失敗談その2
タイトルが『酔いどれ日記』なので、ウィスキーを飲みながら一話。
その昔、まだ私が健康体で会社員だったときのこと。
チームの飲み会に上司が現れ(一体なんでわかったんだろう?)、焼酎を一升キープしてくれた。
そこに至るまでに大分飲んでいたが、そういうときだけ体育会系な私はしこたま飲んだ。
で、例によって帰りの記憶がなかった。
気付いたら地元の帰り道をチャリでフラフラと走っていた(皆さんはやっちゃいけません。飲酒運転、ダメ、絶対。)。
すると、私の前を若者が道をふさいでチンタラ歩いている。
避けなければ、と思った私は、避けすぎた。
通りにあった、あるお店にチャリで突っ込んだのである。
その名も『ぶっとび倶楽部』。
ぶっとびすぎである。
入り口のガラス扉を突き破り、ずっこけた。
当然だが、店舗の二階に住んでおられると思われる老婦人が、頭にカールを巻いたまま飛んできた。
私はパニックである。
とりあえず、自分が怪しい者ではないことを伝えなければ、と酔った頭が判断し、謝り倒しながら保険証と免許証を提示した。
「すみません!ほんとすみません!私こういうものです!破損したところは弁償します!ほんとにすみませんでした!」
捲し立てる私に、老婦人も心配になったのだろう。
深夜である。
入り口を突き破ったチャリは倒れ、私は酒臭かったに違いない。
「おねぇちゃん、大丈夫か?救急車呼んだろか?」
「いえ、全然大丈夫です!電話番号残しとくんで、修理代請求してください!」
もう必死である。
「帰れるか?大丈夫?」
老婦人は最後まで私を心配してくださった。
散々頭を下げて、老婦人に見送られて店舗を出た。
....足首が痛い。
チャリを押して一歩踏み出して、激痛にまた転びそうになった。
でもとにかく帰らねば。
歩くよりチャリをこぐほうが楽だったので、すっかり酔いの覚めた私はチャーっとチャリにまたがってなんとか帰宅し、そのまま寝た。
翌朝。
足が立たない。
よくみたら紫色に腫れている。
ヤバい...。
折れてるかもしれん。
それに、飲み屋で会計した記憶もない。
財布を見ても減っている気配もない。
やらかした....。
親に事情を話せるわけもなく、転んで足を捻ったから病院に連れていってください、と半分嘘をついて車を出してもらった。
二日酔いで頭はグラグラ、海苔1枚食べただけでトイレから出てこれない状態でもある。
それでも、足が折れていたら仕事に支障を来す。
真っ青な顔で酒臭い息を吐きながら病院へ向かった。
「何かあったんですか。」
足を診てくれた医師は言った。
勿論ほんとのことなんぞ言えない。
私もまだその頃は恥じらいある(?)20代前半である。
「階段を踏みはずしまして....。」
「レントゲンとりましょう。」
「はいすみません.....。」
まぁ結果は靭帯が伸びきってしまっているだけで、骨折は免れたのだが、問題は月曜日である。
朝礼後、「Nセンター長に皆さんお金払ってください。もう....あんなんあかんで」
.....相当だったらしい。
散々飲み倒した挙げ句、会計丸投げで帰ってきてしまったようだ。
朝一でセンター長に頭を下げに行ったのは言うまでもない。
飲兵衛とは恥をかいてなんぼではある。