太陽
君がいなくなって10年目。
その手紙は届いた。
俺の名前が書かれた白い封筒を丁寧に開ければ、出てきたのはシンプルな便箋。
それがなんだか君らしくて、少し笑ってしまった。
懐かしい君の筆跡。
手紙だからか丁寧な言葉遣い。
そして、君の想い。
最後まで読んで丁寧に封筒へ戻し立ち上がった。
家を出て近くの花屋で、君の好きだったオレンジ色のガーベラを花束にしてもらう。
緩やかな坂道を昔を思い出しながら登る。
君が好きだった風景。
昔とあまり変わってない気がする。
坂を登りきると、大きな木の下にポツリとある石盤。
君はどこで見たのか、石盤がいいってずっと言っていたよね。
俺は毎回それを聞くたびにすごく不機嫌になったけれど。
だってそうだろ?
自分の墓の話を笑顔でするなんて、怒るに決まってるじゃないか。
でもまぁ、君の話はしっかりと聞いていたけど。
刻まれている君の名前の下に花束を置いてその前に座る。
君は晴れ女だったけど、その力は衰えないね。
この日は毎年、ビックリするくらいの快晴だ。
話は突然変わるけどさ、君の手紙には驚かされたよ。
あんな手紙、いつ書いてたんだ。
この10年、いろんなことがあったよ。
もちろん苦しかった。
悲しかった。
君がそばにいないことが、想像以上に俺を追い詰めた。
それでも、君がいないことを受け入れられたのは周りのおかげ。
みんな、根気よく励ましてくれた。
その中の1人の子と、結婚することになったよ。
君も知っていると思う。
彼女も、君を知っている。
俺が彼女に気づくよりも前に、彼女は俺を見ていてくれたんだって。
あ。
惚気っぽくなっちゃったな。
君がプリプリ怒る姿が想像できるよ。
街中ですれ違った女の子に気を取られていたら、いつもプリプリ怒っていたもんね。
今度ここに連れてくるよ。
君は不満かもしれないけど、大事な彼女だから。
そして、君も大事な人だから。
大事な人を好きになってもらいたいって思うのは、当然のことだろ?
そして子供ができたらまたここへ連れてくるよ。
どうだ可愛いだろってさ。
君だって絶対メロメロになる可愛さだと思うよ。
なんせ、君が愛した男の子供ですから。
来年も、再来年も、そのまた次の年も。
俺は石盤の前に立つだろう。
君と話をするために。
君に聞いて欲しい話は沢山あると思うから、話が長くなったらごめんね。
でもまぁ、君は笑って聞いてくれるんだろう。
俺が大好きだった、輝くような笑顔で。
だから俺も、君に負けないようにとびっきりの笑顔で、君の大好きだったオレンジ色のガーベラを持って会いにくるよ。
あなたは俺の太陽です。