第漆点進話 朝露に似た色~Scenery~[幼精編]
お出かけだぁ。
コーマは存在するのかなぁ~? いやねぇよバーカ。
【進歩】
俺自身がこれ以上強くなるとかならないとか、どうでも良かったが……それ故に想っていたもう自分への〈設定〉は効かない、みたいな思考は、思い込みである……そんな一つの結論が出されてとしても、俺のイキカタは、変わらない。
飛行? そんなの正に正なる魔法使いにでも使わせておけっての。
その正なる魔法使いは、多分あの“霧の湖”に行ったに違いない……方角が、確かなら。
そして正確には、“霧の湖”に隠れ潜んでいる“屋敷”に行ったのだろう。
更に更に正確には、あの屋敷こそ、聞くに聞いている“コーマ館”とやらに間違いない。
そしてあの“コーマ館”にて、あのドロップスティックマジシャンの成すべきことは、ただ一つ……あの屋敷の財産、即ち『御マネー』と、伝説の「永延に廻る駒」が狙いの筈だ……幻想郷来日二日目にして何を知っていて何を想って何を語っているのだろう『非好錯乱』……妄想は茶飯事だとして、忌み名の思考が自分でも驚き無驚きだわ。
それから、危ういイベントは一つも無く、再び霧の湖へと到達した。
それとらしき、最後に居た場所にてルーミアを探したが、彼女の姿は見当たらなかった――――察して何処かに西遊しているのかな? 何処かと言った筈が西を目指しているのも、わろし、な話。
その代わりと言っては何だが、彼女の代わりは居ないが、そんな道徳的な話でも無いが……驚きはしないが、不可解な出来事に、あの妖精に遭遇した。
【氷精】
「あ~…今日もあっついな~…」
相変わらず、青い髪に青いリボン、青い瞳、青い服装…等々、青一色が染められた衣装で、妖精は、幼女体型でも丁度、足が水に浸かる岩の上に座り込み、『今日も暑い』と考えなくても当然の気候の感想を口癖回しに呟いた。
今日も狂で凶に暑いなら、外に出なければいいのに……懐かしいフレーズと共に、俺はその妖精に、警戒無く、感じさせず、軽快に、話しかけた。
「オッス、おらヒツキ。オメェ死んだんじゃねぇのか?」
「ん? しょーかいの後に縁起も演技も無い挨拶だな…!」
勝手に死人(人?)に仕立て上げ、挙句冗談の言文で無いと言う……不愉快だ、と睨み返しに、この妖精は一言申す……その一言は座布団一枚と言った処だが、霧の環境にて、呼吸をすれば何故か霜霧が噴出する、毛布布団が欲しい具合の寒帯である。
俺が欲しいと言っている訳では無い――それに俺の服装は、猛暑において重ね着の格好ですからね。
「昨日、霧雨魔理沙との弾幕ごっこで、巨砲正面ブッパからの跡形無く消滅していたじゃないか?」
「ああ、その後復活した」
復活? 妖精は人生遣り直せんの?
「と言うか、復活してからもう一戦やろうかと、あの場を模索したんだけど、既に蛻の殻だったから諦めた」
空中でのあの空間を蛻にするって……馬鹿と天才は紙一重の思案が読み取れる一文である。
「処でアンタ誰? 魔理沙の友人?」
妖精は尋ねる……『流浪人の正体について』を、ならば俺の返す『俺は誰?』は、
「アンタは俺で、魔理沙の友人は俺だ。宜しく、妖精」
「意味ふめーだぞ、人間……氷漬けになりたいのか?!」
ナンデダヨ、ナタデココ……ここで驚く様な声で脅してきますか妖精さん? 妖精ちゃん?
「アタイは幻想郷で最強の妖精、『チルノ』ってんだ。命が惜しければ逃げた方が身の為だぞ!」
彼女が両腕、両手、両脚を広げると、周りには内臓を容易く貫通し破裂させそうな大きな氷柱が、此方を向いて、発射してきた。
しかし全て、ギリ体を避けて通り過ぎて行き……どうやら虚仮威しの様な一手だったらしい。
虚仮でもコケコッコーでも、俺は瞬きも動きもせず、その姿勢に、妖精は目の色を変える。
「ほうほう…アタイの攻撃を微動だ、にしないとは…そこの人間、強いな」
「あわよくば俺に対しては『そこな人間』と、表しても可」
「良く解らないが、えっと…名前は何て言った? そこな人間?」
「“陽月さくら”だ、九の妖精。親しさは持たずして、ヒツキと呼び給う」
「それは良いが……九の妖精?」
「死んでも死なない永久の生命力にて、俺命名、お前の仇名は“九の妖精”だ」
天から小石でも降るような顔をして、後々チルノの顔は、恥じらい隠さない張り裂けそうな勢いの弾ける満面スマイル、それを同期させた大声を発して、彼女は喜ぶ。
「丸で最強だな、ヒツツキ!」
解らん。
「丸で私だな、ヒッツキ!」
解らん。
「木をつつく事に定評の有る鳥のような名前で、粘着性が有って、人間性的に犯罪の有りそうな名前だな、九ちゃん」
そんな俺の吐き台詞など鼻にも咎めず、彼女は小時間悩み、思い出すようにして問いかけた。
「お前ツキ、弾幕ごっこを知っているか?」
名前を何だと思って読んでいるんだ、このおバカ。
因みに弾幕ごっこは〈スペルカードルール〉っつー、正式名称みたいなのも絡めて知っている―――が、
「やらないぞ?」
「やるとは言って無いぞ?! ヒンキお前…バカなのか?」
………。
「やるとは言って無くてもその会話の接続は、『Q.弾幕ごっこ知っているか?』、『A.うん』、『C.じゃあ今からやるぞ』、『F.オワタ』ってなるのが、良くある落ちだろ?」
その通りだと言わんばかりに彼女は驚く。
「凄いな、ヒセキ……私の次に天才か?」
彼女の自信さ故に、自身に対する自賛は、扨、無視して。
「QとAは解るが、CとFって何だ? 新たなスペルだな、これは……」
その質問(Question)の様なものに対する答え(Answer)は、[続いて(Contine)]と[終わりに(Finary)]だが、正か其処に食いついて来るとは……眉間に皺寄せて、眼を瞑って必死に考えているから、そっとしてあげよう。
「解った。災害(Calamity)と気絶(Faint)だ!」
そっとして9分位待った結果、右斜め上より垂直真上の天空シュートのような回答を持ち出して来た。
「しかし、先の会話文と照らし合わせると、マチガイと言い切れないのが凄い……」
「本当? やっぱりアタイってば天才で最強ね!」
その語句お好きですね。
「一応参考にまで聞くが、QとAは?」
「『究極最強』と『アタイ』ッ!」
キュウ~……アイタ、アタマ打った……アイスクリーム頭痛のように――――『[丸]々、アイスクリーム頭痛を実体化させたような、永[久]不滅の氷の精』なんて感じに、彼女には『⑨(まるきゅ~)』と言うロゴは、神の降臨か、お似合いに想えた。
バ神と天災は、神一重……かな?
「処でヒイキ~、お前はこんな所で何の様が有って立ちオージョーして居るんだ?」
俺はそんな人種差別みたいな名でも無ければ、行いもしません……いや、きっと、うん、それは~…勿論(?)
「⑨先生の安否とか、具合とか、オマケにトークセラピーとか」
「遠のくせせらぎ?」
もう聞こえないだろ。
「トークセラピーだ。魔理沙に負けて、会話云々で心のケアを成そうと想った俺の行動は、只の妄念からの動作であって不要の様だったみたいだが…」
「う~ん…、まぁ、魔理沙に負けて悔しかったけど、また次が有るからな! 今度は勝つ!」
マイペースだな。
だがそれも幻想郷で有っての時間の使い方かな?
「おいおい先生。その語尾には…『て、言うか負けてないし。何せ⑨先生は最強だから、あの弾幕ごっこにおいては魔理沙に勝ちを譲っておいただけだ』……ってか?」
流れに流されて、彼女は腕を組み、鼻を高くして頷く。
「ウムウム! その通り! そう言おうと思っていた! さすがはヒグラシ! ナイス後付け!」
「俺は夕方のみの活動者か」
「今は昼だけどな!」
昼……? あ、そうなの…へぇ~……。
その時において、俺や魔理沙やルーミアが、今日本日この日は昼前に起床したなんて事は、それこそ幻想郷で有っての時間の使い方……だったとしても、で、なかったとしても、気付く事は、俺が今日本日この日の終わりを時間的に迎えたとしても、その結果に至ることは無かった。だって、今、気付いているから。
じゃあ、今日の終わりにも気付かないという論は何処に行ったのかね? …さぁ? 先ず今日の終わりが来無いのか、が、一番至ることが無い結果なのかも知れないね……。
「それで、その、と、お、く、せ、ら、ひ、い、が終わったヒックリは、この後どうするんだい?」
ゴロンとした、人によっては横隔膜の痙攣を連想させる名前だが、名前より俺のこの後のスケジュールを、先生が聞いているのだから答えてあげよう。
「あの館に行く」
左手で噂兼がね、“コーマ館”らしき館を指す。
「あの館に、か?! 止めておけ、ヒノキ。あの館には悪魔が住み着いているぞ……最強のあたしでも歯が立たない位だ。あたしはヒマキのあたしに対する懐と見方の良さにて、ヒラキを有能なコシギンチャクとして買っているが、ヒゲキはコシギンチャクで有ってアタイの大切な友だ。あの危険地帯にヒユキを向かわせる訳には行かない」
「先生俺の名前覚える気無いだろ」
「えーっと…なんて仇名だっけ?」
仇名であることは覚えているんだな……。
「ご心配どうもチルノ先生。でもそれより、理屈も高校生の青春アクトからの友情演劇も無い俺を友人に選ぶのは止めて、あそこでさっきから飛行している、同種の妖精ちゃんを、お友達にしたらどうだい?」
さっきから本当にヒヨヒヨ飛んでいらっしゃったんですよ。
あの娘の名前は、名前も無い、しがない『大妖精』だろうかね……。
「あの大妖精か……確かにアタイの配下に相応しそうだ」
ホンマに大妖精なんかい。
「だがお前も配下だぞ、ヒツキ。それを忘れんなよな~!」
やっと言ってくれたか……彼女の忠告を聞き入れつつ、歩み進めるからして、遠のいて聴こえる彼女の叫びに、俺は答えた。
「ヤダ。絶対忘れてやるね…」
黙々とする霧の湖では、遠のく潺が、音波を漂うだけだった。
【門前】
――そして遂に、舞台は、コーマ館の門前へと移動する。
入れるか否か……その大きな扉と、扉の前に如何にも門番さんっぽい、目を閉じ、手を後ろに添えて立つ、凄腕(そうで)中国(っぽい)拳法(の使い手の様な)姉さん(人間?)を前に、俺は何も気迫のようなものを感じ取らず、只、前進した。
感じ取らない俺は、つまり一般的思考を想う……あのお姉さん、寝ている訳では無い、よね……?
先週末出せなかったからね。
いやパート分けしたのは何時ものデータのページ数が打っ飛び多かったからだけど、今週だけでめっちゃ出させていただくよ~ん。