雲
子供達はほぼ真っ暗闇の中、空を見上げていた。
晴れることのない厚い雲の向こうを夢見ているのは、全員が戦争孤児で全員が裕福な家の幼い子供達だった。
やがて子供達は成長し少年少女になった頃、空への思いは募りその中の一人が集落を覆う越えてはいけない高い壁を越える。
あるはずの雲の終わりを探すために。しかし、壁を越えた少年が帰ってくることはなかった。
さらに少年達は成長し青年になった頃、青年達は自分達の境遇についてある予測を立てた。
厚い雲のせいで食物や資源に不安要素ができた大人達は争い、自分たちだけを残して死んでしまったのではないか。
実際彼らは地下倉庫の蓄えだけで生きている。
この予測により、ますます青年達は雲の向こうに執着し始めた。
そして大人になった子供達は雲を晴らす装置の開発を始める。
真っ暗ではないものの暗闇に近い闇のなかで集い、メモをとることも出来ないまま装置の開発とも呼べないような話し合いが進められた。
その内に火を発見して過去の専門書を見たり、それ以前に字を勉強出来るようになり技術は画期的な進歩を遂げる。
この頃には雲を散らすことに反対した者達も出てきたが、その声が皆に届く事はなかった。
何十年も時がたち、試行錯誤を繰り返された装置は遂に完成し空に向けてミサイルが発射された。皆が期待していた通り雲は割れ始め、時の経過により草に覆われた石碑がひっそりと照らされてゆく。
『我々は多くの人々を見捨て、この地に集い自分達だけを生き長らえさせた。
この雲は我々の罪の証なのだ。罪から逃れるために雲を消そうとすれば、人間は滅び跡形もなく消え去るだろう。』
かつての子供達はこの石碑の存在を知らなかった。
そして地球温暖化でオゾン層が破壊された事も、厚い雲が自分達を守っていた事も何一つ大人達は話してくれなかったのだ。
今、封印されていた過去が再び人類に牙をむき、数少ない人間は今度こそ滅び去るだろう。
世界中から集まった雲は徐々に散らばり、辺りは夏のように暑くなっていった。
しかし、幼い頃から雲の向こうを望んでいた大人達は笑顔でそれを迎えている。
雲の向こうに過去の人間の過ちが隠されているのも知らずに、笑顔で雲が晴れるのを心待ちにし空を眺めていた。
読んでいただきありがとうございます。
解説は無粋な気もしますが、また分かりづらくなってしまったので一つだけ。
『裕福な』というのがポイントで子供達は大金持ち、言い換えれば権力者の子供達なので助かったというわけです。
解説しなくてもすむように文章力をあげられるよう努力します…。
では、またいつかどこかで。




