焼き鳥の話
鳥類が嫌いだ。
もう遺伝子レベルで嫌いだ。
焼き鳥は食べる。
唐揚げも作る。
でもとにかく原形を留めた鳥には触れない近寄れない愛せない。
飛ぶのである。
とても意思の疎通ができそうにない目をしている。
たまに首がボコッと膨らんだ鳩がいる。
こうして書いている間にも身震いがする。
なのに夢によく鳥が出てくる。
ビルよりデカイ金色のニワトリに踏み潰される夢。
ゴジラより怖い。
どこかの田舎で、鳥鍋をするからニワトリを捌けと、ニワトリと鉈を持った老婆に追い回される夢。
老婆込みでひたすら怖い。
私は足が遅く、学生時代で50m10秒代だったが、ダチョウに追いかけられたらどこまでも逃げ回る自信がある。
そのくらい鳥類が嫌いである。
ところが、妹はやたらフクロウが好きなようだ。
嬉々としてフクロウ喫茶に通い、フクロウのやたらリアルなぬいぐるみのついたヘアバンドを愛用し、家でフクロウを飼いたいという。
もう出ていくしかない。
母もやはり鳥類嫌いで、私の鳥類嫌いは母からの遺伝だと思う。
そういえば亡くなった祖母も駅の広場で鳩から逃れるべく右往左往していた。
うん。遺伝だ。
妹はどこかおかしい。
これだけ鳥類が嫌いな私だが、一度だけ、ある文鳥に同情したことがある。
友人が飼っていた文鳥、その名は『焼き鳥』。
いつか食べる前提で飼われていたのか、そこらへんは怖くて聞いていないが、もし食べるつもりだったとしても、もう少しオブラートに包んだ名前を付けてやることはできなかったのか。
ある日、焼き鳥は脱走(脱飛?)して戻ることはなかった。
彼だか彼女だかわからないが、とにかく焼き鳥には幸せな鳥生を送って欲しいものだと思った。
勿論、私の目に入らないところでね。