山登りって楽しいよね
校舎というのは、荘厳さを醸し出している。
これはうちの学校に限った話かもしれないが。
400年ほど昔には、有名な和歌にも描かれたとされる美しき山があった。
その名を藤原山。標高たったの60m。
とはいえ、自転車で登るには結構酷な斜面を備えている。
その頂上を切り崩して建てた、罪深き我が学び舎。
世にも珍しい深緑色の外観であった。
そんな60年前に建立されたボロ校舎を目掛けて、ペダルをギコギコと懸命に漕ぐ俺。
背後からは黄色い声援がとぶ。
とても近い距離。
「おにいちゃん、ふぁいとーー!」
俺は既に相当頑張っているのだ。
これ以上どう頑張れというのか。
乳酸が足に溜まりまくってるから、次の足を出す度に諦めが脳裏によぎる。
それでも足が止まらないのは、兄の尊厳を保ちたいだとか、止まったら負けとか、そんなところだ。
その程度のモチベーションで何とかやれてる。これが若さか。
ようやく辿り着いた駐輪場を前にして、自転車がふっと軽くなる。
「ご苦労じゃったな、兄よ。さらばじゃ」
急に口調が大河ドラマになってしまった残念な妹は、光の速度で校内に吸い込まれていった。
さて、俺も教室に向かうとしようか。




