聞き逃すなよ
人を避け一人で行動してばかりの同級生はボロボロになりながら伊藤華を守っていたが、自身の限界を悟りせめて華自身で身を守れるよう、オーラについて指南している場面。
「いいか?よく聞け。少し難しい話になる。聞き逃すなよ。」
「わかった。」
「まず、この世にあるものは全て電気だと思え。」
「電気?」
「そうだ。お前もこの石もそこの家もこのアスファルトも全部電気だ。私たちがこの石に触れられるのはお互いに反発しあうからだ。とても複雑にな。」
「お前、陽子と電子を知っているか?あの球の周りを小さな球が回っている図だ。知らないか?理科の授業で習うやつだ」
「知ってる。陽子と電子でしょ」
「そうか。物体ってのはそれがいくつも折り重なってプラスとマイナスが0になるようにできてるんだ。だから電気的に中性なもの同士が触れ合おうとすると必ず反発するところが現れる。だから物をつかむことが出来るんだ。みんな力を加えて物に触れられたと思っているが本当はこの電子と陽子が反発したり引き寄せあったりする電磁気力が作用してるに過ぎないんだ」
「ちょっと待って。…。えっと、この世のものが全部電気で触れられるのは電磁気力のおかげってこと?」
「そうだ。あともうひとつ、目で見られるのは光だけだ。しかもごく一部の幅の限定的な範囲だけだ」
「光が粒子と波動の性質を併せ持つことは知っているか。」
「粒子と波動?ごめん知らない」
「そうか。知らないか。光は光子と呼ばれる光の粒であるのと同時に海で見られるような波の性質を併せ持つんだ。」
同級生は空中に指で丸を書き、そのまま続けてうねうねとした波を描く。その動きは華にオタマジャクシを連想させた。
「この波の幅が人が感知できる幅だと色としてみることが出来る。」
「へぇそうなんだ」
「もちろん、赤から紫の外側の波の大きさも存在するが認識することはできない。」
「あの紫外線や赤外線とかいうやつだ」
「いいか、つまりお前が見ている世界は光のほんの少しの挙動で、触れているものはただの電気に過ぎないってことだ。」
その後、伊藤華はオーラが光子に干渉するイメージを理解し、オーラを操ることで何とかピンチを脱出した。