没にしたプロローグ
異世界転生学園日常ものの没にしたプロローグ
「おい、本当に大丈夫なのか?」
複数の影が暗がりに怪しくうごめく。その声を聞き、先頭の影が立ち止まる。
「大丈夫だ。『あいつ』はここにいない。ヤるなら今しかない」
そう返すと再び動き出す。暗がりをすすむ影達は重要なミッションをこなすために動く。必ず成し遂げなければならぬミッション。それは彼ら自身が成したいもの。目的地の光が差し込んでいる一角まであと少し。
ドンッ
「いってぇ!おい!急に止まるなよ。」
先頭の影が急に止まったせいで後からついてきていた影がぶつかる。瞬間、先頭の影が声を上げながら反転。
「ミッション中止!全力で逃げろ!」
「おい!どうしたんだ!」
月明りを遮っていた雲が晴れる。そこには影達にとっての天敵、短く切り揃えられた赤髪にスレンダーな、浴衣を着た少女がいた。
「コォォォォラァァァァ!!逃げるなぁぁぁぁ!!!!」
少女が大声を上げる。その声に反応して蜘蛛の子を散らすように後続の影達が逃げ出す。
「クソッ『あいつ』はいないんじゃないのかよ!」
逃げ出した影が悲痛に叫ぶ。赤髪の少女が逃げる影達を追う。あっという間に距離を詰めた少女は影の一人を捕まえた。捕まった影が月明りに晒されると、それは少年と言えた。
「どうせ首謀者はカイでしょ!どこに逃げたの!」
捕まった少年は暴れて抵抗しているが少女の力が強いのか抜け出せずにいた。少女は何も言わない少年にしびれを切らしたのか詰め寄る。
「突き出されて折檻を受けたいの?首謀者はどうせカイなんでしょ。事前に防げたから今の騒ぎを知っているのは私とあんた達だけ。カイさえ差し出せば不問にするわよ?」
少年は少し逡巡した様子で口を開いた。
「わかった。ほんとに不問にしてくれるんだよな?」
「もちろん。いつものことでしょ。さあ連れてきなさい」
少年の言葉に少女は答える。その言葉と共に解放された少年は一目散に逃げ出す。しばらくして逃げた少年が淡く青みがかった銀髪の少年と共にやってきた。少女はそれを認めると後ろから一息で近づき華麗にサイドヘッドロックを極めた。
「捕まえた!あんたお風呂覗こうとしたでしょ!」
「痛い痛い!この頭にあたる微妙な柔らかさはミアか!他のやつを追っていったから今なら覗けるんじゃなかったのか!まさか謀ったな!」
「胸の感触で判別するな変態!チクらないことを条件に連れてきてもらったのよ。恨むなら自分の人望のなさを恨むのね」
捕まった少年は逃げ出すのを諦めたのかおとなしくなった。この少年を連れてきたものは巻き込まれるのを恐れてかいつの間にかいなくなっていた。
「あんたはなんでいつもスケベなことしかしないの。だいたい魔術も剣術もできて身体能力は高いし座学は常に上位で頭もいい。これで紳士的だったらいいのにスケベなことばっかり。もっと良いことにつか『きゃあ!』」
悲鳴が聞こえ、少女が気を取られた隙に少年はその腕から逃げ出す。
「胸の感触はもっと味わっていたかったが説教は聞きたくねえ!悲鳴はどうせ鈍感イケメンがラッキースケベしただけだと思うが、違うかもしれない。ミアははやくいかなくていいのか?」
少女はグッと少年をにらみつけると声のした方に走っていった。
「ははは!今回はミアの胸の感触とパンツが見られたからこれで満足しよう!髪の色とは反対の水色はとてもグッドだったぞ!」
そうして笑いながら暗闇の中に消えていくのだった。