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幻想の現実≠東方空界霊  作者: 幻将 彼
第弐章「青年は近所を回って、色んな住人に挨拶を試みた。」――色彩異変
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第漆点戻話 朝露に似た色~Scenery~[魔女編]

朝を食べるよ。朝食を食べるよは頭痛が痛いになるのだろうか……

【朝食】


目に映るのは、見慣れも見慣れて無いも無い、霧雨邸の扉。

『トントン…』

「入って来るな~…」

…………。



回って、クラウチングして、よーい、ドン。

「マテ待て! 私が悪かったから入って来い!!!」

「お邪魔します」

 何だこの玄関と家内の境目での茶番……

「ノックなんかしなくても普通に入って来いよ、私は暇を持て余した吸血鬼が、直々に私の物を盗りに来たのかと思ったじゃないか!」

盗りに? 『取返しに』ではなく?

「親しき中にも礼儀ありじゃないかなぁ?」

「親友としての仲が成り立っていたことは、こそばゆくも心の地から嬉しい限りだが、そんな仲だったら遠慮せずノックもせず入って来て良いんだよ。元より私が『戻れ』と言ったんだからな」

「今度からはそんなの作らないでおくことにするわ」

お二方は、食事台に配置された椅子に座る。

今回のメニューは、一見何の変りもない、よくある和式のお食事――『白飯』、『魚の塩焼き』、『味噌汁』、『何かの和え物』、お飲み物は、湯呑みに酌まれた『茶』。

有無、有無……質素だが、理想を求める朝ご飯とは、このような形状でこそ[有り]が生まれる理想。

〈理想の思想家〉もいるのかなんて考えると、扨、ご飯が冷める。

「いただきます」

「いただきます」

両者並んで、美味し糧を摘まむ……。

「「…………」」

おかず位置の魚を箸で啄み、摘まみ、白飯と共に噛み締める……しかし噛み締めた結果、食いながら味を判断するものだが、味を判断しようとすればする程、噛み動かしていた口も、箸も、ゆっくりと下がっていった。

その行動は魔理沙にも伝動し、魔理沙は、飯は喉奥に詰め込み、静かに俺に問いかける。

「なぁ、ヒツキ。今回の私の飯……どうだ?」

「これが『炭を食す』と言うか、三角の中にエクスクラメーション・マークが赤色で、若しくはDANGERマークとかCAUTIONマークとか…あ、アレは黄色だったかな? でも黄色い声援が聴こえる様な愉快な味には程遠く、遠く言いまわしてしまったが結論を申すと以上の申し上げたマークを混ぜ合わせた、人間が口にするのも憚る化合物のような味ですねっ、コレはっ……って、魔理っ沙さん、僕のっ座っている椅子の底っ、蹴らないで。3回に1回、僕の脚を蹴らないで」

「何で今回は例え込みで、詳しく不味いと批評するんだこの無情野郎~…!」

「ニャ~…(訳:無情では有るが、気紛れな者でも有りまして……)」

「何が『ニャー』だよ。野良染みていて、寧ろカワイイよ」

ゴフッ…

このお茶も異次元級の味わいでは有るが、おい何つった? ……まぁ互いに、今のは無かったことにしよう…無視しよう…。

「素直に『不味い』と言ったら、親しき中でもそれは『酷い』って言われるでしょうに」

「親しき仲だからこそ、素直に不味いと――言って欲しかったよ、素直に」

「自負の自認は成功の基だが、食材チェックだ…何を入れた?」

「茸」

「んぁ? 茸で味付けしたって言うのか? 調味料にするなよ、食材を」

「いや、これ全部()()作った」

「…………エ、ドユコトヨ?」

「だからさぁ、茸で作られた『白米』。茸で作られた『味噌汁』。茸で作られた『魚の塩焼き』。茸で作られた『和え物』。全部茸から調合して作った」

あ、アメイジング……魚もか。

調理ではなく調合…、茸風味料理では無く茸そのもので形から味までもが作られた料理…いや調理? 調合理、超合理的、超エキサイティング。

「茸で何でも熟そうとしたその姿勢が、素直に凄いと想うよ」

「お、『素直に』か? いやぁ、それ程でも!」

「……………」

 魔理沙は自分の頭を撫でていた自分の手を再びゆっくりと下ろし、ニヤけていた表情をゆっくりと無に戻す。

「ヒツキここはお前が『褒めてない』と、ツッコむ処じゃないのか?」

「義務付けられた覚えが無いわ」

然し直々、ツッコみが絶えなくなったな、自分。

「その後の台詞として『私もちょっと前進したな』と言いたかったんだが、見事空を切ってくれたな」

「期待を裏で切ったって事だろ? この食事こそ期待外れだろうがぁ、衛生管理局的に」

空を切るのは、『空想女』だけで十分だ。

「……不味いなら食わなくていいぞ。確かに料理に関しては、何の前進は無かったし……」

[調合]っつったよな?

「不味いし拙いが、別に食えない事は無い」

「炭だとか、カゴーブツだとか、貶していた奴の言える開き直りじゃないな」

「そうだな、確かに言った、言っちまったが……。一つ話をしよう、お食事中に不作法だが」

「ああ気にするなよ、そんなの……。モノ食いながらは気に入らんが」

それが不作法だろうが。

嗚呼、またツッコんだ…素人の癖に、素人の癖に。

「こんな頓珍漢な頓智クイズが有る……『パンはパンでも食べられないパンは何だ?』」

出題した訳でもないが、出題してない訳でも無く、そんな俺の経緯は南方にでも流しまして、魔理沙の回答。

「腐ったパン?」

 正当な正解であるが、この頓珍漢頓智クイズの答えは、

「フライパン」

「なんだそりゃ、しょうもない…」

「あぁ、世界は再び氷河期にでも突入する、下らん問題だよ。この問題に措いての回答は、まず小麦から出来上がったパンですらない。幻想郷にて、現実的なことを語ると、語るが、食べられないパンには当たらない」

「おお、うん」

「食べたら死的な意味で当たるだろうがな、フライパンは…。そこで、幻想郷だが、俺は現実的な回答を持って、正答を組んでみる」

「その答えの答えは?」

「『パンはパンでも食べられないパンは?』――答え『そこにパンが無い』」

「ほう……ほう?」

「だってパンが無ければ、パンは食べられないじゃない……代わりにケーキでも食すか? そんな話でもない」

「ヒツキが持ち込んだんだよな」

「否、パンは持たなきゃ食えない。そこにパンが存在し無ければ食えない。例えそのパンが腐っていても、カビていても、有毒性の高いパンだったとしても」

「持った瞬間蒸発しそうだな……」

「実際俺は……カビでも腐敗要素でも、有毒性物質で蒸発寸前でも、消して終えるからな」

右手を上げて、俺なりの裏の表の答え(とんち)を、手に表す。

魔理沙はキョトンと、目を点にする。

「何なら此方の『本』を以てパンを創ってもいいですよ?」

キョトンの顔はププッの顔に生え変わり、

「何だよぉ。結局、現実的でも無いヒツキ流じゃんか…ハハハ…!」

「黒いパンより、白いパンが食えることは、食べるにおいて、本望だろ?」

見た目真っ白、中身真っ黒のメニューで括られた朝ご飯は、こんな白黒付かないトンだ会話によって、白のお墨付き……即ち『御馳走様』と合掌して、事を済ませた。


【出発】


アクシデントは有ったものの、その後何事も無く朝食を済ませ、何も会話は生まれない2度目の歯磨きも済ませて……あ、いや、何か魔理沙が

「ヒツキの歯って綺麗だな」

 と急に褒めてきた。

 ――続いて、

「両手の~、人差し指で~、頬を~、突き上げて~、歯を~、見せてみ~?」

何故文節で区切るのかは解らない。

そしてこの令も熟す意味も解らないが、取り敢えず…………!!!!

「ZE☆」

「『ZE★』じゃねーよ、テメェ…嵌めたな」

「嵌めてねーよ~。只、引っ掛かって貰っただけだよ~」

同じじゃねぇか…

「よしよし、ヒツキのカワイイものがご拝謁できたと言う訳で……出掛けますか!」

『うっわー』で、『このままじゃ終われない』ってヤツ……

「俺のカワイイもの? 可愛い……何だお前、俺を愛の対象に見立てられるのか?」

「あ、ば……阿婆擦れてんのか、お前!? 愛とか、マジの真顔で言うなよな!」

マジの真顔、違いない……言葉なんて所詮、俺には文字だ。

「愛?(疑問) 上(机の空論的な意味で)、(故に)俺の勝ち」

「そんな勝利宣言が有って堪るかぁ!!!」

色々と、一方通行の馬耳東風で言い合った、食後歯磨き後の身支度――その争いは玄関にて終止符を打ち、

「私はこの森から、あっちの方角へと、箒を使って空を飛んで突き進む!」

「あっちの方角の先に、何の用が有るって言うんだ?」

「野暮用だよ! 来るなら頑張って付いて来い! 来ないなら留守番宜しく!」

成程、外出しなければ俺は、神社の宴会時間までずっと、このガラクタと木漏れ日便りのお屋敷でずっと、座禅を組まなければいけないのか……中々骨のある修行、一つ悟りでも開けて新たな道へ進めそうだな……よし、外道を進もう、物理的に、単語一句的に。

「私のコレクションが盗られたら困るから、後者は絶対無いけどな」

「選択権無いやん…」

早く大人に成りたいわぁ~…、何時成れるかは誰も彼もが不確かな時事ですがね。

「時にヒツキ君。空は飛べるのかい?」

「時に聞くなら、後一万年は待て。外界の一般常識では『人間は空を飛べない』だろうて」

一万年待って、人間は飛行の進化を遂げるかは定かでは無い。

「それだけ能力を御持ちで御空を飛べないとは不憫ですね」

瞬間移動なら出来るが……

「私の知っている限りでは、外界人は鉄の塊を大人数で浮かせて飛行していると……知り合いから知ったぜ?」

「お前が知っているのか、知り合いが知っているのか、知り合いも満を持して知っているのか、ちぐはぐな知識だな」

何にせよ、大人数の飛行なら、俺一人で飛行が可能な路線は、遥か宇宙の彼方だよ。

「取り敢えず、お前は飛べないと…ふんふん…。あの本使って飛行が可能にならないのか?」

「悪いが俺は、存在した瞬間『レベル100=人間』の陽月さくらさんだからな。これ以上は強くなったり技も覚えたり出来ん理由よ」

「ふ~ん……それじゃあヒツキはこれ以上、前に進めないって理由か」

「意味が深そうな言い草だな」

「限界を超えてこそ人間…って奴じゃないか?」

有無、それも深し。

「魔理沙には色々と教えられる物事が沢山有るな、丸で学校の先生だ。よし解った。お前のその名言・名文・名句に乗ってやろうぞ」

「ああ、頑張れ。勝手に」

 『それじゃあ私はお先に行くぜ』と、脚早く彼女は、野暮用を済ませに飛び発った。

 そして俺の方は、例の本を取り出し、新たに自分への〈設定〉を[追加]する。


[追加:陽月さくらの能力に、飛行、及び浮遊の能力を永久単位の追加とする。飛行・浮遊の速度は……(中略)……又、この〈設定〉は、陽月さくらの千二十五万三百九十枚に渡る〈存在〉の一部として、追加するものとする。]


身体が軽くなった様な気がした。

丸でRPGのメッセージウィンドウだ。

それから俺は、邪念も妄念も、文字通り右手で打ち消し、空を飛ぶイメージを左手で浮かばせた。

するとどうだろう? 足が地面から離れ、両足の影が見えるじゃ、あ~りませんか? 飛行するに当っての移動をも難無く熟し、間も無くして、正真正銘の鳥人間が、森の中で存在していた。

成程、これが空を飛ぶって感覚か……更にこれは、飛行機とか鳥人間コンテストの『何たら号ちゃん』とかの、物便りの飛行ではなく、魔力によって生み出された、人間単体での飛行……スゲェ、マジスゲェ……。

速度を制御し切って羽搏くこの飛行ならば、魔理沙にも軽く追いつける……。

この新たな飛行能力を以て……さあ、歩いて行くか。

茸って、万能だね。

魔理沙の和食派は当二次創作品のスマホゲーのボイスで知りました。

彼らの昨日魔理沙がパンを13枚キープか14枚目かとなったのかは、真っ白に燃え尽きたボクサーの生死の不明の様に、知られざる話。

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