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3/3

♯3

これで終わりです。元々は短編予定でしたが、中途半端だったので、三分割にしました。

「来たか」

「お前もガルドか?」

 銀髪の後ろにはバッツが立っていた。彼は腕を鳴らしていた。久しぶりの獲物に息巻いている様子だ。

「私はミッシュ。あなたと同じ兵士ガルドです。まだまだ転生回数は100を超えぬ新米ですが、どうかお手柔らかに」

「ほう、じゃあ、先輩からの指導だ」

 バッツはアスファルトを蹴り上げると、神速の勢いで、ミッシュと距離を詰めて、その顔面にパンチを放った。

「おおっと」

 ミッシュは拳を避けると、虚空から金色のレイピアを出現させると、それを握り締めて、右に大きく薙ぎ払った。

「ちっ」


 バッツは後方へ跳んでそれを避ける。すると、今度はミッシュの方から彼へ向かって行き、無数の突きを放った。

「そらそらそらそらあああああ」

「速い。それでいて重いか」

 バッツは両手をクロスさせ、顔面だけは防ぐものの、全身には無数の切り傷が広がり、朱色に染まっていた。

「素手で挑んでくるとは。武器はどうしました?」

「転生する時に、ドリームランドに置き忘れた」

「ふん、ならば、死んで取りに行きなさい」

 再び、ミッシュの斬撃が始まった。

「くそ、武器無しではどうしようも無い」

 バッツは防御を捨てて、ミッシュに殴り掛かった。ミッシュの鼻先にバッツの拳がぶつかると同時に、バッツの左腕が宙を舞った。


「ぐああああ」

 ミッシュとバッツは同時に後ろへと吹き飛んだ。

「ふふ、パンチ一発と左腕一本とは、これでは等価交換とは言えませんね」

「そうだな。しかし、俺もそろそろ本気を出すぞ」

「本気とは、片腕でどうするのか」

「さあ、どうするかな」


 バッツはニヤニヤと薄笑いを浮かべると、急に真剣な顔つきになり、全身に力を入れた。

「魔力が凝縮していく。まさか・・・・」

 ミッシュがその場から逃げようとした刹那、バッツの失った左腕のあった窪みが金色に輝いた。

「ガルドにはとっておきの切り札があったな。それを秘法と呼ぶ」

 バッツの左腕の窪みから、金色の刃が飛び出した。

「秘法・スターライトセイバー」

 バッツの左腕から、金色の刃が巨大な光線となって、ミッシュの元へと一直線に放たれた。

「ぐう、うううああああああああ」

 ミッシュの上半身が呆気無く消失すると、光線はそのまま、ミッシュの背後にそびえ立っていたビルを消し飛ばし、空の彼方へと消えて行った。

「うう、力を使い過ぎたか」

 バッツはそのまま前のめりに倒れた。


 しばらくして、彼は柔らかな感触を後頭部に感じ、目を覚ました。

「君は・・・・?」

「終わったんだね」

 美雪がバッツに膝枕をしていた。

「ああ、しかし依頼は失敗だ。蛇腹は死んだ」

 バッツは言いながら、ポケットからペンダントを取り出すと、それを美雪の首に掛けた。

「やはり、君にはこのペンダントが似合うな。依頼は失敗だ。ゆえに、報酬は受け取らない。そして、どうやら俺も終わりのようだ」

 バッツの肉体から白い羽のようなものが散って、空に舞った。

「ああ、綺麗ね」

「ふ、死ぬのは怖くない。もう2000回目だ。今日は記念日だな」

「本当にありがとう・・・・」

「次の依頼はもう少しライトなやつにするか。そうだな、公園のゴミ拾いが良い。それか、ペットの餌やり・・・・」


 バッツは言いながら、フフッと自虐的に笑うと、そのまま動かなくなった。そして、白い羽に包まれて、その肉体は、文字通り、肉片一つ足りとも残さずに消えてしまった。

 死に行く瞬間、バッツは自分がまだ人間であった頃のことを思い出した。燃え行く村、その真ん中でボロボロの布切れを纏ったまま、茫然と立ち尽くす少年がいた。

 全てのガルドには悲願がある。それの成就こそがガルドになった動機であり、無限の生を繰り返す意味でもある。彼の悲願は何だったか。

「そうだ、世界平和。ふふ、我ながら幼稚な悲願だ。自分の故郷の村を山賊に焼かれ、無残に死んだ少年は、世界平和を願い、それを叶えるためにガルドになったんだったな」

 バッツは消え行く刹那、美雪の平穏を願いながら静かに眠った。次の世界への期待を胸に。

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