第玖点伍話 読書する本の色〈書篇〉~Yin~[dramatization]
何だかんだと仲良くなるのが陽月さくらの長所。
小悪魔と和解したヒツキはパチュリーの元に戻り、夢話に現を抜かす。
【読書】
「そう。多分そうなのよね」
図書委員のパチュさんが、俺が帰って来るや否や、一人で勝手に採決を取り、解決していた。
「……何が?」
と普通の対応をする俺。
「アナタの事よ」
何だか急に言葉数が減ったな、どしたの? とは聞かない。
「俺? 俺が何かしたか?」
と普通の返答をする俺。
「いっぱいしたじゃない? ……小悪魔に」
…………。
「御宅の召使に手を掛けて済みませんでした」
「厭らしい意味じゃないわよ……え、そうなの?」
―――冗談は程々にして……。
「本が破られても『怒るな』とか、その前にあの子の手助けし掛けたり、とか。アナタは心の底から優しさを振り撒いて居るのよね」
えっ……と、何か気に障る悪い事でも致しましたかな、某?
「嫌味じゃ無いわよ……え、そうなの?」
アイドントノ~ウ。
「自問自答したのよね、あの質問に。さっきまでのアナタ達のやり取りを聞いていて、ヒツキ君……アナタ正直者なのよ。だから此処に置いて居られるのよ」
いや、俺は嘘つきでひねくれ者だよ?
「そこも含めて。アナタは絶対に、嘘は付いても他人のための嘘をつき、きっとそれも暴露する」
何を根拠に?
「馬鹿みたいに経緯を語ったことを根拠に……。あんなに現実的な建て前を語れる事なんて無いわよ、そうそう」
それ即ち馬鹿正直……あ~ハ~。って言うかこう考えないの? 逆に騙す為の策略だとか。
「騙すって何を? アナタに何のメリットがあって人を騙すの?」
………暇つぶしとか、趣味?
「それなら名前と、後その髪型から騙すべきよ」
いやこの髪、随分、胡散臭くて嘘くさい髪型でありますよ? 序に名前も。
「地毛で本名でしょ? 解るわ、魔法で」
魔法かい。今の今迄魔法で読まれていたんかい……って気がしますよ。
「いや、そこの杖」
「後ろ?」
―――後ろを見ると、姉さんの[陽の杖“ワールド・ホープ”]が、その場赤く光
って転げ落ちていた。姉さまの攻撃で手元から離されたようで……こんにちは。
この光体は、対象者の心の真偽を確かめる能力で、赤は真心、黒は偽心。
〈体温調節~thermoregulation~(何ソレ)〉という技名だったかな? それは兎も角、持ち主から離れていても能力の効果が続くってのは、些か魔法少女としてどうなの、この杖……? 太陽を操るってだけの代物だからヤバいんじゃないのぉ?
「アナタたちの会話は筒抜けだったし。でも追い出されて爪痕残すなんて……あの子に一本取られたわね」
姉さん凄いな……姉は駄目でも弟なら、義理の弟なら弟子n…野心が論点的にズレ過ぎだろ。
いや弟から評価を上げて弟子になる作戦か? 成程、さり気なく弟は姉に扱き使われる宿命の位置なのですね。
「アナタだけなら、ね。取って上げても良いわよ?」
「御ジョークを。別にインじゃないの? 義姉さん弟子に取ってもさ?」
少々微笑んで居た様に思えた表情を硬く閉じ、本を閉じた図書委員。それからゆっくりこちらを見上げ、さあ、締める。
「名目が厚かましくて、性格が暑苦しくて、弟子として扱い辛そうな弟子は、無理」
なぁ~んで、掛けに架けた締めだったのでしょう?
だけどまぁ、“パチュリー・ノーレッジ”という『大魔法使い』と言えど、あの天真爛漫、太陽のような存在の姉肌娘は、実に相対的で寧ろどっちが師匠? どっちが姉? そして動機が不純過ぎでむつかしい、月明かり下暮らしで、本から蛍雪の功を得る正に月のような存在の温室娘様の事情、その日が沈むような眼で語る彼女に対しての意思、解らんでも無い。というか解る。というかというか。
「ヒツキ君、見るからに外来人よね? 漫画ってどうやって出来るの?」
あのぉ、姉さんの話は何処へ? 野球観戦が突然『試合の途中ですが、今から5分クッキングを放送します』って勢いの代わり映えだったんだが……? 如何でも良いけど、アレって放送時間枠がきっかり5分なんだよね。3分というからには、放送時間も3分にして欲しいよね。……ハイ、どーでもいー。内心手を横に広げて、想します。
「漫画……?」
「そうよ。さっきからそれを読んで居たんだけど、書き方が解んないのよ……外界人であるアナタなら知っているかと思ったのだけれど……当てが外れた?」
おいおいおいおい……漫画? 漫画だったのか? 然も単行本、フラワードリーム系。
俺はてっきり、解読難解な魔術書か、究極性超上級魔導士のミリ単位化合薬草学本でも読んでいたのかと思っていたぜ。
「俺こそ『大魔法使い』の当てが外れた気分だ。義姉さん、弟子入りは止めときな~」
窓に向けて俺は、水性色がゆっくりと広がって行く声で叫んだ。即ちゆっくりと…。
「地味に傷付くわね……。それで、知っているの?」
「知っている。俺からも質問良いか?」
「『漫画に興味が有るのか?』とか?」
「いいや。通り越して『書きたい物語が有るのか?』……だ」
「いいえ、無いわ」
裏切り者ぉ。
「ナニユエの表仲なのかしら?」
先程から声が駄々洩れのヒツキ君。
「取り敢えず知りたいだけなの。漫画の描き方の本は幻想郷にはまだ流れ着いていないから」
『流れ着く』……ってのは、
「聞いた事無かったが、何処からとも無く現れるって感じなのか? 〈幻想入り〉ってのは?」
「正確には、〈ある場所〉から、外来品が行き着いてそれを骨董屋が調達して売捌いているらしいわ」
風の噂? それとも風になってお出かけしたの?
「風の噂よ、喘息持ちだもの」
部屋に風通す窓は無いけどな。無いから喘息なんだけどな。
「そーか。でも努力はした方が良いんじゃない? 外出の」
「何故?」
「例の爆窃ブロンド魔女から本を取り返せるじゃん」
「一応努力はしているわ」
一応……。
「でも図書館を出てから1メートル歩いたところでね、そこまでよ」
1、オゥ……。
「先は程遠いわ……」
「まぁ、気長に頑張れ……」
『頑張れ』って言葉ほど、他人事に括れる言葉は無いだろう。
「魔法使いだもんね。気長に力を保って、気をしっかり持って頑張るわ」
だが然し、言葉に力は無く。
『頑張れ』に関しては、『人間は勝手に何とやら』なんて、続く定型文。……あ、でも、彼女は魔法使いでした。
【間奏】
「漫画は、この無駄にでかい原稿用紙と、先端が鉄か何かの取り付け筆を、インクを付着させて描く」
それを俺は鞄から取り出して――否、武器を構え出して、二重の疑似的に説明する。
「そんな戦うようなモノなの? 漫画って」
「戦う……、そうだな。仕事にしているプロの漫画家は、『締め切り迄に描き上げる』って戦いが有る。或る者は30日に、或る者は7日」
「どういう違いなの? その期限の差は」
「掲載される本が、一週間に一回のと、一か月に一回で有るんだよ。週間と月間」
「解らないわ……」
解らない? 幻想郷の月日感覚は違うとでもいうのだろうか? いわば、天界または魔界と現世との時間差が違うみたいな。浦島太郎が竜宮城に行って、陸に帰ったら、千年以上経っていたみたいな。只の時間関連での連想ですね、わかりませす。
「太陽が7回登った日に一回出てくる本と、30回登った日に出てくる本と言えば解ります?」
「良く解ったわ。それはいいとして……」
本題続行、フーッ!
「外界は凄いわね。こんなぎっしりと白黒で描かれた書物を、7日か30日で仕上げるなんて」
『いいとして』…ってお話では無いじゃ無いっすか、図書委員さん。
「単行本は60日か90日に一回、出来たお話を数話、総集して出来るモンなんだよ。実際は7日に一話、30日に一話、だったり」
「あら。評価下がるわね」
「下げたって構わないが、一話作るのも結構大変らしいぜ?」
「そうなの? そうは見えないわ?」
「見る限りではあっという間だが、白黒だけのその書物は、所々点々だったり、モヤモヤだったり、線がぎっしりと均等に並んでいるだろう?」
「……言われてみれば」
彼女は漫画を読み返す。効果線やエフェクトは見ない、ストーリーのみを見据えていた魔法使いさんで有らせます。
「だから何か、人物の感情や動きが解るモノがあったのね……」
そりゃあ凄い。俺には無いモンだ。
「これもそのペンで?」
「あぁ。黒く塗りつぶしている処は、マジックペンを使っている」
〈異なる器〉の名称は『視界を遮る人物事の筆~emote pen~[黒(surreal)]』。
「何そのアイテム? 知らないわ」
「違う、違う。マジックアイテム、じゃなしに。……そういえば何でマジックペンなのだ?」
「自問自答しないでよ」
「悪い。まぁこの漫画ペンよりかは柔らかく、筆よりかは硬い質の中にインクが詰まったペンで、スラスラ~っと塗り潰す」
「色々使うのね。漫画の枠もそれで――?」
「枠は~……っと、コマは、この烏口って代物で先にインクを付着させて、物差しで直線を引く」
「物を考えるわね、外人。でも、完璧に仕上げるなんて、それこそ30日かかるようなモノじゃない? 間違って引いた線はどうするのよ?」
「修正液を使えば良い。白く塗りつぶせば、印刷した時には修正部分は、見えないからね」
「仕上げが新聞なのね。印刷って」
「まぁそうだな」
これまた出すワードか? 新聞……異世界的に? 異世界だから?
「大変そうだけど、遣り甲斐があるのね、漫画って……私も一つ、描いてみようかしら?」
お、やりますか? パチュリー先生。って言っておけばいいですか?
「ぶっつけ本番だと、物語の流れ、だったり……所謂『起承転結』が纏められねぇと思うぜ」
「大丈夫よ。一話限りの話だから」
それでも必要な気が……。
「読み切りだとか、同人誌即売会の、俗にいう『薄い本』ね」
「黄泉霧? 速媒介?」
随分太々しくて深々しい誤変換です。
「漫画掲載誌で、一話で完結する物語の事だ。一話限りを読んで終わり、で、読み切り。同人誌即売会ってのは……こりゃあ話が長くなるんだが、ざっと今の話から持ち上げて、プロじゃないアマチュア漫画家の作った漫画を販売するお祭りだな。毎年夏季後半と年末に行っている」
カk………何でも無い、忘れよう。
「外界ではそんな事をしているのね」
「凄い規模だぜ? 何十万の人が毎年ヒアウィーゴーして、色んな作家たちのアレやコレやを見たり、売り買いしたり、兎に角盛んなんだからよ」
「それは本当に凄いわ。人混みは嫌いだけど、喘息の調子次第では、ちょっと参加してみたいわね」
そりゃあいいね。って、流れで語ろうとした瞬間、幻想郷の事情を考える。
「大丈夫か? 幻想郷と外界だろう?」
「そうね。変装でもすれば何とか……とは言わずに、魔法使いで在るのだから、境界は守らなきゃ、ね」
―――定理的に。法則的に。
彼女は相変わらず表情は硬いが、何処か残念そう。に見えなくも無い。
「アナタは目指さないの?」
「んぁ?」
「漫画家よ。それだけ専門用具を揃えて居るなら、成りたいんじゃないの?」
……そうだな。夢話は余り……じゃないが。
「夢なのかも」
「『かも』って……あなたの事でしょう?」
迷って居るんだよ、こんな生りでも。
「さっき話したように、漫画は簡単に出来るものじゃない。結構手間の掛かる仕事だ。流れは先ず[ストーリー構成]、[ネーム]っつう専門用語の…別紙にて[下書き]、[本紙に下書き]から[ペン入れ]、そして[ベタ塗り]と[トーン貼り]っつーシールの貼り付け。トーンによって色の濃度が伝達される。均等に点々が付いている処が有るだろ? それがトーンだ」
パチュリー氏、漫画を再黙読し、黙認。
「これらを一週間や一か月で描くには、相当の度量と根気強さが居る。無論、漫画家としての腕も。そうだな……知って聞くような質問だが図書委員、本を読む時間帯はどれ位だ?」
「時によるけど、大体一日中読んで居たり、日も越して七日間読み続けて居るわね」
……有無。魔法使いの不眠耐性はさておき、
「漫画家は、そのお前が本を読み続ける時間帯の殆どを、漫画製作に消費している」
「不眠不休でっ?」
勢いは相変わらず無いが、ちょっと声調を上げての驚き方するなよ。
まぁ、どこかの鉾槍女よりかはマシな勢いだが……。ここでマシさを鑑定する俺も俺ですね。
「作るのは勿論『人』だから、休息も、後、適切で適度な食事も取っているよ」
「人外ジョークよ」
笑えないわ。笑ったら負けだわ。設定とか絵面とか。絵面とか?
あぁ、人っぽい姿だから、『人外とか……言うなよ……』ってちょっと差別問題に当たってホロリ来ない、ドラマティックな発想ですね。自問自答お疲れさん。
「話は戻して、って言っても終盤の結論だが、『俺にはそんな度量が無い』と、ね……我ながら程度を決めちゃっているんだよ。一応描こうとしている物語、有るには有るが、今俺は幻想郷にいて、図書館に居て、『書く』より『読む』を嗜んじゃってるからね……後や前やらは、本の知識で読み取ってくれ」
「……ブンブンマル新聞みたいな『ネタ探し』かしら?」
何だその『丁髷バイク野郎』みたいな新聞社名。
「『現実逃避』だよ、キッパリ言うが……。おや? 俺は何故、図書委員に此処まで話してしまったのでしょう?」
―――夢から現実まで。
「お悩み相談なら間に合っているわよ」
客の色をしていない冷やかしを見避けて新聞に目を移すかのように、漫画を開いたな。
「一応どんな漫画を描くのかは、聞いて置きたいんだけど…」
「単なる思い出話さ」
「聞かせて」
何だい、俺は後にウクレレでもギターでも、肩にか腰に装備すればいいのか?
「気も感覚も心も遠くなる程、昔に起きた出来事だ――」
――或る時そいつは一つの国を創ってね、それに意味も無ければ理由も無かったと想う。無駄で無意味で、同等の無駄な日が何日か経って、ソイツはとある旅の一行に出会った。
何でも、世界を滅ぼすって言う輩の野望を阻止すべく、国内一周旅行を満喫していたんだとよ。
それから、因果はなんだったのかな? 一行のリーダーの様な二人……自称『神』と、龍を司る『侍』が、国の王に勝負を仕掛けて来たんだ。いや別にソイツは自分を王様と調子付いて名乗っていた訳じゃない。国を創ったんだから、職の分け方には丁度かな? って、位の、空気を読んだだけの思考だった。
まぁその弧愁で孤城で孤立で孤独で弧弱での王様は、やる気こそ無けれど、戦う内に色々と変わる事が有った。
後になっては気のせいだったのかも知れない。だが頭から離れる事は無い、何かが有った。王様は是非、この感覚を物語として著したいと思った。彼等のこれまでの経過を見聞きし、友人の如く語り合えた王様は、一つの夢が出来た。
『―――この物語を世に広めたい。何時だって死と隣り合わせでも笑って渡り行く彼等の武勇伝を誰かに知って欲しい』
して、その誰も知らない英雄となった者たち物語は―――――
「………って、漫画だよ」
ご静聴、ご清聴、有難う御座いました(ペコリ)。
「全く解らないわね」
勿論、曖昧な粗筋語りじゃあ、ね。
「粗筋だけだから、よね……」
ん? 心読んだ? あの杖か、違うか。
「何時か……描けると良いわね。その物語」
あら、なんかポジティブね。
「度量が無いと申したが?」
「別に一日で全部描けって訳じゃないんでしょ? ゆっくり描けばいいじゃない。命有る内までだけど……。若し出来上がったら、先に私に読ませてね」
『――幻想郷だから』なんて、伏線でも張っているのかね。
命有る内……寿命だったり、人妖関係だったり、彼女にとっては永遠のように長い人生だけども、何と言うか、破れかぶれにファン一号誕生と言う訳ですかね?
『期待は裏切らないように……』でも有るものなのかな?
さぁ、ハテナは頭の何とやらと申した昔でありますが、疑問ばかり増えても解けないは解けないでしょう。予習・復習を6時間やる予定でも作って、実行しなければ、の話。
「漫画については色々知れたわね。長い間解説有難う、ヒツキ君」
いやいや如何致しまして……追い出しフラグですか?
「追い出さないわよ。追い出されたいなら、言えば即実行、出るのも自由」
やっぱ、追い出されるの、僕?
「小動物みたいな事言わないでよ」
小動物は喋らないよ、メルヘンか、貴女。
「本を読むうちでは、ね。そういう発想も生まれるものだわ」
さて、彼女が場を戻す……彼女が描く漫画についての場を。
「ヒツキ君みたいに、そういう書き方も有るなら、私もそれに倣って書いてみるわ。そうね……、さっき起きたアナタと小悪魔の出来事を材に、ヒロインが恋に発展するラブコメでも書こうかしら?」
おい、大丈夫か? ドアの向こうからでも聞こえてしまう陶器の破砕音が静かに響いたぞ。片や俺は人差し指を立てて一言申し上げ欠けたが、黙って指を引っ込めた。
「同人誌ね。了解」
「満更でも無いのね」
あぁ、まぁ。世間な話をするならば、
「“こぁちゃん”可愛いし、ヒロインには抜擢でしょ?」
こぁちゃんが世間の広報、何処の範疇。また陶器の砕ける音が。
「ヒロイン……魔理沙の路線てのも、有りね」
あれ? 今度は地響きが……。こんな大層な地下図書室だが、初めて埃が天井から降り落ちてくるのを見たよ。
「アイツはアイツで、ちょっと強気な処が有るが、時々女の子っぽい可愛い一面も見せるからな。(漫画として)有りじゃないか?」
「何よりだわ。私も度量が有る次第だけど、画材っぽい物が流れているなら拾って、無いなら河童にでも造らせて、漫画の作成、努力してみるわ」
河童が? 造るの? 画材を? 頭の陶器を造る、のマチガイじゃないの?
ディス理が真逆で斜め上だったら、食われる話ですが……はい。
「ごゆっくり、な。でも俺に読ませる、っつうなら、90年以内に完成しろよ……って自意識過剰?」
「先に読ませるわ。同じ漫画家仲間としてね、後成るべく早めに」
「漫画家――仲間ねぇ」
さて、俺は未知なる将来、幻想の漫画家――に成っているのか……。
【目的】
「長く保留していたけど、結局貴方が此処に来た本当の理由って何なの?」
保留だったの? 時、既に着歴消去の時代かと……大分保留メロ流していたんじゃない? はい、的外れ。
「おいおい。こう長く漫画について語り合って、最後に好敵手と成り得る展開かい?同人作家仲でも無くは無い競争だけどさぁ……平和に行こうぜ、何事も」
「文字数と髪の毛が平和ではないわね」
文字数で平和は訪れません。念を押して数えましたが63文字。平仮名変換で82文字です。何が有った63年と82年。何が有った台詞の文字数を覚えて数えて……狂気にも似た狂気だよ、意味解らん。
「此処って“コーマ館”だよな?」
え? 今更? な質問で、加えてノーレッジさんの表情。
「“コーマ館”……だけど…?」
『けど』より先を、俺は説く。
「そんな名の館なだけ有って、名高い『独楽』がココに有ると踏んだのだが……玄関先から一向に見当たらなくてなぁ~、それで適当に歩いて此処に居着いたってのが現状何だが……ココに無いの? 伝説のコーマ」
ジト目だったパチュリーが、目を開かせた。
「それが……アナタの目的?」
あ、なんか無さそう~なパターン。矢張り妄想は当てにならn「そうね、有るには有るけど……この館では最早見飽きたようなモノだからねぇ。館の主で独楽の大株主“レミリア・スカーレット”お嬢様が、最近『館の改名でもしようかねぇ』って、口から零した位よ」
見飽きて展示は無いのか……素より独裁貴族で独楽は自室飾りか……。
何にせよ新たな情報は、この館の主が[外国人]だと言う事だな。ちょっと進展。
然し“紅レミリア”とは、随分アバウトな姓だ事。いっそその姓で生まれたかったって、誰か千人に一人は言いたがりそうだ。もし俺が成った場合は……
“サクラ・スカーレット”。和名はNGで…。
“チェリーブロッサム・スカーレット”。長いな。CBスカーレットで略せるかね?
それとも“ヒツキ・スカーレット”? だから和名はなし。
“サンムーン・スカーレット”。到達地点が解らない、色々と。
後付けに何だが、主は女性か。また女性か。最近女性と会う率高いな……何? ハーレムフラグ? ……無いな、うん、無い。今直ぐその不落なフラグを右手で打ち消す。
「どうしたの、右手なんか上げて? 独楽が欲しいの?」
「……あ、いや、コレは[欲しい]という、取って付けた仕草では無く……」
ヤバいちょっと会話に間が開いた。
「安心なさい。主に交渉すれば、全部くれると思うわよ」
ほらきっと商談話かと……然も無償提供と来ましたよ。
「くれるとしても一個でいいです」
「フフフ」
何で笑った?
「いや、貴方と話していると奇抜で奇妙で奇怪、奇跡の様な会話だから、ね。気色が良いし、悪いわねぇ…って」
「そのムード、結局の処どっちなの?」
――ご満足、ご不満足?
「さぁ……どっちなんでしょうね」
パチュリーは本を閉じ、目を閉じ、微笑んで椅子に靠れた。
「ほら、こんな処で道草食ってちゃ駄目でしょ? 念願のコーマ、貰いに行きなさいよ」
あ~…一応伝達とか必要じゃない? 俺が言うのもなんだけど報連相は大事だよ? こぁちゃんにでも……
「アポなしでも取り合ってくれるわよ。暇だろうし。但し咲夜に見つかったら問答無用なく追い出されるから、いや始末されるかしら? まぁバレない様にこっそりと主人の下に辿り着きなさい」
え、そんな忍びない手口の、行為でいいのかい? 寧ろアポイントメント取るべき相談の相手なのでは?
従者……って勝手な判断、位置付けでいいんだよね? 咲夜さん。
「それでもってこの館の主と図書委員はどういう位置付けなの?」
こんなに本を地下にて買い占め広げて。
「友人よ。あの子は私を“パチェ”って呼んで、私もあの子を“レミィ”って呼んで居るわ」
実に女子女子した仲良さのアピール乙でありン。
「もうこれくらいにして……じゃあね、ヒツキ君。短い一時だったけど楽しかったわ。偶に、本当偶に、ほんの偶に、誰かと話すのも悪くないわね」
俺との会話でそう思って頂けたのなら、『本は私(Book is myself)』思想家で愛読家の大魔法使い“パチュリー・ノーレッジ”さんには、刺激的で成長的、進歩的かと。アウトドア極めて行きなさいな。
「でも、本の傍に在る者こそ自分よ。そこは曲げない」
最後まで言葉が駄々洩れな俺でした。本当にありがとうございました。
そして彼女は、考えは駄目では無いけど、借本奪還は駄目そうだ、永遠に。動かない大図書館は何時動くのやら……。気も遠い話です。
「じゃ。また来るも二度と来ないも、貴方で判断してね」
そのあと直ぐ俺に、無気力になるような、人類の遠い進化発展のような、基より必要べき、ローレンツ変換の特殊相対性理論では無いような、そんな自体で事態が訪れるなんてことは、予想だにしなかったが、先ず出来る事でも無いでしょうよ、ソレ。
一言モノ申すわ『予想だに…』に。
後、賢さ振舞って相対性理論持ち出しても、語れなきゃそれはもうまるキュ(ry…
そういう時期が、私にも有りました。
描く事は諦めてはいませんよ? 現に描いていますから。