7話 [朝食~スキルの獲得~]
「起きろ。」
うーん・・・あと5分・・・布団が俺を離そうとしないんだ・・・それに今日は会社は休みのはずだ、まだ寝ててもいいだろう。
・・・ん?
誰だ? 昨日誰か俺の部屋に泊まったっけな? もしかして泥棒か!? まあ、金目の物はあんまりないし、ここで言う通りに起きてもいいことないし、なによりも眠いしいいか。死んだフリをしておこう。
「いつまで眠っている気だ?」
ヒイッ! かなり厳つい声しているな。もしかして殺し屋か! どうする、まずは警察に通報・・・この状況で出来るわけがないな!
「早く起きないか! 昨日の訓練の続きをするぞ!」
あれ? 昨日って何があったっけな? 確か遅刻しそうになって会社に向かって・・・
夢じゃなかったのか!
「ゆめじあなかったおか!」
「何を言っている、おかしなヤツだ。」
グキュゥウウゥウ〜
盛大にお腹が鳴ってしまった。よく考えてみれば、こちらの世界に来て何も食べていなかったからな。そりゃあお腹が空くわな。
というよりここに赤ん坊が食べられる物とかあるのだろうか? 離乳食とか作れるのか、ディガライさん・・・料理が出来そうには見えないが・・・
「そうか、人間は食事をするのだったな。暫し待っていろ。」
そう言ってディガライさんは勢いよく部屋の窓から飛び出た。そこは玄関じゃないぞ。
うるさい恩人がいなくなったので今しばらく至福の時間を過ごそう。二度寝開始だ。
布団をかけ直そうとしたら、遠くから木々が壊されているらしき騒音が聞こえてきた。ヅギョオオだとか、ボウオオオッだとかの魔物っぽい声と共に。
五月蝿すぎて目が覚めてしまったぞ。なにしているんだディガライさん!
そして、急に煩くなったと思ったら、今度は嫌な程に静かになった。遠くからかすかに笑い声が聞こえる。
「かってきたぞー」
・・・それは買ってきたなのか、狩ってきたなのか、どちらなのだろうか。百パーセント後者だろうな。
窓を覗いてみると、返り血を浴びているにも関わらず、いい笑顔をしたディガライさんがいた。
「こちらに来るがいい。」
浮遊魔法で俺を庭へ連れ出した。そこには初めて見る魔物 (死体) が沢山積まれていた。
どれも血抜きは済ませてあるようで、少し安心した。
・・・解体とかする気か!!
「 ゛ 調理スキル ゛ を使うことになるとは思ってもみなかったな・・・。長生きはするものだ。」
そう言い放ち、すぐさま調理をし始めた。素晴らしい手際の良さに呆気に取られた。
スキルって便利だなー。
「すきるってべんいだなー。」
「っハッハッハ。スキルは所謂経験と記憶の賜物だからな。それなりに努力すれば貴様もすぐに色々なスキルを獲得出来るぞ。」
じゃあディガライさんは前に料理をした経験が・・・??
「じゃあディガライさんはまえにりょーりをしたけいけんが・・・??」
「己は無いな。昔、人間が ゛ 調理スキル ゛ を使用している所を何度も見たことがあってな、そしたらいつの間にか獲得していたな。」
おい、努力って・・・努力ってなんだろうな。いくら何でもこの獣万能すぎるだろ! 見ただけでスキル獲得なんてあるのかよ!?
半分呆れ顔で料理が出来ていくところを観察する。6mは優に超えていた豚に似た顔の魔物は、今は肉塊へと変貌し、見ているだけで食欲をそそられる。
前世も含めて、人生で初めての解体を目の当たりにした。
今更だが、魔物って食べられるのか。
゛ 調理スキル ゛ の獲得条件が揃いました。獲得しますか?
可 (女神の加護) 不可
急に眼前に文字が浮かび上がってきたので、驚いて尻餅をついてしまった。いくら何でも、観察するだけでスキル獲得できるって何だよ!? 可 (女神の加護) って何だよ!!
ディガライさんはすっかり料理することに集中していて、こちらの様子に気づいていないようだ。
うーん、やっぱりこんなに早くスキルを手に入れられても気後れしそうだし、今は獲得しなくってもいいか。
そう思い、不可を押したのだが・・・反応しない。
ポチ、反応しない。
ポチ、反応しない。
ポチ、反応しない。
・
・
・
痺れを切らして可を押したら、こっちは反応した。なんだこれ・・・女神様の嫌がらせかよ!? それとも故障か?
゛ 調理スキルC ゛ 獲得
その文字を見て、若干これからの人生のことが不安に思ってしまった。
「おお! 貴様も獲得したのか! 流石は女神の加護だな。」
ようやくディガライさんはこちらに気づいたようだ。満面の笑みで話しかけてきた。あれは加護というより過保護だな。
スキルってこんなにも簡単に獲得出来るものなのか?
「すきうってこんなにもかんたんにかくとくできうものなのか?」
「ふむ。スキルにもよるな。Rスキルは獲得条件が特殊ゆえ、獲得できるのは極わずかな者だけだ。
だが、人間が一般的に使用する ゛ 生活スキル ゛ と呼ばれるものは比較的獲得しやすい。個人差はあるがな。
反対に ゛ 魔法スキル ゛ の獲得条件は発動できるのに充分な魔力があるか、そして、それを使いこなす器用さを必要とされるゆえ、そう簡単には獲得できないのだ。」
流石ディガライさん。歩く辞書の如く、ペラペラと答えてくれた。
補足として、スキルは何百種類もあると言っていた。具体的な数は誰も把握できていないようだ。
略すと生活で使用するようなスキルは簡単に獲得できるが、魔法スキルは難しいってところか。
そういえば、昨日使った魔法って・・・
「そういえば、きのうつあったまほおって・・・」
「あれは属性確認と、属性安定のために開発された魔法だな。大人ならともかく、子供が属性の安定していない状況でスキルを得てしまっては危ないため作られたそうだ。
スキルステータスを確認してみるがいい。
火、水、土、風属性を獲得しているだろう。
今日は腹ごしらえをしたら、その四属性で獲得できる基礎スキルを教えるぞ!」
どうしてそんなに詳しいんだ?
「どおしてそんないくわしいんら?」
「なに、己には鑑定Sがあるからな。それに己は昔から記憶力がいいからだろうな。知恵があることはいいことだぞ。そうだ、己の武勇伝の話しでも──────」
「すてーたすかくにん!」
長くなりそうだったので、遮った。ちょっとしょんぼりしていたようだが、特に気にしないようにしよう。
ユアド (女神の加護)
性別:♂
年齢:不明 (女神の加護)
種族:不明 (女神の加護)
属性:火 水 土 風 (+不明) (女神の加護)
HP:500 / 500
MP:1500 / 1500
Rスキル:分解(Lv1)、蓄積(Lv1)
Sスキル:なし
Aスキル:なし
Bスキル:なし
Cスキル:身体強化、身体硬化、鑑定(微)、調理
おお、本当に属性が四つ加わっている! でも、不明はまだ付いてくるのか・・・それに、ちゃんと調理スキルも表示されているようだ。
調理スキル、あまり使わなさそうだな。
ステータスを確認しているうちに、料理が出来上がったようだ。
庭にある調理器具から、香ばしい匂いが漂う。この匂い・・・焼肉だな! ・・・いや、俺離乳食しか食べられなくないか?
申し訳ないけど、俺には歯ごたえがありすぎて食べられないと思うのだが・・・
「もおしわけないけど、おれにははごたえがあいすいてたべらえないとおおうのだが・・・」
「!? ・・・・・・・・・いや、そうだよな、分かっていたぞ。ふむ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・む!!
貴様の持っている身体強化を使ってはどうだ?」
「しんたいきょうか・・・」
そう呟いた瞬間、ゴッっと、ほんの少し体から何かを削られたような感覚がした。
「あれ、もしかして出来ている?」
どうやら身体強化をすると発音もよくなるようだ。今までの喋りにくい体とは大違いだ! 大人に成長した気分だな。・・・見た目赤ん坊のままだが!
「それでは食すとするか!」
「ディガライさんも食べるのか」
「幻獣は食べても食べなくてもどちらでも問題はないのだがな。」
「何で食べようと思ったんだ?」
「・・・食事は一緒に食べた方がより美味しく感じると聞いたことがあるからな。」
なんだこの獣、優しすぎるだろ!
二度目の人生初めての食事を終えて、魔法の訓練のため森の中へと移動することになった。
もちろん料理は完食した。舌がとろける程美味かった!