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幻想の現実≠東方空界霊  作者: 幻将 彼
第参章「青年は住人と共に、謎の屋敷を探索した。」――廃地異変.
23/62

第拾肆点伍話 少女の不落たる執着~retrospective~

陽月(ひのづき)さくら、突如として現れた外界人は荒き事、台風の如し。

彼の存在は異変級で日常生活に支障を来たす……と迄は行かずとも、心配と心配で悩まされる今日この頃だ。

そんな時、彼以外にも、よもや参拝者が現れようとは―――



【巫山】


 ―――昨日の夕刻。

 何故かは解らないけど、巫女はそわそわしていた。

 何故かと聞かれれば、抑々。

 何故、あんな約束をしたのか。

 何故あんな、馬鹿正直に弱みを話す強き者を行かしてしまったのか。


 ―――きっと昨日あんな話をした、アイツが悪いのよ……なんて、他者に罪を被せ擦り付けても、それで気持ちが治まる訳でも無い。

 それでも否定したかった、私は平常で居ると、会って間も無いのだから猶更。

 否定しなければきっと色々後悔し兼ねない。

 勝手な思い込みで勝手にぶつけて勝手に壊れて勝手に負ける。

 それだけは何故かこの己の身丈に於いて、苦虫を噛む様な気分になると実感していて、そして又落ち着かずに右往左往する。

「あ~も~何で……、私がこんな……」

 頭を抱えていても、陽が沈む迄、間も無い。

―――彼奴は大丈夫だろうか、妖怪に喰われて居ないだろうか、森に行って迷ったり瘴気に中てられたりして居ないだろうか……。

 そう言えば彼奴は髪型がとても変だった、運良く里に行けたとしても、里の人たちに敵視とかされないだろうか。

 ……だから何故彼奴の心配をする!

 勝手に現れ勝手に賽銭箱を壊して直して、勝手に賽銭入れてくれて、勝手に自分の事情を話して勝手に出て行って……

 やっぱり止めて置くべきだった……だから何で私が彼奴の面倒を……!



 思いは、交差に付いては中心を無視して真っ直ぐ進んでも左から交差に戻り、更に真っ直ぐ進んでも元の位置に戻って……八の字に永久移動するばかり。

 何なら急がば回れと言うか、実際に八の字に回っている巫女が此処に居た。

 そんな時、何かが現れた。

 ―――紙だ。

 一枚一羽の折り鶴が不自然に霊夢の目の前に現れ、そして待機していた。

 付喪神の類かと警戒したが、其れも束の間、巫女から見て右翼に描かれていた紋章を見て、彼奴の仕業だと確信した。

 両手に乗せて着陸させれば、途端に折り鶴は形状を維持するのを止め、一枚の用紙に戻った。

 戻ったのは良し悪し兎も角、然し何だろうか……。

 文が綴られている訳でも無く、何かを暗示する絵が載っている訳でも無い、唯の白紙だ。

 暫くすると線が弧を描き、文字が浮かび上がった。

 内容はこうだ。

[拝啓、夏は鬱陶しいです。博麗の巫(前略)……]

 矢張り彼奴からの手紙だった。

 如何言う絡繰りかは、彼奴が持って居た奇怪な『本』の異能を応用した限りだろうと予測する。

 手紙内での紹介が済んだら、宴会の欠席についての謝罪、それから追伸として紙の使い方について綴られていた。

 紙は筆で絵や文字を書いて誰かに何らか情報を伝達する為の一種の手段とされる。

 然し、その理屈を飛ばし、博麗霊夢は「声」のボタンを押して、

「私は博麗霊夢です」

 と自己紹介。

 送信すると発した言葉が紙に、文字として起こされた。

 自分のさっき放った言葉が記載されると言う変な機能、然しそれで向こうに伝わっているとするならば、思う儘感じる儘に気持ちを声にして発した。

「バカ!」

 そして文字になる。

 ……私は何をやっているのだろうか。

 奇想天外な、ガキ染みた外界の玩具で抑々この声が彼奴に伝わっているなんて保証が何処に有る、声を出した後に悔み受ける。

 『何がご紹介に預かり光栄』か……棒って何だ。

 感情を吐き出したから、捨てようかと火をくべる意志を持てば、再び文字が起き上がる。

[それは『博麗の巫(前略)……』と名前をしっかり―――]

 馬鹿と言った事についての理由を尋ねて来た。

 この頓珍漢に対し、再び怒りが込み上げて、

「両方よ、バカ!! この棺願望!!」

 彼奴は死にたがってそうな発言をしたから彼奴の名と言うか仇名を改名して皮肉で罵倒してやった……我乍らセンスの無い悪口だ。

[ごめんなさい]

 捻くれが彼奴とのお茶で想った性格のイメージだったが、意外と素直に謝る者だ。

 私も言い過ぎと言うか、直刀だったかと歯痒い気持ちだ。

「別件だけど……生きていて良かったわね」

 彼奴は生存報告を別件として分けたので、其れに倣って。

 然しこの広域な土地、郷のバランスを取るべく容赦なく外界人を襲い喰らう妖怪を躱して生き延びたものだ。

 身を隠して妖怪と会わなかったのだろうか、それでも体力に問題は有りそうだ、空腹だとか。

 あの本で食材が生まれるなら話は別だが。

 でも彼奴は『欲』に疎いって感じがした。

 そんな何でも叶う本が在ったなら、私は如何にかなって居たでしょうし、幻想郷自体も危うい可能性は有った。

 彼奴の支配下だとか絶滅だとか。

 でもなってないのだ、一秒一分の一瞬たりとも。

 彼奴は賽銭箱を何時の間にと言う一瞬の速度で直してみせた。

 ならばその一瞬で如何にかなってもおかしい筈は、未だ起きない。

 そして彼奴の語る己の無情さと言う言葉含め、だから、度を低度に越し過ぎだが、彼奴は何も食して居ないのでは……と思う。

 オーバーな思考とは言え、実際に理屈も理由も理論も無く只書いただけで書いた通りの事が起こる本が有るのだから、最大値の思考をしても、罰は当たるまい。

 仮に若しこの現時手紙を作るのに体力は要らずだったしても、まぁ、生きているだけでも……――首を必死に無言で横に振る。

「明日はちゃんと! 日暮れには神社に来るのよ!」

 彼奴にも事情は有るだろうから、それでも矢張り楽しみにしていた宴会をドタキャンされたのだから念を押す。

 だが日暮れじゃなくても良かったのでは? 

「参拝するなら何時でも構わないけど……」

 昼には来ても良いのよ? と、遠からず近からず、保護と言うか安全と言うか確実、そう確実、確実性を以て宴会が開ける様にと促す発言をする。

「て言うか…」

 素直に神社に来いと言おうとしたのか、それとも今何して居るのか聞こうとしたのか、さて昨日のアイツが神出鬼没で邪魔をしに来たので、叫んだ分が送信され、恥じって慌てて、そして忘れる話。


 ――邪魔者には、即時に退散して貰い、その後は何気無い会話をした。

 何気無い……事は無いのか、会話……だったのか。

 先の叫んだ文章に対して問い詰めたり、巫女さんなんて呼び方が余所余所しいから名前で呼ばせたり。

 呼ばせようと言う内で、声が聞こえた時は少し驚いた、ちゃんと話せるんだって。

 うん、話すならやっぱり声の聞こえる方が良いわね。

「お休みなさい、ヒツキ。明日も気を付けて参拝して来てね?」

 そんなこんなで、彼奴との会話した一日は、それにて幕を閉じた。



【予想】



 今日も変な奴が来たのは、何時も通り神社を掃除していた昼に近しい朝の出来事。

 昨日と今日とで夢でも見ているのかと思う位、暑苦しくて、白昼夢、いやいや私は博麗霊夢……ハハ~。

 心底冷えたが、体感は相変わらず暑かった。

 暑くて汗も垂らす中、再び参拝者に相見えるとは、私は暑さで倒れるのでは? と心配で仕方なかった。

 然も昨日の変人より作法がしっかりしている。

 参拝・奉納・祈祷、の心得を持つ、礼儀正しい、外界の女性だった。

 ……こうも外来人が現れると、そろそろ異変が起こるのではとも不安が脳裏を過ったが、結界自体はに問題は無さそうなので、まぁ起こった時で良いかと警戒性を汗と共に流す怠慢巫女だった。

 それから事を済ませた彼女は其の儘帰るのかと思いきや、霊夢の方へ近付いたのだった。

「こんにちは、博麗霊夢さん」

 その人物、初対面にも関わらず名前が解る系の人物だった。

「こんにちは、外来人さん。素敵な賽銭箱に賽銭ありがとう。私に何か用?」

 挨拶及び、来社の感謝は忘れずに。

 無人で廃れた神社にお賽銭とは昨日に続いて喜ばしい限りだ。

「そうですね、私的を申すなら本物だ嬉しいって話ですかね」

 ……本物? 何のことだ? それに嬉しい?

「ああいや、お気になさらずです。私的故、予め、ご了承ください」

「は、はぁ…」

 礼儀・作法は兎も角、変人で在る事は間違いないな。

 若しかしたら、とっくに異変だの何だので『博麗の巫女』の噂を聞き入れている人なのかも知れないわね。

「取り敢えず、其処の縁側に座りましょ?」

 箒を仕舞い、昨日に引き続き、見知らぬ客を、居間に通す。



 お茶を汲み、彼女へと湯呑を差し出した。

「コレはお手数御掛けしました。頂きます」

 礼儀は正しい奴だ、ほんと。

 然し何とも奇抜な服で、対照的に分けられた髪色。

 目も何て言うか、輝きが無くて率直に死んでいる。

 彼奴もそうだったが……外来人は皆こうなのか?

「フー、美味しいです。流石は霊夢さん、茶の葉の選びが雅です」

「あら、アリガト。新茶だけど、それで求愛されても困るわね」

「いえいえそれは恐れ多い。叶うのでしたら構いませんが」

 此奴危ないわね。

「冗談はさておき」

 良かった冗談なんだ。

「じゃあ個人的を申すと……今日のお二方の宴会、予め叶わないかも知れません」

「!」

 名前なら未だしも、宴会をする事、そしてその参加数を知っているのは流石に度が過ぎている。

「そんな警戒を今一度湧き上がらせないでください、腋見える巫女さんだけに」

 一言余計だ。

「異変が出たのです。予め、ですが」

 この子は何を以て予めと物事を語るのか。

「……って、異変?」

「ええ異変です。魔法の森にて、予め建てられた屋敷が在ります。其処には予め人を喰らう鬼が棲み付いているとされています」

 言いたい事は解る、不意に不用意に無用心にその屋敷に入り込んだ魔法使い(・・・・)が入ったとすれば、危うい……だが。

「その前に一つ、アンタ何者?」

 予定を語り予測を予知の様に予言語り、何でも知っていそうな恐らく善人の素性を探る。

「お察しの通り、只の予言する預言者ですが……そうですね、予め知った彼らへの言伝も予め含めて、『予想の思想家』とでも名乗って置きましょう」

 予想の…思想家……、彼らへの伝達とは、彼奴に話しておけって事だろうが、扨て他に誰が居るのか。

「知り合いの魔法使いならば鬼に屈する事なんて無いでしょうし、魔法の森なんて、普通の人間が入れるようなトコじゃない、何なら私も入れない。だからそれで何故宴会する事が叶わないってなるのよ」

 さも自分で解決する気はないと言わんばかりの言い分だ、出来る事なら知り合いに頼んで後任せしたいが、それまでの距離が面倒くさい、と言うかどこに居る。

 彼女は微笑みに語る。

「叶わないってのは、あくまで異変が在るからです。解決すれば宴会は(・・・)叶います」

 『宴会は』……含みの在る物言いね。

「あくまでって……そう言えば彼奴の事を妙に語るけど、異変と何か関係するの?」

 今彼奴がこの場に居ない事と、異変が蔓延って居る事、最低の予想が不安を煽らせる。

「予め決まった事です。此れを見た方が早い」

 と、彼女は衣嚢からビー玉を取り出した。

 中に染色一つも無く、傷も付いていない、ガラス瓶のラムネ飲料に入って居るかの様な澄んだ透明のビー玉だ。

「手に取って、覗いてみてください」

 言われた通り、目の近くにビー玉を持って行く。

 するとビー玉から、何かが映される。


――彼奴だ。

 何処かの自然道を歩く彼奴が映された。

「今彼が如何言う運命を辿っているかは、予め預言者でも解りません。只彼を其の儘に放置して結末を待てば……」

 ビー玉に映る彼奴が、赤い渦に包まれる。

「死んでしまいます」

「―――」

 私は今、どんな顔をしているだろう。

 息をしない表情を映す彼奴は高が精々外界から来ただけの、偶然此処に立ち寄った赤の他人に過ぎない。

 だけど、死なれるのはあんまりだ。

「彼奴は私と宴会する約束をしたの、昨日も破って今日も破るなんて許せないわ!」

 怒りの余り、震えでお茶を零しそうになった。

「ええ、予め男に二言はいけません、ですが予め馬鹿見て見せるのも男です」

「何より、折角出来た参拝者を、見す見す死なせてなるもんか!」

 熱さは程よい温さに変わったお茶を一気飲み干し、支度をする。

 お祓い棒に針、今日の装備はこれにしよう。

 扨て、鬼に針が効くのか……一応物理迎撃に陰陽玉を持って行くとしよう。

「貴女らしい理由で安心です、それでこそ博麗霊夢」

「そう言えば預言者、彼奴の居場所とか解る?」

「はい、解ります。と、その前に一つ質問。貴女、彼と接触は? 手か腕、指とか……若しくは身体全体的に……」

 何を此奴は質問にしていやがる…………、あ~……。

「した、わね……」

「そうですか、では少し失礼……」

 預言者は立ち上がり、霊夢に近付く。

 そして、右手を額に、左手を胸に。

「ふ、ふ、巫山戯てるの?!」

「そう騒がないでください、巫女の居る山で戯れ等罰当たりは重々承知。ですが正直な所、戯れには少し左手が足りないと寂しがっている」

 殴って良いかしらこの変態?

「予言の為のスキンシップです。貴女が彼と接触しているなら彼との会話や行動が想い出せる……そこから洗い出す」

「何も無しに彼奴の結末は見れたのに?」

「彼の運命や行動は見れます。然し居場所の特定は、此処の主な建物と、ビー玉の数、その他諸々の物資が揃わないと出来ません。おまけに此処の全体図も把握できていない。私もまだまだ未熟の預言者と云う訳です」

 彼女は困った表情も混ぜて笑い語る。

 予想の思想家と言うぽい立場も、修行とか鍛錬とかで大変なんだろう、私には理解得ぬ世界だが。

「さて、私のお恥ずかしい限り今日この頃はさて置き、彼が言ったとされる場所が解りました」

 お恥ずかしい限りの預言者は、私から手を退ける。

「一つは紅魔館、一つは人間の里です」

 二つ?

「ちょっと、今居る処を教えてくれるんじゃないの!?」

 お恥ずの此奴、手を後頭部に持って来させる。

「いやはや、先も申し上げた通り、居場所の特定は物が無いと出来ないのです。先のは貴女との《《会話の内で出て来た場所》》です。若し、彼を無情人間だと知っているなら、行方無き彼の道は、其れ目指して動くものかと」

 確かに話していた、紅魔館に人里……その何方か。

「彼はコミュニケーション力はまぁまぁ大丈夫だと思うので、存外溶け込んでいるでしょう」

「?」

 こみ…何だって?

「……ああ! 済みません外界の現代語を使ってしまいました、他者との交流が上手って事で」

 ……確かに、彼奴は言葉だけで事済ませたと言っても過言ではない。

 聞く限り妖怪みたいな感じ、だけど人間みたく思考がしっかりと迷走している。

 戦闘主義でもなさそうだし、先ず人里を当たってみるか。

「あ~それから一つと一つ、彼に伝言を~!」

 空を飛んで鳥居の高さまで到達した処に、予想の思想家は止める。

 何故二つにしない。

 何かと思って振り返れば、瞬間透明で日光で反射する何かを受け取る。

「ビー玉をお渡しして擱きます。時折覗いて頂いたら、彼の動向が見えるでしょう。後、貴女が出会えて、若し彼が思想家の連中と予め出会して居たのなら、私は『思想家じゃないよ』って伝えてくださ~い!」

 良く解らないけど、

「解ったわ。空から出会えたら伝えるわ」

 そして私は、猛暑を吹き飛ばす勢いで、真っ直ぐ人里へと向かった。

「……頼みますよ、彼は私の愚弟がお世話になって居る御方ですからね」



【捜索】



 空で考えた事は、そう言えば良く予想の思想家とやらは、彼奴の居場所を昨日の会話の内で出た場所の単語が目的地だったと言い当てれたものだ。

 話して居なければ如何する筈だったのだろうか……、きっと予想の内なのだろし、そして彼女はその予想の能力(?)を未熟だと語っていたが、「物さえ揃えば……」と言って居たし、卜者とかにでもなれそうだ。

 少し畏敬の念が取れた処、神社の貢献に二重の意味で取り入れて行きたいものだ。


 人里に付いた博麗霊夢は、取り敢えず出会った里の人片っ端から聴き込んで行った。

 然しそのような男は見かけなかったと語る。

 あれ程の髪型をした男なのに?

 然し里の中枢に迄至れば、彼奴の噂をする声が聞こえてきた。

 在る者は狐に睨まれた兎と怯え称す者、在る者は鳳凰に巡り合え、徳に見舞われたと耽称す者。

 そして彼奴は、瞬きすれば忽然として姿を消したと皆最後には決まって言う。

 幻か妖か如何で有れ、そう言えばアレは何の形を表して居たのだろうと、今更思う。

 言うには皆、獣を表現しているが、まぁ其れは本人に会って直接聞いてみるとしよう。

 扨て、行方も聞いてみるが、その噂は淡白。

 姿を消してからは、見失った、や、空を飛んでいた、等、曖昧にもその場から離れたと話す者多々。

 何よ、まぁまぁ処か会話を試みる事無く逃げ出しているじゃない。

 でもまぁ、妖怪に怯える人がそうやって此処に集落地を作っている訳だし、それを彼奴に話したのは私で、彼奴なりに気を使ったのだろうし、彼奴自身も勘違いは迷惑だろう。

 だがその後誰からの目に触れる事無く一日を過ごしたので在れば、然し隠密に過ごす事は考え難い。

 彼奴も人なのだから、存命の生活が実は日常茶飯事だったとしても、矢張り当然食は必要だろう。

 ならば人里にて料理で商う店に被害が生じたのだとすれば、それも小耳に挟むだろうが、何の見聞も無い。

 其れで彼奴の話題が途切れている処、もう人里には居ないと仮定しよう。

 人里を離れたのだとすれば後は……

「紅魔館、か……」

 アレに行ってしまったのだとすればそれこそ存命の機転効かす場所だ。

 館連中にとっては今日の食材が紛れ込んで来たのだから、尚且つ外界の人間がのらりくらりと迷い込んでいるのだから、優しさ一つ垣間見せそうな輩ではないし。

 片や彼奴は只々料理されるだけの馬鹿では無いだろう……いや、有りそう。

「無事で居てよね」

 何を口走ったのか、先の台詞は無しにと首を横に振り、再び空を飛んで紅魔館へと……真っ直ぐだと、魔法の森に突き当たるので、渋々遠回りで森を回避し、館へと進んでいった。



【館内】



 ――想えば何故あの場に魔理沙が居たのか。

 まぁ何時もの借りに来たのが目的でしょうし、だがあの時、湖の畔で談笑しあっていた処を見ると、会って一日は経っていると考えるのが妥当でしょうね。

 そんな事、館で会った時には、露も過ぎ過ぎた盛夏の日には知る訳も無く……。



「ねぇ、入っても良い?」

「ダメです」

 紅魔館の門番“紅美鈴”、今日は起きていたか……。

「珍しいわね、アンタが居眠りしていないなんて」

「人聞き妖怪聞きの悪い事仰らないでください。精神統一しているだけであって意識はしっかりと起きているのです」

 そうして七色の魔法使いはどれだけの魔導本永久借用の犠牲が出たのよ。

「それに~……声を掛けてくださったハンターさんに面目が立ちませんからねぇ~……」

 やっぱ寝ていたのか、タイミングが悪い、と言うかハンターとか奴余計な事を。

「そのハンターって何ハンター?」

「魔女ハンターと仰っていましたねぇ。不当常連の金髪白黒魔法使いを駆除してくれるとか何とか」

 魔理沙を……誰が?

「其奴どんな姿をしていた?」

「そうですねぇ~姿見た目がまんま白黒魔女と変わりない外形、ですが帽子は着けていません。髪型でしょうが、それが異形なるもの過ぎて、目は灰色、性別男、身長は私より少し低めの痩せ型筋肉質の外界人でしたね」

 絶対彼奴だ、余計な事を。

 此奴も此奴だが、良くそんな大法螺話で門を潜り抜けた者だ、おまけに起こして居ると来た。

 彼奴はこの手の話が旨いらしい。

「如何にも口から出任せと言わんばかりの職業ですけどね」

 気付かれて居るじゃねーか。

「それでよく通したわね」

「えぇ。でも無害そうでしたし。有害だったとしても咲夜さんやお嬢さまには敵わないでしょう」

 何ならアレの妹とも鉢合わせてしまったら、ホント娑婆を拝む事無くなりそうね……こうしてはいられない。

「悪いけど、通してくれない? 彼奴に用が有るのよ」

「ハイ! 良いですよ!」

 やっぱダメか、良し、此処は弾幕ごっこで優劣を……

「今何て?」

「通って良しと言ったのです。いやはや、中々面白い展開ですからねぇ~」

 何をそんな知って居るかの様にニヤけるのだ、この門番……。

「良いけど、入った途端に当て身とか止めてよね?」

「まさか~、出来ますが今回はしませんよ?」

 何回でも止めてくれ。


 門番がアレで良いのかと、何等かの私情だとか愉悦の込んだ意図で誰でも通してしまう開錠開扉の軽さ、アレは務まるのだろうか、レミリア・スカーレット。

「問題は無いわ。パチェ除いては、今日の運命来客はアンタと他一名、害に値しない」

 暫く館内を彷徨って居たら早速、吸血鬼館主のご登場。

 然し今日は気分が良いのか追い出す気は無いらしい……アレ?

「私と他一名だけなの?」

 変な質問だろうが、だが矢張り変な話だ。

「何だい、私が運命を映さずに他のコソ泥も入って居る事を知ってそうな口ぶりじゃない?」

 そうだ、そうなのだ、その筈なのだ。

 私も良く知らないが此奴の『運命を操る程度の能力』とやらで見えた予知みたいな又予知か、なのが二人の部外者だけこの館に居ると語ったのだ。

 一人当て嵌まる奴はパチェと言った時点、必定的に私の友人だろうが、何とも不思議な話。

 だがもう友人のアイツは事を済ませたと考えて良いだろう。

「いや、擦れ違いだったのかもね」

「やっぱりもう一人居るんじゃないのか?」

 眉間に皺を寄せる吸血鬼だが、同時に笑みにも変わり……

「中々骨の有る奴かもしれないね。私の運命力に干渉しないなんてねぇ~」

 一匹気に笑う此奴に喰われる前に、早く彼奴を連れ出さねば……



「……あら魔理沙? こんなトコに居たの?」

「うぉわっ……ムグッ、何だ霊夢か、此処の奴等かと思ったぜ」

 レミリアと別れて数分後、曲がり道の内角で身を潜めて居ながら何故か黄昏状態になって居る友人を発見した。

 話し掛ければ御覧の通り、魂が冥界に行き掛けたお陰で御霊返りの反動が大きく出たモノだ、声量的に。

「脅かすなよ。未だ昼だぞ」

「夜なら脅しても良いのかしら?」

「価値無さそうな神社の蔵には金目の物は無いだろうか」

「煤とかが良いんじゃない?」

「灰被り姫は嫌だね」

「で、何事かしら?」

「他人事かもな」

 他人事は無関心らしく、魔理沙は会話を断ち切る。

「どこ行くの、魔理沙?」

「出て行く、じゃ、又何時か」

 コレが何時もの私たちの会話。


 あんな角際で黄昏て居たのには、きっとその奥で何かを見た聞いた匂い感じた……後は何だ舐めるか? 舐めるは無いな、そう思って考えて角の先を身を出して見てみたが、何も無ければ誰も居ない長い廊下だった。

「……変な魔理沙」

 あの場面は隠密に、角を警戒している筈が、性格含めて、らしくもない。

 まぁ彼奴の心情及び考えている事なんぞ、知った事ではない。

 それから私は捜索を続行したが、彼奴は愚か、紅魔館の面子ですら出会す事も無く、途方に暮れつつ陽も暮れそうだったので、彼奴は此処には居ないと断定し、紅魔館を後にした。



【再会】



 只歩いて捜すだけでも、夏と言う気温、そして基本神社にしか居ないのだから、疲弊気味である。

 紅魔館より東に、霧の湖を半々周と言う所で、不潔だがその場に足を休ませた。

「水筒は持って来て措いて良かったわ」

 外の世界より流れ着いた『水筒』、片下げの紐が付き、蓋が湯呑みの用途を果たして、温度が長持ちし、熱いお茶をその場で飲むには適したアイテムだ。

「ふ~、やっぱり暑い日には熱いものが良いわねぇ~」

 ぼんやり一人で呟いていると、陽が沈んだ具合で何やら紅魔館の灯りとは、明らか色合いより異なる光を見つけた。

 蛍だろうか? そう言えば、あの予想女から貰っていたビー玉を想い出した。

 偶に見れば、なんて無神経な事言うから忘れていたが、今見てみる。


 ――当然、彼奴が映っていた、頭を光らせて。

 その光は、肉眼で見える蛍光の色と酷似して居り、何より、無情だと言う彼奴は、誰かと語り、そして――――――――――――――――微笑んでいた。

「……彼奴、こんな顔するんだ」

 彼奴は別れ際に、私に対してああは言ったが、あれをあんな顔で言われたら―――ハッ!?

「……何を考えて居るんだろう、私」

 頭は神経に、神経は筋肉に伝わり、冷静になる。

 蓋に残るお茶を飲み干し、蓋を閉めて、水筒を肩に下げ、光の方角に飛び立つ。



「やっぱり、彼奴だ」

 何となく覗き込んだビー玉は予想から。

 その予想は大当たり、少し西空が赤く、東は蒼い、対極的な夜と言うべきその時、漸く彼奴を見つけた。

 真偽不明の男……“陽月さくら”を。

本来出す積り及び、分ける積り等無かった、小数点話シリーズ。

恐らく制作に於いて、此処が起点だったかと。溜め書きして居る過去談なので、忘れたけどナッ!

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