表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

世界の終わりと、始まりの手前で



(山咲はどうして、あんなことを言ったのだろうか)


俺は学校から家までの帰り道、そんな主題にて、考え事に耽った。

まだ、入学してからもうすぐ1年が経とうとしているので、この10分ちょっとの道のりは自然と頭に入っている。

だから、多少考え事をしていても危険は少ない。



――あの子とは関わらない方がいいよ――



拒絶。

山咲 美波は、高崎 正子 を拒絶している。


しかし、二人の関係性がずっとそうであったかといえば違うようだ。

何故なら、山咲は彼女のことを ”しょうこちゃん”と下の名前で呼んでいたではないか。

”しょうこちゃん”と名を口にした山咲には、そのことを懐かしむような面持ちがあった。


だが、それは束の間のことだった。


山咲は次の瞬間には、表情を無くし、俺を残して教室を出ていった。

意味深な発言を残して。



(俺が深く立ち入る問題ではない。ないが……ああ言われては気になってしまうではないか)



気が付けば、雨は止んでいた。俺は、傘を畳む。

雨雲の隙間から、橙色の空模様が覗く。



(山咲は何か勘違いをしているんじゃないだろうか。もし俺の見立て通りなら、高崎さんは人を貶めたり、悪意を持って人に当たるなんてことはないと思うんだが。。彼女が人から嫌われることがあるとするなら、コミュニケーションの祖語によるものかもしれないな。空模様と同じで、女の心も変わりやすいと聞く。わだかまりがあるなら何れは解けるやもしれん)


いや、違うな、と俺は心の中で呟いたダイジェストを否定する。

今回の件は別に、山咲と高崎さんが仲直りすれば、<いいね>ということではない。



山咲は俺に、 ()()()()()()()()() と言った。


俺には経験はないが、自身が好みとしない相手の話になった際、”あの子と関わらない方がいい。喋ってもつまらないからね”のような当人の身勝手な忠告、こちらへの心象を操作しようとする試み、そんな行為が心が貧しい人々の間では、頻繫に行われているのだろう。


だから、今回の山咲もその類であったのだろう。”私はこういう手段を以て、良しとするくらいに、彼女のことが嫌いなのだ”という宣言だったのだろうか。


だが、それでは違和感が残る。


放課後の教室の風景を思い起こす。

教室を出ていく山咲の小さな背中から発せられた、氷のように冷たい声。

あれは、果たして俺に共感を求めていたか?それとも諫言?


いや、”警告” これが真に近いと感じる。

山咲は 高崎 正子 が危険な存在であると俺に伝えようとした。

……のかもしれない。



俺は、フフと喉の奥まったところで笑った。



(思ったより馬鹿な想像になってしまったな。山咲が変なことを言いだすからだぞ)

(さぁて、家も近くなってきた。そろそろ現実に目を向ける時間だ)



俺は、頭を切り替えようと、その場で背伸びをした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ