6話 [師匠と魔法の訓練]
川の流れる音が聞こえてきた・・・と思ったら、誰かのか細い声が聞こえた気がした。
ディガライさんは気づいていなかったようなので、気のせいだろうな。
『着いたぞ。』
そこには、洞窟でも檻でも崖の下でもなく、人の住む家が建っていた。
どう見ても人間が住む家にしか見えないのでかなり困惑した。
「どうした? 大丈夫か貴様。」
呆けている俺を不思議そうにディガライさんが問いかけて・・・って誰だ!?
今までディガライさんの上に乗っていたはずが、いつの間にかガタイのいい金髪のお兄さんの腕の中にいた。すごい筋肉だ。
「・・・」
「・・・?」
暫く見つめ合っていたが、ああ、現実を受け入れようではないか。この筋肉、ディガライさんだ。間違いない。
右耳にあるコバルトブルーの三角形のピアスが証拠だ。
人にもなれるのか・・・
「ひとにもなれうのか・・・」
「当たり前だろう? 己にとっては赤子の手を捻るより簡単なことだ。」
・・・本当に捻ったりしないよな?
「・・・ほんとーにひねったりしないおな?」
「・・・・・・・・っハッハ。ものの例えだ。」
その沈黙がなんか怖いぞ! でも、もし捻られそうになってもか弱い俺には抵抗などしても無駄なのだ。
実力の差がありすぎるからな!
「だが、これから己が貴様をとことん鍛え上げるつもりだから安心せよ! 貴様は捻られる前に捻り返す覚悟を持つことだな!」
お、鬼めっ・・・
「お、おにめっ・・・」
どうやらこちらの世界にも、鬼 (師匠) はいたようだ。先輩運がとことん悪いな、俺・・・!!
「ふむ、それでは貴様の ゛ Rスキル ゛ を鑑定するとしようか。」
そう言ってディガライさんは俺を抱えたままリビングの椅子に腰掛ける。
「ユアド、貴様の能力を開花させよう。鑑定。」
分解(LV1)
魔力、物質、攻撃を自在に分ける能力。分解できる要素の数は熟練度によって変更される。
蓄積(LV1)
このスキル使用時に受けた魔法または物理攻撃を蓄える能力。蓄えた力は時間制限内であれば使用可能。蓄わえた力によってHP、MP回復も可能。許容量、時間制限は熟練度によって変更される。
「おおーーー!!」
ステータス確認をした時のように、文字が空中に浮かび上がってきた。
鑑定って便利だな! 俺の鑑定 (微) はまだCスキルだが、伸ばしがいがあるってもんだ!
ふーむ、それにしても蓄積ってすごいスキルだけど、わざわざ敵の攻撃を受けないと使えないのか? 新しい扉開いちゃったらどう責任とってくれるんだ女神様っ!!
んー、あとこの分解ってやつ、説明少なすぎてよく分からないスキルだな。
「ふむふむ。分解か。鑑定Sでもこの程度の情報しか引き出せないスキルとは・・・なかなか興味をそそるな。」
ところで、鍛えるって具体的には・・・
「ところえ、きたえるってぐたいてきにあ・・・」
「っハッハ! よくぞ聞いてくれた! 貴様の赤子の体では肉体的な鍛え方はあまり出来ないだろうからな・・・魔法の訓練をしようか! 着いてこい!」
そう言って俺を椅子から下ろし、今まで着ていた白いブカブカの服から、動きやすい服に一瞬で着せ替えさせられた。流石魔法!
俺はおぼつかない足取りでディガライさんに着いて行った。
魔法の訓練かー! やっぱり ゛ Rスキル ゛ を試してみたいよなー!
「先に言っておくが、これから教える魔法は基礎だけだぞ。貴様は何も知らない赤子だからな。魔法の調節も教えねばならないな。」
うおっ、お見通しでしたか。うん、基礎って大事だもんな。
「とはいえ、貴様の属性が分からないからな、いろんな魔法を試してみるか!」
そうなんだよな、俺の属性って不明 (女神の加護) だもんな。
「まずは炎の魔法を使ってみるか! 手本を見せた後、真似をせよ。」
無茶苦茶だ・・・
「むちゃくちゃだ・・・」
俺の意見など聞く気のないディガライさんは即座に赤い炎を手の上に出した。
「・・・な?」
なにが な? っだよ! それでどうやれというんだこの獣っ!
一応人生初めての魔法なんだぞ! 見様見真似で出来るヤツなんて天才以外いないだろ。
ぐ、具体的にはどんな感覚でやれと・・・?
「ぐ、ぐたいていにはどんなかんかくでやえと・・・?」
「手のひらに精神を集中させて、ボオッだ!!」
師匠を間違えた気がする・・・だが、やらないと何か言われそうだからやってみよう! 当たって砕けろだ!
集中、集中・・・手のひらに、集中・・・
・・・何も起こらないな
「・・・なにもおこらないな」
「想像力の問題だな。炎のイメージが完全じゃないんだろう。」
炎、熱い感覚・・・熱・・・。体内の熱を放出するようなイメージか?こう、なんというか・・・
ボオッっと!
「ぼおっと!」
そう言ったと同時に、巨大な火柱が手のひらに・・・あっちい!! あっつ!!
「やりすぎだ阿呆め。」
水の塊が空から降ってきた! 火柱が消え、俺とディガライさんはびしょ濡れになった。
ディガライさんもやりすぎだな・・・
「ディガライさんもやいすぎだな・・・」
「・・・。誰でも間違えることはあるものだ。」
「ヴァッ!!??」
変な声が草むらから聞こえてきたが、無視することにした。
それから俺は水の魔法、土の魔法、風の魔法を伝授された。
どれも想像力が豊かすぎるせいか、大惨事になりかけたが、ディガライさんは想定内だと言ってくれた。
たまに聞こえてくる変な声は、とりあえずスルーだ。
今日一日で得た魔法は、スキルになるほどのものではないらしい。
スキル対象の魔法がどんなものかよくは分からないが、取り敢えず頑張っていこうと思う。
「ヴァッヴァ!」
ディガライさんに用意された結構広い部屋で今日は寝ることになった。
外から何か聞こえてくるが、幻聴だろう。そうだろう。
こうして俺の新しい人生の1日目は終わった。明日から訓練で忙しくなるな! 気合入れていこう!