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遺体

********


 そして、警察署内でも、異変は起こっていた。回収された遺体の司法解剖を行っている最中に機械が故障したり、ブレーカーが落ちたりなかなかスムーズに作業は進まなかったようだ。


「それで? あのご遺体の身元は割れたのか?」

「これはまだ、憶測ですが……あの家に住んでいた高坂ナツという老婆で、間違いないと私は思いますね」

「死因はなんだ?」

「絞殺のようです。朽ちてミイラ化していたものの、やはり犯行の痕跡はあったそうです」


 何者かに首を絞められて殺されて、何十年もあの廃屋で放って置かれたのかと思うと、刑事課強行係の山根は気の毒な気持ちになったのか? 老婆の遺体の写真に向かって静かに手を合わせていた。


****


 その夜のことだった。署内に泊まり込んでいた新米の若手の刑事が、宿直室でうとうとしていると部屋の外を何者かがパタパタと通り過ぎる音が聞こえてハッとしていた。


(なんだ? 誰かいるのか?)


 署内には、この若手の刑事の他にも数名各部署で泊まり込んでいる者がいるので誰かが部屋の外を通っただけだと、新米刑事は臆病な自分を笑って念のために外を確認していた。


********


 新米刑事が、時計を見ると時間は0時を回ったところで、署内は不気味なほどに静まり返っている。いくら田舎町の警察署だからと言っても、いつもならまだ人の出入りのある時間だった。


(気持ち悪いな……)


新米刑事が背中を丸くしながら、宿直室に戻るとそこには何かに怯えている別の部署の同僚が待っていた。


「どうした? 和田? 顔色悪いぞ?」

「中橋……マジでヤバイかもしれない」

「なんだよ! どうした? 何があったんだよ?」

「運ばれてきた遺体が消えちまった……」


 和田の言葉を聞いて中橋は、詳しく話を聞いている暇は無いと即座に判断して、急いで遺体の安否を確認するために和田と遺体安置室へ向かった。


「確認に行ったのはお前一人だったのか?」

「そうだ……」

「誰か不審者とか、すれちがったりしなかったのか?」

「……特に気付かなかった」


 和田の担当する部署も、この時間は中橋の部署と同じで泊まり込むのは一人のことが多いらしく、仮眠を取る前に最後の見回りに行ったのだが、肝心の遺体がどこにも見当たらなくてどうするか悩んだ末に中橋のところへ協力を求めに来て今に至るというわけだ。


********


 中橋と和田が遺体安置室へ入ると、確かに遺体が消えてどこにも見当たらなかった。


「仕方がないな……この事件を担当している山根さんに連絡しろ!」

「ああ、わかった! そうする。付き合わせて悪かったな……」


 遺体がどこかに消えてしまったことを報告するために和田が、スマホから上司の山根に連絡を入れようとしたその時だった。


【ヒヒヒヒヒヒヒ……】

「!?」


 耳元で気味の悪い笑い声が聞こえて振り返ると、そこには不気味な姿をした老婆が和田に掴みかかって来ていた。


「ウワァァァァァ―!! 来るな!! 来るな!!」

「和田!? どうした? どうしたんだ?!」


 老婆の姿は中橋には見えていない様子で、すぐ横で手足をバタつかせてパニックを起こしている和田を見て中橋は驚愕していた。


「どうしたんだ? 何があったんだ? おい? 和田!?」

「放せ!! 放せ!! やめろ!! やめろ!!」


 しかし、中橋の呼びかけは和田には全く届かなかった。和田は自分の両手で自分の喉下を掻き毟って血だらけになって力尽きて、とうとうその場で気を失ってしまった。


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