4話 文化祭
文化祭の準備期間が2週間ある。
僕は部活をサボるために積極的に参加した。
文化祭の準備の時には、
クラスメイトのショウ、ヨッシー、そしてシゲと行動していた。
他のクラスへの偵察という名目で女の子と話に行く。
この時、思っていたよりも可愛い娘が多いと気づいた。
それでも僕にとって上田さんを越える衝撃を
与えてくれた人はいなかった。
文化祭の準備時間に
上田さんを見かけることはなかった。
授業で一緒になる以外、
上田さんを見かけることはなかった。
上田さんはバスケットボール部で
部活の時には時々見かけたりするのだが、
文化祭の準備期間中は部活に行っていないので
それすらもなかった。
僕が上田さんを見かけたのは文化祭当日である。
~文化祭~
僕の高校は、平日に保護者向けの文化祭と
休日に誰でも入れる文化祭を1日ずつ設けてある。
今日は休日の方の文化祭だ。
僕はシゲと二人で回りながらワイワイ楽しんでいた。
一年生は売店というよりも展示系の方が多いので、
各クラスの展示を見ながらノンビリしていた。
とあるクラスを出ようとした時、前に人が現れた。
「ごめんなさい」と避けようとしたら、声をかけられた。
「あのっ!連絡先を教えていただけませんか?」
僕は耳を疑った。
シゲにではなく、僕にその言葉が来るとは思ってもみなかったからだ。
呆気に取られたまま、僕達はこっそりと連絡先を交換する。
彼女の名前は「東 莉子」(あずま りこ)。
別のクラスの女の子。
そのまま15分くらい楽しく会話をしていた。
人見知りの僕も文化祭の魔法にかかって積極的に話すことが出来た。
廊下で話していたのだが通りすぎる人の中に上田さんを見つけた。
僕だけだろうか?
何となく目が合った気がしたのは
それから東さんと話していても、僕の心は上田さんでいっぱいになっていた。
早く上田さんと話したいという気持ちになり、話を切り上げ足早に後を追った。
シゲは僕の早歩きを不審に思いながらも、着いてきてくれた。
上田さんはごっちんとベンチに座っていた。
それを見るなり、シゲは何となく察したようだ。
バスケ部は男女関係なく仲良しだったりするので、
何となく知っていたのかもしれない。
僕は上田さんに話しかける。
「はじめまして!
ってなんか不思議な感じだけど、~。笑」
と文化祭の魔法にかかっている僕は乗り気で話をする。
上田さんもそれに返答してくれるのだが何となく素っ気ない感じがした。
メールの時とは雰囲気が違う。
察しの悪い僕は、
人見知りだもんな~なんて呑気に考えていた。
体感5分もせず、上田さんは去っていった。
僕はなんだかやるせない気持ちになってしまった。
文化祭で話しかけるというミッションはクリアした。
しかし、心のどこかにチクッと何かが刺さったまま。
こうして1回目の文化祭が終わった。