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第三章第3話ユハリーン王朝

 軍議から帰ってきたトシヤさんに、明日の明朝、ユハリーン王都を全艦隊で包囲することが決まった、と告げられる。


「ふむ、敵の抵抗が激しいでしょうね。 相手にとっては最後の戦いになるでしょうし……」


「かなりの損害が出るだろうが、籠城戦だと王都50万の民が疲弊する。 ここは短期決戦でできるだけ王都の民に犠牲を出さないための作戦だ」


「俺、勝手に動いていいですか?」


「あん?」


「艦隊兵力は王都制圧後、治安維持や事後処理でかなりの人数が必要でしょうし、こんなところで疲弊させるのは得策じゃないでしょう?」


「ナオト、何を考えている?」


「俺が王都を落としますよ」


「…………出来るのか?」


「出来ないことは口にしませんよ。 トシヤさんの許可さえ頂ければ今すぐにでも……」


 トシヤさんはタバコに火を付け、考え込む。


「何割だ?」


「夜明けまでに王を捕らえる確率ですか?」


 トシヤさんは頷く。


「敵の布陣を見る限りなら9割9分」


「そんなに高いのか?」


「10割って言い切ってしまいたいですが、万一ってこともあるんで1分下げましたが」


「その万一とは?」


「俺がこいつに喰われ尽くされる時ですよ。 まあ、失敗したら本来の作戦通りにお願いします」


「喰われ尽くさなければ絶対成功すると?」


「ええ」


「断言か……。 わかった。 報酬はだいぶ上乗せしよう」


「では、行ってきますよ。 ちゃんと報酬用意していてくださいね」




 そして俺は単身で王都の城門を見上げた。

 当然、俺の姿は城兵に気付かれているが、たった一人で立っている俺の姿に戸惑っている様子だった。


 俺は静かに霧雨を抜く。

 城門は鋼鉄でできた巨大な門ではあるが、霧雨の前には紙も同然。

 一閃で、城門は真っ二つになる。


「な!?」


「なんだ、あいつは!?」


 ようやく事態を把握した城兵。

 たった一閃で鉄壁の城門を真っ二つにされて自分等の防御の要があっさり抜かれたことに混乱を起こす。

 俺は混乱する城兵を気にすることもなく、たった今破壊した門を潜り入城した。


「敵は一人だ!! ユハリーン騎士団の名誉にかけて討ち取れ!!」


 騎士団のお偉い人っぽい男が騎士たちに向かって激を飛ばす。

 騎士たちも俺が単体ということで各々獲物を持ち、俺に襲いかかってくる。


「ぐは!?」


「ぶば!??」


 襲いかかってきた奴は全て物言わぬ肉塊になる。

 その光景を目の当たりにした生き残った騎士は皆顔面蒼白だった。


「あ、あいつまさか…………、剣帝!?」


「な、なに、剣帝だと!?」


「……戦場で出会ったが最後、生き残れないという、あの!?」


「い、いやだ、俺はこんな奴に殺される最期なんて絶対嫌だ!!」


 多くの騎士は騎士の誓いを忘れ、蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。


「こら、に、逃げるな! 踏み留まれ!!」


 騎士を束ねる将は慌てて逃走する部下を鎮めようとするものの目の前に俺が立ち、さらに顔を青くする。


「や、やあやあ、我こそはユハリーン騎士団第6隊隊ちょ……」


 名乗りを言い終わる前に隊長の首が地面に落ちる。


「時間がないんだ、逃げるなら逃げればいい。 逃げる奴までは斬らない。 来る奴だけ斬る……」


「ば、馬鹿にするな!! いいか、敵はたった一人だ!! たった一人に抜かれたら末代まで汚名が残るぞ!!」


 さすがに最期の砦たる王城を守る騎士団。

 これだけ圧倒的な結果を見せてもまだ退かないとは。


「警告はした。 それでも蛮勇な選択を選ぶか……」


 行くぞ、霧雨。

 お前が欲する血はまだまだ蛮勇な連中から浴びれるぞ。





 ユハリーン城、王間。

 王座に座るユハリーン王カムチャクは最初の報告で我が耳を疑った。


「たった一人に我が騎士団が半壊だと?」


「王よ、お逃げください!!」


「バカな、にわかに信じられん……。 たった一人が、こんな」


「事実です!! すでにそいつによって第三防衛線も破られました! 第四防衛線たる最終防衛線もまもなく決壊します。 早く脱出を!!」


 対海賊艦隊軍に備えさせた鉄壁の防衛陣をたった一人の侍に、さらにこんな短時間で壊滅する。

 そんな話を信じろという方が無理がある。


「夢じゃ、これは夢じゃ」


「夢ではありませんよ、カムチャク陛下」


「!!!」


 そこに立っていたのは帰り血で真っ赤に染まった一人の侍が立っていた。


「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


「安心してください。 あんたを斬るのは俺の仕事じゃない。 そして邪魔をしないならわざわざ斬りはしない」


 真っ赤に染まった侍はそう宣言した。

 目の前に立つ侍は伝承に出てくる大悪魔に遜色ないほど不気味で、かつ恐ろしい存在だった。

 自らを神の化身として自称し君臨した王が自らを小者であるかと悟らせるまでに……。


「ついて、きて、くれますね、 カムチャク王?」


 そのこの世のものとは思えない侍の一言でカムチャク王は腰を抜かす。


「ひ、ひぃあ、あひぃ……」


「ちったあ、落ち着けっての!! こいつを斬ったら次の血が吸えなくなるだけだろうが!!」


 目の前の侍はいきなり激昂し、刀を地面に力一杯刺した。


「で、着いてきてくれるんで??」


 その言葉が最期勧告に等しい響きであることを本能で理解する。

 この悪魔に斬られたら魂すら消滅する。

 そう感じたカムチャク王はもはや抵抗出来るはずもなかった。

予約投稿機能使ってみる。

うまくいくのかな、(ドキドキ

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