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詩集

灯り

作者: 翠泉

 今にも消えそうな蝋燭の儚い灯りはゆらゆらと漂っている。

 薄暗い部屋の隅で私はただただ、それを眺めている。

 こうしている間にも私を取り巻くものは次々と巡っているのである。

 頭では理解できているが立ち直る事ができず、一人だけ時間が止まった空間にいるようだ。


 先週末から何度かけても返事をすることはない携帯。

 持ち主を失った家具たち。

 小さな音を垂れ流していたテレビは、また人が一人犠牲になったと言っている。

 なぜ人は〝死〟を迎えるのであろう……

 

 私も君も生まれた時には名前すらなかったのに、君を呼ぶ声がいつのまにか口癖になっていた。

 そんなことをふと思ったが、暮れていく夕闇がだんだんと君の影を消していく……




 人は愛情を求めているがカタチは存在しない。

 だけど、どうにも君からもらった温もりは忘れる事ができない。


 人の命は私が眺めている蝋燭の灯りのように儚いもの。

 それよりも、人の心というものはさらに脆いものだ。

 だから、人間は〝希望〟という一筋の光にしがみつきながら生きているのだと思う。


 私はあれからいつも君の事を想っている。

 言葉は誰もが思いつくものかもしれないけど、込めている願いはきっと確かなはずだから……

 暗闇に浮かべた君との記憶は鮮やかに色をつけながら思い出にすり替わっていく……




 ベッドの上に横になって目を瞑った。

 それでも必死に手を伸ばして、暖かい光にまだ触れようとする。

 最期が訪れる時に人は一体どんな世界を描くのだろうか……


 なぜ私には君しかいないのだろう?

 なぜ君はもうここにいないのだろうか?

 私の最期が訪れる時には君に呼びかけて欲しいのに……


 明日は、今日よりも昨日よりも君の事を想う。

 私の行く先を照らすものは何一つなくても、きっとずっと、君だけを探している……

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