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警告



こういうとき、どういう顔をしていいか分からない。

人型決戦兵器に搭乗する14歳の女の子も分からなかったと、確か言っていた。



山崎やまさき 美波みなみから、俺をからかって遊ぼうとする意気を存分に感じる。



ー分かった。俺が悪かった。だから、もう辞めてくれ


「うん、やめてあげよう。谷山くんがもう少し私と親しければ、末代まで弄り倒してあげたのに」


ーそれは助かった。山崎さんと仲良くしてなくてよかったよ



冗談として言ったつもりだが、そう捉えられない場合は困る。

そんな際どい発言だったが、山咲が ”にひひ” と笑うのを見て、俺は安堵した。



「谷山くん、こんな時間まで何してたの?」


―日直の仕事でな。職員室までプリントを届けるお使いを頼まれた


「ふーん。それはそれは、ご苦労さま」


―まあ、そう苦労とまでは言わんがな



俺はそう言うと、帰り支度に手を付け始めた。

山咲と二人きりの教室というのは、ちと照れ臭い。

異性としての好意を彼女に寄せている訳ではないが、今の教室にはそういった趣きがある。

俗っぽく表現するなら【男女関係が上手くいきそうな空間】とでも言おうか。

そういう雰囲気に乗せられていくような、むず痒さが、どうにも俺には耐え難い。



「キーホルダーも見つかったし……私も帰るかな」



山咲は何か含みを持たせたような言い方をした……か、どうかは分からないが。

ただ、もしかすると、まだ俺に用があるのかもしれない。



「谷山さ」


―ん、なんだ?


「なんか面白い話してよ」


ー……無茶ぶりが過ぎる


「だって、なかなか谷山と喋る機会もないしさ。今が、【絶好】ってやつだと思わない?」



だからといって、突然”それ”はどうかと思う。

普段であれば、返す刀で ”断る” と即答しているところであるが……。

今は、先の”いとおかし”事件が尾を引いている。


思えば、”あの件は黙っておいてくれよ”といった交渉を彼女と、まだ済ませていなかった。

俺としたことが、気の抜けたものだ。


だとすれば、これは好機。

”話をした代わりに、先の件は内密にしてもらえないか”と頼むことができるかもしれない。


さあ、あとはその ”面白い話” とやらを思いつくだけだが……



―ああ、そういえば。さっき面白い子に出会った。


「へ、誰だれ?」



山咲はこちらに駆け寄ると、俺の席の後ろの前田の席に座った。



―わざわざ近寄らなくてもいいぞ


「えー、いいじゃん。折角だし」


―別に構いはしないが



俺はたじろぎつつも、頭に職員室前で出会った少女との一件を思い出していた。



―山咲さんは、高崎さんって知ってるのか?


「たかざき……もしかして、たかざきしょうこ?」


―しょうこ……かは分からんが、隣のクラスで、色白で、やけに姿勢がいい女子だ」


「ああ……それはしょうこちゃんだろうね」


―なんだ。知っていたのか



それなら、話は早い。

そう思っていた矢先、山咲は不機嫌そうな顔で立ち上がった。


そして、彼女はそのまま自分の席に戻ると、鞄を掴んで教室の後方のドアから教室を出ようとした。


俺は突然のことに、魚のように目を見開いていた。

もしかすると、口もパクパクさせていたかもしれない。



山咲 美波は教室を出る寸前、立ち止まり、振り返らずに俺にこう言った。


「あの子とは関わらない方がいいよ」














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