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コウコウノキミ   作者: T.N
6/7

5話 誤解

文化祭の余韻も薄まり、

僕達は非日常から日常へと戻った。


僕にとっては日常となっていた上田さんとのメールは、

いつの間にか途絶えていた。


どちらともなく連絡をしなくり、

すれ違っても軽い会釈のような事をするだけだった。

僕の心は薄いモヤがかかっていた。


そんな日々が2週間ほど続き、テスト週間を迎えることになる。

これはチャンスだと思い、僕は上田さんにメールを送る。

いつもよりも時間がかかって返信がくる。

勇気を出して、一緒に勉強をしようと誘った。


「私で良いの」と意味深な返信がくる。


二つ返事で答える。


喜びのせいか足をバタバタさせて、母親にうるさいと怒られた。


次の日の学校終わりに、

学校からちょっと離れた公園で待ち合わせをした。

僕は誰にも絡まれないように

すぐに学校を出て待ち合わせの場所についた。

公園では幼稚園にも通ってないだろう子供を連れた母親達が数名いた。

少し離れたベンチに腰をかけ、遊んでいるこどもたちを眺めていた。

小さな子供が滑り台を1人で滑ると言い出したようで、

母親も少し緊張した顔で見守っていた。


僕も息をのんで見守る。

ケガもなく地上へ降り立った。

ホッとした所で、ベンチに深く座り直した。

隣に上田さんがいたのに気がついた。


驚いて変な声を出してしまった。

母親達がこちらをみたので、少し恥ずかしくなった。


いつからいたのですか?と変な敬語で喋りかけた。

文化祭の魔法も無くなり、とても緊張してしまっていた。


滑り台を集中して見ているときに、

彼女は来たようだった。

だが、僕が気づくまで待っていたようだ。


僕達は勉強の許されているファミレスに向かうことにした。

食べ物とドリンクバーを頼み、教科書を開く。

まずはテストの日に提出する数学のワークをする。


集中できない。


それもそう。目の前には上田さんがいる。


僕はワークを閉じた。

上田さんは既にワークを閉じていた。

上田さんは口を開く、

「文化祭、楽しかったね」


そうだね。とぶっきらぼうに答える。

楽しかったのは事実だが、上手くリアクションが出来ない。

先輩達を見てると、カップルで回ってる人が多かったね。

と何も考えなく口に出した。

間髪入れずに、俺もそんな文化祭を楽しみたかった。と口に出して、

すぐに後悔した。がっつき過ぎにも程がある気がしたからだ。


上田さんは

「いないの、彼女」と聞いてきた。

いないよ、いるわけない。と強めに僕が答えた後

彼女は「そうなんだ」と少しだけ嬉しそうにしていた気がした。

それから上田さんは笑顔で話してくれるようになった気がした。

何となくだけど。


その日以外、上田さんと勉強することは無かった。


だけど、勉強会の夜に上田さんからメールが来た。

他愛もないメール。

僕にはそれがとても嬉しかった。


テストが終われば夏休み。

だけど、夏休みに二人で何かがあった訳ではない。

高校一年生の夏は。


ただ、メールは続いていた。


そして、2学期が来る。


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