えて、気が転動しちゃったのね」

 如何したって恋人より発展途上国にしたいのね、恋バナに暇させて居るのか幻想郷の少女たちよ。

 えーっと、此の入れ替わりパターンを旨く話せるかな?

「いえそうではなく、魂の入れ替わりが生じて………転動?」

「ええ、転動よ。今の妖夢が其処で逆上せている貴方で、逆上せている貴方の中に妖夢が居るのよね」

 何だ、全てお見通しだったのか、流石冥界の管理者だ。

 管理者の大義名分で流石と称賛するには方程式が合って無いけどな。

 いや、一応、組み立てるけど、魂と幽霊の総大女将が比例している、的な。

「取り敢えず、入って居らっしゃい。貴方と、貴方の霊体も」

「……御免ください」

 扨て、刀の様に脆く細い、然し真っ直ぐで強い腕は、彼女の記憶を頼りに、彼方吹っ飛ばした刀を拾って鞘に納め、彼女を守った騎士様を精神的に自身が担ぎ、彼女待つ門前へと足を急がせ、三人と一つゆっくり、敷地内へ歩を進めた。

 その内一人は背負われて、一つは足無いけどな。

 知ってたよね、黙れ。


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