5話 勇気の選択
なんやかんやと豪華な部屋に連れて行かれ、会話できない君と素数君が中心に片言おじいちゃんと話を進めることになった。ちなみにオレは何言ってるかさっぱりなので黙っている。片言おじいちゃんにはオレが異世界の言葉がわからないことを伝えてもらっている。
「なるほど。では3日後に改めて各々の意志を確認するということで。まあ、聞かなくて決まっているとは思いますがね。僕たちはこの世界を救いに来たのですから!」
(……お、話し合いは終わったっぽいね)
「それで、えっと何君だったかな?………ん?そういえば自己紹介をしていなかったね。僕は一番星だ。よろしく!」
(…………あんだって?今こいつなんて言った?トップスター?……あれか、キラキラネームってやつか?ふふ…かっこいいっすね、はい)
「僕は佐藤二郎と申します。よろしくお願いします。」
(こっちは対照的に普通だな、おい。普通なのは良いんだけど、トップスター君のせいでギャップがすごいなぁ…)
「オレは橘勇気だ。よろしく。」
「それで、勇気君。君には僕が事情を説明しようと思ったんだが、あの人が直接説明したいそうだ。だから君はここに残ってもらう」
「え?でもオレこっちの言葉は話せないぞ?」
「あの人は日本語がわかるらしい。だから大丈夫だろう」
(あの片言の感じかーまあ、いいか)
「おっけー。最後に3日後がうんたらって言ってたから次は会うのは3日後?」
「そうだ。まあ、答えは決まっているとは思うけどね!じゃあ、また3日後に」
そう言ってトップスター君と佐藤二郎は部屋を出て行った。
「えーと、それでなんか説明してくれるって話らしいんですけど…」
「エエ…ソレデは説明サセテクだサイ」
片言おじいちゃんーいや本人曰くこの国の王様が言うにはここはオレからいわゆる異世界らしい。オレたち3人はいわゆる魔王を倒すために呼んだそうだ。ここに呼ばれるやつらは大抵特殊能力を得るらしい。稀によくオレみたいに特殊能力がない人もいるとのこと。言葉が通じない人のために日本語の練習をして少し喋れるそうだ。ちなみに王様の名前やこの異世界の名前等の固有名詞は聞き取れなかった。
(なるほどなるほど…いろいろわからんことも多いけど、とりあえずそういうことはそこら辺にぶん投げておこう)
「なるほど…んーとそれでオレは特殊能力もなんも持ってないハズレなわけですが、どうするんですか?」
「ソノコトにツイテハアナタに選んでモラウ。ニホンに帰るか、それともコノ世界で戦うかヲ」
「はあ…いや、日本に帰るに決まってるじゃないですか」
「ソノ場合は×××が倒サレルマデカエレナイ」
(なるほどねーはやく帰りたいなら魔王的な倒すやつを倒すために戦えってことか。しかも雰囲気的に戦わないと何も補助してもらえなそうだな…はあ…実質答えは一つじゃん)
「答えは今ジャナイ。3日後アラタメテキカセテモラウ」
「あー、だからあいつ3日後って言ってたのな…わかりました。それじゃ、3日後までゆっくり考えさせていただきます。では、失礼します」
そう言ってとりあえずこの部屋を出ようとした。
(流石にこれ以上王様と2人きりは気まずいし、疲れる…どこ行けばいいかわからんけどささっと出たい)
「マッテくれ!」
そう言って王様は正座をして頭を床につけた。
(え…土下座?……何これ怖い。戦ってくれってとか言うパターンかな?)
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
ーーー3日後ーーー
オレたちは朝早くに玉座に呼ばれた。玉座は王様の姿に見えるように周りよりかなり高い。周りには騎士や一般の人が大勢いる。今は王様が長々とあいさつしている。これの後に「宣誓の儀式」がある。
(うわー…ここで戦わないとか言ったらどうなるんだよ…戦えって言ってるようなもんじゃん)
オレたち3人に一本ずつ剣が渡される。「宣誓の儀式」とは英雄として戦う場合、剣を掲げて戦うことを誓う。戦わない場合、剣を地面に突き刺すらしい。
(なんでこんな面倒なことするんだか…トップスター君は目をキラキラさせてるし…はあ…)
王様のあいさつが終わり「宣誓の儀式」が始まる。1番手はオレだ。
(めっちゃトップスター君が睨んでる…名前通りに1番が良かった感じかねぇ…)
オレはノリ気がしないまま、王様の元へ向かう。そしてオレは王様の目の前で剣をーーー。
「ーーーーーーーーーーーーーーー!」