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幻想の現実≠東方空界霊  作者: 幻将 彼
第肆章「青年は死を目の当たりにし、彷徨った。」――死生異変.
26/62

第拾質話 三途は続くよ何処までも~Reaper~

【桜桃】



 通りゃんせ 通りゃんせ

 此処は何処の細道じゃ

 御狐様の細道じゃ

 ちと通してくだしゃんせ

 御欲ノ無ヒ者 通しゃせぬ

 御仁の一ツノ御願ヒに (みこと)を騙しに参ろうか

 行きは戸惑い返りに恨み

 恨みながらも通りゃんせ 通りゃんせ



 ……と、その昔……。

 とは言う者の、実際は二日前……いやもう日日越して三日前だろうか?

 かなり夜だった、然し今の季節がアレだから未だ皆晩御飯タイムかな?

 そんな感じの、何時も脳内が独り言で絶えないモノローグ語り略してモノ語、誰か使っている若しかしてパクり申す? を死しても尚行う独りぼっちボッチ“陽月さくら”事“俺”は、四日前迄、詰まり幻想郷に来る前迄は、神職括弧アルバイト括弧閉じで、稼業を行っていた。

 四日と言ったのは死んだ=四の方が日本思考的にしっくり来るじゃん? はい(如何でも良い)。

 アルバイトとは言う者の、その神社は俺製作、基、制作、例にして霊の混沌本にて手掛けて手で書いて描いて創った、オリ神社。

 名を“神龍色之(かみたつしきの)桜桃(おうとう)神社(じんじゃ)”。

 冒頭は社歌。

 ……神社だけに、社歌と言うのだろうか? 、祝詞(のりと)とでも? まぁいいや。

 其処で生前《=異世界転生=人生的な意味で》神主を務め、且つ生活稼業及び生活住宅として過ごしていた。

 アルバイトと言うのも、神主さんってのは名乗って出来る者ではない、免許が必要なのを考慮し、遠慮し、配慮し、然し代表的なのが俺に当たった訳で。

 そして正確には、社に生活スペースが有ったのでは無く、本殿の後方に家屋が有ったと云う訳で。

 神様を祀って居るか居ないかと言えば、正直八百万の何方様も御座(おわ)さらなかったかと。

 似たような者として、狐の御面が、狐の獣神なのか将又付喪神将又なのか、俺に憑り付いて稼業の手助けと言うか、演出を担ってくれたと言うか。

 演出、と言うのも、混沌本にて、参拝にいらっしゃった御客さんの本当に叶えたい願いを書いて貰い、万人に幸せを齎す、っつー迄の商い呼応をその狐さんに高貴に、巧妙に、高飛車に、偉大に、寛大に、盛大に振舞って貰うって言うね。

 因みに、願い事の筆記お値段何とニコニコ五円現金賽銭奉納。

 高が五円、されど五円だからと言って詐欺だと言う訳ではないぞ。

 実際、丸で魔法の様に、ファンタジーの様に、メルヘンチック、メンヘラチック、混沌本は幻想郷内でもその力を十分に発揮して、俺を手助けてくれたのが証に。

 まぁ、書き方次第では標高何百・何千何万メートルから振り落とされるなんて事も有ったな、お~寒い。

 即ち、書き方次第ってのは、御客さんにも……、。

 ちょっとこっからは愚痴みたいだけど、ちゃんと5W1Hで書けって説明して居るのにも拘らず、人の話を聞かん、守らんでとんでも後悔先に立たず事を起こして詐欺だ何だのクレーム付ける莫迦も初期当時は居たモンだ。

 例えば「美しくなりたい」だけを書いた女子高生が、度を越して顔面がレオナルド・ダ・ヴィンチの名作「モナリザ」の顔面に豹変して居たりとか……でもアレはアレで有りと言う美術系男子が居たな。

 在り来りな願いで、「モテたい」だけを書いた中坊が、ありとあらゆる物を持てるようになったってだけのそんなシンプルな願いが叶ったケースも有るな。

 まぁそれはそれで得したり、結果そのパワフルさに惚れた女子が居て付き合えたとか居ないだとか。

 ヤバい、結構好評な案件しか見当たらない、恋愛発展だけに。

 酷評酷評……っと。

 そうだな、世界征服を目論んだヤンキー君が汚い字で且つ至る所平仮名で書いたりして、吾世界を手にしたと高らかに笑って美女が傍ら囲むハーレムを夢見たみたいだが、世界征服や世界を破壊する力とか、世界規模で願い書こうとする……後『陽月さくら死ねぇい』って莫迦げた願いは聞き届けない様には仕様を変更して居る、俺も例外なく……。

 で、そのヤンキー君は逆切れしたけど記憶消して蹴っ飛ばして帰したな。

 確か解くのにはパスコードが居る。

 …………嫌な事を想い出した。

 パスコードの内容から連想された訳では無く、パスコードを作った人物だ。

 其奴は巫女として神社に佇んでいた、普通の高校生。



「それでも貴方は――」



 忘れそうに成って居たが、死んで想い出すなんて冥土の土産も良い処。


 そう言った事例も有る商い業、賛否両論・批評両論付けたとして、何でも出来る様に成る、巫女さんの言う通り餓鬼染みた御都合本が身近に有ったとして、噂は広まり御客は殺到モノじゃないのかと想われるが、この混沌本含めた俺の持つ欧羅巴州の売れなかった作家の怨恨武器「文房器」は、向こうの世界の法律上、刑死確定の武器所持違反と言うか謀反に成り兼ねない事が出来る武器なので、隠密に暮らしたく、境内には結界が張って居るのです。

 本当に叶えたい願いってのがポイントで、願いを心に、燃え盛らせて宿して居れば、神社の姿をお目に掛かれる。

 そして境内出る頃には、境内での出来事は、結局の処忘れて居る、寄って通りゃんせって感じだ……ハァ。

 神をも騙すその所業、本当に、死して贖罪とはとても清々しい。

 だけど彼奴等は大丈夫だろうか。

 巫女さん、くだらん弱音に耳を傾け、受け入れてくれた者。

 魔女さん、見えぬ道に愚直を示し、護ってくれた者。

 捉え方じゃ或る意味、恩人だよな、あの二人。

 怒って居るだろうな、宴会の約束を果たせなかったから。

 嘆いて居るだろうな、護る前に死んでしまったのだから。


 思考中にも有った、巫女さんのこの本に対する罵倒。

 本を使って俺が両替した二千匁(約:7.5kg)もする五円玉の重みに重心が耐え切れず、反動で賽銭箱を破壊して、弁償を突き付けられ、本で直して……。

 魔理沙は、何か本のタイトルを言って出してくれって言ったな、コピーもしろとか。

 あの時は口で言って誤魔化したが、複製……は構造を知って居ればだが、召喚って言うよりか、筆記に寄る強奪ってのも、禁止にしておけば良かったな。

 はは、良かったなんて過去形で言って終う語り、空白の本を開き、そんな思い出に浸る俺は、矢張り何も感じない。

 今はあの夏みたいな巫女JKを想い出してしまった所為で気分は良くない。

 如何やらネガティブな事には特別出る所出るらしい。

 全く、無情と設定が語られて居るにも拘らず、息をする様にマチガう。

 息を吸ったとて、もう生命活動はしていないけどな。

 さて、もう一度寝るとしよう……それこそ、あの空想女に倣って、頭を空っぽにして……。

 いや、だが、さて、しかし、けれど、よか、より、待て、目を開いて腰を起こし、右下を見やる。

「お前は誰だ」

 先程からお隣で寝ていらっしゃる赤髪ツインは何方様ぞ?



【死神】



 デッカいな、寝る子は育つは正しいらしい。

 咲夜さんも働き詰めだから幻像に頼る他無いんだろうな、寝る暇無いんだろうな。

 そして無視、無聴。

 ぐっすり眠られている様だ、こんな場所で。

 処で場所と言えば此処、何処だよ。

 兎に角、何もない河原である。

「おい起きろ」

 と一発デコを引っ叩く。

 一応レディなのだから、手加減もしては居るよ。

「ふにゃっ…! うにゃうにゃ……」

 寝言でニャムニャム言う人初めて見た。

 人とは言ってしまうが、扨て…以下略、又人権問題持って来ちまうから。

 おん、彼女の頭の天辺には大きな鎌が置かれてある。

 明らかに稲穂を刈り取るってサイズでも、自力ミステリーサークルを作る為の物じゃねぇな。

 それに俺は死んで居る、死んで居るから其処から連想されるは「死神」。

 此奴は死神類の御仁っつー事で良いのか? なら何故その死神様が俺の横で横たわって居る? 川の字で寝転んでいる? 三途の川を流れて居るんですか? 死神だけに死を司るから臨死とか?

「うんうん~……うぎゃっ、し、シキ様?!」

 やっと起きたか、いや彼岸で起きるってのは如何なのだ? いとわろし。

 こう言って現実世界では何秒の出来事? 俺の感覚時計だと零点零五秒の出来事。

 死線が現実でも世界はあの世。

「シキじゃねぇヒツキだ」

 後頭に手を持って来て寝ていた彼女は、俺を見るや、シキとやらの恐らく上司と見間違えて、状態半起こしの手を崩して硬直状態。

「待って居たよ不帰の客人。アタイは小野塚小町、見ての通り“死神”さ」

「上司に居眠ってた事チクられたくなければ正直に申せ?」

「済ンマセン殿方が寝ている処起こそうとも思ったけど余りにも気持ち良さそうに、それこそ極楽浄土に参ったかの様で声掛け辛く眺めて居たら私も茶飯事の乗りで共に寝てしまいました。どうか上司の閻魔様にだけはご報告を避けて頂きたく……」

「土下座迄は求めて居ないから」

 硬直から姿勢を直したと想ったら、脅しに屈して上司である閻魔へのチクりを土下座と謝罪で回避しようと忙しないな“死神”。

 って、ええええ、閻魔様ああああ…………うん、俺って脳がスーパーコンピューターレベル、変態マザーボード手作りパソコンスペックで働き、音声機能カメラ機能、加えて嗅覚機能も備えた、メモリ8GB、インテル入ってない、嗅覚何の意味が有るんだ人間だから、閻魔様と聞いても凄く驚かない。

 敢えて、敢えてビッグスケールネームを聞いて驚いたかの様に内心驚いてみたけど、驚いてみたと言うのは完全故意。

 まぁ俺が無情人間で有る事はが証明出来たと云う訳で、Q.E.D.

 でも一般男性って有名人見ても公に感情表さないからなぁ……俺って其の類にも見られるかも、別に良いけど。

「ホントだよ、乙女に何させるんだい」

 自分で言うか。

「アンタは若い娘に鬼畜な事させて高見の物見遊山で眺める畜生かい?」

 死人には良い皮肉だ、畜生とは。

 鬼畜な事させた事については思い当たる節が有るし其れから掌返して冗談で済ますみたいな気でも無かったから否定出来ない。

「……いや、アンタ良く見たら死んで居る……よな? そうだな、彼岸なんだから当然さね」

 今、自分の皮肉をガチで告げて、死人を判別出来てなかったみたいな言い草だったな。

「アンタ死神だよな」

「“死神”さ、見ての通り」

 見て呉れでは解らん、ローブとデカい鎌がトレンドだが、彼女の場合、幻想郷流“死神”ファッションは田舎味強くて和装だ。

 半角y字で衿を折る服装は和装だ。

「ん…? あぁ、衣裳で判断って奴かい? でもほら、髪は赤いし、鎌が有る」

 髪が赤いので死神渡欧されても、知り合いに赤髪でも死神でも幾らでも居たし、鎌なら蟷螂妖怪だって使うし、中国拳法家のヌンチャクで鎌が付いた奴も使う。

 蟷螂妖怪は会った事が無いけどな。

「だが死神、俺の死没で迎えが無かった理由は?」

「う~ん……さぁね、アタイはソッチ専門じゃなく、此岸から彼岸へと送る専門だからねぇ」

 それって一貫して今日の死者全体通達とか在るんじゃないの?

「まぁ、アンタ見るからに外来人っぽいから通達が来ないのも有ったかもだし、其れとコレちょっと関係無いんだけど、アンタ魂の映りが鮮明だねぇ。ホント生者が此岸に迷い込んだのかと思った位だ」

 魂が鮮明……いや、それでも俺の身体は死体其の物の筈だ、髪の毛の神様で命を補って居たに過ぎない筈だ。

 それが離され、霊魂となった俺は……俺は……俺は誰だ?

 いや待て、何だか過去のと言うか一昨日昨日の自己紹介を蒸し返して寝床で藻掻きたい遣らかしとかじゃなくて、生者にマチガわれる位に俺は魂が鮮明に視認される程死人でハイそこ寒いとか言わないだけど抑々死体だった俺が宿していた魂は守髪神が補って居たに過ぎず、それが身体から離れたけども本来居る筈の守髪神が現在行方不明のドナー及び身体外傷補佐のみ。

 いや充分だろうけど其れで魂が俺をホストにして動くなんて可笑しな話だ。

 いやでもそれが守髪神って奴か、補佐ってそう言うモンだよな。

 いやて言うか、死後も憑いて居るこの守髪神?

 それと鮮明って、俺に於いてそんな大層に出来上がる者か? 神様が創り上げた霊魂……出来るか? 出来るな。

 他力だが、いやいやいやいや嗚呼そうだ、長く悩んじまったが、飛ばし掛けたが守髪神が死して尚起動しているって事だ。

 其処に焦点を合わせたかった、本当要らぬ頁稼ぎを企んだ長文失礼をば。

 死人なんて精々、経帷子だったり天冠とか言う白い三角巾みたいなの付けるのが相場か如何かは思想と宗教の其れ此れ。

 でも俺の場合は事故死で旅絶ち着いた頃には最後に身に付けて居たこの衣類、この髪。

 ならばと想って在れ等を探ってみる。

 先ずは……そうだな。

「小野小町だっけか? ちょいと頭出して貰って良いか? 撫でて貰う姿勢で」

「おいおい誰だいそりゃあ? アタイは小野塚小町だよ。其奴はアンタの生き別れた友達かい?」

「歴史の歌人だよ、良いからちこを寄れ」

「全く何様だい、ハイ」

 俺様とか殿様とかお代官様なんて雄大さは持ち合わせて居なくとも、貴様括弧俺は死神の頭を撫でる。

「…………如何だ?」

「如何だって言われると……あぁ~、四季様が事珍しく撫で込みで褒めてくれた時みたいに気持ち良いねぇ~……兎が撫でられた気分ってこんな感じなんだろうな、みたいな」

 愈々具体的だ、閻魔様は厳格的な人物らしい。

 だが偶の飴を与えるのも、上司って言うか、代表取締っつーか、兎に角、上に立つ支配者としては尊敬されるに等しい人物なのだろう。

 現に部下の死神は、閻魔の居ぬ間に洗濯でも出来て居たろうが、それでも上司を様付けする点が、っぽい。

 若しかしたら告発を恐れての今だけ敬称なのかもな。

 そして閻魔と言うのだから、俺は天国か地獄かを定められるって事で良いのかもな、案の定地獄だろかね、ガハハ。


 扨て、何れ来る将来・未来は現状保留にして、一応手の能力は使えて居るらしい。

 いや、でも如何だろう……人の聞だからな。

 矢張り此処は一見出来る事が望ましいか、撫でた事が私欲に取られなきゃ良いけど。

 いや無い、俺ぁ無情で無欲の理性と論理と利害で動く者。

 其れで良ければ其れで良く、そして俺はマチガえる。

「じゃあ後はその鎌、ちょっと手から離してその場から離れておくれ」

「……うん? ……ああ、良いよ」

 撫でられた事がとても彼女には喜々として解放感に通じたらしく、素直に鎌を地面に置いた。

 それから右手を広げ左手は右腕を掴ます。

 そして確信に到る、鎌が浮いたので、能力は死して顕在中と。

「おや、見事な能力だね。モノを浮かばせる程度の能力とか?」

 程度かコレが……程度だな。

 だがコレは手の能力を応用した技、本来は分別して能力を行使している。

 それと俺は能力と言うか武器を所持して居るな、世界を描き換える異器『文房器』。

 其奴に倣い、俺の幻想郷らしき、程度に投じる能力名は

「一線を画す程度の能力だな」



【三途】


 小野塚小町は、小舟へと俺を誘導する。

 閻魔の元へと送ってくれるそうだ。

 何でも送迎係の死神には、「渡し賃」とやらを払い、それが稼ぎに成るらしいので、送迎の謝礼を込めて俺は残り三万二千円の内、四千二百円《銭にして》払おうと言ったが

「いやぁ~……そんな大金は貰えないよ」

 と、歪んだ微笑で銭を貰う事を拒否。

 大金か? こんなの二十世紀入りたての消費税ならゲーム一つ買えるって位のお金なのに、スネスが四千円安くなるクーポン券もニッコリ。

 今は無理だろうな、精々中古が良い処、クーポン券も最早幻想……何処かに落ちて居なかったかな。

「アタイは普段、霊魂とは話せないからね。話せる死者ってのは珍しい。ソレで充分だよ」

 いや、だけど、しかし、と口を吃らせる死神は、矢張り十円だけでも頂くと、そんな俺が俺を供養するみたいな額だとは思ったが、取り敢えず腹に付けている五円玉らしき小銭に倣って、五円玉を二枚渡した。

 後に聞いた話、小野塚小町は送迎の死神の中でも珍しいだとか、欲が無いだとか。

 渡し賃の多さは徳の多さで、送迎の優先順位も現すとも聞いた。

 然しこの死神は普段から、誰でも良しと言う感じで死者をあの世へ送り、様々な生涯談を聞き入れている。

 尚、幽霊との会話は死神が話すだけの一方通行である。

 そんな今日・今に限っては俺しか居らず、偶々通り掛かったと言う理由、清浄な魂、然も話せる幽霊と出会えた死神は、無徳で送ってくれると。

「まぁゆっくりと、川の流れる侭に語ろうや、客人……で、名前は?」

 『俺』と反射で言い掛けたが、守髪神が効果を発動して居たお陰で防げた括弧適当。

「陽月さくら。初手にヒツキだと言ったが……記憶に無いとすれば確定居眠りだな」

「いやぁ~その件はホント、内緒にして居てくれ? 四季様のお説教は徳が有るけど、夜が明ける位長いんだ」

 夜を現状言葉に出す分、今は夜らしい。

 コレは朗に値する情報だ。

「無償の上、残業夜勤で送ってくれるんだ。こまっちゃんの神徳に免じて……っつー立場でも無いけど、上司には先の出来事、義務で黙秘して置くよ」

 尚、権利は無い模様……話せない事は無いってね。

「それは良かった、川の途中で突き落とす処だったよ」

 ひえっ。

「ハッハッハ、冗談さね! そう死んだ様な顔しなさんな」

 あ、死んで居たか! アッハッハッハ……


 ……俺が突き落とす事は出来ねぇだろうか? 次失言したらシキ様とやらにチクろう。

 冗談でも、俺は肝を試して心肺停止で死んだ怪談を持つ男だからな、今更溺れようが怖くは無いし、恐くは無い。



「乗り心地は如何さね、ヒツキ屋。新調は効かねぇ船頭身分の船だからさ、船酔いするかも知れねぇけどなぁ、其処は勘弁」

 何処迄も霧に包まれたその川は、距離を知らず、道のりを知らず、時間を知らず、みはじ数学出来ない系、幾人もの思想類の河川であるが、距離を操る程度の能力持つ彼女ならば、万里長城も一つの部屋である。

 然し彼女はそれを使わず、夜の明ける時迄語ろうとする。

「問題無い。気分は自分……何も無く、だ。死人だからって俺は何も変わらない、何も感じない」

「ほほぅ~……深いねぇ。無我の境地って奴かい? 正座で過ごしている分、アンタ生前、寺で努めて居たのかねぇ。立派で徳の有る生涯、故にその若年での逝去は惜しいモンだい」

 そんな仏を拝んで新たな世界を拓く、人生に意味を彷徨い、死地で寿の在処を悟る御大層な人間だったじゃねーよ俺ぁ。

「だからさ、アンタの審判、無効って事で駆け合ってみようと思うんだ」

 ……あ~……如何言う事だ? 俺のおつむが乏しいならそれで良いんだが、無効? 向こう? やっぱ送られるのね私。

「如何したい? そんな悩める事でもねぇと思うよ? ヒツキ屋。人生をもう一回遣り直す、生き返れるかもって言ってんだぜぇ?」

 かも、かもなんてそんな確信に到らない言葉を申されましても、蘇生。

「コレはアタイの勘だがぁ、アンタは今、体と魂が分離した状態になって居る。一応差障り無ければなんだがぁ、アンタ死に際に何が起きた?」

 差障りえなんて無いよ当然、死人なんだし。

「屋敷に入って閉じ込められた瞬間死んだ」

 短絡的に教える、それを聞いた死神。

「う~ん、じゃあやっぱりその心臓は魔力とかで動いているって魂胆だね。死神の目で見ても、こんな黄金の色をした心臓は初めてさね」

 突然死神らしい能力を使うなぁこの乙。

「あぁ、元が元。死体が神様の心臓を頂いて辛うじて生きていた。みたいなモンだ」

「そうかいそうかい。なら矢張り合点が行くし辻褄が合う。先ず屋敷が魔力や霊力を無効にする屋敷と見た。違わねぇかい?」

「とは言う者の、死んで居たから何とも」

「そうだったね。まぁ神様からの贈り物っつぅ代物なんだ。少し心臓が止まってもあの世の傍迄送られて完全死相を回避しても可笑しくないって話だね」

 何か名探偵の如く犯人を言い当てるだとか犯行の手口を見出すとか、饒舌な語りを期待していたが。

「いやいや。アタイに知的な語り部は無理さね。それとアンタは、其の小声で話す仕草は、煩悩の何か、か、修行不足かね。行けねぇなぁコレから生き返れるかもって時にボロを出すのは、やっぱ一度地獄を見て行くかい?」

 地獄なら幾千と言う時の中経験しましたよ。

「済まない。此れだけは如何も……作り話を語る者みたいな悪癖でな。死んでもコレは捨て切れないらしい」

「ま、死んだら仙人にも成れたモンじゃないね」

 良かったよ、俺が仏を目指す死人だのと誤解が解けて。

「仏にもな」

 罰を受ける者に、仏を目指す資格なし。

「冗談だよ。語り部癖程度じゃ地獄に送れないよ。二枚舌なら抜き取り兼ねないがね」

 それは先の川に突き落とす、継いで語り部癖程度で地獄送り仕掛けの冗談語るアンタに申したい。

 括弧黙っている。


「処で、小野妹子」

「今度も誰だいそりゃあ」

「女性名に見立てたおっさんの名前」

「責めて女で有って欲しいやい。で何だいヒツキ仙人」

 急な昇格有難う、先の名指しを恥じるよ僕。

「アンタの能力は距離を操る程度の能力って話だったが」

 割愛して悪いな、舟に乗る前に話して居たよ。

「その程度ってのは何故の程度なのか。能力の効果を聞く限りでは、程度程度にも想えないのだが」

 朝まで続く会話にしては上出来だろう……って、自分で言う。

 然し死神、首を傾げる。

 あ、コレ会話長く続かないかも、今日は良い天気だね、の類だ。

「アタイも詳しくは知らないし、特定した覚えは無いんだけど、何でも人里のとある名家には“幻想郷縁起”って書物が有ってね。ソレに私や他の妖怪、博麗の巫女についての事も記されてあってね。何故かは当人に聴けば良い話なんだけどねぇ、取り敢えず程度って表記されてんだよねぇ。要は只の因んで便乗さね。深い意味も無ければ、大した事を低く捉えている卑下とか謙遜とかでは無いと思うよ」

 良かった、ちゃんとお天気お姉さんの話を一語一句覚えて話している様だ。

 逆に凄いな、それ話せる奴が居たら……。

 又此の地に関する用語が出て来たな“幻想郷縁起”。

 機会が在れば、その名家に尋ねてみよう。

 その前にその為の機械が有ればだがな。

「オメェさんの一線を画す程度って言ったか? ありゃあ如何言う意味だい?」

 如何云う意味言ったって、丸で己の手内を馬鹿正直に明かせと……片や彼女も幻想郷での死神の何たるかをご教示頂いた訳で? 情報等価交換だって。

「意味通り、若しくは動詞通りってトコか。正しいか間違いっ言う意味での違いをハッキリさせるってのは、何だか呪いみたく、己は其れの奴隷みたく、執着して言葉に出して行動に出して居るからな。手で言動しているからな。後はマジで線を次元越しで引くのも一つ」

 と、鉛筆を取り出して、空間に線を引く。

「へぇ~こりゃあ又新手のマジックアイテムが出たモンだ」

 四つん這いになって見る事か? 本当デケェよ、この死神。

 然し、彼女が腰掛けている時点で解り切った事だが、この舟本当に動かして無ぇんだな、空間に描いた線が通り過ぎないのが証拠だ。

 何が楽しいのか今日会ったばかりの死人俺との会話の為に。

 いやまぁ俺が楽しさを実感出来ないのが、で有って、彼女自身が如何とかマジ何が楽しいのか知らない。

 感情を知識的に知って居ても感覚的には知れない。

 この話n回目だ? 俺は自分に何度その話を持ち掛ける? 止めだ止めだ本当に、無情の話は金輪際無し。

 はい現実時間帯意識領域に戻ろう。

「それにオメェさんのその正しさと間違いを決めるって、丸で映姫様みたいな能力だ。閻魔様の特性に似た能力だ」

 そう言えば事閻魔と言うどデカい存在が話題に出ているのに触れて居なかったな……四季映姫、四つの季節を映す姫、さも花鳥風月が揃ったかの様な非の打ち所がない名前だ。

 だが名前から察するに……

「其の閻魔様、四季映姫っ言ったか? その御仁は女性で在らせられますか?」

「そうだが? 何か問題でも有んのかい?」

 ハァ~……いや、何でも無い……っと内心想って居る事をここぞとばかりに小声で漏らさず、握った拳を額に当てる俺なのだった。

 幻想郷に来てからの最近、女難の相と言う理由でも無いが、兎に角女性に会う事が多い……其れでの質問は、大体厄介事、面倒事、荒事、括弧俺を起点に、至る事が多い、多くなって居る。

 何だ俺はエロティシズムゲームの主人公にでもなったのか? 文面並べると下品感が一切感じられない基よりゲフンゲフン。

 だとしても俺は躍起になったり躍起にさせたりしない。

「……ハハア~、似た者通しっ言うとこに想い入れる事在ったんだねぇ、ヒツキ屋ぁ?」

 死神って水準年齢幾つだ? まぁ幾年月になろうと其の話持ち込みたくなるのが女なのだろうね。

「女難の相を、未来形で垣間見ただけだよ」

 少しばかり思い入れる事が有ったのだとすれば、彼女は白黒付けてくれるだろうかね? 俺と言う半端と半々一収な存在に。


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