02,羞恥心
気持ちの良い朝日を浴びて目を覚ます。
「ンン…ア」
そうか、昨日の俺はすぐ寝てしまったのか。
赤子というのは、あんなにも眠くなるのか。
そしてまさか、母という存在の者があんなにも包容力のあり、温かいものだとは。
あんなにも心が満たされた事は、前世で1度も経験したことが無かった。
「あら、レイス起きてたんですの?」
母の顔がいきなり顔の前に現れ、少し驚いた。
「ごめんなさい、驚かせてしまったわね、ふふ」
「おお、レイス起きたか、うむ、体調は良さそうだな」
公爵家党首の父が部屋に入ってきた。
父と母どちらもとんでもない美形だ。
父は金髪で赤い瞳をしている。
ただの金髪ではない、主張しすぎずされど美しい金色だ。そして、男であり中性的な顔でもないのに見惚れてしまうほど、イケメンだ。
母は銀髪で青い瞳をしている。
銀というとギラギラしたイメージがあるが、これも父と同じく、主張しすぎずされど美しい銀色であり、何年もかけて磨かれた絹のようである。
いわゆる絶世の美女だ。
「おはようレイス、やっぱり可愛い顔をしていますね、ねぇ?あなた」
「あぁ、メルナに似ていてとても愛らしい」
「あら、あなた、レイスの前で嬉しいことを、ふふふ」
急に俺の前で惚気ないでほしいのだが。
「なんだかレイスの表情が呆れを示しているような…」
おっとこれは父…いや父上はなかなか鋭いようで。そんなにじろじろ見つめないでくれ…。
そういえば、昨日寝る前に眠気がギリギリの中、精神年齢を20ぐらいにしていたのだった。
今までの知識や経験は残しておき、老人特有の凝り固まった考え方や、その体に対する適切な価値観や異性や友人との距離感など、そういった諸々のものを適応させた。
こんなことをしたから、昨日はすぐ寝てしまった。まだ慣れないこの体で無理矢理魔法を使った上に、眠気がただでさえ限界の中だったのだから仕方ない。
俺はこれでも前世は大魔法使いだ。昨日使った魔法2つもきっとこの時代にはないだろう。
というか前世の時代にも無かったから、これは俺の作った魔法だ。
そしてこれからも俺だけの魔法があるだろうから、一々名前をつけるのは面倒だから、『創造魔法』ということにしておこう。
「レイスはメルナの銀髪と私の赤い瞳を持って生まれてきたのだな」
まだ自分の姿を見てはいないが、とんでもない美形に生まれたようだ。
これはもう人生勝ち組では?
「この容姿をしていたらどこからどう見ても私たちの子ですわね」
母上も父上も嬉しそうにしている。
なんだか俺もすこし嬉しいと感じてしまうな。
「さてレイスはご飯の時間ですよー」
ついに迎えてしまった…。
赤子のご飯、つまり母乳だ。
いくら見た目が赤子でも中身は大人だ、恥ずかしいに決まっている。
ちなみに貴族は乳母を雇うのが一般的らしいが、母上はそれが嫌らしく乳母は雇わないらしい。
精神年齢をより下げることもできるが、それは俺の理性が許さない。
これは俺の2度目の人生、最初の壁だ。
乗り越えろ、俺なら出来る、出来る、出来る!
「ぱくっ」
こうして俺は羞恥心という壁を乗り越え大きく成長したのである?