2話 [判決の間の異世界転生門]
「さて、そろそろ順番ですねぇ。」
やっと、゛判決の間゛に行く順番になった。閻魔様とかがいると聞かされたが、一体どんな人だろうか。きっと屈強な戦士風の人だろう!
と考えていると、今までいた゛判決の保留所゛から一瞬にして長い廊下へと転移したようだ。この男、絶対強い!
「・・・閻魔様がお作りになられた転移の鍵と呼ばれるもので長廊下へ移動しました。
言い忘れていましたが、貴方、考えていることが顔から滲み出てますよ。」
それはただ単にこの人の洞察力がずば抜けているからでは・・・
「あ、そうだ、そういえばまだ自己紹介まだでしたね! 俺は神庫 晶 です。」
話題を変えてみたが・・・うん、なんだその憐れむような顔。そんな顔で見られたらお嫁に行けない! 行く気もないけど・・・
「・・・はぁ。名乗るなんて何百年ぶりでしょうかねぇ。私の名前はウェルス。ただの案内人ですよ。」
物好きな人もたまにはいますよねぇ。とか呟いていたが、俺はこのウェルスさんが少しだけ喜んでいるように見えた。まぁ、きっと錯覚だろう。
当たり障りのない話をしながら歩いて約5分・・・何故かすごく長く感じた。
「それでは、案内人の私はここまでしかお供できませんので、お別れです。天国行きになることを祈ってあげますねぇ。」
そっか。なんやかんや親しくなれたような気がしたから、名残惜しいな。
「ありがとう。じゃ、また会いましょう。」
「貴方がまた、死んだ時にねぇ。」
やっぱりウェルスさんは最初から最後まで食えない相手だった。
大きな扉が自動で開く。こんなでっかい自動ドア初めて見たよ。しかも両開きドア。
ウェルスさんが言うには、゛判決の間゛の左奥に見えるこれまたドデカイ扉が異世界転生門らしい。何重にも施錠されていて、禍々しいオーラを感じる。なんだありゃ。いや、異世界転生門だけども・・・
「神庫 晶。そなたは暴走車に轢かれたそうじゃの?」
若いような、老いたような、女のようで男のような不確かな声がどこからか聞こえてくる。
どこだ??
キョロキョロしていたら、声をかけられた。
「こちらじゃ。おかしな人間じゃの。」
そこには、ただの球体が浮かんでた。丸々とした青玉だ。
いや、違うだろうが、これが閻魔様ではないよな。うん。
だってあの転移の鍵とかわけわからんものを作れるくらい凄い人らしいじゃないか。
こんな球体なわけない。断じてない!!
「えーっと、失礼しました。俺は確かに暴走車に轢かれて死にました。」
球体に背を向けて、まだ見ぬ閻魔様に話しかける。さーて、閻魔様はどんな姿をしているんだろうなー。
「カハハハハハ!! そなたは分かりやすい奴じゃの。この球体が閻魔・・・わしじゃよ。」
幻聴が聞こえてくるようだ。なんて現実逃避している場合じゃない!! この球体が閻魔様だと・・・どんなからくりで喋っているんだ・・・
「ああ、すまんの。そういえば人間は魂を見ることが出来ないんじゃったの。この姿のほうが楽なんじゃよ。わしの魂は強い、それゆえそなたも見れるのじゃよ。この姿はわしの魂じゃ。言うなれば仮の姿・・・じゃの。」
「これが魂、ですか・・・球体・・・」
閻魔様のこの姿は仮の姿なのか。よかったよかった。俺の中の゛閻魔様像゛が崩れずに済んだ!!
「そなた、結構失礼なこと考えているじゃろ?? ・・・まぁよい。赤点ギリギリ合格じゃ。[天国一等地]行きじゃの。面白いやつじゃから特別じゃ。」
赤点ギリギリにしては破格の待遇だな・・・
そう思った直後、ガシャンと大きな音が立て続けに何度も何度も聞こえた。
「まずいぞ、あの音は・・・神庫 晶、逃げるのじゃ!!」
その焦った声が、俺に届くことはなかった・・・。
代わりに誰かの笑い声が聞こえたような気がした・・・。懐かしい声だった。
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「ん?? ・・・ここは、天国・・・・・・なわけないよなーっ」
見渡す限り木、木、木!! しかも見たこともない種類の木だ。大地をうねるような根に、木の幹は入り交じりカオス状態だ。
どうやら俺は霊体のままどこかに飛ばされたらしい。
────うぁああ・・・うぁっあ・・・
産声?赤ん坊か? 近くから聞こえてくるが・・・どこだ??
────うぁ・・・う・・・
次第に弱くなっていく産声に、俺は焦った。どうやらすこし奥の方から聞こえてくるようだ。
足を動かさなくても、霊体は意図したところへ行けるから便利だ。しかも疲れない!!
すこし開けた草むらに、声の主はいた。やっぱり、赤ん坊のようだ。どうすることもできずにオロオロする。そうだ、今思い出したけど、俺今幽霊じゃん!!
「誰かいませんかーー!!」
俺の声は誰にも聞こえないと分かっているが・・・見殺しになんかできるわけない! 出来るやつはウェルスさんくらいだな!!
だめだ。何度か無駄だと分かっていても助けを求めたが、やっぱりダメだった。このままじゃ、この子は・・・。
その時、後ろから葉擦れの音が聞こえた。風か・・・??
「ピィィィィイイイイ!!!!」
目の前に現れたのは、俺が助けを求めていた相手とは正反対の相手だった。
その鳥は全長2m、青と黄色と赤い羽に緑色の瞳・・・それはあちらの世界にはいないはずの生物だった・・・
「俺、異世界に飛ばされた!!??」